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クアルコム、マイクロソフト、NVIDIAのPCプラットフォーム戦略

クアルコム、マイクロソフト、NVIDIAのPCプラットフォーム戦略

2021年01月14日更新

Qualcomm [Arm系]

スマートフォンなどのモバイルデバイス向けのプラットフォームとして「Snapdragon」を提供してきたクアルコムは、携帯性や通信性能の優位性を生かしたPC向けのプラットフォームの展開を開始している。それが、「Snapdragon Compute Platforms」。以前は、「Snapdragon 835/850」という名称で展開されてきたラインだ。

「ビジネス環境が大きく変化する中で、クラウドを主体にしたリモート接続環境の整備が進められています。LTEや5Gなどのネットワークとの接続に優位性を持つ当社のSnapdragonは、ノートPCとの親和性が高く、PC市場に対する高いオポチュニティが期待できます」(クアルコムCDMAテクノロジーズ ディレクター マーケティング 泉 宏志氏)

Snapdragon Compute Platformsの魅力は、さまざまな機能が一つにインテグレートされているところにある。ソフトウェアの介在なしにハードウェアだけで多様な処理が可能なため、高いパフォーマンスと低消費電力を両立できるのだ。Arm系のプロセッサーへのアプリケーション側の対応が進行・拡大する中、「アプリケーションのカバレッジも広がってきているので、Snapdragon Compute Platformsを採用するPCの商機も確実に増えていくはずです」と泉氏は話す。

Snapdragon Compute Platformsは、最上位の8cx、メインストリームの8c、エントリークラスの7cという三つのラインアップがある。OSはWindows 10やChromeに対応する。各プラットフォームを搭載したPCは、グローバルではすでに販売が開始されており、国内ではSnapdragon 835を採用したレノボの「Miix 630」などが提供されていたが、今年からさらに発表が続く予定だ。

Snapdragon Compute Platformsを搭載したPCは、新たな働き方を実現する「Always On,Always Connected PC」として、新しい波を起こしていきそうだ。

「PCの新たなユーザー体験を提供できるSnapdragon Compute Platformsは、ゲームチェンジャーになれる存在だと考えています。」
―クアルコムCDMAテクノロジーズ ディレクター マーケティング 泉 宏志氏

snapdragon compute platforms

三つのラインアップがあるSnapdragon Compute Platforms。最上位の8cxは5Gに対応した第2世代の「Snapdragon 8cx Gen 2 5G Compute Platform」が最新。エントリー向けの7cシリーズは、教育向けやシンクライアント向けデバイスへの搭載が増えてきている状況だ。

2020年12月、シャープとDynabookはSnapdragon 7c Compute Platformを採用し、LTEを内蔵した「Dynabook Chromebook C1」を発表した。GIGAスクール構想の学習者用端末の標準仕様に準拠している。Snapdragon 7c Compute Platformによって、高いパフォーマンスと長時間のバッテリー駆動を実現させているという。発売は2021年2月以降の予定。

Microsoft [Arm系]

2020年の初頭にマイクロソフトから発売されたのが13インチの2in1 PC「Surface Pro X」だ。従来までのSurfaceシリーズと大きく異なるのは、クアルコムと共同で開発したArmベースの「Microsoft SQ 1」をCPUに採用した点にある。10月には処理能力を5%程向上させた「Microsoft SQ 2」の搭載モデルも発表した。いずれもOSにはArm版のWindows 10 Proが採用されている。

「Surface Pro Xはこれからの未来を見つめ、ワンランク進むために開発された戦略的な製品です。実現のために必要だったのがArmベースのプロセッサーでした」と、日本マイクロソフト マーケティング&オペレーションズ部門 Surfaceビジネス本部 シニアプロダクトマネージャーの白木智幸氏は説明する。

クラウドファーストで、社内・社外を問わずいつでもネットワークにアクセスしながら仕事をする環境が整備されていく中、2in1 PCに求められる性能をSurface Pro Xは追求した。Armベースのプロセッサーで省電力性能を最大限に突き詰めたことで、LTEの常時接続を実現しつつ、Surface Proシリーズ最長の15時間のバッテリー駆動を可能にしている。本体はファンレス設計だ。「ワット当たりの処理能力にこだわりました」(日本マイクロソフト クラウド&ソリューション統括本部 モダンワークプレイス営業部 エンタープライズ営業推進 担当部長 毛利 健氏)

