DsasがITの力で目指す物流のホワイト化

ダイワボウ情報システム(DIS)グループの商品保管・管理、入荷・出荷、配送事業とサービス&サポート事業を統括する企業として誕生したディーアイエスサービス&サポート(以下、Dsas)。その物流サービス事業の拠点では、精密機械やオフィスサプライを迅速・丁寧に届けるため、最先端のシステムが活用されている。

ディーアイエスサービス&サポート
物流本部
物流・事業推進部
部長
若木将義 氏

――Dsasで物流の効率化を実現するため、活用しているシステムについて教えてください。

若木氏■ダイワボウ情報システム(DIS)グループの物流機能の中核拠点である当社の関東中央センター(埼玉県吉見町)と、西日本の中核を担う関西センター(兵庫県神戸市)に、それぞれロボットストレージシステム「AutoStore」を導入しています。AutoStoreはDISの基幹システムである販売管理システム“DIS―NET”と連携しており、システムから出庫の指示が出されるとAutoStoreのロボットが「ビン」と呼ばれる小型収納ボックスを上から取り出し、ピッキング作業員の待つポートまで搬送します。出庫頻度の高い商品はあらかじめ取り出しやすい位置に準備されているほか、翌日の出荷予定情報をもとにあらかじめ取り出しやすい位置に商品を並べ替えておくことも可能です。

ディーアイエスサービス&サポート
物流本部 物流・事業推進部
物流・事業推進課
課長代理
古川英樹 氏

――実際にAutoStoreを導入したことで、倉庫管理をどの程度効率化できたのでしょうか。

古川氏■AutoStore以前にも自動倉庫システムを導入していましたが、当時と比較して同じスペースであれば2倍商品を保管できます。また稼働率にもよりますが、関東中央センターに導入された45台のロボット(導入当初の規模)で、旧自動倉庫と比較して作業者15名相当のアドバンテージがあります。AutoStoreは複数のロボットで運用されるため、ロボット1台が故障してもほかのロボットは稼働を続けることができ、従来型の自動倉庫のようにシステム全体が動かなくなるリスクも低減されています。

若木氏■AutoStoreによる倉庫管理は、コロナ禍におけるIT需要の変化に柔軟に対応できました。多くの企業がテレワークに移行したことで、在宅勤務や遠隔授業環境で利用するキーボード・マウス類やWebカメラなど、DISグループが取り扱うIT機器の中でも特に小型のデバイスの需要が増加したのです。そうした小型のデバイスの倉庫管理はまさにAutoStoreの対象であり、物流が増加した中でも効率的に倉庫保管から出庫までの作業に対応できました。

関東中央センターと関西センターに導入されているAutoStore。専用にカスタマイズされた“DIS号”も働いている。
トラックヤードで行われる荷下ろし作業も、トラックバース予約システムで効率化している。

――トラック運送は物流の要ですが、トラック運送の効率化のためのシステムも利用しているのでしょうか。

若木氏■2019年に関東中央センターでトラックのバース(着車位置)予約システムを導入しました。ドライバーが関東中央センターに到着したという情報を入力すると、その情報をもとにセンターからタイミングを調整して「この時間に来てください」とメールを送り、トラックの到着時刻と場所を管理するシステムです。メーカーからの納品や荷物の集荷のトラックが何十台と来る中で、トラックヤード(荷物の積み下しをする場所)にトラックが滞留してしまうケースがありました。効率よく荷下ろしをするためにはトラックの順番を入れ替える必要などもあり、ドライバーに対して負担を強いることになっていました。トラックバース予約システムは、センター側でトラックの運行をコントロールしつつ、ドライバーの負担も軽減できるシステムとして活用しています。

古川氏■トラックバース予約システムはドライバーからの反応も良好で、これまではあてもなく待機ということもありましたが、本システムにより荷下ろしの予定が見えて、ストレスが軽減されていると好意的に受け止められています。センター側もトラックヤードの混雑緩和のほか、これまではトラックごとに逐次声をかけにいっていたものが、センター内から呼び出しが可能になり、工数の削減にもつながったそうです。

――今後のスマート物流に向けて、Dsasで取り組む物流の効率化を聞かせてください。

若木氏■関東中央センターをはじめ、既に倉庫内部の効率化は図られています。今後は運送会社やメーカー、パートナー企業の皆さまと物流面での連携頻度を増やし、ITの力で、物流業界のホワイト化を進めていきます。

人に優しいロボット自動倉庫“AutoStore”

高密度の保管で高い収納効率

 Dsasが導入した「AutoStore」(オートストア)は、ノルウェーのAutoStore ASが開発したロボットストレージシステムだ。AutoStore ASとAutoStoreの国内販売代理契約を2014年に締結し、2021年2月時点で日本国内約40の企業に販売しているのがオカムラだ。

 AutoStoreを利用する最大のメリットは、収納効率の高さだ。一般的な倉庫では棚に荷物を置き、必要に応じて人が歩いて棚まで向かい荷物を取り出す。この場合、人が歩くスペースが必要になるほか、人が取り出せる高さまでしか棚を設置できず、天井までのスペースが無駄になっていた。

 AutoStoreは専用コンテナを高密度に収納し、ロボットがコンテナの出し入れを行うシステムだ。格子状に組まれたグリッド(支柱・梁)、ビン(専用コンテナ)、ロボット(電動台車)、ポート(ピッキングステーション)の各モジュールで構成される。グリッド内に隙間なくビンと呼ばれるコンテナを積み上げて収納する構造のため、従来の平置き棚の倉庫と比較して高密度の保管が可能だ。スタッカークレーン式の自動倉庫と比較しても、クレーンが走行するスペースが必要なくなるため、約2分の1のスペースで荷物の保管が可能になる。

ピッキング作業の自動化へ

「現在、物流業界において『Goods to Person』(GTP)が注目されています。GTPはロボットに商品を運ばせることで、従来の平置き棚のように人が商品棚に足を運ぶ手間をなくします。GTPにはロボットが棚を持ち上げて運んでくる仕組みと、AutoStoreのように箱が人のところに荷物を運んでくる仕組みに大別されますが、AutoStoreは前述のように収納効率が高く、人が立っているポートに自動で荷物が届くので、人に優しいロボット自動倉庫として現在注目されているシステムです」とオカムラの担当者は語る。

 AutoStoreでは荷物(保管物)をビンに収納し、格子状に組まれたアルミ製の支柱と梁で構成されたグリッドの各セル(マス)の中に段積み収納される。取り出す際はロボットがビンをつり上げ、ポートへ搬送する。ポートで荷物を受け取った作業員はその場でピッキングが行える。高頻度で取り出されるビンは自然にグリッドの上層部に集約されていくため、出庫時間が短縮される。

「今後はAutoStoreで運ばれてきた荷物をピッキングする人の部分を自動化していきたいですね。現在AutoStoreとピースピッキングロボットの連携や、当社が開発した自律移動ロボット『ORV(Okamura Robot Vehicle)』の実証実験なども行っており、ピッキングから出荷までを自動化できるよう、システムの検証を進めています」とオカムラの担当者は語った。