ディスプレイ装置は、日常的に使われているPCモニターのほか、デジタルホワイトボードやデジタルサイネージなどさまざまな用途で活用されている。しかし、新たなビジネスチャンスを創出するなら、既存のディスプレイのリプレースを狙うだけでは機会の創出が難しいだろう。最新性能や新たなトレンドをビジネスに生かすには広い視野で世界的な動向を知っていくことが重要だ。本記事では、世界のディスプレイトレンドとその特長を探りつつニーズを捉えていこう。

世界のディスプレイ装置支出は累計758億ドル

 ビジネス向けのディスプレイを選ぶ際は活用用途が重要となるが、部品レベルでの性能を確認しておくことでより現実的に活用方法をイメージできるだろう。部材レベルでのディスプレイ市場調査を行っているカウンターポイントリサーチのデータから、ディスプレイ装置市場の現在地を確認したい。

 IT、自動車、携帯電話分野、そしてXR(AR/VR/MR)といった新興分野では、OLEDおよびLCDディスプレイの需要が増加しており、ディスプレイメーカーは上記の分野などで設備投資を増強している。こうしたディスプレイの動向を示す市場調査として、カウンターポイントリサーチでは「四半期ディスプレイ設備投資および装置市場シェアレポート」を発表している。上記レポートには、カウンターポイントリサーチが提供するOLED(有機EL)、LCD、マイクロOLED製造工場のスケジュール、OLEDおよびLCD生産能力、そしてLCD、OLED、マイクロOLED製造装置の市場規模、市場シェア、そして80のセグメントにおける予測に関する全てのコンテンツが含まれている。また、130社を超えるディスプレイ装置サプライヤーの、ファブ(工場)別、装置タイプ別の営業成績を測る活動であるデザインウィンとユニット数、四半期ごとの売上高の結果を示した。

 OLEDは有機EL素子が使用されている。電気が流れることで素子自体が発光するため、バックライトが不要だ。省電力で鮮明な発色を実現する技術となっている。LCDには液晶が使用されており、ディスプレイの背面から光を当てることで映像が映し出される。このような仕組みのため、ディスプレイの明るさや色合いはバックライトの性能によって変化する。

 カウンターポイントリサーチの調査によると、2020年から2027年にかけての世界のディスプレイ装置支出は累計758億ドルに達する見込みだ。技術別および主要な新プロセス別支出についても分析している。これらの大規模な設備投資をけん引する主要な技術はOLEDであり、次いでLCDとマイクロOLEDが続く。2025年には、OLED関連装置支出は前年比31%増加すると予測される一方、LCD関連装置支出は前年比45%減少する予測だ。2025〜2027年にかけて、OLEDは新しい第8.7世代IT OLEDと第6世代の技術のけん引により、総投資額の80%を占める見込みだが、LCDはわずか17%のシェアに低下すると予想している。

 ディスプレイ装置市場の支出額は、2020〜2027年で累計760億ドルに達すると予想されている。OLEDは引き続きこれらの設備投資の大部分を占め、2025年だけで前年比31%の成長が見込まれる。Visionoxと半導体ディスプレイ分野に焦点を当てた技術企業であるTCL CSOTは、現在話題となっているOLED用の新しい成膜方法を採用する予測だ。しかし、フォトパターンOLEDと有機ELディスプレイの製作工程時に使われる微細な穴を精密に配置した薄い金属板「ファインメタルマスク」(FMM)の設備投資額の差はわずかとなっている。メーカーの分類としては、キヤノン(キヤノンアネルバとキヤノントッキを含む)、アプライドマテリアルズ、ニコンが引き続きディスプレイ装置市場をリードしており、合計で売上高シェア28%を占めると予想されている。

ディスプレイ装置はOLED技術が発展

 これまで、液晶パネルに用いられる第6世代のガラス基板(1,500×1,850mm)を保有するほとんどのOLEDメーカーは、安定した歩留まりとFMMの進歩を背景に、蒸着方法を変えることなく第8.7世代のガラス基板(2,290×2,620 mm)への拡張を進めてきた。しかし、中国の第8.7世代パネルサプライヤーは、FMM以外の技術の採用を検討している。

 カウンターポイントリサーチ シニアアナリストのジェイデン・リー氏は、次のように述べている。「VisionoxのV5ファブはフォトパターンOLED技術を採用しており、TCL CSOTのt8ラインはRGBインクジェットOLEDを採用する可能性が高いです。従来のFMMとは異なり、この蒸着方法の転換は、次世代OLEDパネルにおける競争優位性とコスト優位性の両立を確保するための取り組みとみられています」

 カウンターポイントリサーチは、四半期ごとのディスプレイ設備投資レポートで、設備投資を綿密に追跡し、さまざまなプロセス技術の長所と短所を明らかにしている。リー氏は、FMM、マスクレス(フォトパターン)、RGBインクジェット技術に関する最近の調査結果を強調し、次のように述べている。「現時点では、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイを製造するBOEとVisionoxがそれぞれ採用しているFMMプロセスとフォトパターンプロセスの間に、設備投資額に大きな差は見られません。しかし、これらのプロセスへの全体的な設備投資に長期的に影響を与えるいくつかの留意点があります。TCL CSOTのインクジェット技術はコスト削減の点で優れていますが、主要カテゴリー全体で規模を拡大するには、今後インクジェットの解像度を向上させる必要があります。これは、中国に拠点を置くディスプレイベンダーが韓国の競合他社に挑戦し続けるために不可欠です」

 ディスプレイ装置のサプライチェーンは、半導体製造装置とは異なり、長く断片化されている。カウンターポイントリサーチは、ディスプレイ装置のサプライチェーンにおいて170社以上の装置ベンダーも調査している。日本の装置メーカーはこれまでこの業界を席巻してきたが、地政学的環境の変化や現地メーカーを支える中国拠点のサプライチェーンの台頭により、世代交代とともに統合の兆しが見え始め、新たなサプライヤーの台頭も見られた。

 キヤノン(キヤノンアネルバとキヤノントッキを含む)は引き続き市場をリードすると予想されており、売上高は前年比9%増、2025年には12%の市場シェアを獲得すると予測されている。アプライドマテリアルズは市場シェアが9%に若干低下するものの、売上高では引き続き第2位のディスプレイ装置メーカーの地位を維持すると予測されている。ニコンも市場シェアを低下させ、売上高は前年比22%減少する予測だ。Sunic Systems、ニッシン、SCREENホールディングス、バイアトロン・テクノロジーズ、Suzhou Xindaなどは市場を上回る成長を遂げており、既存企業から急速にシェアを伸ばしている。国別の内訳としては、上位20社のうち日本企業が8社、韓国企業が7社、中国企業が4社、米国企業が1社となった。

 ここまで、部材に着目してディスプレイ装置市場を見てきた。半導体の供給状況などで市場が変動するケースもあるが、企業の活用意向はもとより、最新の技術動向を踏まえつつ、ディスプレイ装置を提案していこう。