アプリケーションはArm向けに開発されているものはネイティブで、x86向けに開発されているものは基本的にはエミュレーションで実行される。2021年はアプリケーションのArm対応の加速が予測されるため、ネイティブで利用できるアプリケーションは増えていくだろう。もちろんMicrosoft 365などは現在でも快適に使用できる。

アプリケーションの互換性の問題について日本マイクロソフトでは「App Assure」という無償のサポートサービスで対応している。このサービスはエンドユーザーだけでなくISVなども利用できるため、App Assureを介してサードパーティのアプリケーションのArm対応も促していくという。

「Arm系のプロセッサーを搭載したSurface Pro Xは、クラウドファーストの環境に最適な2in1 PCです。」
―日本マイクロソフト マーケティング&オペレーションズ部門 Surfaceビジネス本部 シニアプロダクトマネージャー 白木智幸氏

「Windows Autopilotを用いた展開やIntuneなどによる管理といったクラウド型の運用への移行をSurface Pro Xで促せます。」
―日本マイクロソフト クラウド&ソリューション統括本部 モダンワークプレイス営業部 エンタープライズ営業推進 担当部長 毛利 健氏

SQ1,SQ2

Surface Pro Xの特長
■SQ 1、SQ 2を採用:最大16GBのRAMと512GBのストレージを搭載し、薄型のフォームファクターでPC並みのパワーを発揮。
■どこにいても瞬時につながる:安全で確実な超高速4G+LTEと、スタジオマイクを搭載したHD Webカメラ。
■最大15時間の長時間バッテリー:約1時間で80%まで急速充電。
■ディスプレイ:極薄ベゼルの鮮明な13インチディスプレイ。
■Eye Contact機能:AIを活用して、ビデオ通話中のユーザーの視線がカメラを向くように自動調整。
■薄型軽量:最薄部7.3mmで本体重量は774g。

NVIDIA [Arm買収]

ディスクリート(単体)GPU市場のリーダーであり、Armの買収でも業界を驚かせたNVIDIAは、GPUの性能を最大限に引き出すクリエイター向けのプラットフォーム「NVIDIA Studio」を提供している。NVIDIA Studioは、NVIDIA RTX GPUとともに、専用のSDK、Studioドライバーで構成されたNVIDIA Studio Stackが組み合わされる。NVIDIA Studioの基準を満たすノートPCやデスクトップPCは「Quadro RTX 5000/4000/3000」や「GeForce RTX 30シリーズ/20シリーズ」が搭載され、ビデオ編集から3Dレンダリングに至るコンテンツ制作を加速させる。

最新のGeForce RTX 30シリーズでは、第2世代RTコアや最大24GBのグラフィックスメモリーの搭載による高速処理、AIを活用した性能向上などを実現しているが、NVIDIA Studioに対応した製品は、そうした能力をフルに発揮させる環境を実現するのだ。

「デジタルコンテンツが爆発的に増加する中で、クリエイターのパフォーマンスの向上を支援するためにNVIDIA Studioというプラットフォームを作りました。クリエイターが求める要件に合致した環境を、ハードウェアメーカーやソフトウェアメーカーと連携して提供していくのが目的です」(エヌビディア テクニカルマーケティングマネージャー 澤井理紀氏)

NVIDIA Studioに対応したデスクトップPCやノートPCはグローバルで82のモデルが発売されている。RTXに最適化されたアプリケーションも、アドビやオートデスクのものを含めて50以上存在する。クリエイターのための大きなエコシステムがNVIDIAとNVIDIA Studioを中心に構築されつつある。

「国内でもNVIDIA Studioの認知度を向上させて、クリエイターの作業環境の強化に貢献していきたいですね。」
―エヌビディア テクニカルマーケティングマネージャー 澤井理紀氏

NVIDIA Studio

NVIDIA Studioに対応したノートPC。上が日本HPの15.6インチ「HP ENVY 15」、下がデル・テクノロジーズの17インチ「New XPS 17(9700)」。いずれもNVIDIA Geforce RTX 2060を搭載している。

提供:NVIDIA

AIによる顔認識などを活用したビデオ編集の速度も高速化。写真はDaVinci Resolve 16による編集作業の様子。

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