白澤光純(しらさわ こうや)さん

株式会社コンクルー 代表取締役CEO。1992年生まれ。大学では宇宙物理学を専攻。大学院修士課程修了後の2017年、日揮株式会社(現日揮ホールディングス)に入社。インドネシアやクウェートに駐在した後、新規事業開発を担当。日揮での事業検証を経て、2023年9月に株式会社コンクルーを設立。日揮ホールディングスから出資と事業譲渡を受ける形でスピンアウトした。
https://www.concrew.co.jp/

中小建設会社向けの業務管理ツールを開発

──株式会社コンクルーを起業したきっかけや、会社の概要を教えてください。

白澤 私は大学院修士課程修了後の2017年に日揮株式会社(現日揮ホールディングス。海外のLNGプラントや石油精製所などの建設を手掛ける大手エンジニアリング企業)に入社し、インドネシアやクウェートに駐在した後、職人と仕事をマッチングさせる新規事業の開発に従事しました。しかし、大規模なプラント建設の現場では、職人には安全講習の受講や資格審査、保険などの手続きが必要で、単純に人と仕事を結び付ければよいわけではありませんでした。

そこで、住宅建築やリフォームなど、より小規模な工事を手掛ける会社に目を向けました。工務店や左官、電気工事などの会社にヒアリングを重ねる中で、中小建設会社の業務全体を支援する方向へと事業を転換しました。これが、中小建設会社向けの業務管理ツールを開発するきっかけです。その後、2023年に日揮ホールディングスから出資を受けて独立し、株式会社コンクルーを起業しました。

2024年8月には、中小建設会社向けオールインワン業務管理ツール「コンクルーCloud」を正式リリースし、本年、AIエージェント機能を強化した「コンクルーAI」へとバージョンアップして、サービスを提供しています。

株式会社コンクルー ホームページ
株式会社コンクルーのホームページ。

従業員20人以下の中小建築会社がターゲット

──中小の建設会社には、さまざまな形態があると思いますが、コンクルーがターゲットとしているのはどのような業種ですか。建設業界の概要も含めて教えてください。

白澤 日本全国には、一定規模以上の工事を請け負うために必要な「建設業許可」を持つ会社が約48万社あるといわれています。建設業許可を持たない一人親方などの事業者を含めると、その数はさらに増えますが、建設業許可を持つ事業者のうち、従業員20人以下の小規模事業者が95%以上を占めています。

建設業界は、ゼネコン(総合建設会社)が手掛ける大規模な建設現場の「野丁場(のちょうば)」と、地域密着型のリフォームや住宅修繕などを担う「町場(まちば)」の2つに大きく分けられます。コンクルーがメインターゲットとしているのは「町場」の建設会社で、地域の工務店や専門工事会社など、小規模な工事を少人数で手掛ける会社です。内装のクロス張り、外壁塗装、屋根工事、外構工事、電気設備工事など、業種は多岐にわたります。

例えば、一戸建てを新築したり、購入したりする際には、ハウスメーカーを利用する方が多いと思いますが、その後、補修工事や増改築をする際には、ハウスメーカーではなく、近所の工務店に依頼することも多いのではないでしょうか。私たちの顧客は、そのような地域密着型の小規模な建設会社です。こうした会社は、ハウスメーカーから工事を請け負う場合もあれば、地元の顧客から直接相談を受け、住宅の新築やリフォーム、修繕を行う場合もあります。地域に根差した関係の中で事業を営んでいるのです。

こうした企業では、CADなどもあまり使用されておらず、デジタル化が進んでいるとはいえません。パソコンは使用していますが、主な用途は経理や、見積書などの文書の作成、メールでの連絡、オンライン会議などにとどまっているのが現状です。

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「コンクルーが目指すのは、建設業をAIネイティブな産業にすることです」と語る白澤さん。

AIで業務を自動化する「コンクルーAI」

──「コンクルーAI」は、どのような業務をデジタル化するのでしょうか。

白澤 「町場」の建設会社の仕事は、顧客からの問い合わせを受け、現場調査を行い、見積りを作成するところから始まります。受注に向けて工事内容を具体化し、協力会社や個人の職人から見積りを集め、予算を組んで発注します。着工後は、誰がいつ現場に入り、どの作業をするかを管理し、報告や連絡をやり取りします。最後には請求や支払いも発生します。小さな会社であっても、扱う業務は多岐にわたります。

