日本発AIインフラ構想始動
3社で国家規模開発を推進

AIの活用拡大に伴い、世界各国でAIデータセンターの整備競争が激化している。一方で、大規模なAIインフラの開発には膨大な電力の確保や複雑なサプライチェーンの調整が必要となり、迅速な立ち上げが課題となっている。こうした中、JERA、デル・テクノロジーズ、RHAELMの3社は、日本における国家規模のAIインフラ開発の加速に向けた覚書(MOU)を締結した。第1号案件として、JERA千葉火力発電所を活用した最大40万kW規模のAIデータセンター開発を推進する。本記事では、2026年10月1日に開催されたメディアブリーフィングおよび覚書締結式の模様を紹介する。

AI時代の基盤整備へ
3社が描く連携の狙い

デル・テクノロジーズ
日本法人代表取締役社長
ジョン・ロボトム 氏

 締結式に先立ち開催されたメディアブリーフィングでは、デル・テクノロジーズ 日本法人の代表取締役社長を務めるジョン・ロボトム氏、RHAELM 日本法人の代表取締役社長 CEOを務める岡田正毅氏、JERAグローバル戦略室の原田勇翔氏が登壇し、今回の連携の背景や狙いを説明した。

 冒頭、ロボトム氏は、AIの普及に伴い、コンピューティング基盤だけでなく電力やデータセンターを含めたインフラ全体の最適化が重要になっていると指摘した。「AIは企業や社会にどのぐらい貢献できるのかという段階に入っています。コンピュータだけではなく、その周辺インフラも含めて最適化していくフェーズに入っています」

 そのうえで、「JERAさまのエネルギー供給力、RHAELMさまの知見、そしてデル・テクノロジーズのAIファクトリーを組み合わせることで、日本市場におけるAIイノベーションを加速していきたいと考えています」とロボトム氏は語った。

RHAELM
日本法人代表取締役社長 CEO
岡田正毅 氏

 続いて岡田氏は、3社連携においてRHAELMが担う役割について説明した。RHAELMは大規模AIインフラやデータセンターの開発・運営を担う企業であり、今回の取り組みではプロジェクト全体の組成や推進を担当する。岡田氏は「日本市場は我々にとって初めての開発プロジェクトになります。JERAさま、デル・テクノロジーズさま、そして私どもの知見を組み合わせることは、日本における最初のドリームチームの誕生ではないかと思っています。開発から運営まで責任を持って取り組み、日本のAIインフラ整備に貢献していきたいと考えています」と語った。

第1号案件は千葉から
標準化モデルを実証

JERA
グローバル戦略室
原田勇翔 氏

 続いて原田氏は、今回のMOU締結の狙いと、第1号案件となる「千葉火力発電所データセンタープロジェクト」の概要について説明した。

 AIインフラ開発には、電力系統への接続や新規電源確保に時間を要すること、電力・冷却・データセンター・AIコンピューティングの統合が難しいこと、案件ごとの個別設計や個別調達によって開発期間が長期化することなどの課題があるという。

 そこで3社は、燃料や電力といったエネルギー供給から、データセンター、AIコンピューティング基盤、さらにはAIが生み出す成果までを一つのバリューチェーンとして捉える「Molecule to Token」の考え方を提唱した。電力供給からAIコンピューティングまでを一体で設計・最適化することで、AIインフラの大規模かつ迅速な展開を目指すという。

 その具体的な第1号案件として進められるのが、JERA千葉火力発電所を活用したAIデータセンター開発プロジェクトである。本プロジェクトは、発電所に隣接する敷地を活用し、発電設備からオンサイト(ビハインド・ザ・メーター)で直接電力を供給する形態をとる。送電系統への新たな接続を待つことなく開発を進められるため、従来のデータセンター開発と比較して数年早い立ち上げが可能となるのだという。

