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センサーを内蔵した農機で農作業を効率化するヤンマーアグリ

センサーを内蔵した農機で農作業を効率化するヤンマーアグリ

2022年09月29日更新

農業機械のデータをもとに農作業を効率化

–Agri Tech– ライス&グリーン石島

農業就業人口の減少が進んでいる。人手不足を解消するためには、ITを活用した業務効率化が効果的だ。そうしたスマート農業への取り組み事例を、農業機械の販売やメンテナンスを行うヤンマーアグリジャパン 企画部 大畑あゆみ氏が紹介してくれた。

農機が自動で異常を通知

 茨城県下妻市で2009年から米や麦などの水稲栽培や、そば栽培に取り組むライス&グリーン石島。2015年ごろから農業のスマート化に取り組んでおり、農林水産省が実施する「農匠ナビ1000プロジェクト」に参画してスマート農業技術を活用した、低コストの輸出用米生産の実証を進めていた。

 その中で活用しているのが、ヤンマーアグリが提供する農業IoTサービス「スマートアシストリモート」だ。スマートアシストリモートでは、GPSアンテナおよび通信端末を搭載した農業機械(以下、スマートアシスト搭載農機)の稼働状況の可視化や、圃場管理が行える管理ツールだ。

 ライス&グリーン石島ではこのスマートアシストに対応したトラクターとコンバインを合計5台導入している。スマートアシストリモートの活用により、稼働状況の可視化だけでなく、24時間のリアルタイム監視で機械の異常を把握できるようになったという。

 スマートアシスト搭載農機は、異常が発生すると担当者に自動で連絡を行う。例えば農機に異常が発生した場合でも、ヤンマーアグリの担当スタッフに自動で通知が行くことで、ダウンタイムを削減できるのだ。また、農機の位置情報を取得し、夜間などに機械が移動していると通知する「盗難抑止見守りサービス」も利用できるため、農機を盗まれるリスクが少なく、安心して利用できると高く評価されている。

圃場図もデジタル化

 ライス&グリーン石島では、スマートアシストリモートを活用した営農管理にも取り組んでいる。同社では従来、水稲の作付けなどを紙の圃場図をベースに管理していた。作付けが終えた圃場は色を塗り、抜け漏れがないようにしていたが、この管理が大きな負担となっていた。

 スマートアシストリモートは、こうした管理を電子化できる。紙の圃場図と同様の感覚で作付けしている作物、品種ごとに色分けして管理可能だ。また圃場ごとの作業日報や農業・堆肥の使用履歴もスマートアシストリモート上で確認できる。入力はPCからだけでなくスマートフォンからも行えるため、屋外の作業でも負担なく記録が残せる。

 また、農作機械の稼働情報も可視化できるため、作業員ごとに生じる作業のムラなども把握できる。例えば農作機械の軌跡をスマートアシストリモートで確認することで、農作機械を操作するスキルの向上などにも活用できるのだ。毎朝のミーティングで、従業員と前日までの作業状況を振り返り、その日の作業に生かしているという。

 ライス&グリーン石島がスマートアシストリモートを導入したのは2016年ごろ。直近では新たにコンバインも導入している。スマートアシスト搭載のコンバインは、収穫量のデータなどが機械から取得できる。これまでは手書きで記録していた収穫量が自動で記録できるようになり、次年度の作付け計画に役立てている。

1.「記憶より記録」の営農を重視し、スマートアシストリモートを導入したライス&グリーン石島 代表取締役 石島和美氏。2.茨城県下妻市で水稲56haとそば10haを栽培する。現在約120枚の圃場を管理しており、スマートアシストリモートによる圃場ごとの記録は、非常に業務に役立っているという。
3.圃場図は、従来は印刷した地図に手書きで作付けの記録を行っていた。圃場面積が拡大し、その圃場図の数が増えるにつれ、記録に間違いや漏れが発生していったという。4.スマートアシストリモートでは、Googleマップの地図上の圃場に作物や品種を色分けして表示できる。現在の作業状況が視覚的に捉えやすくなるなど、管理の負担が大幅に減少した。

ハードとソフトの両面から営農活動を支援

–Agri Tech– ヤンマーアグリ「スマートアシストリモート」

農業事業者が日常的に使う農業機械のデータを生かし、営農に生かすシステム。ヤンマーアグリが提供する「スマートアシストリモート」は、農業事業者の視点に立った農業IoTサービスと言える。その開発のきっかけには、発電所のリモート監視のニーズがあった。

発電所から生まれた農業IoT

 1912年に創業したヤンマーは、産業用エンジンを軸に、アグリ、建機、マリン、エネルギーシステムなどの事業をグローバルに展開している企業として知られている。その関連子会社でありヤンマーグループの農業関連事業を統括するヤンマーアグリが提供しているのが、農業IoTサービスのスマートアシストリモートだ。スマートアシストリモートは、GPSアンテナおよび通信端末を搭載した農業機械(以下、スマートアシスト搭載農機)から発信される稼働情報などをもとに、農業事業者の農機を見守り、効率化を図るサービスだ。位置情報やデータ解析に基づき、農機の稼働状況や圃場の作付け状況、特性などが把握できる。