「コンクルーAI」は、案件・顧客管理、見積り作成、予算・原価管理、施工管理、請求・支払いといった事業運営に必要な業務を一つのツールで扱い、日々の業務負担を軽減することを目指しています。さらに、建設業向けの「エージェント型AI」を搭載し、案件・顧客情報の入力や見積書などの書類作成、工程表の作成、転記といった作業をAIが肩代わりします。

見積AIエージェント
見積書を自動生成する「見積AIエージェント」。

中核となる「建設特化AIエージェント」として、「見積AIエージェント」「工程表AIエージェント」「転記AIエージェント」「案件入力AIエージェント」の4つを搭載しています。

見積AIエージェント:図面や写真、過去の見積りなどを参照し、AIが見積書を生成
工程表AIエージェント:見積りや図面をAIが解析し、タスクレベルの工程表を生成
転記AIエージェント:帳票の階層や備考までAIが抽出し、自社の見積りに反映
案件入力AIエージェント:手書きメモや議事録からAIが現場情報・工期・担当者などを自動登録

これらのAIエージェントにより、見積り作成時間を最大70%削減し、対応案件数を最大40%増やすとともに、施工管理業務を最大30%削減できると考えています。

なかでも、「コンクルーAI」の支援効果が分かりやすいのが見積書の作成です。リフォームの場合、まず顧客の希望を聞き、概算を提示しますが、「コンクルーAI」では、図面や現場調査で得た情報、過去に受注した案件の見積りなどを基に、AIが今回の工事に応じた見積り案を作成します。利用者は、その案に対してチャットで指示を出し、内容を修正していくことができます。

さらに詳細な見積りを作成する段階では、電気工事などを担う専門会社や、資材を扱う建材商社などの協力会社から見積りを取り寄せます。それらを集計して工事全体の費用を算出し、自社の利益も考慮して、顧客に提示する見積りへと組み替えます。

これまでは、協力会社から届いた紙の見積書を見ながら、Excelに一つずつ入力し、自社の見積りに組み替えていました。「コンクルーAI」では、こうした作業をAIが担えるようになっています。

工程表AIエージェント
図面や見積書を解析し、工程表を組んでくれる「工程表AIエージェント」。

従来、こうした作業は主に経営者が担当していましたが、「コンクルーAI」では過去の見積りデータを基にAIが判断するため、経営者だけでなく、従業員も見積り案を作成できるようになります。その結果、経営者への業務の集中を防ぐことができます。最終的な承認は経営者が行うとしても、それまでの作業を各担当者に任せられるようになるわけです。

「コンクルーAI」はすでに5,000社を超える企業にご利用いただいており、会社によっては、作業時間が従来の10%程度になったという声もあります。さらに、さまざまな会社から寄せられる意見を取り入れながら、業務に合った使い方や機能の改善を進めています。

建設業界には大企業向けの業務管理システムがいくつかありますが、私たちがターゲットとする中小建設会社には少々オーバースペックです。費用も高めなので、中小企業には重い負担となりかねません。その点、「コンクルーAI」は、1社あたり月額9,900円(税別)から導入できるため、まずは試してみて、その後、使い続けるかどうかを判断することができます。

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「経営者の作業負担を減らすことで、案件対応力が増えると思います」

フィジカルAIの領域にも取り組みたい

──これからの展望を教えてください。

白澤 建設業界は今、資材価格の高騰や人手不足、地方経済の衰退、後継者不足など、さまざまな問題を抱えています。「コンクルーAI」は、こうした問題を直接解決するわけではありませんが、事務作業の負担を軽減することで、仕事に対してより柔軟に対応できるようになると考えています。

また、長期的には、社内業務を支援するAIに加えて、現場でもAIを搭載したロボティクスが活躍する世界を実現していきたいと考えています。例えば、ドローンや電動工具、重機などにもAIを組み込んだ「フィジカルAI」の開発にも取り組んでいきたいと思います。我々が目指すのは「建設業をAIネイティブな産業にする」ことです。

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「ドローンや電動工具、重機などにもAIを組み込んだ『フィジカルAI』の開発にも取り組んでいきたい」