『Copilot+ PC Day』レポート

法人向けCopilot+ PCを提供するPCメーカー9社の製品が一堂に会し、各社のCopilot+ PCを実機で体感できるイベント「Copilot+ PC Day」が2月3日に東京国際フォーラム(東京・有楽町)で開催された。
Copilot+ PCはマイクロソフトの生成AIサービスであるCopilotをはじめ、さまざまなAI機能がPC単体で快適に利用できることからビジネスでの活用に関心が高まっており、Copilot+ PC Dayには会場を埋め尽くすほどのたくさんの来場者が詰めかけた。

1.2.法人向けCopilot+ PCを提供するPCメーカー9社の製品を多数展示し、来場者が実機に触れてローカルAI利用を体験できるタッチ&トライコーナー。Copilot+ PCを体験したい来場者で身動きが取れないほど混雑していた。
3.4.法人向けCopilot+ PCを提供するPCメーカー9社に加えてパートナーの展示ブースも盛況だった。写真はダイワボウ情報システムの展示ブース。

言語モデルを標準搭載するCopilot+ PCにより
生成AIはクラウドからローカルへ広がる

基調講演に登壇したマイクロソフトのメンバー。
左から岡嵜 禎氏、津坂美樹氏、ゲイブ・グラヴニング氏、西脇資哲氏。

創立50周年の節目に
生成AIで変革を起こす

 Copilot+ PC Dayでは二つの会場が用意され、Copilot+ PCが実現するハイブリッドAIのメリットとハイブリッドAIにおけるCopilot+ PCの役割の説明、法人向けCopilot+ PCを提供するPCメーカー9社の製品紹介、そしてCopilot+ PCの具体的な活用方法を紹介するセミナーが行われた。

 また法人向けCopilot+ PCを提供するPCメーカー9社の製品を多数展示し、来場者が実機に触れてローカルAI利用を体験できるタッチ&トライコーナーも用意された。

 基調講演は巨大なスクリーンを2面配した大規模な会場が満席となる盛況ぶりで、タッチ&トライコーナーもCopilot+ PCを体験したい来場者で身動きが取れないほど混雑していた。Copilot+ PC Dayの来場者はPCに新たな変革期が訪れていることを実感した様子だった。

 基調講演では最初に日本マイクロソフト 代表取締役社長 津坂美樹氏が登壇し「2025年はマイクロソフトにとって大きな節目の年となります」と話し、「50」と「2」の二つの数字を示した。まず「50」について「マイクロソフトは1975年1月に当社初のPCとなるAltair 8800をリリースしました。マイクロソフトは今年、創立50周年を迎えます。PCをはじめWindowsにより世界を変革し、多くの人の人生をも変えてきました。次の50年もクラウドや生成AIといったテクノロジーによって変革をもたらし続けます」と語った。

 そして「2」について「Copilotを2023年3月に提供開始してからまもなく2年がたちます。ビジネスから日常生活までより多くの人がAIを活用して成長していくために、クラウドAIとエッジAIの両輪が必要だと考えています。マイクロソフトは全ての製品で生成AIを提供すると表明しており、製品やソリューションを通じてさまざまな形でAIを提供しています。その中でCopilot+ PCはAIの入口となるデバイスです」と説明した。

 さらに「去年の初めに、今後全てのWindows PCにCopilotキーを導入することを発表しました。Windows PCの標準キーボードの変更は、Windows 95でWindowsキーを導入して以来30年ぶりです。CopilotキーによってAIがPCの操作の中心となります」と語った。

日本マイクロソフト
代表取締役社長
津坂美樹
日本マイクロソフト
執行役員 常務 クラウド&AIソリューション事業本部長
岡嵜 禎
Microsoft Corporation
General Manager
Portfolio&Tech Sales Device Partner Sales
Gabe Gravning(ゲイブ・グラヴニング)氏

ハイブリッドAIの必要性と
ローカルAIに適したCopilot+ PC

日本マイクロソフト
業務執行役員 エバンジェリスト
西脇資哲

 続いて日本マイクロソフト 執行役員 常務 クラウド&AIソリューション事業本部長 岡嵜 禎氏が登壇し、ハイブリッドAI戦略について説明した。まず生成AIのキートレンドを示しながら「2023年は生成AIが業務にどのように活用できるのかを試行錯誤するPoC(概念実証)が多くの企業で実施されました。PoCを経て2024年は実際の業務に実装する事例が多く見られました。さらに2025年はビジネスの全ての領域で生成AIの活用が広がっていくとみています」と話した。

 そして「これまでの生成AIは主にテキストを入力してテキストを生成する使い方でしたが、これからは複数の言語モデルを組み合わせることで画像や映像、音声などのさまざまなデータを入力して、さまざまなデータを生成するマルチモデル、マルチモーダルによる革新が生成AIにもたらされます」と指摘した。

