〜Windows Server 2016 EOSへの現実解とは〜

2027年1月のWindows Server 2016 EOSを控え、国内約25万台のサーバー更新が迫っている。しかし、ハードウェアの調達難や価格高騰、巧妙化するサイバー攻撃が立ちはだかる。サーバー最新化を取り巻く現状を、MM総研 取締役 研究部長の中村成希氏に伺った。

静かに進むサポート終了のタイムリミット
パッチの途絶えたサーバーは格好の餌食に

「2027年1月のWindows Server 2016のサポート終了に伴い、国内で稼働する対象サーバー約25万台のうち、約20万台規模の移行が進むと見込んでいます」と中村氏は市場動向(2025年11月予測)について説明する。

 同社の推計によると、2025年12月末時点で国内稼働する対象サーバーのうち、約7割に当たる18万9,525台がすでに「移行調査中」または「移行中」の段階にある。多くの企業がサポート終了を見据えて何らかのアクションを起こし始めている状況だ。

しかし、その一方で浮き彫りとなったのが、企業規模による温度差と認知不足という課題である。調査によれば、EOSそのものを「認知していない」と回答した情シス担当者が大企業で12%、中小企業では20%に達した。前回のWindows Server 2012 EOS時と比較して、大企業、中小企業ともに9%増となり、非認知層の割合は増加傾向にある。

 中村氏は「クラウドサービスの普及により、OSのサポート期限を強く意識しなくなった担当者が増えています。クラウド環境であれば自動更新などもあり、サポート期限を意識しなくても運用できます。しかしオンプレミス環境は自発的に気付き、対策を講じなければ完全に放置されてしまいます」と警鐘を鳴らす。

 サポートが切れてパッチが提供されないサーバーをネットワーク上にさらし続けることは、攻撃者にとって格好の標的となる。早急な現状把握と自発的なアクションが求められる。

ハードウェア調達難と価格高騰
企業のインフラ刷新を阻む物理的障壁

 しかし、移行を進めようにも企業の現場には大きな障壁が立ちはだかる。それがサーバーの調達難とハードウェア価格の高騰である。「現在、サーバーを注文・構成してから納品されるまでに半年以上かかるケースもあります。部材不足によるハードウェアの価格高騰も数年単位で続く見通しです」と中村氏は指摘する。

 この調達遅延こそが、インフラ刷新を阻む要因となりつつある。EOS直前になってからリプレースを検討しても、機器が届かずサポート切れを迎えてしまうリスクが高い。「調達に時間がかかる現状を踏まえれば、型番固定による計画調達など、販売パートナーさまやディストリビューターさまと連携した早期のインフラ調達計画が不可欠です。また、仮想化基盤を活用し、リソースの集約や再配置を進めるなど、限られた調達枠を最大限に生かすインフラ設計も求められます」と中村氏は説く。

 ハードウェアの調達難やコスト上昇を理由に更新をためらうことは、そのままセキュリティリスクの増大に直結する。EOSまで残された時間はわずかではあるが、長期的な視点に立ち、前倒しで刷新に踏み切る判断が強く求められている。

次世代のAI活用も見据えた
インフラ提案に踏み込む

MM総研
取締役 研究部長
中村成希 氏

 インフラ刷新を具現化する上で、仮想化基盤の見直しによるコスト最適化も欠かせない視点である。VMwareのライセンス改定や値上げを受け、最新OSへの移行と同時にマイクロソフトが提供する「Hyper-V」へ集約する動きが顕著になっている。同社が行った2021年の調査では、Hyper-Vの利用者の割合は18%だったが、2025年には38%に達し、シェア拡大の傾向がうかがえる。

 中村氏は「Windows Serverが標準で備えるHyper-Vを活用すれば、サードパーティー製ハイパーバイザーの追加ライセンス費用を支払う必要がなくなります。高騰するハードウェア費用を吸収するためにも、ソフトウェア面で無駄を削ぎ落とし、コストを最適化していくアプローチも合理的といえます」と分析する。

 サーバー最新化を急ぐべき理由は、単なるサポート切れの対応にとどまらない。OSの脆弱性放置に加え、企業を取り巻くセキュリティリスクそのものが巧妙化しているためだ。中村氏は「IT部門の管理が及んでいない『野良サーバー』に加え、巧妙に認証情報を盗む『インフォスティーラー』の被害が急増しています。放置されたサーバーの隙や盗まれたアカウントを足がかりに侵入され、管理者権限を奪われたまま潜伏されることこそが最大の危機です」と話す。

 こうした脅威から顧客を守り、安全な環境へ導くため、販売パートナーやSIerが果たすべき役割は大きい。「古いサーバーを放置するリスクを伝え、最新インフラへの刷新を後押しすることが販売パートナーさまの役割です。調達長期化を見据えた早期提案や実務支援に加え、今後は機密データを安全に扱う『ローカルAI』の需要も高まります。今回のEOSを契機に次世代のAI活用も見据えたインフラ提案に踏み込むことこそが、お客さまとの信頼を深め、ビジネスを広げる好機になるでしょう」と中村氏は語った。