 開発の背景には、ヤンマーが約30年前から手掛けていた発電所のリモート監視技術があった。エンジンが動いているか、故障が発生していないかなどを遠隔で監視する仕組みだ。その技術を生かして農業機械などの稼働状況を可視化できるようにしたのがスマートアシストリモートで、2013年からサービス提供をスタートしている。監視員を24時間365日配置して顧客の機械の稼働状況を監視するリモートサポートセンターも設置し、機械から発信される稼働情報をもとに遠隔で顧客の機械を見守り、異常があればサポートする仕組みを整えている。

農機の稼働状況から異常を検知

 スマートアシストリモートで提供するサービスは、大きくハードウェアとソフトウェアの二つに分類できる。まずはハードウェア面から見ていこう。

 農業現場で使うハードウェアと言えば農業機械(以下、農機)だ。スマートアシスト搭載農機は、異常が発生した際に自動で情報を通知する遠隔監視サービス「エラー情報通知サービス」を提供する。農機に異常が発生した際に搭載されているセンサーデータなどから取得した、エラーの発生場所やエラーの現象、対処方法などを顧客の担当スタッフにメールで通知するのだ。スタッフはその情報をもとに農業事業者をサポートする仕組みだ。

 また、「盗難防止見守りサービス」も提供する。これはスマートアシスト搭載農機の稼働範囲や稼働時間帯が設定を超えた場合は、電話やメールでその異常を通知するのだ。例えば農機の稼働時間を昼間に設定している場合、夜間に動くとそれが「異常」として検知される。ヤンマーアグリ 開発統括部 先行開発部 知能化グループ グループリーダー 新熊章浩氏は「近年、農機の盗難被害が多く発生しています。農業事業者はこれらの農機がなくなれば、収入源もなくなります。それを防ぐため、位置情報や稼働時間の情報をもとに、異常を検知して通知するのです」と語る。

スマホから作付記録も簡単に

 次にソフトウェアによるサポートを見ていこう。農作物を育てる圃場は複数あり、広大であるケースが多い。そのため、農業事業者は農作物の作付けを行う際、その作物や品種を紙の圃場図に色分けしながら書き込んでいく必要があった。スマートアシストリモートでは、その圃場図を電子化し、スマートフォンなどから記録することが可能になる。電子化した情報をもとに、圃場ごとの作業日報や、農薬・肥料の使用履歴なども可視化できるため、圃場の現状把握や、過去のデータを参照するような活用に役立てられる。登録されている圃場の情報から、周辺の天気や積算温度などの気象情報を表示でき、収穫時期の予測も立てやすい。

 作業内容を簡単に記録できる「作業記録管理ツール」も利用可能だ。前述したようにスマートフォンなどから入力が可能なため、その場で写真を撮って、作物の生育状況や病害虫の発生状況を画像で残せるのだ。もちろんPC上からまとめて入力することも可能で、ニーズに応じたさまざまな作業記録が行える。登録した作業記録をもとに、作業の進捗状況をマップ上に表示できる点も便利だ。一目で作業の進み具合が把握できる。

 スマートアシストリモートには、スマートアシスト搭載農機を所持しているユーザー向けの“スタンダードコース”、所持していないユーザー向けの“アドバンスSコース”、乾燥機と連携させる“乾燥連携コース”のプランが用意されており、ニーズに応じて柔軟に導入が可能だ。

 データを蓄積することで、圃場の中でも収穫量に差が出ていることなども可視化できる。同社のスマートアシスト搭載のコンバインは、収穫量を自動で取得し、スマートアシストリモートに蓄積できるようになっている。その収穫量データを見ると、1枚の圃場の中でも収穫量が多い箇所と少ない箇所といった差が存在する。「収穫量が少ない箇所は水はけを改善したり、肥料の量を変えてみたりといった工夫が行えます。より均一に収穫できるようにすることで、農業事業者の収穫量をトータルで向上できるようになるのです」(新熊氏)

 こうしたスマート農業への取り組みは、農業従事者の減少が続く今、さらに需要が高まっている。「これまでのアグリビジネスは、どちらかと言えばコンバインやトラクターなどの農機を販売して売上を向上させることにありました。しかしそれだけではお客さまの営農を十分に支援できません。そのため現在は、導入した先のサービスまでをトータルに提案することで、継続的な農業ビジネスにつなげています。また農機の開発側もデータを取得できることで、具体的な使われ方などを見ることができ、新製品の設計フィードバックに活用できています。今後は蓄積したデータのさらなる活用を視野に入れるほか、グローバル市場への展開を進めていきたいですね」と新熊氏は展望を語ってくれた。

スマートアシスト搭載農機の一つ、ロボットトラクター。人が乗らずにタブレット一つで作業をコントロールできる。
スマートアシスト搭載農機は、稼働状況をソフトウェア上で可視化できる。位置情報なども把握でき、盗難を防げる。
スマートアシストリモート上で作業日報を記録できる。スマートアシスト搭載農機と連携すれば、作業の情報も自動記録される。
圃場図もスマートアシストリモート上で確認できるほか、収穫量の分析も行えるため、圃場図ごとの偏りから原因分析に生かせる。

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