アドビは2026年3月27日、同社の生成AIである「Adobe Firefly」(以下、Firefly)を中心としたAI関連の最新情報に関する記者説明会を開催した。クリエイティブに特化した生成AIのFireflyをはじめ、ワークフローを円滑化し、アドビの多様なアプリケーションのインフラとなりつつある同社のAI技術を見ていこう。
三つの生成AIモデルで
多様なアイデアを創出

アドビはAI時代において「Empowering Everyone to Create」という新しいミッションの下、あらゆる人の創造活動を支援していく方針を打ち出している。そうした中、同社の製品全てのインフラになっているのがAIプラットフォームであり、そのエンジンとなっているのがアドビ独自の生成AIだ。
アドビ マーケティングマネージャー 轟 啓介氏は「AI技術が進化する中で、これからのプロのクリエイターは、作られたアイデアの品質やビジョンのコントロールを行うことが求められています。アドビはAIを単なる自動化ツールとしてではなく、クリエイターの皆さまのビジョンを実現する最高の相棒、つまり優秀なアシスタントとなるよう、開発を進めています」と語る。
プロのクリエイターの相棒となる生成AIを目指し、Fireflyでは「アドビモデル」「パートナーモデル」「ユーザーモデル」という三つの生成AIモデル戦略を打ち出している。一つ目のアドビモデルは画像のみならず動画や、ベクターデータ、デザイン、音声などの生成ができ、商用利用も可能だ。パートナーモデルは他社の生成AIモデルを利用できるものだ。「Gemini 3.1」や「GPT Image 1.5」など、サードパーティー製の画像生成AIモデルを利用し、より多様なアイデアを試せる。
そして独自のアセットを学習させたカスタムモデルを作成できるのがユーザーモデルだ。「Adobe Firefly カスタムモデル」として3月19日にリリース(パブリックベータ版)しており、ユーザーや企業が独自のアセットを追加学習させることで、スタイル学習、製品学習、一貫性のあるマーケティング素材作成が可能になる。学習データはほかのモデルに使用されないよう設計されているため、企業の機密保持も確保されている。ユーザーはFireflyのUIの中で、この三つのモデルを用途に応じて切り替えて使うことが可能だ。
Fireflyには、生成AIを活用してムードボードを作成できる「Fireflyボード」という機能が搭載されている。ムードボードとはデザインのコンセプトなどを共有したり、デザインの初期コンセプトを固めたりするためのブレインストーミングに活用されるビジュアルコンセプトだ。発表会ではこのFireflyボードを日常的に活用しているアートディレクター/デザイナーのコネクリ氏がゲストスピーカーとして登壇し、架空のコーヒーブランドのロゴを作成する過程を通じて、Fireflyボードを活用するイメージを紹介した。



AIアシスタントによる
画像編集が可能に
「Adobe Creative Cloud」からは、「Adobe Photoshop」(以下、Photoshop)や「Adobe Illustrator」(以下、Illustrator)の機能強化が紹介された。アドビ マーケティングマネージャー 岩本 崇氏は「PhotoshopのWeb版およびモバイル版には、AIアシスタント機能がパブリックベータ版としてすでに提供されています。テキストや音声のプロンプトを伝えるだけで、不要物の削除や背景変更、色調整などの編集を自動で実行可能です」と語り、実際にプロンプトによる指示のみで画像が編集できる様子をデモンストレーションで紹介した。
また、Illustratorに新たに搭載された「ターンテーブル」機能や、Photoshopに新たに搭載された「オブジェクトを回転」する機能(ベータ版)にもFireflyのAI技術が活用されており、多様なバリエーションの画像やイラストが生成可能になっている。
次に「Adobe Acrobat」(以下、Acrobat)の進化の方向性について説明したのは、アドビ カスタマーマーケティングマネージャー 原 渓太氏。原氏は「ビジネスシーンのデジタライズが進んでいます。皆さまもデジタルの資料を扱う場面が非常に多くなっているのではないでしょうか。しかし、これはポジティブな側面だけでなく、ビジネスパーソンの負担の増加にもつながっています」と語る。実際、OpenTextの調査によるとグローバルで80%のナレッジワーカーが「情報量が多すぎる」と感じているという。こうした負担に対して、生成AIへの期待が高まる一方で、誤った内容の解答を生成することに対する懸念や、機密情報を生成AIに読み込ませることに対するセキュリティ上の懸念を抱えるビジネスパーソンも少なくない。


多量のデジタル文書業務を
AIが大幅に効率化する
Acrobatに搭載されているAIは、これらの懸念に対応するため、複数資料の横断分析、引用元の明示、学習データ非使用などの特長を有している。発表会では英語契約書の更新確認を例に、AcrobatのAI機能「PDFスペース」の実用性が紹介された。
契約書をドラッグ&ドロップするだけで重要変更点が抽出され、支払い条件が30日から60日に変更されていることが自動検出されることや、留意点をまとめた内部承認用資料の作成から部長への共有まで、一連の業務フローが効率化されることが示された。
「Acrobat AI アシスタント」では、このPDFスペースに加え、プロンプト入力とテンプレート選択によって数クリックでプレゼンテーションを作成できる「プレゼンテーションを生成」機能の日本語版が新たに提供された。本機能により、例えば従来3時間ほどかかっていた資料作成作業が大幅に短縮されるという。Acrobat は、デザインアプリケーションの「Adobe Express」とも連携しており、生成したプレゼンテーションのテーマ変更やスライド編集も容易に行えるという。
マーケティング分野においても、アドビのAIが活用されている。アドビ ジャパントランスフォーメーション本部 阿部成行氏およびアドビ ソリューションコンサルティング本部 今井裕志氏からはFireflyをAPI化した「Adobe Firefly Services」を活用したマーケティング事例や、「Adobe GenStudio for Performance Marketing」を活用した生成AIエンジンにおけるブランドの可視性スコア測定などの事例が紹介された。
クリエイティブから文書作成、そしてマーケティングに至るまで、アドビのAIプラットフォームはさまざまなツールに浸透し、クリエイターやビジネスパーソンの生産性向上をサポートしている。

