ベンチャー女優・寺田有希さんから学ぶ――これからのビジネスパーソンに求められる働き方

第2回 ベンチャー女優が実践する「リモートワーク前提社会」におけるコミュニケーションの作法



演技にMC、さらには音楽活動まで幅広く活躍する寺田有希さん。早くからフリーランスとして独立し、自らを「ベンチャー女優」と称して活動を続ける寺田さんは、時代を先取りする先進的な働き方の実践者としてもその名を広く知られている。昨今の新型コロナウイルス感染拡大の影響で人々の生活様式が大きく変わる中、私たちは「リモートワーク前提社会」をどのようにして生き抜いていけば良いのだろうか。全3回にわたるインタビュー連載の第2回では、オンラインでコミュニケーションを図る際に気をつけているポイントやツールの使いこなし術について寺田さんに話を伺った。

文/勝木健太


チャットでのコミュニケーションが主流に

 ―― オンラインで仕事を進める上で、どのようなコミュニケーションツールを利用していますか?

寺田 基本的にはチャットでやりとりをしています。最初に仕事用のメールアドレス宛にご依頼を頂いて、その後、「チャットでやりとりしませんか?」とこちらから提案させて頂いてチャットに移行するという形が多いですね。

寺田 チャットで仕事を進める際には、「クイックレスポンスを心掛ける」「感情を表現したい場合は、必要に応じてスタンプを活用する」ことを意識しています。最近では、ビジネスパーソンの方々も社内コミュニケーションについてはMicrosoft Teams等のチャットツールを使用していると聞いたことがあります。円滑なコミュニケーションを図る上で、チャットツールは誰にとっても必要不可欠なコミュニケーション手段になっていくと思います。

 ―― いわゆる堅い企業がクライアントの場合はどうですか?

寺田 私が過去に関わらせて頂いたケースで言うと、NHKのテレビドラマのお仕事については、最初から最後までメールでやりとりをさせて頂きました。ただ、そのようなケースは例外で、できるだけチャットを使ってやりとりさせて頂くことを心掛けています。また、原稿の文言や写真のチェック等についてはクラウドベースのツールを利用することが多いです。隙間時間を無駄にせずにできるだけ効率良く仕事を進めたいと考えていることが背景にあります。

Web会議では自分自身の「見え方」を特に意識

 ―― 世の中全体でオンライン化が進んでいます。Web会議を行う際に意識していることはありますか?

寺田 Web会議の場合、相手から見える自分の姿が上半身だけになってしまうことが多いので、お互いに提供できる情報の絶対量が少なくなってしまいがちです。その前提を踏まえた上で、相手にとって付加価値の高い情報を残すことを意識する必要があります。また、自分の見た目や声の印象を客観的に把握しておくことも重要だと思います。

寺田 実際、上半身だけしか見えないWeb会議の場で強面(こわもて)の方がいらっしゃったら、「ひょっとしたら自分の言動で相手を怒らせてしまったのではないか」と勘違いしてしまいかねません。その場合は、意識的に柔らかい印象になるように意識してみても良いかもしれませんね。

 ―― 例えば、Web会議の背景に設定している壁紙を替えてみるといったことでしょうか?

寺田 壁紙を活用することも効果的かもしれませんし、その他にも色々な方法があると思います。対面ミーティングの場合は、部屋に入室する段階から相手に対して様々な情報を与えることができますが、Web会議の場合は必ずしもそうは行きません。新しいクライアントに接するタイミングでは、そのことを特に意識した方が良いと思います。

 ―― 寺田さん自身、Web会議は頻繁に行っていますか?

寺田 はい。例えば、拙著『対峙力』の制作工程においては、編集者の方とのやりとりは基本的に全てWeb会議で完結させていました。「移動や場所確保の解消」「会議の所要時間の削減」「自由な働き方の実現」といったメリットを享受できるWeb会議ですが、対面でのミーティングと比べると伝えられる情報量がどうしても減ってしまうので、そのことを念頭に置きながらコミュニケーションを図ることを心掛けていました。

個人的な見解ですが、これからの時代は参加者全員がオンライン前提のコミュニケーションを意識することが必要になると考えています。今まで通りのミーティングのやり方に固執していると、知らず知らずのうちにコミュニケーションの質が低下してしまうかもしれません。

オンライン化の進展で高まる通信環境の重要性

 ―― オンライン前提のコミュニケーションが進展すると、通信環境の重要性も高まるのでしょうか?

寺田 それは大いにあると思います。Web会議を行っていると、通信環境の問題で画面がフリーズしてしまうことはどうしても発生してしまいますよね。私自身、書籍の校正を行うタイミングで引っ越しを行った関係で、自宅にWi-Fi環境がなく、その際にWi-Fi環境の重要性を痛感しました。

寺田 カフェやコワーキングスペースにもWi-Fi環境が用意されていることが多いですが、1時間などの時間的制約が設けられている場合もありますし、何よりセキュリティ上の問題もあります。

 ―― 通信環境も含めてコミュニケーションを設計する必要があるということでしょうか?

寺田 そうですね。通信環境が必ずしも全てという訳ではありませんが、通信環境のせいで会議が中断して相手にストレスを与えてしまうことは出来るだけ回避すべきと考えてます。私自身、昨年引越しを行ったタイミングで光回線を導入しました。開通に1ヵ月程度かかってしまいましたが、その価値はあったと思います。より良いミーティングを実現する上で、通信環境にこだわらない理由がないというのが個人的なスタンスです。

ミーティングの大切な場面で画面がフリーズしてしまうと、どうしても皆さんのリズムが崩れてしまいますし、会議時間も伸びてしまいますよね。ポケットWi-Fiの活用も含め、いつでもどこでも快適にリモートワークを行うことができるように、Wi-Fi環境を意識的に整えておくことはこれから求められるようになると思います。

 ── 次回は、寺田さんが実際に最新のPCを体験し、テレワークに潜むリスクに迫ります。

【第1回】ベンチャー女優・寺田有希さんから学ぶ――これからのビジネスパーソンに求められる働き方
【第3回】ベンチャー女優・寺田有希さんから学ぶ――これからのビジネスパーソンに求められる働き方

筆者プロフィール:勝木健太(かつき・けんた)

1986年生まれ。幼少期7年間をシンガポールで過ごす。京都大学工学部電気電子工学科を卒業後、新卒で三菱UFJ銀行に入行。4年間の勤務後、PwCコンサルティング/有限責任監査法人トーマツを経て、経営コンサルタントとして独立。約1年間にわたり、大手消費財メーカー向けの新規事業/デジタルマーケティング関連プロジェクトに参画した後、大手企業のデジタル変革に向けた事業戦略の策定・実行支援に取り組むべく、株式会社And Technologiesを創業。FIND CAREERSを中心に、「転職サイトZ」「転職エージェントZ」等の複数の情報サイトを運営。執筆協力実績として、『未来市場 2019-2028(日経BP社)』『ブロックチェーン・レボリューション(ダイヤモンド社)』等がある。