Special Feature 2
いま見直したい動画マーケティング

コロナ禍によって、社会の在り方は大きく変わった。それは在宅勤務などの働き方だけでなく、企業が扱うコンテンツにも表れている。1カ所に集まって行う研修やセミナーが実施できなくなったことで、録画した動画コンテンツの配信やライブ配信によって、それらを代替するようになったのだ。また動画を活用して製品をPRする企業も増えてきており、これからのビジネスシーンにおいては、動画を制作するスキルは必須といえるだろう。本特集で紹介する動画制作のノウハウや、動画制作に役立つハードウェア、ソフトウェアを知ることで、動画を活用したマーケティングの価値を今一度見直していこう。

企業の動画内製は今後のスタンダードに

INTRODUCTION

アドビの田中玲子氏は、コロナ禍以前から企業による動画の内製化を推奨してきた。ウェビナー(Web上で配信するセミナー)やブログなどで動画内製化の情報を発信し続ける田中氏に、企業が動画を内製化するメリットや、必要となるツール、社内で必要な準備などについて詳しく話を聞いた。

ブランド認知度向上に役立つ動画

アドビ
マーケティング本部
Creative Cloud
セグメントマーケティング部
マーケティングマネージャー
田中玲子 氏

田中氏_当社では、企業動画の内製化を支援するWebページや、ブログを公開し、企業のマーケティングの動画を活用することを推奨しています。特にコロナ禍前後を比較すると、コロナ禍以降はこれらのブログのPV数や、企業動画の内製化を支援するウェビナーの参加者数が増えています。コロナ禍以降、対面でのやりとりや、集合研修や社内のインナーコミュニケーションなどが行いにくくなり、代替手段として動画の活用が注目されていることが背景にあるでしょう。当社が2020年に行ったアンケート調査では、動画内製化をすでに行っている人は43%と高い割合でした。現在改めて調査すれば、さらに割合が高まりそうです。

 社内で動画を内製化するメリットは大きく三つあります。一つ目は情報伝達力の向上、二つ目はコスト削減、三つ目は業務効率化です。動画は写真よりも多くの情報を分かりやすく伝えられます。効果的に使うことで、ブランドや商品の認知度向上などにもつなげられます。社長メッセージなどを動画にして配信すれば、社内コミュニケーションの円滑化も実現できるでしょう。また、内製化に向くのは営業用のコンテンツやオウンドメディアです。これらはプロに頼むより自社内で作った方がスピーディーにイメージ通りにできるため、時間コストが削減できます。また機密情報が含まれる製品紹介などは、自社内で動画を作ったほうが安心できるでしょう。社内で動画を内製化するのであれば、社員同士のやりとりで完結するため、動画の意図や方向性、進捗なども把握しやすく、業務効率化にもつながります。

まずは社内の仕組み作りから

田中氏_動画を作る、というとハードルが高いと感じるかもしれませんが、特別なスキルは必要ありません。テロップや音の調整などは動画編集ソフトで補完できますし、クオリティアップを目指すのであればウェビナーなどで知識の習得が可能です。撮影機材としてスマートフォンのカメラを使うケースもありますが、さらに高品質な動画制作を目指すのであれば、一眼レフカメラやライト、マイクを用意するとよいでしょう。イベントのアーカイブ用動画は、ビデオカメラなどがお薦めです。

 制作した動画のアップロード先として多いのはYouTubeですが、企業ではなくエンドユーザーに情報を発信するのであれば、TikTokなども最近アップロード先として利用が増えています。例えば採用活動などの一貫で、学生に自社を身近に感じてほしいならばTikTokが投稿先として向いています。動画は投稿するプラットフォームによって、最適な時間の長さが異なりますが、製品紹介のようなしっかりと情報を伝えたいコンテンツは、YouTubeなどに長めの動画を投稿する方が認知率向上につながります。

 動画制作の上で課題となるのは、社内の調整です。メインの仕事がある中で、予算やチームメンバーの確保、ワークフローの確立といった仕組みづくりが必要になります。社内の動画内製化を支援するコンサルティング企業などもありますので、企業内で動画を内製化するメリットを伝えながら、企業の仕組みづくりを進めてほしいですね。

印象的な映像を簡単に撮影できるミラーレス一眼

DEVICE

ソニー × VLOGCAM ZV-E10

ミラーレス一眼カメラの先駆者として知られるソニーは、ミラーレス一眼カメラからVLOGなどの撮影に特化した「VLOGCAM ZV-E10」(以下、ZV-E10)を販売している。簡単に印象的な映像を撮影できる本製品は、企業の動画制作にも役立つ。

