NTTソノリティは、NTTの音響技術を活用した、新しい“聞こえ”で毎日を高めるブランド「cocoe」を設立した。
そしてcocoeの第一弾となる製品が、オープンイヤー型の集音器「cocoe Ear」だ。
周囲の音を増幅する電子機器である集音器は、日常の中で感じるちょっとした音の聞こえづらさを補ってくれる。
聞こえづらさによる社会的孤立を防ぎ、誰もが自分らしく会話や生活を楽しめる社会を目指して誕生した製品とは、一体どのようなものだろうか。
text by 田中 亘

NTTソノリティ
オープンイヤー型集音器 cocoe Ear

誰もがあらがえない聴覚の衰え

NTTソノリティ
製品事業部 プロダクトグループ
兼 音声DX事業部 プロダクトグループ
担当部長
中野達也 氏

 どんなに気を付けて生活を送っていても、「聞こえづらくなる」という聴覚の衰えには誰もがあらがえない。そんな不安や生活の不便さをサポートする電子機器として、集音器が注目されている。管理医療機器に分類される補聴器に対して、集音器は誰でも自由に購入が可能な一般家電の分類になっている。

 NTTソノリティ 製品事業部 プロダクトグループ 兼 音声DX事業部 プロダクトグループ 担当部長 中野達也氏は、製品開発の背景を次のように話す。「当社は『nwm』ブランドでイヤホンを開発しています。nwmではオープンイヤー型のイヤホンをラインアップしているのですが、このオープンイヤーの特長を生かしつつ、聞こえをサポートする商品が作れないかという話が社内で挙がりました。また私自身、前職の会社で補聴器の開発に携わっていたころから、『耳をふさがない補聴器か集音器を作りたい』といった気持ちを持っていました。耳栓のような耳をふさぐものを使うと、自分の声がこもって聞こえてしまいます。加えて、耳をふさがない形状の方が通気性も良くて快適です。そのため、聞こえの課題を感じ始めた方にとっては、耳をふさがない方が合理的だと考えていました。そうした流れを踏まえて、オープンイヤー型集音器の開発がスタートしました」

ハウリングと遅延の低減を実現

 その一方で、オープンイヤー型集音器が製品化されてこなかった背景には、開発の難しさがあった。「集音器には、耳をふさぐ形状にしなければならなかった技術的な理由が二つあります。それはハウリングとレイテンシーです」(中野氏)

 一つ目の課題であるハウリングとは、スピーカーから出た音がマイクに戻ってきてしまい、それが永遠に増幅されることで「ピー」といった不快な音が発生する現象だ。耳をふさぐ形状の集音器では音漏れが防げるため、音のフィードバックを防止できる。しかしオープンイヤー型はスピーカーも開放されているため、マイクが音を拾うリスクがある。

 この問題を解決するために、同社が開発したオープンイヤー型の集音器「cocoe Ear」では、NTTの特許技術「パーソナライズドサウンドゾーン」(PSZ)技術を活用している。PSZ技術とは、音波(正相)に対し逆位相の音波を重ね合わせることで、音が打ち消し合う原理を応用し、周囲への音漏れを抑える技術だ。nwmブランドのイヤホンでも使われているこの技術によって、オープンイヤー型でもハウリングが起きにくくなるようにしている。

 二つ目の課題であるレイテンシーとは、マイクで拾った音がスピーカーを鳴らすまでの遅延時間だ。耳をふさぐ形状の集音器だと、増幅された後の音しか聞こえないため、遅延にほぼ気付かない。しかしオープンイヤー型は耳が解放されているので、増幅される前の音も聞こえてしまうのだ。

 これを解決するために、cocoe Earは高性能なチップを採用し、レイテンシーを大幅に低減した。約0.0025秒の低遅延音声処理により、自然な音質を実現している。

専用のケースに入れるだけで本体を充電可能だ。同梱の専用ストラップを付けたままでも、問題なく充電が行える。

本体で完結するシンプルな操作

 cocoe Earは、オープンイヤー型では一般的なクリップ式とは異なり、耳に掛ける装着形式を採用している。中野氏は、耳掛け型にした理由を次のように語る。「まずコンセプトとして、スマートフォンと接続して設定する必要がなく、ユーザーがシンプルに使えるようにしたいというものがありました。シンプルに使えるようにするには、本体に物理ボタンが必要でした。またクリップ型にするとマイクが後ろを向いてしまい、後ろの音を拾いやすくなってしまう問題がありました。そうしたコンセプトや課題を踏まえ、物理ボタンの実装とマイクの指向性を前向きにするには、耳掛け型が最適だという結論になりました」

 実際にcocoe Earはスマートフォンがなくても、本体のみで集音モードやTV接続の切り替え、音量調整といった基本的な操作が行える。cocoe Earを耳に装着してメインボタンを押すだけで、集音機能を使い始められるのだ。本体にはボリュームボタンも付いているため、ユーザー自身で最適な音量に調整できる。

 1回の充電で8時間使えるため、日常生活でも快適な聞こえを体験可能だ。中野氏は「cocoe Earの使用によって、聞くことが楽になったという声をビジネスマンから聞いています」と話す。

 さらにcocoe Earは、紛失や落下防止のために、本体に付けられるストラップが同梱されている。こうした工夫も含めて、cocoe Earは聞こえづらさに悩む人々の生活に寄り添い、手軽さと快適さを兼ね備えた新しい選択肢として、ユーザーのQOL向上に大きく貢献していく。