リスキリング先進企業が利用する
学習プラットフォームはなぜ選ばれるのか

What re-Skilling

リスキリングの実施方法は社員が学ぶことだ。現在は社員同士、そして取引先あるいは顧客とのコミュニケーションにおいてオンラインが主流になっているように、リスキリングを目的とした学びもオンラインが主流だ。国内有数の企業の多くがリスキリングの実施手段として利用しているオンライン講座プラットフォームがある。それがEdTechのスタートアップ企業である米国のUdemy(ユーデミー)のサービスだ。ここではUdemyを紹介する。

国内の法人導入社数が
1年間で2倍に急増

ベネッセコーポレーション
社会人教育事業部
部長
Udemy事業責任者
飯田智紀 氏

 Udemy(ユーデミー)は国内では「進研ゼミ」をはじめとする教育事業や介護事業を展開するベネッセコーポレーションが2015年に米国Udemyと独占的業務提携を結び、提供している。

 現在のUdemyの利用状況は、講師がグローバルで約7万人、学習者がグローバルで5,400万人以上、Udemyに流通するコンテンツの数は20万本以上となっており、講師、学習者、コンテンツのそれぞれの数は増加を続けているという。

 さらに日本では法人向けに「Udemy Business」というサービスを提供している。これはユーザーから評価の高い、あるいは需要の高いコンテンツ、約8,800本を月額で視聴し放題(学び放題)というサブスクリプションモデルの法人向けサービスだ。Udemy Businessの顧客は企業だけではなく大学・専門学校や自治体などの公共団体とさまざまだ。

 日本でUdemy事業責任者を務めるベネッセコーポレーション 社会人教育事業部 部長 飯田智紀氏は「Udemy Businessは日経225銘柄の50%以上の企業を含む国内800社以上のお客さまが利用しています。2021年6月時点のUdemy Businessの導入社数は434社でしたが、1年後の2022年6月は約2倍の812社へと大幅に増加しました。さらにサービス利用の継続率は90%以上と、お客さまにおけるリスキリングへの意識の高さがうかがえます」と説明する。

個人の講師と学習者をマッチング
コンテンツの販売・購入を仲介

 Udemyは、Udemyが学習用のコンテンツを用意して学習者に提供する、いわゆるeラーニングサービスではない点が面白い。基本的なサービスでは教える側も教わる側も個人だ。

 Udemyでは教えたい人がコンテンツを作成してUdemyのプラットフォームに公開する。学びたい人はUdemyで自身に適したコンテンツを検索して探し、1本ずつ購入して視聴するという仕組みだ。Udemyは教えたい人と学びたい人をつなぐ、学習のマッチングプラットフォームと言えよう。

 Udemyでは教えたい人も学びたい人も誰でもこのプラットフォームに参加(利用)でき、教えたい人は自由に自身のコンテンツを公開・販売できる。学びたい人が一度購入したコンテンツは、永続的に視聴可能だ。

 ちなみに教えたい人と学びたい人がそれぞれUdemyを利用する際に特別な審査はない。教えたい人がUdemyにコンテンツを公開する際も、原則として審査はない。ただし学習に全く関係のない内容だったり、コンテンツの動画の画質や音質が悪かったりといった場合は、そのコンテンツの掲載を断ることがあるという。

Udemyで提供される学習用コンテンツの一例。画面のようにUdemyではコンテンツを1本単位で購入して視聴する。1度購入したコンテンツは永続的に視聴できる。またコンテンツを提供する人もUdemyのプラットフォームをマーケットプレースとして利用することでビジネスを展開できる。
モバイルにも対応しており通勤中に受講することも可能だ。

実務者や専門家がコンテンツを提供
実践的なコンテンツが充実

 個人や企業がリスキリングの手段としてUdemyおよびUdemy Businessを利用するのは、コンテンツの数や分野が充実していること、内容が評価されているからのようだ。

 Udemyでは教えたい人が原則自由にコンテンツを提供できる。プラットフォーム提供者がコンテンツを自ら準備しないため、コンテンツを充実させやすい。

 またUdemyは教えたい人と学びたい人のマッチングプラットフォームであると前述したが、一方で学習コンテンツのマーケットプレースの役割も担っており、コンテンツ提供者が主体となってビジネスを展開できることもコンテンツの充実に有利に働く。

