中堅中小企業でも高まるデータ保護への関心
低コストで手軽なデータ保護ソリューション

ソリューション

この数年間、世界中でランサムウェアをはじめとしたマルウェアが猛威を振るっており、多くの企業でデジタル資産への被害が相次ぐだけではなく、実際のビジネスにも深刻な打撃を与えている。特に昨今はEmotetの被害が深刻化しており、被害を伝えるニュースが連日のように報じられている。
これまでセキュリティ対策やBCP対策の重要性は認識しつつも、積極的に取り組みを推進する企業は決して多くはなかった。特に中堅中小企業はその傾向が強く、セキュリティやBCPに関連する提案で関心を引くのは難しいのが実情だった。ところが最近、セキュリティやBCPの観点でデータ保護への関心が中堅中小企業でも高まっているという。

マルウェアと自然災害のリスクが高まる
低価格で利用できるオブジェクトストレージ

(左)デジタルテクノロジー
ソリューション営業部
担当部長
岡田裕美子 氏

(右)デジタルテクノロジー
ソリューション営業部
部長
酒井宏一郎 氏

 デジタルテクノロジーのソリューション営業部で担当部長を務める岡田裕美子氏は「ある企業がマルウェアの被害を受けたと報道されると同業者や同じ地域の企業が危機感を高め、データ保護への取り組みを強化するという動きが顕著になっています」という。

 また同社のソリューション営業部 部長 酒井宏一郎氏も「オンプレミスのサーバーだけにファイルをそのままの状態で保存しておくことはリスクが高いということへの認識が広がっており、ディザスタリカバリー(DR)などのソリューションの引き合いが増えています」と説明する。

 そして「これまでのDRではダウンタイムを短くしてビジネスの継続に影響が生じないようにする仕組みが求められましたが、現在は時間がかかってもいいのでデータを確実に元に戻せる仕組みを重視する傾向が強まっています」と話を続ける。

 データやシステムに関するリスクはサイバー攻撃だけではない。アップデータの営業部で部長 兼 マーケティングマネージャーを務める小林秀和氏は「自宅など社外で仕事をする時間が増え、常にサイバー攻撃やPCの紛失・盗難のリスクが付きまとっています。さらに自宅やオフィスが豪雨の被害を受け、浸水などによりPCが流されたり破損したりするリスクも高くなっています。河川に近くなくても線状降水帯地域に指定されている地域に自宅やオフィスがあり、オフィスでファイルサーバーやNASを運用している場合はデータ保護などの対策が不可欠です」と説明する。そして毎年豪雨が発生するシーズンになると問い合わせや見積依頼が増えるという。

 また岡田氏も「豪雨の際にサーバールームが浸水して本番環境が物理的に壊れてしまう被害が発生しています。これはサーバーやストレージの機器が重いため、サーバールームをオフィスの1階や半地下などに設置するケースが多いからです」と指摘する。こうしたことからクラウドを利用したDRの仕組みにも関心が高まっているという。

 そこでデータをセキュアに保存できるクラウドストレージサービスとして、管理が容易でコストを抑えた運用が可能になる、オブジェクトストレージサービスがある。特に最近注目を集めているのが、一般的なオブジェクトストレージサービスの最大で5分の1程度の価格で導入できる「Wasabi Hot Cloud Storage」だ。

 Wasabi Hot Cloud Storageは独自のアーキテクチャの採用と、ハードウェアおよびソフトウェアの徹底した効率化などによりコストを削減して低価格を実現している。この成果はパフォーマンスの向上にもつながっている。

 さらに競合他社のオブジェクトストレージサービスに対応した既存のアプリケーションとの互換性を持ち、350社以上のテクニカルアライアンスパートナーと連携してデータのバックアップ、ディザスタリカバリー、コンテンツデリバリーなどに対応する。サービスを提供するデータセンターはグローバルに展開されており、日本では東京と大阪にリージョンがある。

要望や将来の展開を見据えて三つの提案
デジタルテクノロジーの注力サービス

 デジタルテクノロジーではデータ保護に関して主に三つのソリューションを提供している。それは「Veeam Backup & Replication」(以下、Veeam)と「Zerto Virtual Replication」(以下、ゼルト)、「Druva」だ。

