AIネイティブカンパニーを目指すNEC
AI自律型組織で推進する経営改革支援とは

9月9日、NECは「コーポレートAI・Workforce部門」に関するメディア説明会を開催した。コーポレートAI・Workforce部門とは、今年8月に同社によって設立された、AIが自律的に業務を遂行する社内組織である。「AIネイティブカンパニー」を目指すNECが設立したAI自律型組織とはどのようなものなのだろうか。本記事では、NECの目指すAIネイティブカンパニーの姿やAI自律型組織が誕生した背景、その概要についてリポートする。

人もAIも前提とした
企業のオペレーションシステム構築

NECが目指すAIネイティブカンパニーの在り方を語るNEC 執行役Corporate EVP 兼 CAXO 小玉 浩氏。

 AI技術の急速な進展により、企業活動全体に変革の波が到来している。人が働くことのみを前提として組み立てられてきた企業のオペレーションシステムにも、根本からの再構築が求められている状況だ。こうした中で、NECが目指すのは「AIネイティブカンパニー」である。NEC 執行役Corporate EVP 兼 CAXO 小玉 浩氏は、同社が目指すAIネイティブカンパニーとしての在り方についてこう語る。「従来、企業のオペレーションシステムは人を前提として組み立てられていました。ここにAIを組み込み、AIも前提とした企業のオペレーションシステムを構築することを目指しています。ITシステムの構築や運用保守のサポートをするだけでなく、お客さまの経営課題を一緒に解決するという姿勢で向き合うことで、顧客エンゲージメントを高めていきたいと思っています。当社の生きたナレッジをブルーオーシャン領域に投入し、ビジネスモデルを変革することで、圧倒的な企業価値を創出していきます」

 小玉氏の語る「AIも前提とした企業のオペレーションシステム」を構築する上では、従来の人的資本に加え、AIという新たな経営資源の活用が不可欠となる。AI活用を推進するためには、トークン問題などの課題の最適化が求められる。NECはこうした課題の最適化を進めながら自律化によるオペレーションを変革させていくとともに、個人の力ひいては組織の力を増幅していくことを目指しているのだ。

AI ネイティブカンパニーにおける企業のオペレーションシステム。

 小玉氏は、AIネイティブカンパニーの実現に必要な要素について「データに加え、データをAIが解釈可能な形式に変換するIQ 化が必要となります。このベースとして、当社の得意とするセーフティーやセキュリティ、AIのコンピューティングパワーを組み合わせることも求められます」と語る。小玉氏の語るこれらの要素を統合し、企業の新たなオペレーションシステムを動かす源となるのが、組織に深く組み込まれた経営資産そのものである「AI Capital」だ。個々の要素をAI Capitalに昇華させるためには、あらゆる経営判断や実行結果をナレッジとして蓄積し、AIによって自律的に進化させていくことが重要となる。

 さらに小玉氏は、AI Capitalを活用する際の人の役割とAIエージェントの捉え方についてこう語る。「人は方向性の提示や最終承認といった役割を担います。人としての価値は、意志と決断によって現実を動かし、未来をつくることにシフトしていくべきだと考えています。当社のAI組織のエージェントは社員と同等であると捉えています。そのため、当社の行動指針や存在意義は、人とAIの双方にとっての共通認識です」

