Top Interview
米国本社も期待する日本のDX のポテンシャル
テクノロジーとビジネスの両面で成長をけん引

IDC Japan の調査結果では昨年度の国内x86 サーバー市場においてデル・テクノロジーズがトップシェアを獲得した。その前年度の出荷台数は4 位、同じく出荷金額は3 位だったので大きな躍進と言える。また日経コンピュータの顧客満足度調査2021-2022 においてもデスクトップPC 部門、PC サーバー部門、ストレージ部門の3 部門で首位を、同パートナー満足度調査2022 ではサーバー部門と法人PC 部門で首位を獲得している。日本市場でのビジネスの陣頭指揮を執る大塚俊彦氏に、同社の強さについて話を伺った。

顧客の四つの変革を支援
ここにビジネスチャンスがある

デル・テクノロジーズ
代表取締役社長
大塚俊彦 氏

編集部■国内x86 サーバー市場でトップシェアを獲得するなど実績、評価ともに好調です。これまで大塚社長が陣頭指揮を執って推し進めてきた施策の成果と言えますね。

大塚氏(以下、敬称略)■まずは日ごろよりお世話になっておりますお客さま、パートナーさま、そしてダイワボウ情報システム(DIS)さまに深く感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 しかしこれは一つの通過点と言いますか、常に改善、前進を続けていくことをいつも社員と会話しています。特にお客さま、パートナーさまファーストの観点から、これまで推進してきた施策を一層強化していきます。

 世界中がコロナ禍に直面し、お客さまがニューノーマル(新常態)時代を勝ち抜くために取り組む変革を支える基盤として、製品やサービスを提供することで市場平均を上回る成長を目指すことを以前(2021年9 月)にお話しさせていただきました。

 お客さまが取り組む変革とは、大きく四つあります。一つ目はコスト競争力の高いIT 基盤の構築です。ビジネスの環境は不透明感が増しており、IT 基盤のコストを抑えたいと考えるお客さまが多くいらっしゃいます。当社は運用業務の自動化で管理コストを削減できることを提案するとともに、運用業務の標準化支援コンサルティングや自動化に対応した製品を提案するなどしてお客さまのご要望にお応えしています。

 二つ目は働き方改革です。コロナ禍以降、在宅勤務が広く浸透しましたが、その際の生産性をいかに高めるかがお客さまの共通の課題となっています。生産性を向上させるには社員が自宅でもオフィスと同じように働ける環境を整えることが求められますので、そうした環境を実現するノートPC や通信機器、セキュリティ製品などを提案しています。

 三つ目はデジタル技術を生かした新たなビジネスを対象に、データを収益源にすることです。例えば最適な交通手段を提案する「MaaS」など、ビッグデータを活用したビジネスが次々と生まれており、それらに取り組むお客さまに向けて最適なストレージを提案しています。

 四つ目が遠隔医療や電子政府といったソーシャルインフラの整備です。非対面でサービスを提供するための基盤の整備を支援しています。これらに加えて力を入れているのが、サイバーセキュリティへの対応強化です。この五つの領域でお客さまにしっかりと寄り添って、お客さまの変革に伴走させていただいています。

編集部■顧客の変革を加速させる独自の工夫もされているのではないでしょうか。

大塚■先ほど伴走という言葉を使いましたが、共に創り出す共創が大切だと考えています。デジタル変革の歩みというのは1 社だけでは何も作り上げられません。ですから、お客さまとの共創、パートナーさまとの共創、場合によっては社会との共創もあります。実際にお客さま、パートナーさまと共創させていただいている中で、デジタル変革が一層加速していることを実感しています。

 一つひとつ見ていきますと、IT 基盤においてはマルチクラウドが大前提となっており、多くのお客さまがその環境を有効に活用したいと前向きに考えています。ところが現時点ではクラウドが個別に使われているケースが多く、オンプレミスも含めてサイロ化しているIT 基盤をいかに統合していくかにビジネスチャンスがあるとみています。さらにエッジや5G の活用についても機運が高まっています。

 それから働き方改革において、ハイブリッドワークの高度化です。これまでリモートでできなかった業務をリモートで行ったり、リモートワーク、ハイブリッドワークでやっている業務の生産性や創造性を高めたりすることに取り組むお客さまが増えており、コラボレーションを高度化するソリューションのニーズが高まっています。

 データ活用については、まさにDX そのものであり、ど真ん中のビジネスチャンスとなります。当社はこの2 年間ほど、中堅企業のお客さまのDX を支援する「中堅企業DX 支援プログラム」を提供してきました。これは奈良先端科学技術大学院大学さまと一緒に人材の育成からプロジェクトの定義、実施まで“ 伴走” させていただき、それを共にやり切って成果を得るというものです。すでにいくつかの事例もあり、今後も知見の蓄積を続けてお客さまが成果を得られるDX の取り組み方を支援し続けていきたいと考えています。

 そしてサイバーセキュリティの重要性はご存じの通りです。当社はエンドツーエンドでソリューションを提供していますが、特にデータを守り切ることを重視しています。データを完全に隔離して保護し、有事の際にはそれを円滑かつ迅速に復元してビジネスを止めない仕組みづくりから支援をしています。

DX は人材育成から進める
as a Service でIT 需要を喚起

編集部■ DX の効果を高めるにはサプライチェーンの全体で取り組みを進める必要があると思いますが、大手企業の取引先の中堅中小企業ではDX への取り組みが遅れているとの指摘も聞かれます。