 Udemyに参加する講師は現役のビジネスパーソンやエンジニア、大学講師、著作がある各界で著名な実務家など、さまざまな分野の専門家が数多くおり、実践的に学べるコンテンツを提供している。こうした特長がコンテンツの質への評価につながっているようだ。

 ただしUdemyには多数のコンテンツが流通しており、全てのコンテンツの品質が高いとは言い切れない。そこでUdemyでは受講者による星付けによる評価制度を設けている。

 Udemy上で提供されるコンテンツの全てに対して、受講者が星の数で評価したりコメントを記載したりできる仕組みだ。この受講者の評価に基づいてUdemyのシステムが点数を集計し、コンテンツの評価を受講者に提示する。例えば「AI」で検索すると、AIの分野で評価の高い順番にコンテンツが表示される仕組みだ。

 検索の際にさまざまな条件を付与でき、例えば「日本語」を条件に加えれば日本語のコンテンツと、日本語の字幕が付けられたコンテンツから目的のコンテンツが絞り込まれる。

 ちなみに法人向けのUdemy Businessで提供される約8,800本のコンテンツのうち、日本語および日本語の字幕が付くコンテンツは1,000本ほどだ。現在毎月10〜20本のペースで日本語コンテンツを増やしているという。

 またデジタル関連では、やはり米国のコンテンツが最新のテクノロジーをいち早く取り上げる傾向がある。そこでUdemyには簡易的に日本語に翻訳する機能も提供されており、講師が話す言葉をリアルタイムで日本語の字幕で表示してくれる。

YouTubeとの差別化は体系的に学べること
学習管理機能でアセスメントが可能

 Udemyでは学習用コンテンツをやりとりするプラットフォームを提供しているわけだが、動画の視聴プラットフォームと捉えるとYouTubeと比較してしまう。飯田氏は「YouTubeにも有益な学習用コンテンツがたくさんあります。しかしYouTubeで提供される多くのコンテンツは細かいテーマで作成されているため、学習したいテーマを体系的に学ぶことが難しく、必要なコンテンツを探し出すのも容易ではありません」と説明する。

 さらに社員が学習する場合、どのようなテーマを学習しているのか、進捗状況はどうなっているのかといった管理機能も必要になる。法人向けに提供されているUdemy Businessでは学習管理機能が提供されているほか、Udemy Businessが提供する約8,800本のコンテンツ以外に、内製のコンテンツを社員向けに公開することもできる。

 体系的に学習させるという点に関しては、ラーニングパスを設定できることもUdemy Businessのメリットだ。ラーニングパスとは設定した学習テーマに沿って必要なコンテンツをひとまとめにパッケージとして、画面にリンクを一覧表示する機能で、学習テーマごとにいくつもラーニングパスを作成できる。

社会人の仕事への意識
学びへの意識を知る

Report re-Skilling

『社会人の学びに関する意識調査2022』レポート

社会人の学習と仕事の意欲の関連や、それぞれの学習の実態、学びたい課題など、リスキリングの実態についてベネッセコーポレーションが興味深い調査を実施した。その結果を紹介しよう。

社会人を四つのセグメントに分類

 このデータはベネッセコーポレーションが18歳から64歳の働く男女を対象に2022年3月15日から3月22日にインターネットを通じて調査した結果だ。事前調査と本調査が実施され、有効回答数は事前調査が3万5,508サンプル、本調査が3,330サンプルとなっている。

 同調査では調査対象を四つのセグメントに分けている。まず学習経験がある、ないの二つの層で、学習経験がある回答者をさらに学習意欲がある、ないに分けている。同様に学習経験がない回答者に対しても、学習意欲がある、ないに分けている。

 この分類の結果、「学んでいます層(学習し続けている)」(セグメントA)と「学ぶつもり層(これ
から学習したい)」(セグメントB)、「学ぶの疲れた層(学習をやめた・やめる)」(セグメントC)、「なんで学ぶの層(学習意欲なし)」(セグメントD)の四つのセグメントに分類している。