ソニーマーケティング
プロダクツビジネス本部
デジタルイメージングビジネス部
デジタルイメージングプロダクツMK課
マーケティングマネージャー
丸山直樹 氏

「従来、動画を撮影するデバイスと言うとハンディカムのビデオカメラが中心でした。ビデオカメラはイベントなどの撮影に向いていますが、VLOGCAMシリーズは動画での日常的な記録などを撮影することに向いています。VLOGとはVideoとblogを組み合わせた造語で、ブログの動画版のことです。2020年6月19日に初代モデル『VLOGCAM ZV-1』(以下、ZV-1)の販売をスタートし、多くのユーザーから人気を博しました。ZV-E10はZV-1よりもさらに良い画質を求めるユーザーに向けて、レンズ交換式モデルとして2021年9月から販売をスタートしました。ZV-E10はZV-1の便利機能を受け継ぐとともに、当社のデジタル一眼カメラαシリーズを踏襲しており、同梱のレンズのほか、当社のEマウントレンズ70本から最適なレンズを選択して印象的な映像表現が可能です」とソニーマーケティングの丸山直樹氏は語る。

 ZV-E10の本体には、さまざまな映像撮影に対応する機能を多数搭載している。例えば「商品レビュー用設定」に切り替えることで、顔から商品に、ピントをスムーズに合わせて動画を撮影できる。もちろん内蔵するセンサーは一般的なスマートフォン用のセンサーの約10倍のサイズであるAPS-Cサイズの有効約2,420万画素CMOSセンサーを搭載し、優れた描画力を実現する。AIを用いて人物の瞳を認識してピントを合わせ続ける「リアルタイム瞳AF」によって、動く人物にもピントを合わせ続け、印象的な映像撮影が可能だ。

ソニー
広報部
プロダクト広報グループ
中島奈美 氏

 ソニーの中島奈美氏は「VLOGCAMシリーズはスマートフォンからステップアップした専用機として、ライトなエントリー層にお薦めの製品です。商品のPR動画を撮影する場合でも、商品レビュー用設定を利用すれば編集の手間を減らせます。USBケーブルでPCと接続すればWebカメラとしても使えるため、例えば社長メッセージなど、映像も音質もクオリティを求められるようなコンテンツに使用するとよいでしょう」と語る。

 また、VLOGCAMシリーズには豊富なアクセサリーもラインアップしている。本体には三つの指向性カプセルマイクが内蔵されているが、別売のショットガンマイクロホンを使用すればよりノイズが抑制された高音質録音が可能になる。同じく別売のシューティンググリップを使えば片手での手持ち撮影も行えるなど、アクセサリーの選択によって撮影できる映像の幅も広がる。

「日常をより高画質に彩る機器として、小型なZV-E10は機動性が高く、お薦めしたい製品です。VLOGCAMはここ数年で一気にトレンドとして盛り上がっている製品カテゴリーであり、これからも認知度を上げられるよう訴求を続けていきます」と丸山氏は語った。

左が初代モデルのVLOGCAM ZV-1、中央がレンズ交換式のVLOGCAM ZV-E1 だ。右に配置されているレンズなどと交換して使える。本体上部のマイクと下部グリップは別売アクセサリー。
すぐに動画撮影をスタートできるREC ボタンや、よく使う機能を割り当てられるカスタムキーボタン(C1 ボタン)を天面に配置しており、動画撮影のしやすさにこだわった造りだ。
商品レビュー用設定を使えば、顔から商品へスムーズにピントを合わせてくれる。自撮りがしやすいバリアングル液晶を搭載し、アングルを確認しながら撮影できる。

複数映像の切り替え&合成を手元で簡単に

DEVICE

アイ・オー・データ機器 × GV-LSMIXER/I、GV-LSBOX、GV-LSU200

コロナ禍以降、ウェビナーやオンライン授業など、さまざまな業種で映像配信をする機会が増えた。そうしたユーザーニーズに応えるストリーミングBOXという製品を、アイ・オー・データ機器が提供している。特に教育業界での需要が高いそれらの製品の市場可能性を聞いた。

アイ・オー・データ機器
事業本部
企画開発部
企画開発1課
企画担当
竹田 隼 氏

 同社のストリーミングBOXの特長は、何といってもPCレスで使える点だ。4Kパススルーに対応し、iPadを連動させて使える「GV-LSMIXER/I」と、校内や社内LAN内に限定して映像配信を行える「GV-LSBOX」を提供している。まずはGV-LSBOXから見ていこう。

