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デルの女性起業家への支援とリコーグループの取り組み

デルの女性起業家への支援とリコーグループの取り組み

2021年08月10日更新

女性起業家への支援に見る
多様性がもたらすメリット

Dell Model

Dell Women's Entrepreneur Network
~デル・テクノロジーズのDWEN~

環境や社会、ビジネスのいずれにおいてもさまざまな課題や問題があり、一つの特効薬で解決することは不可能だ。多様な発想から生まれるアイデアが既存の課題や問題の解決に役立ち、さらに多様な価値観が新しい機会をもたらしてくれる。ダイバーシティ(多様性)と聞くと男女やジェンダーの平等をイメージしがちだが、この単語は環境や社会、ビジネスの発展に欠かせない要素なのだ。ダイバーシティという考え方の重要性をデル・テクノロジーズの「Dell Women's Entrepreneur Network」(DWEN:デル女性起業家ネットワーク)を参考に考える。

社会課題の解決には
企業の連携が不可欠

デル・テクノロジーズ
CTOオフィス
ソーシャル インパクト ジャパン リード
松本笑美 氏

 デル・テクノロジーズの創業者で同社の会長兼CEOであるマイケル・デル氏は、20年以上前から環境とサステナビリティを意識して事業をけん引してきた。デル氏は自社の成長に伴ってPCやサーバー、周辺機器といった製品をより多く生産することで廃棄物を増やし、環境やサステナビリティに悪影響を及ぼしてはいけないと自著で訴えていたという。

 使い終わった自社製品がそのまま廃棄されぬよう、ごみを減らす、ごみを出さないリサイクルが必要だと考え、2005年にはリサイクルパーツを使用したモニター製品を開発・販売したほか、環境に関するコンソーシアムを作ったりエコマークを取得したりするなど、さまざまな取り組みを広げてきた。

 デル・テクノロジーズでは自社での取り組みを広げる一方で、他社との連携、NPOやNGOへの支援など、幅広く取り組みを推進している。デル・テクノロジーズでCTOオフィス ソーシャル インパクト ジャパン リードを務める松本笑美氏は次のように説明する。

 「当社は社会貢献を含めた社会的な衝撃をどのようにしてお客さまと一緒に軽減していくかを考えながら、必要な取り組みを進めながらビジネスを展開しています。例えばカーボンニュートラルを1社で実現するのは不可能です。お客さまやパートナーさまと一緒に推進しなければ実現できません。ESGおよびSDGsへの取り組みにおいても同様です。そこでデル・テクノロジーズはお客さまやパートナーさまが目標としていることを見いだし、ITが中心とはなりますが製品だけではなく当社として何を協力できるのかを考えて活動しています。当社自身もグローバル全体で協力してグリーン化を推進していかなければならないのに、他社と競合している場合ではありません」(松本氏)

 同社はITのさまざまな製品やサービスを提供しており、ESGやSDGsでは社会貢献だけではなく自社のビジネスの成長にも寄与する取り組みが求められる。そのため他社との連携やさまざまな支援活動は自社製品およびサービスの販売拡大も見据えた取り組みなのだろうとうがった見方をしてしまう。しかしここで紹介する女性起業家を支援するプロジェクトである「Dell Women's Entrepreneur Network」(DWEN)の目的を知れば、ESGやSDGsへの取り組みが1社完結の意識で推進しても成果は期待できないことが分かるはずだ。

女性起業家への投資を増やせば
金融危機からの回復が早まった

 DWENは女性の起業と事業の成長、拡大を支援するグローバルで展開されているプロジェクトだ。女性の起業の支援だけではなく、女性起業家への投資を引き出したり、女性と女性をつなぐネットワークを構築したりする各種のコンテンツやイベント、サービスが提供されている。

 DWENは10年ほど前にグローバルで始められ、現在は5,000名の会員が参加している。当初はすでに事業が成り立っていて、DWENが支援することで成長が見込めるメンバーを集めたという。その後も一定のレベルの女性起業家を招待してネットワークを拡大してきた。