 さらに注目すべきトレンドとして「エージェント化の加速」を示し、「あたかも人がいるような感覚でAIと関わり、AIが自律的にさまざまな情報を処理して意思決定を行ってくれる世界が身近になります」と説明し、エージェント化の加速によってビジネスに変化と多くのメリットをもたらすことを強調した。

 AIのエージェント化が加速することでさまざまなAIエージェントが生み出され、Copilotはそれらを活用するためのユーザーインターフェースになるという。そしてAIエージェントにはマイクロソフトが提供する「ビルドイン型エージェント」と、パートナーが提供する「サードパーティー型エージェント」、ユーザーの要望に応じて作られる「カスタマイズ型エージェント」の三つの提供形態があるとし、いずれもマイクロソフトが提供する環境でこれらが実現されると説明した。

 またカスタマイズ型エージェントにはプロの開発者向けと、業務の現場のユーザー向けの二つがあり、開発環境としてマイクロソフトは前者に「Azure AI Foundry」が、後者にローコード・ノーコードで使える「Copilot Studio」を提供している。

 AI活用にはクラウドに向くワークロードとエッジに向くワークロードがあると指摘し、「どちらか一方を活用するのではなく、エッジとクラウドの両方のテクノロジーを組み合わせて活用すべきです」とハイブリッドAIの重要性を強調した。

 ハイブリッドAIにおけるエッジデバイスでのAI活用が「レスポンスの速さ」「ローカルでも完結する機密性」「コスト削減」の三つのメリットをもたらすことを示し、医療や製造、金融、公共のそれぞれの分野での活用例を挙げて説明した。

 そしてエッジデバイスでのAI活用について岡嵜氏は「通常のアプリケーションとAIの処理を全てCPUで行うと、AIの処理中にほかのアプリケーションの処理が止まってしまいます。そこでCopilot+ PCにはAI処理専用のNPUというプロセッサーを搭載して、AI処理をCPUから開放します。しかもCopilot+ PCに搭載されるNPUはAI処理を高速に行える性能を備えています」とアピールした。

 さらに「ローカルでAIを処理するにはエッジデバイスに小規模な言語モデル(SLM)を搭載して動作させる必要があります。Copilot+ PCにはローカルのNPUでの実行に最適化されたSLMである、マイクロソフトのPhi Silicaを標準で搭載しています」と説明して、マイクロソフトのSLM(Phi)とOpenAIのLLM(GPT4)で同じプロンプトを実行して生成スピードを比較するデモを披露し、Phiの性能の高さを示した。

Windows 10のサポート終了は
Copilot+ PCを導入する好機

 マイクロソフトでポートフォリオ&テックセールス デバイスパートナーセールスのゼネラルマネージャーを務めるゲイブ・グラヴニング氏が登壇し、Windows 10が今年10月14日にサポート終了を迎えることを訴えかけた。

 グラヴニング氏は「コロナ禍の際に導入されたWindows 10搭載PCは4〜5年が経過しています。古いPCはセキュリティリスクや競争力の低下、コスト増加などのデメリットをもたらします。Windows 10のサポート終了を機に、最新のWindows 11 Proを搭載するCopilot+ PCにリプレースすべきです」とアドバイスした。

 そのメリットについて「古いデバイスほど攻撃されやすく、Windows 11 Proにリプレースするだけでセキュリティを強化できます。またWindows 11 Pro搭載PCは最新のAI機能を提供し、ビジネスの分析力や効率向上により競争力を高めます。そして古いデバイスは維持に時間がかかり、セキュリティ対策にもコストがかかります。最新のWindows 11 Pro搭載PCにリプレースすることで、これらの時間とコストが削減でき、社員の生産性と満足度の向上にもつながります。そしてWindows Autopilotを活用することで手間をかけずに効率良くWindows 11 Pro搭載PCを展開できます」とアピールした。

 Windows 10搭載PCのリプレースに最適なCopilot+ PCには、従来のPCと異なる新しいアーキテクチャが採用されている。そのアーキテクチャは半導体から設計され、40TOPS以上のAI処理性能を持つNPUを3社の世界トップの半導体メーカーと連携して実現し、搭載している。

 さらにWindows OSに加えてローカルでのAI処理に最適化されたSLMもCopilot+ PCにあらかじめ組み込まれており、このアーキテクチャをパートナーや開発者に広く開放することでより多くのAI体験が提供されるというエコシステムを構築している。マイクロソフトはすでに100社以上の開発パートナーと協業しており、NPUを活用するAIアプリケーションが今後も続々と市場に投入されるという。

 その一例としてグラヴニング氏はブラックマジックデザインの映像編集ツール「Davinci Resolve」とマカフィーのセキュリティツール「McAfee Deepfake Detector」をCopilot+ PCで動作させるデモを披露した。

 そのほかWindows検索やリコール、スーパー解像度、さらにはOutlookでの文章作成をオフラインで支援する機能など、マイクロソフトがCopilot+ PCに提供するビルドイン型エージェントを紹介した。

