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5Gの商用利用は2022年以降に本格化する―IDCの調査から

5Gの商用利用は2022年以降に本格化する―IDCの調査から

2021年09月10日更新

Special Feature 2

情報通信の民主化で変わる産業
ローカル5G

第5世代移動通信システム―5G。2020年春から商用サービスがスタートした本通信システムを、通信キャリアのCMなどで目にし、実際にスマートフォンで使用している人もいるだろう。この5G通信は普段通信キャリアが提供している5G回線(パブリック5G)のほかに、企業や自治体がスポット的に5Gを使える「ローカル5G」がある。情報通信を提供する主体が多様化するローカル5Gの普及により、“情報通信の民主化”が進むと言われており、活用によって産業に大きな変化が生まれていく。そのローカル5Gの潮流を見ていこう。

ローカル5Gとは何か

Introduction LOCAL 5G

2020年春に商用サービスがスタートした5G(第5世代移動通信システム)。高速、低遅延、多数同時接続の三つの特性を持つ5Gは、AI/IoT時代のICT基盤とも言われている。

その中でもローカル5Gは、地域の企業や自治体などが、自らの建物内や施設内でスポット的に5G環境を構築できるものだ。通信事業者が整備するパブリック5Gと異なり、先行して構築可能である点や、必要となる性能を柔軟に設定できる点、他の場所の通信障害や災害などの影響を受けにくい点などがメリットとして挙げられている。

2019年12月に制度化され、28.2~28.3GHz(ミリ波)の100MHz幅の利用が可能になった。2020年12月には新たな周波数帯として4.6~4.9GHz(Sub6)および28.3~29.1GHz(ミリ波)の周波数帯を追加し、事業者の受付を開始している。

ミリ波は高い帯域幅が確保でき、高速通信や多数同時接続が可能である点、Sub6は減衰が少なく、広域まで電波が届く点に優位性があり、用途によって二つの周波数帯を使い分けられるようになった点が大きなメリットと言える。

2022年以降に5Gの商用導入が本格化

Market

現時点では実証実験にとどまる
IDC Japan
小野陽子 氏

 通信事業者による5Gの商用サービスがスタートして1年半ほどが経過しようとしている。都内の駅周辺など徐々にサービス提供エリアが拡大しているものの、住宅街や地方などではまだまだ4Gが中心となっているのが現状だ。

 一方で、地域の企業や自治体などが、自らの建物内や施設内でスポット的に5G環境を構築※1 できるローカル5Gが、今注目を集めている。IT専門調査会社のIDC Japanは、国内産業向け5G関連IT市場予測を2021年6月4日に発表している。

 それによると、国内の産業向け5G関連IT市場は、2027年の市場規模を2,106億円、2020~2027年の年平均成長率を80.3%と予測している。現時点での産業分野におけるローカル5Gの取り組みの多くは実証実験にとどまっており、ローカル5Gの商用導入は、2022年ごろからスタートし、2024年ごろから本格化する見込みだ。2022年以降、産業分野での5G規格の本命とされる5G SA(Stand Alone)※2 構成のサービスやデバイスなどが増加し、利用環境が整うことで、商用導入に踏み切る企業が増えると予想されている。

 本調査を担当した同社のコミュニケーションズ リサーチマネージャーの小野陽子氏は「現時点では実証実験(PoC)段階の利用が非常に多いです。これは当初の予想よりもはるかに多く、名だたる大企業がこぞってローカル5Gの実証実験を行っています。この背景には、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むべき機運や、コロナ禍によって遠隔でのスムーズなコミュニケーションや、遠隔自動化などの需要が増えたことがあります」と語る。

1.スポット的に5G環境を構築
ローカル5Gを利用する場合、建物や土地の所有者がローカル5Gの無線局免許を取得する必要がある。また、建物や土地の所有者からシステム構築の依頼を受けた者が免許を取得し、ローカル5Gのシステムを構築することも可能だ。自己土地利用のほか、固定通信の利用のみに限り他者の建物または土地などでの利用(他者土地利用)は、自己土地利用が存在しない場合に限り導入可能だ。

2. 5G SA(Stand Alone)
5G通信には、現在4Gのコアネットワークによって4Gの基地局と5Gの基地局を連携させて動作させるNSA(Non Stand Alone)方式と、独立した5Gのコアネットワークによって5Gの基地局を単独で動作させる5G SA(Stand Alone)方式がある。5G SAは5Gの三つの特性をフルスペックで利用できるため、“真の5G”とも言われている。

規制緩和と5Gの相乗効果

 ローカル5G市場の拡大に伴い、ローカル5Gと親和性の高いほかの技術分野でも2022年前後に合わせた製品開発や規制緩和の検討が進められているという。国内では、2022年にドローンの有人地帯での目視外飛行が解禁される見込みだ。また主要なAR/VRベンダーの多くが2022年に新たなデバイスの投入を計画しており、5Gとこれらのテクノロジーの相乗効果によって、国内においてもDXへの取り組みがますます加速すると小野氏は指摘する。

「ローカル5Gを産業で利用するメリットは、特に現場の課題解決にあります。例えば現場で利用されている機器の予兆保全や、製造工程の自動化、建機の自動操縦・遠隔操縦など、人手不足を5G通信を用いたソリューションで解決することで、生産性向上や品質向上が実現できます」(小野氏)

 一方で、現時点ではローカル5Gの導入コストは高く、最大のハードルと言われている。しかし、これらのコストは徐々に下がっていくと小野氏は指摘する。「まずは大企業から導入が進みます。中小企業への導入は大企業への導入がある程度進んでからになるでしょう。もしくはコストを抑える工夫をすることで、中小企業でのローカル5Gの利用がしやすくなります。例えば東京の工業地帯にローカル5Gの基地局を作り、そこで複数の製造業者がローカル5Gの回線をシェアして使うような想定です」と小野氏は活用のヒントを語った。

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