大塚■我々もこの2 年間の中堅企業DX支援プログラムでの取り組みを通じて、ご指摘の課題を実感しています。その課題を改善していくには、まずはDX を推進する人材の育成に取り組むべきでしょう。中堅企業DX 支援プログラムにおいて昨年は参画パートナーさまが増え、さまざまなパートナーさまのご支援をいただきながら中堅のお客さまのDX 人材育成を支援しています。

 このプログラムのように実際に仕組みやソリューションを作って実証し、どれだけの効果が出ているのかを示していけば、DX への取り組みは加速すると前向きに捉えています。まずはDX 人材の育成でパートナーさまと共にお役に立たせていただき、具体的な取り組みへと伴走を進めて着実にお客さまのDX を前進させていきたいと考えています。

 ただし地方のお客さま、中堅のお客さまのみならず、大企業や公共のお客さまも含めて、全てにおいて価値を訴求する必要があります。価値というのはテクノロジーのバリューを訴えるだけではなくて、お客さまにとってDX を推進するための製品やサービスを導入、利用することで何が変わるのか、マルチクラウドを採用してそれを推進すると何が変わっていくのかを、きちんと説明して理解していただくことが大切です。

 お客さまにとっての価値はビジネススピードを上げていく、トータルコストを抑える、堅牢性を高めてビジネスの継続性を担保する、マーケットへの商品の投入を早めるなど、いろいろなビジネスバリューがあります。こうしたお客さまの課題や要望を的確にくみ取り、テクノロジーバリューとビジネスバリューの両方を訴求できるチームを、パートナーさまと一緒に作り上げて、一緒に成長していきたいと考えています。

編集部■日本でもハイブリッドクラウドを採用する企業が増えていますが、それに伴ってIT 基盤にサービス化が求められるようになっています。デル・テクノロジーズでは「Dell Technologies APEX」(以下、APEX)でこうした要望に応えていますが、APEX ビジネスにおけるパートナーとの連携について教えてください。

大塚■ APEX は大きく五つの領域でサービスを提供しています。まずお客さまが利用しているIT リソースを集中管理できる「APEX Console」、そしてIT 基盤をサービス化する「APEX Infrastructure Services」、ハイブリッドクラウドでのワークロードの配置を最適化できる「APEX Cloud Services」、お客さまそれぞれの課題を解決する「APEX Custom Solutions」、そしてパートナーさまと連携した「APEX Partnership」となります。

 当社からお客さまにさまざまな価値を訴求するとともに、パートナーさまがお持ちのさまざまなチャネルやサービス、ソリューションを組み合わせて、as a Service モデルにおいてもエコシステムを一緒に形成していくことが今後の成長に欠かせない重要な取り組みであると認識しています。

 お客さまがIT を導入する際に従来の購入に加えて、as a Service モデルの選択を適材適所で採用いただきたいと考えています。今後、APEX も推進していきますが、お客さまにとってはIT を導入する際の選択肢の一つです。今年は日本市場におけるAPEX 元年として、新しいサービスの展開も始まります。

新オフィスで共創の場を提供
コラボレーションを拡大

編集部■ 2022 年、2023 年に向けて、日本市場でのビジネス展開について教えてください。

大塚■今後、デジタル変革の流れがさらに加速していくことは間違いありません。お客さまにおかれましてもそこを強化していかなければ競争力を継続して担保することはできませんし、その取り組みは日本の社会がより発展していくことにもつながります。こうした日本の企業のお客さまや社会にしっかりと貢献してくことが、当社のビジネス展開の中核となります。

 当社はグローバルのパーパスとして「We create technologies that drive human progress」を掲げています。「我々は人類の進歩を牽引するテクノロジーを創出する」という意味で、テクノロジープレイヤーとしてのミッションです。ただしテクノロジーを創出するだけではなく、生み出したテクノロジーをお客さまにとっての価値に変えて提案し、お客さまに寄り添った形で価値を提供することを目指しています。

 今年5 月にラスベガスで開催された「Dell Technologies World 2022」の基調講演で、当社のCEOであるマイケル・デルが最後に締めくくった言葉が「トラスト」でした。お客さまにテクノロジーを創出して提供していくとともに、しっかりと信頼を得られる活動をして、真のパートナーとしてお客さまのビジネスと社会に貢献していくという決意を改めて伝えています。

 当社の米国本社は日本市場を非常に魅力的な市場であると評価しており、日本のDX、デジタル変革の潜在的な可能性はグローバルで比較しても非常に大きいとみています。なぜなら日本の企業のお客さまの持つ技術、サービスの競争力が高いからです。

 IT のみならず業務の現場での知見やノウハウをデジタルプラットフォームに載せてその価値を生かすことで、日本のDX は優れた成果を生み出すと期待しており、米国本社からさまざまな分野の優れた人材が来日して、お客さまを直接支援することもしています。

 昨年9 月には東京の本社を大手町に移転しましたが、このオフィスをお客さまやパートナーさまとの共創の場として5G やAI、マシンラーニングなどの先端テクノロジーを体験し、共同研究できるラボを作りました。こうした投資も日本市場の成長への期待を表しています。今後はリアルとオンラインのハイブリッドで、お客さまやパートナーさまと共にイノベーションを推し進め、共創を拡大していきたいと考えています。