 続いて日本マイクロソフト 業務執行役員 エバンジェリスト 西脇資哲氏が登壇し、グラヴニング氏が紹介したマイクロソフトがCopilot+ PCに提供するAIエージェントや、NPUを活用したAI機能のデモを披露した。そしてこれらのAIエージェントをビジネスで活用するのに適したCopilot+ PCとして、PCメーカー9社がそれぞれ法人向けCopilot+ PCを紹介した。

ASUS JAPAN
ASUS ExpertBook P5(P5405CSA)

岡林隆樹
ASUS JAPANで初の法人向け製品。オンライン会議での議事録の作成や不特定多数の話者の声を認識して要約、画面に「コンフィデンシャル」や名刺情報を表示してスクリーンショットの無断使用を防ぐ「ウォーターマーク」、翻訳など独自のAIエージェントを搭載している。Copilot+ PCを20万円(税込)以下の価格からラインアップしている。
サードウェーブ
THIRDWAVE F-14LN5LA-B法人モデル

鈴木由希子
創業40周年を迎えたサードウェーブは法人向けPCとワークステーションを「THIRDWAVE」と「raytrek」で展開。神奈川県綾瀬市の工場から最短翌日出荷している。THIRDWAVE F-14LN5LA-Bは14インチで1キロを切る950gと薄型軽量ながら、MIL-STD-810H準拠の堅牢性と連続動画再生7時間のバッテリー駆動時間を実現している。
Dynabook
X94

貞末文子
1月23日に発表されたX94は14型モニター搭載のプレミアムノートPC。一般的なドライバー1本で内蔵バッテリーをユーザーが自身で簡単、安全に交換できる「セルフ交換バッテリー」機構を採用している。バッテリー単体をオプションで販売しており、バッテリーが劣化や消耗しても交換することで使用を続けられる。4月中旬に発売予定。
デル・テクノロジーズ
Dell Pro 13 Premium

若杉歌乃
隙間がほとんどないキー配置でキーの面積が大きくタイピングしやすい「ゼロラティスキーボード」を搭載。オンライン会議の使用中にミュートのオン・オフや資料共有がタッチパッドからワンタッチで行える「コラボレーションタッチパッド」も備える。USB Type-Cコネクターをネジで交換できる「モジュラーUSB-C」を世界初搭載。
日本HP
HP EliteBook X G1a 14 AI Notebook PC

岡 宣明
AMD Ryzen AIプロセッサーを搭載し、最大55TOPSのNPUによる高性能はAI処理を実現。5G/LTEでのワイヤレス通信が追加料金不要で5年間利用できる「HP eSIM Connect」も利用可能。自社のセキュリティラボで開発した次世代MDM「HP Protect and Trace with Wolf Connect」により5GやLTE、Wi-Fiにつながっていなくても遠隔操作できる。
NEC
VersaPro タイプVZ

加藤賢一郎
予定表と連携した独自のスケジュールAIと行動予測AIによりバッテリーを自動制御する。スケジュールAIがユーザーの予定に合わせてバッテリー消費を抑えたり、行動予測AIがユーザーの行動パターンやPC利用時間を学習して充電を管理したりすることでバッテリーの駆動時間と寿命を伸ばす。HDMIに加えてUSB Type-AとType-Cを二つずつ装備する。
日本マイクロソフト Surface Pro 第11世代
Intel Core Ultra/Qualcomm Snapdragon

中島史晶
SurfaceのCopilot+ PCにはSurface ProとSurface Laptopがラインアップし、それぞれIntel Core UltraとQualcomm Snapdragonがある。画面の比率(アスペクト比)をWindowsやOfficeを使いやすい3:2にするなど、使い心地の良さが特長。Microsoft IntuneのSurface専用の管理ポータルにより、保証の確認や修理の依頼など管理の手間も軽減できる。
マウスコンピューター
MousePro G4-I7U01BK-E

小山香菜
マウスコンピューターの法人向けブランドであるMousePro G4シリーズで最軽量の約946gを実現。薄型軽量ながら米国防総省のMILーSTD-810H準拠の堅牢性も備える。対応エリア内で約300Mbpsのダウンロード速度を提供するSIMカードとeSIMに対応したLTE通信モジュールも追加可能。3年間のセンドバック無償修理保証が付属し、最大5年間まで延長可能。
レノボ・ジャパン
ThinkPad T14s Gen 6 Strix Point

元嶋亮太
さまざまな使い方に応じて最適な1台を選べる業界最大級の豊富なラインアップの中で、ハイブリッドワークに最適なバランスの取れた製品。14インチ 16:10の大画面、4辺狭額縁、大容量バッテリー、500万画素のカメラ、Wi-Fi 7などを約1.3kgの軽量薄型の筐体に凝縮。高性能なプロセッサーと最大64GBのメモリーによりAIをローカルで快適に利用できる。
5.Copilot+ PC Dayに出展したPCメーカー9社の法人向けCopilot+ PC。
6.基調講演でCopilot+ PCを使ったローカルAIのデモを披露する西脇氏。写真は「リコール」を操作している様子。