 GV-LSBOXは、本体に直接キーボードやマウスをつないで設定や操作でき、PC不要で映像の録画やリアルタイム配信が可能なストリーミングBOXだ。最大四つのHDMI入力に対応し、複数のコンテンツを組み合わせたコンテンツで動画配信が行える。特長的なのが校内や社内などの同一ネットワーク上であれば、配信プラットフォームを介さない映像配信が行える点だ。外部に映像を公開されるリスクがないため、需要が高い。もちろんYouTubeなど一般的な動画投稿サイトへの配信にも対応している。

 GV-LSMIXER/IはGV-LSBOXのように同一ネットワーク上の配信には対応していないが、GV-LSBOXよりも自由な画面の作り込みが可能なストリーミングBOXだ。iPadと本体を接続することで、映像コンテンツを直感的に作り込める。具体的には、シーンごとにテロップの配置や、PowerPoint資料の下部に人物を子画面(ピクチャーインピクチャー)で配置するような編集が、リアルタイムに行える。「簡易的なテレビ局のように映像配信をコントロールできるんですよ」と語るのは、アイ・オー・データ機器の竹田 隼氏。

 これらのデバイスは、特に教育現場で多く導入されている。卒業式や入学式などで、3密を避けるため校内の電子黒板への配信やYouTubeへの限定配信などを行うことで、参列できなかった在校生や保護者もその様子を共有できたのだ。GV-LSMIXER/Iを活用して、卒業式の映像配信を小学校5年生の児童たちが行った事例もあるという。

 ビジネスシーンでの活用もある。とあるメーカーでは新商品の社内説明会をストリーミングBOXを活用して行った。「録画もできるため、アーカイブとして後から見返すことも可能です」と竹田氏。

 また、さらに簡易的に2画面の合成が可能なデュアルHDMIキャプチャー「GV-LSU200」も、現在引き合いが増えている。二つの映像を切り替えたり、合成したりしながらPCに入力し、ZoomやTeamsなどのWeb会議ツールで共有できる。竹田氏は「GV-LSU200は半年ほど前に発売した製品ですが、非常に売上が伸びています。2万9,260円(税込)と比較的安価に導入できる点も魅力です。今まで映像配信というと、スマートフォンを使うか、プロフェッショナル向けの機材を使うかの2択しかありませんでしたが、当社のストリーミングBOXとデュアルHDMIキャプチャーはスマートフォンからのステップアップとして選択できる製品です」と語った。

iPad で簡単に画面を作り込めるGVLSMIXER/I。最大三つのHDMI 入力に対応し、複数画面のスイッチングや合成などを直感的に行える。
同一ネットワーク上に映像を配信できるGV-LSBOX は最大四つのHDMI 入力に対応する。ボタンを押すだけの簡単操作で録画や配信がスタートできる点が魅力だ。
需要が高まっているデュアルHDMI キャプチャーのGV-LSU200。二つのHDMI 入力に対応し、映像の切り替えや合成を簡単に行いながら配信できる。クロマキー合成にも対応するため、ウェビナー配信にも効果を発揮しそうだ。

初心者でも高品質な映像を簡単に作れる

SOFTWARE

ワンダーシェアーソフトウェア × Filmora

動画編集の初心者から中級者向けに、動画編集ソフトウェア「Filmora」シリーズを長年提供しているのがワンダーシェアーソフトウェアだ。使いやすいながらも高度な編集が可能なFilmoraについて、同社に話を聞いた。

ワンダーシェアーソフトウェア
取締役 兼 専務執行役員
黄 理華 氏

「Filmoraはドラッグ&ドロップで簡単に動画が作れるソフトウェアです。操作性が非常に高いだけでなく、高度な編集も可能な本製品は、企業の広報担当者など専門的な知識がないユーザーでも簡単に扱えます」とFilmoraのメリットを語るのは、ワンダーシェアーソフトウェアの黄 理華氏。

 Filmoraには動画を作る際のテンプレートがあらかじめ用意されている。動画を編集する場合は、テンプレートを選択してドラッグ&ドロップで素材を差し替えるなどすればよい。音楽素材やエフェクト、トランジション(カット間をつなぐ効果)を組み合わせれば、短時間でクオリティの高い映像編集が行える。また、標準の素材のほかにも同社が運営する動画素材サイト「Filmstock」からエフェクトをはじめとした動画素材をダウンロードすれば、より印象的な動画を制作できる。「こうしたエフェクトは当社のデザイナーのオリジナルデザインです。人気の高い、動画風のエフェクトなどもFilmstockに用意されており、ダウンロードするだけで視聴者の目を引く動画がすぐに作成できます」と黄氏。

