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企業システムのモダナイゼーションの総まとめとWeb3.0

企業システムのモダナイゼーションの総まとめとWeb3.0

2022年08月31日更新

第12回 企業システムのモダナイゼーションの総まとめとWeb3.0【最終回】

企業システムのモダナイゼーションはITサービス提供力を強化する戦略的活動であり、これからの企業の発展を大きく左右するものだ。これまで11回にわたり、コンテナ技術を利用した企業システムのモダナイゼーションについて執筆してきた。シリーズの最終回として、総まとめに加えて、話題の「Web3.0」との関係を考えてみたい。

シリーズの振り返り

 社会のデジタル化の中、企業の情報システムは、社外へ開かれたシステムへと変貌し、取引先企業や消費者とつながるエコシステムの一部となる。この流れに対応するには、マイクロサービスアーキテクチャとアジャイル開発が有効であり、コンテナとOSSはなくてはならないツールだ。このような情報システムの在り方の改革はモダナイゼーションと呼ばれ注目されている。

 開発者の視点では、OSSは揺れ動くアプリケーションの基盤だ。それは、OSSが継続的に開発され、累進的にリリースされるためだ。また、ソースコードが公開されていることから、脆弱性の問題もある。このようなOSSの問題をコンテナは、「不変の基盤(Immutable Infrastructure)」として緩和する。

 コンテナの実行基盤であるKubernetesは、仮想サーバーやベアメタルサーバーなど、さまざまな環境で利用できることから、アプリケーションシステムが、クラウドやオンプレミスへのロックインを回避することに役立つ。

 これを開発するのは、クラウドネイティブコンピューティング財団(CNCF)だ。この団体は、世界の大手IT企業の出資によって運営され、大手クラウドベンダー、IBMのような老舗IT企業、研究機関など、800団体以上が参加する規模に拡大している。CNCFが提供するOSSは、誰でも自由にダウンロードして利用できる。また、誰でも開発に参加できる民主的活動による成果物なのだ。そして、財団へ出資する企業のソフトウェア製品やクラウドサービスに組み込まれて、企業が活用できる環境が整備されている。レッドハット社の「OpenShift」も、そのうちの一つだ。

 しかし、良い話だけではない。マイクロサービスは、関係者同士の調整時間を減らす効果はあるが、ビジネスロジックをコード化する手間は削減しない。そして、クラウドネイティブ技術は複雑なため、人材育成の時間を重視しなければならない。このことを踏まえて、社員の成長に合わせて段階を踏んで推進すれば、マイクロサービスの利点を生かす能力が組織に醸成されることであろう。

 モダナイゼーションでは、マイクロサービスばかりに目を奪われがちだが、フロントエンドの開発技術との「車の両輪」の関係にあることを忘れてはならない。主流となっている端末では、そのブラウザー上でコードを実行してマイクロサービスをアクセスするSPA(Single Page Application)が、ユーザーに快適な操作性と利便性を提供するためだ。

 アプリケーション操作時のエラーは、まれな発生でも、ユーザーの心象を悪くし、苦情を上げることもなく他サービスへ去っていく原因となる。そのため、ユーザー視点のモニタリングは経営課題なのだ。これまでは難しかったユーザー視点のオブザーバビリティ(可観測性)をCNCFは改善する。さらに、消費電力の無駄を減らし最適化することも可能にする。それは我々の子孫にとって大切なSDGsの取り組みともなるのだ。

 コンテナとKubernetesの優れた特性はAIを応用したサービスの開発と運用のニーズに、良くマッチしている。そのようなことからAIを応用したアプリケーション実行環境のデファクトスタンダードとしてKubernetesは認知されている。「イベンド駆動型アーキテクチャ」は、システム同士を疎結合にできるため、モダナイゼーションにはマイクロサービスと並んで重要なアーキテクチャの一つだ。

 もはやKubernetesの導入をちゅうちょする理由はない。コンテナやKubernetesは、企業の情報システムのモダナイゼーションを推進する上で、必須のプラットフォームであり、その文化と技術を活用できる人材を育成することこそ、デジタル中心の世界で企業が繁栄するための最優先課題なのだ。

独占的支配の危機感とWeb3.0

 Web3.0は、2021年後半ごろから注目を集め、日本政府が2022年6月に発表した政策「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の中に「Web3.0の推進」が盛り込まれた。

 2020年にGAFAMの5社合計の株式時価総額が東証1部全体を上回ったことが話題となった。つまり、日本のトップ企業約2,200社よりも投資家の評価が高いのだ。これらの巨大企業はプラットフォーマーとしてWebサービスを支配しており、ユーザーはサービス利用のためにさまざまな個人データを提供している。

 このような巨大企業が市場を支配する世界では、競争を阻害し、競争がなくなることで産業の自由が抑圧され、民主主義がゆがめられる恐れがある。その問題の例では、プラットフォーマーが強い立場を利用して、出品者へ不利な条件を一方的に押し付けたこと、個人情報の流出事件や売買の懸念など、問題を挙げると切りがない。これに対処するために、米国、欧州先進国では、巨大IT企業への追及を強めている。

 この独占的な状態を解消するべくWeb3.0という概念が打ち出された。これは新しい技術を指すものではなく、ブロックチェーン技術を応用した経済活動だ。ブロックチェーンは、分散台帳を実現する技術のOSSである。その特長は、台帳、すなわち、取引記録を参加者が共有することで、改ざんできない仕組みを提供するものだ。この技術を応用した仮想通貨は1,000種を超えると言われ、中でもビットコインとイーサリアムが有名だ。そして、サプライチェーンの仕組みではIBMが推進する「食の安心安全を目指したFood Trust」がある。

 Web3.0の代表的なものに、貸し手と借り手を銀行の介在なしに直接つなげる「分散型金融(DeFi:Decentralized Finance)」、仮想通貨を共同出資して平等な民主的に組織を運営する「自律分散型組織(DAO:Decentralized Autonomous Organization)」、デジタルデータに対し、唯一無二な資産的価値を付与し、新たな売買市場を生み出す「非代替性トークン(NFT:Non Fungible Token)」がある。

 ブロックチェーンもKubernetesを運用基盤としており、Web3.0も、その延長線上にあると考えられる。つまり、モダナイゼーションされた未来の企業の情報システムは、マイクロサービスなどで業界と連携するだけでなく、新たな経済基盤Web3.0とも連携するのだ。

現場力を生かす推進

日本人は、基礎的な研究によって、イノベーションを起こすようなプロダクトを生み出すことが苦手とされてきた。しかし、既存技術に改良を加えて、高品質な商品を生み出すことで、他国にはない強みを発揮してきた。まさに日本の強みは改善・改良・現場力だ。この事実から日本のDXの底力は、継続的開発とサービス運用を実践するCI/CDによって、発揮されると推察する。この日本人が得意とする進め方で、情報システムのモダナイゼーションが推進され、日本の経済が活力を取り戻すことを願って、シリーズの締めくくりとしたい。

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