 ちなみに社会人の学習状況について学習経験者は事前調査対象の45%、学習意欲率は47%だった。

学習目的と学習テーマの関連性

 まず「学びへの意識」と「仕事への意識」について見ていこう。全ての図表のA、B、C、Dは前述した(A)「学んでいます層」、(B)「学ぶつもり層」、(C)「学ぶの疲れた層」、(D)「なんで学ぶの層」を指している。それぞれの層の属性を確認しながら調査結果を見てほしい。また各調査結果では、学習経験あり、なしを軸に、学習意欲のあり、なしで回答結果の差を明示している。

 学びへの意欲を見ると学習経験ありで、学習意欲があり、なしでは「学びが好き」に大きな差が生じていることを示している。ほかの赤字でハイライトしている部分も同様に、設問に対する意識の差が大きいことを示している。

 学習経験がない人の中で学習意欲がある人(B)とない人(D)を比較すると、学ぶことが仕事の成果やキャリアップにつながると思うかで学びの意識に違いが見られることが分かる。仕事への意識では「新しい仕事がしたい」「仕事を通じて成長したい」といったスキルアップの面で意識の違いが見られる。

 これからの学習テーマについては学習意欲がある人に関して、「IT関連」や「英語」「お金・資産運用」が多く、さらに学習目的別に見ると「将来のキャリアップのため」や「仕事で必要な知識・スキルの習得のため」に学んでいる人は「IT関連」を学ぶ人が多いことが分かる。やはりデジタル化が進展する中で、さまざまな業種や業務でIT関連のスキルが高く求められていることが結果に表れている。

DX推進に不足している社員のスキルを把握

How re-Skilling

社員に新しいスキルを身に付けさせるという観点から、リスキリングは人事部門の仕事だと思われがちだ。しかしリスキリングは何のために推進するのか、どんなスキルを身に付けさせて、どのような事業に役立てるのか、そうした目的を明確にして的確に推進していくには人事部門だけが取り組んでも効果は期待できないだろう。そこでベネッセホールディングスおよびベネッセコーポレーションが取り組んだリスキリングから、効果的な取り組みのヒントを得たい。

社内に偏在するデジタル人材
求められるのは組織力の強化

ベネッセホールディングス
Digital Innovation Partners
DXコンサルティング部
部長
水上宙士 氏

 ベネッセホールディングスおよびベネッセコーポレーションでも当然、DXへの取り組みを推進してきた。しかし同社は顧客もビジネスモデルも異なる多様な事業を展開しており、それぞれの事業でDXへの取り組み方や進捗のスピードなどが全く異なるという難しい状況に直面していた。

 現在、DXを推進する横断組織であるDigital Innovation Partners(以下、DIP)でDXコンサルティング部 部長を務めるベネッセホールディングスの水上宙士氏は「以前は各事業部門で仕事の必要に応じて社員がそれぞれ新しいスキルを取得していました」と話す。そのため局所的ではあるが、各事業部門にはデジタルに関するさまざまなスキルを持つ人材はいたという。

ベネッセコーポレーション
人財開発部
部長
村山祐紀子 氏

 例えば「データは蓄積できているが、それをどのように活用すればお客さまにより高い価値や新しい価値を提供できるのか」といった課題に対して、その事業部門にデータサイエンスに長けた社員がいなければ判断するのは困難だ。

 一方でタブレットの教材を導入していた進研ゼミの部署ではデータを活用する必要性があり、データの分析や利活用に長けた社員が以前より存在した。全社でDXを推進するにはこうしたデジタルスキルを備えた社員を各事業部門でうまく活用する必要がある。

 しかしベネッセコーポレーション 人財開発部 部長 村山祐紀子氏は「社内でどんなにDXの絵を描いても、人事部門でデジタル人材を育成してDXをけん引するのは困難だと痛烈に実感しました。やはりDXの絵を描いた人、描ける人がデジタル人材を育成するべきです」と説明する。

DXの推進に必要な職種を定義
職種ごとにスキルをレベル設定

 DIPの前身となるDX推進部門で活躍していた水上氏は社内コンサルティング活動を開始し、各事業部門の現場で解決できない課題の把握に取り組んだ。そして現場の社員とDX推進部門が協力して課題解決に取り組むようになり、DXを推進する上で解決すべき社内のさまざまな課題を把握できるようになった。