 Veeamは物理、仮想、パブリッククラウドなどマルチインフラストラクチャでデータを確実に保護でき、各種環境で作成したバックアップデータを各種環境に復元することができる。復元についても、検証環境が用意されており、バックアップデータでシステムを起動できるかを実際に確認した上で、本番環境にデータを復元できる。このほかシステム単位だけでなくファイル単位やアイテム単位で復元でき、必要なデータを素早く復元できる。

 ゼルトは常時差分レプリケーションを利用した仮想マシンレプリケーションツールだ。例えば運用中のオンプレミスのシステムから、移行先のオンプレミスあるいはクラウドへ現行システムを稼働させたままレプリケーションを実施でき、事前に移行先で検証もできるなど、新旧環境の切り替えがスピーディーに行える。AWSのAmazon S3やAzureなどのパブリッククラウドをDRサイトに利用することも可能だ。

 岡田氏は「既存環境から仮想基盤やVDI、クラウドへの移行、統合にはゼルトが、バックアップやDRにはVeeamが適しており、お客さまの要望や将来の展開を見据えて提案しています」と説明する。

 そしてDruvaはクラウドに直接バックアップするSaaS型のソリューションだ。サービスはAmazon S3上で構築されており、ユーザーはAWSと契約することなくAmazon S3を利用したDruvaのサービスが利用できる。Druvaには物理および仮想サーバー、クラウド、データベースやNASのデータを保護する「Druva Phoenix」や、PCやスマートフォンなどのエンドポイントのデータと、Microsoft 365やGoogle WorkspaceなどのSaaSのデータを保護する「Druva inSync」などがラインアップする。

軽い動作とシンプルなサービス
アップデータの二つの注力サービス

アップデータ
営業部
部長 兼 マーケティングマネージャー
小林秀和 氏

 アップデータではデータ保護ソリューションとして二つのサービスをアピールしている。それは「Air Back」と「Shadow Desktop」だ。Air Backは新規作成や更新されたファイルだけをリアルタイムにバックアップするため手元のPCの動作が鈍くなることなく、またネットワークやバックアップ先の環境に負荷をかけることなく軽快かつ簡単な操作で利用できるバックアップソリューションだ。なおHDD全体のバックアップも可能だ。

 Air Backには同Standard版、Cloud版、Premium版などがラインアップする。中でもCloud版の「Air Back Cloud for PC」はAir Back の基本機能に加えて、ローカルとクラウドの両方のストレージにハイブリッドでバックアップできる。また端末1台当たり月額600円で利用でき、5年契約の場合は2.5年分、つまり半額で利用できるコストパフォーマンスの高さも魅力だ。

 Air Back CloudシリーズとAir Back Premiumシリーズで利用できるクラウドバックアップ機能は、バックアップ領域を非共有領域にする独自の機能を持つ。アップデータの小林氏は「ランサムウェアはPCのストレージ領域のみならず、共有領域のファイルまで暗号化する手口ですので、バックアップ先を共有領域に指定している場合は感染の恐れがあります。しかし本シリーズの製品でバックアップすれば、バックアップデータのランサムウェア感染を限りなく低く抑えることができます」とアピールする。

 そしてShadow Desktopは「データレスクライアント」という新しいサービスを提案する。OSやアプリケーションなどのデスクトップ環境は手元のPCのローカルで稼働し、データのみをクラウドストレージの見えない領域に保管する、こちらもローカルとクラウドをハイブリッドで活用したサービスだ。小林氏は「VDIと比較して低コストでセキュアなデスクトップ環境が利用でき、運用管理の負担もありません」とアピールする。

 これらAir BackとShadow DesktopはMicrosoft 365やオブジェクトストレージと連携している。小林氏は「Microsoft 365のOneDriveで使用する1TBのバックアップ先として効率的に利用したり、セキュリティが強固なオブジェクトストレージと連携したりすることで、お客さまのさまざまなバックアップニーズに対応していきます」と強調する。