予兆検知ソリューション市場は堅調に成長

Sign Detection

 デロイト トーマツ ミック経済研究所は、AIを利用した予兆検知ソリューションの市場規模を調査した。同調査によると2023年度の予兆検知ソリューション市場規模は前年度比7.5%増の187億円となった。

 市場規模拡大の背景として、AIを活用した設備やインフラの予知保全が注目されていることがある。一方で、工場で利用される機械設備は定期的なメンテナンスにより十数年稼働するため、経済的効果を訴求することが難しく、市場成長率は緩やかな拡大傾向にある。さらに、予兆検知ソリューションの対象範囲の拡大も市場の発展に寄与している。これまでのメインターゲットであった製造業に加え、発電所やビル、鉄道などの社会インフラも予兆検知ソリューションの対象範囲として好調に推移しているのだ。

 一方でAIを活用した予知保全・予兆検知ソリューションの導入は、大企業を中心に一巡してきている。このことは市場規模の縮小につながっておらず、予知保全・予兆検知ソリューションの導入が期待先行型の案件から、地に足の着いた案件にシフトしているとデロイト トーマツ ミック経済研究所は指摘する。

 これらの要因により、同市場は年平均成長率10.5%と堅調な成長を続け、2028年度には308億円に達する見込みだ。

人への依存度が高い設備に注目集まる

 同調査では予兆検知ソリューションを、設備系故障予知、不良品予知・最適化、システム運用障害予知、ネットワーク運用障害予知、建造物劣化予知といった用途別に分類した市場規模の調査も行っている。

 2023年度における設備系故障予知の市場規模は、対前年比6%増の成長となった。市場拡大の要因として、火力発電所や風力発電設備といったエネルギーインフラの施設への導入が挙げられる。また、2023年度における不良品予知・最適化の市場は、前年度比9.5%増と堅調な成長を見せた。結果の見えにくい設備系故障予知と比べて不良品予知・最適化は経営層の投資意欲は高く、素材系製造業を中心に拡大した。

 設備・システムの計画外停止リスクが大きな施設・設備と、点検において人への依存度が高い設備の二つが有望ターゲットであるとデロイト トーマツ ミック経済研究所はみている。システム停止時に生じる素材損失のリスクが大きいプラント系設備は、損失を防ぐためにユーザーの投資意欲が高い。また熟練作業員の経験に依存した点検作業に、AIを導入することが期待されている。

キャッシュレス決済の増加により市場拡大

Authentication Solution

 富士キメラ総研は認証ソリューション関連市場規模を調査し、「デジタルID/認証ソリューションビジネス市場調査要覧 2024」にまとめた。同調査では、認証機能を利用したソリューション「認証ソリューション」、オンライン上で提供される認証プラットフォームやツール「オンライン認証基盤」、生体認証ツール、認証機能を提供するカードやタグとそれらを読み取る端末「認証アプライアンス」に認証ソリューション関連市場を分類の上、調査を行った。

 調査によると、2023年の認証ソリューション関連市場規模は9,238億円となり、2024年には1兆168億円への拡大が見込まれている。市場拡大の要因として、キャッシュレス決済が挙げられている。政府の推進政策や若年層を中心としたコード決済の定着によって、キャッシュレス決済利用が増加しているのだ。さらに、オンライン認証の増加やセキュリティ対策の強化も市場の拡大に寄与している。セキュリティ対策強化を目的としたガイドラインの策定や改訂により多要素認証が増加し、利便性向上を目的としたオンライン認証も拡大している傾向だ。

 こうした要因に加え、決済を通して得たデータの属性ごとの購買分析や個人に適した販促活動などマーケティングでの活用が進み、デジタルIDの用途が広がることで、2029年の同市場は1兆5,248億円になると富士キメラ総研はみている。

デジタルエンジニアリング市場の拡大続く

Industrial Engineering

 IDC Japanはデジタルエンジニアリング市場を調査した。同調査では、デジタルエンジニアリングを「産業のエンジニアリング領域におけるデジタルトランスフォーメーションへの取り組み」と定義し、デジタルエンジニアリング向けICT市場と、ICT市場に隣接するデジタルエンジニアリング向け非ICT市場の二つに分類している。

 同調査によると、2023年のデジタルエンジニアリング市場規模は2兆2,952億円となった。市場拡大の要因として、ICT領域のプロダクトエンジニアリングにおける製品設計開発力向上や、製品開発工数短縮のためのデータ管理/データ連携が挙げられる。OTにおける現場作業の品質向上や、より少ない人数で業務を行うための自動化、作業員支援などを目的とするデジタル技術への支出拡大も市場の拡大に寄与している。また非ICT領域でも、デジタル技術を搭載したIoT機器や組み込みソフトウェア開発サービスなどへの支出拡大が市場の成長をけん引するとIDC Japanはみている。

 こうした市場拡大の傾向は継続し、年平均成長率13%と順調に成長し、2028年には同市場規模は4兆2,271億円になる見込みだ。

 同社 Software & Services リサーチマネージャー 小野陽子氏は、産業分野のデジタル化を進めるベンダーに今後求められる取り組みについてこう指摘する。「これからの産業は『データをつなぐ』ことを可能にする標準的なICTやインターフェースの実装が重要となります。ベンダーは、顧客の要望通りの過度なカスタマイズによる個別最適化より、顧客とその業界が、部門や企業の枠を超えたプロセス改革や全体最適を実現できる未来に向け、ICTの『あるべき姿』を提案すべきです」