 水上氏は「この事業部門ではこういうスキルを持った人が不足している、将来に向けてこういうスキルを持った人材を採用した方がいいのではないか、ということが把握できるようになり、この情報は採用計画や育成計画に反映できると考えました」と話す。

 社内でどのようなスキルを持った人が不足しているのか、どの事業部門でどのようなスキルを持った人が必要とされているのかなどを把握したDX推進部門の水上氏や、人事部門の村山氏らが協力して社内の人材育成のプロセスを作成した。

 作成した人材開発の基本方針について村山氏は「社員個人のスキルアセスメントを実施して管理することで、社内の各組織のスキルを正確に把握します。さらに社員個人の職種とスキルレベルに応じて研修を提供することで、効果検証をしながらレベルアップを図っていきます。これは進研ゼミのサービスの在り方とも共通します」と説明する。

 まず同社のDXの推進に必要な職種を定義し、職種ごとに求められるスキルについてレベル設定をした。同時に社員一人ひとりのデジタルリテラシーを把握するために「ベネッセDXリテラシーチェックテスト」を実施した。これは現在も定期的に実施している。その結果、現在のスキルレベルが可視化され、所属する職種に応じてレベルアップが必要なスキルや、新たに習得しておいた方がいいスキルが明確化される。

 現在は同社が導入したタレントマネジメントシステムなどによって、社員が設定したキャリアプランやテストの結果などからお薦めの研修コンテンツが提示され、また社員一人ひとりの学びも記録される仕組みが運用されている。

それでも学習しない社員への対応
メールマガジンとリスキル休暇

 ベネッセホールディングスおよびベネッセコーポレーションでは、各事業部門の組織としてのスキルの把握から、各社員に応じた効果的な育成、育成に必要なUdemyおよび内製の学習コンテンツの準備、さらにDIPにデジタル人材を集約することで各事業部門の課題を迅速に解決するなど、DX推進の体制が整っている。

 しかし環境を充実させても、やはり学習しない、できない社員も出てしまう。そこで前者に対して村山氏は「古い手法ですがメールマガジンを発信しています。こういう課題や問題に対して、こういう学習コンテンツで勉強して解決したという体験談や、Udemyのこういうコンテンツが良かったという情報など、学びに関してさまざまな情報を提供しています。メールマガジンの情報が日常会話の話題に上れば、社内の多くの人が学習していることを実感し、私もやらなければという気持ちになるかもしれません」と話す。

 また学習できないという社員に対して、リスキル休暇という制度を提供している。通常の有給休暇とは別に合計3日間、リスキルのために有給で会社を休むことができる。村山氏は「現在は1日単位で合計3日間を設定していますが、効果を図って見直す計画です」と説明する。

 最後に水上氏は「DXのビジョンを明確にすることはもちろんですが、自社の事業でデジタル関連のスキルが必要な職種を設定することが大事です。当初は3職種を設定しましたが、現在は7職種にしています。今後はさらに細分化していく予定です」と説明する。

リスキリング思考で考える
日本の企業の現状と未来

Proposal re-Skilling-2

2018年より日本でリスキリングを広める活動を始めたジャパン・リスキリング・イニシアチブで代表理事を務める後藤宗明氏は、日本および日本の企業が発展し続けていくにはリスキリングが必須と断言する。

日本に迫られた三つの選択肢
成長産業に参入するしかない

一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事
SkyHive Technologies 日本代表
石川県加賀市「デジタルカレッジKAGA」理事
広島県「リスキリング推進検討協議会/分科会」委員
経済産業省「スキル標準化調査委員会」委員
リクルートワークス研究所 客員研究員
後藤宗明 氏

 後藤氏は「米国や中国、シンガポールなどのデジタル先進国では衰退産業の企業が次々と倒産に追い込まれ、成長産業に特化して重点的に取り組みを進めたことで国と企業が成長し続けています」と指摘する。

 日本のDXの進展を見れば分かる通り、ビジネスにおいても政府や自治体などの公共分野においてもデジタルの活用はグローバルの先頭集団から、かなりの距離を引き離されていると言わざるを得ない。