FilmoraGo を使えばモバイルデバイスでも動画編集が行える。スマートフォンでも直感的に使えるUI だ。

 画面分割や背景を自由に変更できるクロマキー合成、被写体の動きを検出してオブジェクトを追従できるモーショントラッキングなど、豊富な編集機能を有するほか、AIを活用した編集にも対応する。

 Filmoraには、コンシューマ向けの「Filmora 11」と、法人向けの「Filmoraビジネスプラン」が用意されている。どちらも使用するソフトウェアはFilmora 11だ。ビジネスプランでは1万4,900円の買い切りプランと、3,480円の3カ月プランが用意されている。またFilmoraと合わせてFilmstockスタンダードが3カ月使い放題になるプランも5,980円(全て税込み)で用意されており、用途に合わせて選択できる。複数ライセンス(5本以上)をIT管理者が管理できるマルチユーザーコントロールも用意されており、チーム運用がしやすい。もともとコンシューマーライセンスのシェアが高かったFilmoraだが、現在中小企業から大企業、自治体まで幅広い法人で利用されているという。

 またアカデミック版も用意されており、GIGAスクール構想によって整備された端末にインストールする形で利用しているケースもある。黄氏は「さいたま市では、市内の小中学校でFilmoraのモバイルデバイス版『FilmoraGo』を活用しています。すでにスライド作成ソフトのような立ち位置で、多くの教育シーンやビジネスシーンで活用が進んでいますね」とその普及状況を語ってくれた。

Filmora のUI。テンプレートを選択して下部のタイムラインにドラッグ&ドロップするだけで動画編集がスタートできる。
Filmora ビジネスプランにはビジネス向けのトランジションやエフェクトも用意されている。

3ステップで動画広告が作れるツールを内蔵

SOFTWARE

サイバーリンク × PowerDirector

店頭のサイネージなどに表示する動画広告を作りやすい動画編集ソフトウェア「PowerDirector」を提供してるサイバーリンク。増加するビジネス需要に応え、2020年9月に新しく「PowerDirector 365 ビジネス」をリリースしている。

サイバーリンク
マーケティング デパートメント
シニア マーケティング マネージャー
今澤浩之 氏

 新しいビジネス向けライセンス「PowerDirector 365 ビジネス」は、動画編集ソフト「PowerDirector 19」の全ての機能を利用できるライセンスで、マーケティングに合わせて動画のカスタマイズが可能だ。ツールとして「動画広告デザイナー」が内蔵されており、小売店舗などのサイネージに表示する割引セール案内や、プロモーションビデオ、SNSなどに投稿する製品デモンストレーション動画などが作成しやすい。カスタマイズ可能な動画広告用のテンプレートを使用すれば、クオリティの高い動画広告を数分で作成できるのだ。

「収録されている書体の多さも好評です。例えばモリサワフォントは10書体収録しており、用途に合わせて動画に活用できます。印刷用でなく動画に向いた書体を収録しているため、テレビのテロップや映画の字幕のようなテキスト表現が可能です」と語るのは、サイバーリンクの今澤浩之氏。

 また、PowerDirector 365 ビジネスでは写真や動画の素材サイト「Shutterstock」のロイヤリティフリー素材を無制限に利用できるため、社内にデザインのリソースが不足していても動画の作成がしやすい。動画テンプレートを共有するWebサイト(https://directorzone.cyberlink.com/video-templates-home)も新しくオープンしており、より動画作成がしやすい環境が整っている。「これらのテンプレートは日本のデザイナーに作成してもらいました。利用することで一定のクオリティが担保された動画広告が短時間で作成できます」(今澤氏)

モバイルデバイス向けにリリースされている動画広告Director。スマートフォンで撮影した素材などを活用して、動画広告をその場で作れる。

 前述した動画広告デザイナーと同一の操作感で広告を作成できるモバイルアプリ「動画広告 Director」も用意されている。スマートフォンやタブレットで撮影した動画をモバイル端末内で編集して動画広告にするような活用も可能なのだ。

 また、作成した動画広告はPowerDirector 19の標準機能で、さらにクオリティをアップできる。今澤氏は「人物やオブジェクトを自動的にマスクで切り抜き、不要なオブジェクトを除去する『オブジェクト自動検出』機能など、高度な編集機能も搭載しています。動画広告デザイナーからスタートしたユーザーがステップアップして編集でき、初中級者から上級者まで幅広くカバーできる製品です」と話す。

