(左)生徒たちはゼブラのセンサー搭載ペンで「永」の文字を筆記することで、運筆のデータを可視化した。
(右)KakulogとKakulog探究アプリ。Kakulogで永の字を書くことで、運筆のデータがグラフや数値で表示される。

東京都品川区二葉に位置する青稜中学校・高等学校は、「社会に貢献できる人間の育成」という建学の精神の下、中学校2〜3年生を対象とした「ゼミナール授業」(以下、ゼミ)をはじめ、主体的・探究的な学びを重視している。
加えて、企業や団体と連携した実践的な探究活動にも力を注いでいる。
その取り組みの一つとして、青稜高等学校の生徒を対象に、筆記具メーカーのゼブラと連携した探究プログラムを実施した。
デジタル技術を活用して「書く」を科学的に分析し、筆記具開発や新たな価値創出を考える授業を通じて、生徒たちはどのようなアイデアを生み出したのだろうか。その様子を見ていこう。

「書く」をデータで可視化する

 青稜高等学校(以下、青稜高校)では2026年8月27日、夏休み特別授業としてゼブラ×探究プログラム講座「『書く』を科学しよう!」が実施された。本探究プログラムは、青稜高校の2〜3年生を対象に、事前に希望者を募集し、当日は18名の高校生が参加した。

 本探究プログラムは、筆記具メーカーのゼブラと、教育×DXを専門とするSUN Realityが協業し実施したものだ。SUN Realityは、青稜中学校・高等学校に対して教員研修などを支援するITアドバイザーとして、長年にわたり連携してきた。青稜高校はDXハイスクールにも指定されており、今回の探究プログラムも情報・数学などの教育を重視する最新のカリキュラムに対応したものだ。

 今回の探究プログラムは夏休み特別授業として3時間(3コマ)で実施された。講師はSUN Realityの代表取締役社長 西條康介氏が務めた。

 1コマ目では「書く」という行為が脳や神経、筋肉の連携による高度な運動で行われていることが解説された後、ゼブラの商品「ブレン」の開発過程が紹介された。ゼブラでは、筆記時の振動をデータ化することで、その振動(ペン先のブレ)が筆記におけるストレスの元であると解析し、書くときの振動を制御するペン先の構造を採用した「ブレンシステム」を開発したという。アナログとデジタルを組み合わせることで、新たな価値を生み出す筆記具が誕生したのだ。

 ゼブラはこのような書くこととデジタル技術との融合によって、新しい価値創出を目指す新ブランド「Shimauma Lab.」をスタートさせている。その取り組みの中で開発されたのが、センサー搭載ペン「Kakulog」だ。今回の授業ではこのKakulogと、そのデータを可視化する「Kakulog探究アプリ」を活用し、生徒たちが各々の運筆の可視化を行った。Kakulogは、筆圧、動きの大きさ、ペンの角度、書く速度などを測定すると同時に、「書の達人」と比較した際の類似度なども表示される。Kakulogによって運筆のデータが可視化されたことで、より良い書き方へと改善を図る姿が見られた。

生徒たちはグループで意見を出し合いながら、受験勉強の強い味方になるペンを考案した。グループ活動や発表では実際に既存のペンを持ち「ここに困っている」といった意見を出し合う様子が見られた。優勝チームにはゼブラから文具セットが贈呈された。

受験勉強を支えるペンを考案

 2コマ目では手書きがもたらす効能を学んだ後、ゼブラの芯が折れにくいシャープペンシル「デルカード」という商品を例に挙げ、ニーズ調査やアイデア出しの過程、試作過程、特許や商標の調査といったゼブラの製品開発プロセスが紹介された。シャープペンシルの芯が折れないことによる効果として、芯が折れることに伴う雑音や作業の中断が減ることで、従来製品と比較して集中力が持続するという効果が示された。この集中力に対する効果を検証するため、ゼブラでは脳波計測実験を行っており、販売促進を行う上でデータを活用する重要性が指摘された。

 こうした授業内容を基に、「受験勉強の強い味方になるペン」を考案するグループワークが実施された。生徒たちは日常生活の中での困りごとなどを基に、開発するペンにアイデアを出し合い、そのペンのデザインや商品名、データ分析例などを考案した。3コマ目はそれらの内容をグループごとに発表し、その発表内容を基にゼブラ社員と青稜中学校・高等学校 校長 青田泰明氏が投票を行った。優勝したのは勉強した文字を計測し、その文字の累積を専用アプリ上で移動距離として換算することで、友人と勉強量を競い合える「Visit Log」。生徒たちは勉強以外にも、老若男女、職業を問わずに使えるとアピールした。青田氏は授業の様子を振り返り「実は学生の世代というのは、GIGAスクール構想で学習者用端末が整備されていますが、紙のノートとペンという手書き文化が現役です。彼らが日常的に行っている当たり前の行為から、新しい未来をつくれるのだということを感じ取ってくれたのではないかと思います」と語った。

 ゼブラとSUN Realityは今後、青稜中学校のゼミにおいて、今回のKakulogを活用した探究プログラムの学びに取り組む予定だ。ゼブラホールディングス 新規研究開発室 室長 岩間卓吾氏は「今回、高校生を対象にした夏休み特別授業を実施した内容を基に、さらなるブラッシュアップを進めていきます。また教科学習での活用のアイデアなどもありますので、Kakulogを活用した新しい授業の可能性を探っていきたいですね」と語った。