 後藤氏は「今日本には三つの選択肢があります。一つ目はデジタル立国として発展を続ける。二つ目はデジタル競争に敗れ、衰退国としての末路をたどる。三つ目は競争しないという選択肢を取り、デジタルを諦めて古の都として存続していく。二つ目と三つ目を選択した場合、本当にその選択で日本は、我々は生きていけるのか、一人ひとりの選択と審判が問われることになります」と警鐘を鳴らす。

 そして日本について「日本がこれから発展を目指す上で、デジタル先進国とは違う独自の戦略があるなら別ですが、やはり成長産業に参入して競争することが現実的でしょう」と話を続ける。

デジタルをやる、やらないではない
まずはスタートラインに並ぶべき

 三つの選択肢から多くの人が望んでいるのは、やはり一つ目のデジタル立国として発展を続けることだろう。後藤氏は「デジタルをやる、やらないの議論ではなく、やってみて、自分たちが戦える場所を探すしか生き残る方法はありません。米国や中国などにすでに大きく差をつけられていますが、そのスタートラインに並ばなければ追い付くことはできません。スタートラインに並ぶ条件となるのがデジタル活用の促進です」と話す。

 そして「デジタルによって自分の仕事がどう変わるのか、自社のビジネスモデルがどう変わるのかを考えつつ、自分たちが持っているリソースや強みを生かして新しいビジネスモデルを構築する、これにチャレンジしなければ成長どころか存続することもできません」と強調する。

 また後藤氏は「The Great Resignation(大退職時代)」と呼ばれる現象が大きな問題となっており、月に440万人から450万人の労働者が自らの意思で会社を辞めているという。その最大の理由は「会社が社員に成長の機会を与えていないこと」と話す。

 このような世界で起こっている大きな出来事について、日本の経営者の多くが把握していないと後藤氏は指摘する。その理由は「英語の壁」だ。言うまでもなく世界で起こっているさまざまな出来事の影響は日本にも必ず訪れる。

自分自身をリスキリングする
というスキルを身につける

リスキリングを自社に導入したいと考えている企業担当者に最適な後藤宗明氏の著書『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』(日本能率協会マネジメントセンター刊)が9月30日に発売されます。

 日本の経営者の多くは自身でデジタルを活用した経験がなく、デジタルによって何ができるのか、デジタルによって何がどのように変化するのか、ということも理解できない傾向が強いという。後藤氏は「社員のリスキリングはもちろんやらなければなりませんが、何から取り組めばいいのか分からないと言うならば、まずは経営者自身がリスキリングすべきでしょう」とアドバイスする。

 デジタル化に遅れている日本の企業であっても、現場で活躍する若い社員たちはデジタルに親しんでいる人が少なくない。後藤氏は「社員が経営者にデジタル化の提案をしても、デジタルを理解していないため判断ができない。よく耳にするのが、DXがブームだから社員に提案しろと言うが、社員が実際に提案を持っていくとその投資価値が分からず、判断ができず実行されません」とDXが進まない原因が経営者のデジタルリテラシーの低さにあることを指摘する。

 現在はデジタルが変化のテーマとなっているが、これからグリーン化も加わりビジネスはさらに難しくなっていくことが予想される。止まることのない変化に適応して存続、発展していくには、変化に応じた「リスキリングを続けていくしか方法はない」(後藤氏)だろう。

 最後に後藤氏は「最も大事なスキルは『自分自身をリスキリングする』というスキルです。外部環境がどんどん変わっていく中で、自分のスキルを変えていかなければなりません。常にリスキリングしていくということを、自分のスキルとして身に付けるべきです」とアドバイスし、改めてリスキリングとは「新しいことを学び、新しいスキルを身に付け実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」です。企業変革に伴い「業務」の一環としてリスキリングの制度を整え、なくなってゆく仕事から従業員を労働移動、成長事業へ配置転換を実現してゆくことが重要です。以下の10項目のプロセスを踏んでリスキリングすることが大切だと考えています」と締めくくった。

① 現状評価
② マインドセットづくり
③ デジタルリテラシーの向上
④ キャリアプランニング
⑤ 情報収集の仕組みづくり
⑥ 学習開始
⑦ デジタルツールの活用
⑧ アウトプットに挑戦
⑨ 学習履歴とスキル証明
⑩ 新しいキャリア、仕事の選択