 そして開始から10年が経過した2020年に裾野を広げる目的で、これから起業したいという女性もDWENのWebサイトから誰でも参加できるようにした。ちなみに日本では2017年から展開し、現在100名の会員がいる。

 DWENを始めた目的について松本氏は「男女平等にビジネスの機会を創出することが最初の目的ではありません」と話す。事の発端は2008年に発生した世界金融危機、リーマン・ショックだった。リーマン・ショックによる世界規模の金融危機から軌道修正し、世界経済を立て直したのは新しい起業家たちだった。

 その事実に着目したデル・テクノロジーズは実態を調査し、男性も女性も同様の機会で起業していることが分かった。ただし投資家からの投資額が男女で差があり、女性の投資家に資金が行き渡っていなかったことを把握した。そして「もしもこのとき女性の起業家により多くの資金が投資されていたら、リーマン・ショックからより早く回復できたのではないか」という仮説を立てて、女性の起業家を支援するDWENが立ち上げられたのだ。

DWENではインターネットやグローバルカンファレンスを通じたDWENのメンバーとの交流によるネットワークの拡大や、さまざまなタイプの投資家との交流の場の提供によって投資を得る機会を増やしている。

投資家との交流を広げて
女性起業家の事業を伸ばす

 女性の起業家への投資金額が十分ではない理由について松本氏は「投資する側の大多数が男性のため、女性が提案するビジネスを理解してもらえないことがあります」と指摘する。松本氏によると女性起業家のビジネスには二つの傾向があるという。一つは例えばAIを活用する、画像認識を活用するといった男女関係なく展開できるビジネスだ。もう一つは女性に直結したビジネスである。例えば子育てや美容など女性にまつわるビジネスだ。

 松本氏は「女性起業家というと女性にまつわるビジネスがイメージされることが多いのですが、実際に女性起業家が取り組むビジネスや成功事例を見ると、2種類のどちらかに偏っていることはありません」と説明する。

 ただし女性独特の価値観は見受けられるという。松本氏は「一般的に起業家は事業を拡大させること、昨年比で業績が成長していることなどを重視しがちですが、女性の起業家はそれだけではなく自身のビジネスの独自性や事業の意義を重視する傾向があるように思われます。ただしこの意識が成功の秘訣だとは言い切れませんが」と話す。

 成長や事業拡大以外の要素で投資を引き出すことは容易ではない。そこでDWENではさまざまなタイプの投資家との交流の場も提供して投資を得る機会を増やしている。

 DWENの活動の活性化に力を入れているデル・テクノロジーズだが、自社の製品やソリューションをDWENで自ら紹介することはないという。松本氏は「セキュリティ関連のセミナーを実施したこともありましたが、メンバーへのアンケート調査でITよりも成功事例への関心が高いなどの要望を把握したため、メンバーの要望に応じたコンテンツに注力しています」と説明する。

SDGsの目標を達成する活動が
新たな市場の形成と機会を創出する

RICOH Model

国際的な開発目標であるSDGsには17の明確な目標が掲げられており、グローバルで国や企業がそれらの目標を達成するために投資をすることで、新たな市場が生まれる。つまりSDGsの目標達成への取り組みは、ビジネスに新たな機会をもたらすことにつながる。ここではESGを通じたSDGsの目標達成への取り組みと、既存事業の成長、さらには新たな事業の創出に向けて取り組むリコージャパンおよびリコーグループのESG戦略をリポートする。

SDGsへの長期的な取り組みと
短期的な経営戦略の両輪

リコージャパン
経営企画本部
コーポレートコミュニケーション部
SDGs推進グループ リーダー
赤堀久美子 氏

 リコージャパンでは1990年代から環境経営に取り組んでおり、環境保全と利益喪失の関連を意識してリコーグループ全体で経営および事業活動を推進していた。さらにCSRにもいち早く取り組み専任部署も設置した。そうした流れの中でESGやSDGsにも積極的に取り組んでいる。

