FAQの刷新で問い合わせ対応を省力化
~市民からの受電数を削減した愛媛県松山市役所~

市民の疑問を解決に導くためのツールとして、FAQ(よくある質問と回答)システムが問い合わせ対応業務に役立てられている。愛媛県の松山市役所においても独自開発のFAQシステムを約10年にわたり活用していた。システムの老朽化が進んだことやユーザビリティが悪く市民が使いにくいといった課題が生じ、それらの解決を図るため、独自システムの刷新を実施した。そこで新たに導入したのが、オウケイウェイヴが提供するFAQシステム「OKBIZ. for FAQ」だ。

必要な情報にたどり着けない

 多くの自治体で苦慮しているのが、市民から寄せられる問い合わせへの対応ではないだろうか。愛媛県の松山市役所は、2006年に各課で行っていた電話対応業務を一本化するため「松山市コールセンター」を開設し、年間約10万件の問い合わせに対応している。そうした問い合わせ対応業務をさらに円滑に進めるため、松山市コールセンターの開設と併せて導入したのが庁内で独自開発したFAQシステムだった。

「問い合わせは類似した内容の質問も多く、松山市コールセンター開設以前から問い合わせに対応する職員への業務負担がかかっていました。FAQシステムを導入して、問題の自己解決を促していくことで、市役所へ問い合わせを行う市民と電話対応にあたる職員の負担を軽減できると考えました。しかし、実際に運用してみると電話での問い合わせが増加し、職員の業務量も逼迫してしまったのです」と松山市役所 市民部 市民生活課の担当者は振り返る。

 要因としてFAQページのユーザビリティの問題が挙げられた。当時登録していたFAQは、約1,400件以上(現在は2021年2月末時点で約1,700件)あったにもかかわらず、検索機能がないため、市民は膨大な情報を1件ずつ調べなければならなかった。求める情報になかなかたどり着けず、結果として電話での問い合わせの増加につながっていることが明らかとなったのだ。

「検索履歴を用いたアクセス状況の確認や分析ができないため、市民のニーズに見合ったFAQが登録されているのかといった把握も難しい状況でした。FAQページの管理負担や独自開発のシステムによる属人化の懸念もあり、FAQシステムの刷新を検討しました」(担当者)

検索機能で問い合わせを削減

 従来のFAQシステムの課題解決のため、2018年の2月から導入したのがオウケイウェイヴのFAQシステム「OKBIZ. for FAQ」である。

 OKBIZ. for FAQは、FAQの作成から公開、分析まで一つのプラットフォームで実現できるシステムだ。「システム保守の負担を軽減するため、クラウドサービスによる提供であることや対応履歴の管理の仕組みもセットになっていることが選定のポイントです。FAQの作成・修正・削除が容易にできるといった誰でも利用しやすい操作性や、セキュリティの要件を高く備えた製品であることも導入の決め手となりました」と担当者は説明する。

 OKBIZ. for FAQの導入により従来のFAQページと比較し、ユーザビリティも向上している。「最大の変化は検索機能が利用可能になったことです。フリーワードでの検索、カテゴリーを絞り込んだ検索や、担当部局・担当課で絞り込んだ検索ができるようになりました。求める情報を取得しやすく、利便性が高まりました。スマートフォンにも対応しています」(担当者)

 松山市役所ではOKBIZ. for FAQを導入したことで次のような効果を得られている。

■OKBIZ. for FAQの導入効果

・繁忙期の電話の問い合わせが10%減少
 入学式や卒業式に関する問い合わせが急増する繁忙期※の受電数が約1,000件(前年比約10%)減少。
 ※2018年3月と2019年3月の比較

・問い合わせに対する回答の標準化と効率化
 問い合わせ対応時に職員がFAQを参照することで市民に対する回答を統一。問い合わせにかかっていた時間の短縮につなげた。

・FAQのレポート結果からニーズを収集
 検索語句から市民のニーズを把握し、FAQのアクセス数から情報ニーズへの貢献度が計れるようになった。

 電話の問い合わせ件数が減少したことは、対応する職員の業務負荷の軽減にもつながったという。「OKBIZ. for FAQでは、FAQページのアクセス数や、検索履歴、0件ヒット(検索した結果、1件もFAQがヒットしなかったワード)といったレポート情報も簡単に確認できます。市民が求める情報をリアルタイムで把握し、得た情報を市民の声として各課へ共有することで市民サービスの向上に役立てています」と担当者は話す。

FAQの充実と利便性の向上を図る

松山市役所では、2020年5月に「松山市LINE公式アカウント」を開設し、SNSを活用した市政の情報発信を強化している。LINEのメニュー画面に「よくある質問(FAQ)」のボタンを配置したことでFAQの利用頻度もさらに高まっているという。

「市民サービスの向上や業務の効率化が求められる中、市民からの問い合わせをいかに的確に対応するかという点で苦心している自治体も多いでしょう。当市はFAQシステムを改善し、業務の効率化と市民サービスの向上に成功しました。今後も市民がFAQをさらに快適に利用できるよう、利便性の向上に努めると同時に、市民に寄り添ったまちづくりに注力していきたいと考えています」と担当者は最後に語った。