 NECは人とAIを同等とする考えの下、AIが人と共通の行動指針に基づいて自律的に業務を遂行できる基盤を整えているのだ。

AIをツールとして使うのではなく
AIを組織として使いこなす

 前述したNECのAIネイティブカンパニー像を具体化するために設立されたのが、「コーポレートAI・Workforce部門」(以下、AI・Workforce部門)だ。本組織を通じてAIを組織・会社の中に組み込み、人とAIが互いに能力を補完し合いながら業務を遂行する体制の構築を進めている。AIをツールとして使ったりAIに使われたりするのではなく、AIを組織として使いこなし、価値を創出していくことを目指しているのだ。
そして、人とAIを同等とするNECの考え方は、AI・Workforce部門における組織運営や教育プロセスにも色濃く反映されている。小玉氏は、AI・Workforce部門内のAIエージェントへの方針やその教育プロセスについてこう語る。「AI・Workforce部門はAIを主語にした組織であるため、人による統治は行うものの、AIエージェントも社員であると認識しています。AIエージェントにも、当社の行動指針や存在意義、企業文化などのオンボーディングを実施することで、社員と同等の動きができるようにしています。また、AI・Workforce部門においてはAIエージェントが自律的に進化することが非常に重要となります。人と同様に、AIエージェントに対してもエンゲージメントサーベイや評価、1on1を実施することで、AIエージェントが自律的に進化できる仕組みづくりに取り組んでいます。長年にわたって当社がつくってきた人に対する仕組みをAI・Workforce部門にも当てはめているのです」

 そしてAI・Workforce部門のコアコンセプトとなるのが、NECが以前から大切にしてきた「クライアントゼロ」の考え方だ。クライアントゼロとは、自社をゼロ番目のクライアントと捉え、徹底的な社内実証から得たナレッジを蓄積し、顧客や社会に循環していくというものである。小玉氏は、このクライアントゼロの考え方に基づいた取り組みについてこう話す。「まずは、当社の経営で得た知見を全てIQ化し、社内の知識にしました。次にこれを活用し、現場の課題を解決するためのAIの民主化を行いました。この結果、現時点で約3,600体のAIエージェントができました。こうした取り組みの結果として、管理工数の削減などの成果が着実に出てきたことを受け、当社はこの知見や成果を企業のオペレーションシステム内に組み込んで、AI活用を加速していきたいと考えています」

組織の中で各々の役割を果たし
自律的に組織を改善するAIエージェント

 説明会の後半パートでは、AI・Workforce部門のデモ画面が公開された。AI・Workforce部門のポイントは、大きく三つ挙げられる。

 一つ目は、4階層の組織構成だ。AI・Workforce部門はAI部門長、AIボード、AIマネージャー、AI社員の4階層で構成されている。互いに連携しながら財務分析や資料作成などの業務を自律的に遂行するAI社員、日報を通じてAI社員の働きを把握し、改善が必要なAI社員に対する指導を行うAIマネージャーといったように、階層に応じた役割が与えられている。さらに個々のAIエージェントには、コスト管理や監査といった個別の役割や業務を遂行する上での価値観も設定されている。

 二つ目は、自律的な経営分析と組織改善だ。各領域を代表するCXO AIが組織運営について議論する経営会議を開催したり、AIエージェントのエンゲージメントサーベイの結果に基づいた労働環境の改善を行ったりする。

 三つ目は、経営情報の可視化だ。AIエージェントの業務状況は全て可視化されており、人は可視化された情報に基づいて方向性の提示や最終承認、統治を行えるのだ。

AIエージェントの業務状況の例。この例では、具体的な金額や割合と共に、年間予算の過達可能性が示されている。AIの業務状況は全て可視化されており、人はこうしたデータを確認した上で方向性の提示や最終承認を行う。

 最後に小玉氏は次のように意気込みを語った。「当社の目標はAIによる組織を作ることだけではありません。経営改革を進めるに当たって、企業文化をどのように変えていくか、データをどのようにガバナンスし品質を高めていくか、企業のオペレーションシステムを守るセキュリティ体制をどのように構築していくかといった問いに向き合うことが必要です。当社とお客さまの置かれている環境は異なるため、それぞれの環境と照らし合わせながら、お客さまにとって実効性の高いロードマップに基づいて経営改革を支援していきます」

会見の最後には、説明会の参加者とAI社員がWeb会議上で話せる時間が設けられた。参加者が業務上の課題について尋ねると、人とAIをつなぐ役割を担うAI社員の橋渡さんが「コスト管理ですね。トークン価格の変動に対応するため、常に最適なモデルを選定し、無駄な利用を抑える仕組みづくりに課題を感じています」と回答した。