 PowerDirector 365 ビジネスは1年プラン3万2,800円(税込)で提供されている。モバイル版の動画広告 Directorは基本無料で使えるほか、フル機能を使うためには別途サブスクリプション契約が必要となる。

「動画の活用シーンは、ここ数年でますます増え続けています。それらのニーズに応える機能を今後もPowerDirectorに搭載していきたいですね」と今澤氏は語った。

PowerDirector の編集画面。各種テンプレートを用意しており、用途に応じた効果的な動画を制作できる。
PowerDirector に内蔵された動画広告デザイナー。動画広告に適したテンプレートが用意されており、3 ステップで動画広告が作れる。

内製する動画をワンランク上のクオリティに

SOFTWARE

アドビ × Adobe Premiere Pro

「すべての人に『つくる力』を」もたらすことをミッションに掲げるアドビ。さまざまなクリエイティブソフトウェアをラインアップする中で、動画編集を行える「Premiere Pro」は特に動画内製化を目指す企業に多く選択される製品だという。

アドビ
マーケティング本部
Creative Cloud
セグメントマーケティング部
マーケティングマネージャー
田中玲子 氏

 アドビが提供する「Premiere Pro」は「動画編集を一段上のレベルへ」をキャッチフレーズとする動画編集ソフトウェアだ。映画制作などのプロフェッショナルの現場で利用されている本ソフトウェアだが、初心者がスマートフォンなどで撮影した映像を編集することにも向く。「Premiere Proはイメージしたコンテンツを簡単に作れるソフトウェアです。AIと機械学習を駆使した技術『Adobe Sensei』によって、音楽のリミックスや音声のテキスト化などが容易に行えます。長い動画を短く編集する際にも、『シーン編集検出』によって自動的にシーンをカットしてくれるので、編集の手間が省けるのです」とアドビの田中玲子氏。

 動画制作用のテンプレートも用意されており、それに沿うだけで簡単にクオリティの高い動画を作れる点も強みだ。テンプレートからさらにテロップを動かしたり、特定の場所をぼかしたりといった高度な編集を行う上でも、PremiereProであれば十分に対応できる。

 アドビではスマートフォンやタブレットで動画編集が行えるモバイルアプリ「Adobe Premiere Rush」(以下、Premiere Rush)も提供している。Premiere RushはmacOS版、Windows版、iOS版、Android版を提供しており、無料で利用可能だ。Premiere Proを購入するとプレミアム機能とコンテンツに全てアクセスできるほか、月額1,078円(税込)の「Adobe Express」を購入することでもフル機能を利用できる。スマートフォンなどで撮影したコンテンツを、そのままPremiere Rush上で編集してアップロードしたり、Premiere Rushで編集したコンテンツを途中からPremiere Proに切り替えて編集することも可能だ。Premiere Rushはレイヤーが四つまでしか使えないが、Premiere Proは何重にも使えるという。Premiere Rushで動画編集を試し、Premiere Proを購入するといった活用もお薦めだ。

 田中氏は「Premiere Proは1ライセンス月額4,380円(税込)の単体ライセンスを購入することもできますが、当社のCreative Cloudアプリを三つ以上使うようであれば、1ライセンス月額9,280 円(税込)の『Creative Cloudコンプリートプラン』がお薦めです。特に社内にデザイナーがいる企業では、すでにPhotoshopを使っているケースが多いですし、複数のアプリを組み合わせて使うことで、よりハイクオリティな動画コンテンツを制作できます」と語る。

 同社ではこれから動画内製化を始める企業に向けたウェビナーをはじめ、さまざまな情報発信を行っている。「チュートリアルが充実していることや、分からないことも調べれば分かるという点も、Premiere Proの強みです。これから動画制作を始めたい人が使いやすいよう、UIの変更などのアップデートも進めており、当社のミッションである『すべての人に“つくる力”を』の実現をこれからも目指していきます」と田中氏は語った。

Adobe Sensei を活用したオートカラー機能。ボタンを押すだけで動画の色味や明るさを効果的に補正してくれる。
Premiere Pro は各SNS に最適な動画書き出しを行える機能を搭載している。
モバイルデバイスでも使えるPremiere Rush は、簡易的な動画編集が行える。Premiere Rush で制作した動画のたたき台をPremiere Pro で作り込むといった活用も可能だ。