 リコージャパンでSDGsの推進を担当する経営企画本部 コーポレートコミュニケーション部 SDGs推進グループ リーダー 赤堀久美子氏は「当社では早くから環境経営、CSRへの取り組みを続けてきましたが、ESGやSDGsの観点でお客さまなどステークホルダーの皆さまからさまざまな問い合わせが寄せられており、これまでの取り組みで不十分だった部分を強化しています」と説明する。

 投資家や顧客がESGやSDGsへの関心を高めている背景として、SDGsに世界共通の目標が明確に定められていることを挙げる。赤堀氏は「SDGsには17の目標が明示されており、グローバルで国や企業がそれらの目標の達成に向けて投資をしています。それは新しい市場を形成することになります。つまりSDGsの目標を達成する活動は、ビジネスの新しい機会を創出するのです。一方でESGやSDGsへの取り組みをしないことは、ビジネスのリスクとなります」と話す。

 SDGsへの取り組みは新たなビジネスの機会を生む半面、SDGsは世界規模での社会課題の解決を目指す目標であり、目標を達成するには長期的な取り組みが求められる。しかし企業としては自社の事業活動で短期的に利益を得る必要がある。そのため短期的な経営戦略にもESGやSDGsを取り込み、長期的な将来の目標につなげていく必要がある。

非財務を将来財務と位置付け
ESG目標として17項目を設定

 リコーグループでは長期的なSDGsへの取り組みを事業戦略に組み込み、社会課題解決と事業の成長を両立するために、経営目標における非財務目標を「ESG目標」(将来財務)と位置付けてマテリアリティ(重要社会課題)を設定している(図1を参照)。マテリアリティは経営理念、事業戦略、ステークホルダー要求を踏まえて特定されており、経営基盤の強化と事業を通じた社会課題解決の二つで合計七つが設定されている。この七つのマテリアリティに対してそれぞれ具体的な目標が合計17項目設定されており、これらをESG目標として公表している(図2を参照)。なお七つのマテリアリティはそれぞれSDGsのゴールと関連付けられている。

 赤堀氏は「お客さまや投資家さまからのESG情報への問い合わせに対してきちんと説明できないと、お客さまからも投資家さまからも当社を選んでもらえません」と強調する。

 設定した目標を達成するには全社的な取り組みへの理解を得て、一人ひとりが行動する必要がある。

 リコーグループではリコーの代表取締役 社長執行役員・CEO 山下良則氏が社内に向けて「SDGsに貢献しない事業は淘汰される」と発言したことで社内の関心が高まったという。

 赤堀氏は「社員が自分の業務がSDGsにどう貢献できるのかを語れるようになれば、自分の仕事が社会課題の解決に貢献していることを実感でき、仕事への誇りや働きがいを持てるようになります」と話す。

415名のキーパーソンが
SDGsへの取り組みを先導

 リコージャパンでは「SDGsキーパーソン制度」を設けている。この制度は全国の支社と本社の各部門でSDGsへの取り組みを組織内に定着させるとともに、顧客や各地域の課題を理解し、それらに対してどのような価値を提供できるのかを考え、各組織で共有・展開を推進する役目を担うものだ。

 キーパーソンは同社の全国の支社と本社の部門に合計415名(2021年4月末時点)おり、顧客への提案にSDGsの観点を盛り込みSDGsに貢献する事例の創出を支援したり、その事例を広めて活動を水平展開したり、リコーの活動を外部に紹介したりしている。

 赤堀氏は今後のSDGsへの取り組みについて「SDGsへの取り組みを通じてお客さまや地域の皆さまと新しい関係が構築できます。また今までお客さまの課題を解決する視点でソリューションを提供してきましたが、SDGsの観点を盛り込むことで地域やグローバルの課題へと視野が広がり、新しいソリューションの提案や新しい事業の発想につながります。社会課題を考えることは新しい事業のヒントを見つける手段にもなります。次のステップとして社内のSDGsへの理解を広げ、意識を高めて成長につなげていきたいと考えています」と意欲を語った。

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