 計画では、最大40万kW(400MW)の電力供給を想定しており、単一拠点のAIインフラ開発としては中国を除くアジア最大級の規模となる見込みだ。2028年から段階的に電力供給を開始し、2029年にはフル稼働を目指す。想定投資額は150億米ドル(約2.3兆円)以上で、RHAELMが開発・建設・運営および資金調達を担い、JERAが土地と電力供給基盤を提供する。

 千葉火力発電所データセンタープロジェクトは、単独案件ではなく、標準化モデルを実証するための第一歩として位置付けられている。JERAが国内に保有する22カ所の発電所も候補地として検討しながら、2030年代には日本国内で数百万kW規模のAIインフラ開発を目指す方針だ。

千葉火力発電所データセンタープロジェクトの概要。

締結式で示された期待
日本発モデルの可能性

JERA
代表取締役会長 Global CEO
可児行夫 氏

 メディアブリーフィングに続き、3社の代表者および来賓が登壇する覚書(MOU)締結式が執り行われた。

 冒頭、主催者を代表して挨拶に立ったJERA代表取締役会長 Global CEOの可児行夫氏は、本構想の立ち上げ経緯とエネルギーの重要性について説明した。「マイケル・デル氏、ならびにRHAELM幹部と会合を行い、AIデータセンターの設備、契約、運用モデルを標準化し、迅速かつ大規模に展開していく必要性について認識を共有しました。AIデータセンターには24時間365日の安全・安定的な電力供給が不可欠であり、世界中で『Speed to Power』が問われています。日本でこれを迅速に実現する最も現実的な解がLNGです。JERAは燃料の調達・輸送から受入、発電、電力供給までを一体的に運用しており、このバリューチェーンこそが強みとなります。千葉を皮切りに日本国内へ展開し、さらには世界へ発信できる日本発のモデルとして確立してまいります」

RHAELM
最高経営責任者 兼 最高収益責任者CEO&Chief Revenue Officer
ブラッド・ルイス氏

 続いて、RHAELM 最高経営責任者 兼 最高収益責任者 CEO&Chief Revenue Officerのブラッド・ルイス氏が登壇し、プロジェクト推進に向けた意気込みを語った。「現代経済においてAIを真に社会や地域経済へ貢献させるには、大規模で信頼性の高い電力とインフラ基盤が前提条件となります。解決すべきは実行リスクの低減と、スピード感を持った価値提供です。JERAさまの世界トップクラスの大規模電源と、デル・テクノロジーズさまの大規模な技術コンポーネントを、弊社のケイパビリティでつなぎ合わせ、一貫性と再現性のある形で提供してまいります。フィジカルAIや高度なロボティクスなど、AIの持つ豊かな可能性を日本経済の確かな成長につなげるため、誇りを持って本プロジェクトを推進します」

 式典では、デル・テクノロジーズ会長兼CEOのマイケル・デル氏からのビデオメッセージも上映された。「AIは自ら判断し行動する自律型システムへと急速に進化しています。これを国家規模で実現するには、電力、冷却、ネットワーク、コンピュート、ストレージが構想段階から一体となって機能しなければなりません。ゼロから設計をやり直すことなく複数サイトへ拡張できる標準化モデルこそ、デル・テクノロジーズが提供する価値です。この壮大な挑戦は1社では成し得ません。JERAさま、RHAELMさまとのパートナーシップは、日本のAIインフラの未来を支える強固な枠組みとなります」

ビデオメッセージを通じて、日本のAIインフラ構想への期待を示したデル・テクノロジーズ 会長 兼 CEOのマイケル・デル氏。
経済産業副大臣
髙木 啓 氏

 来賓として出席した経済産業副大臣の髙木啓氏は、3社連携への期待を次のように示した。「人口減少に直面する我が国が産業競争力を維持・向上させるには、AIをはじめとするデジタル技術の活用があらゆる産業で不可欠です。データセキュリティ確保の観点からも、大規模な計算資源が国内に立地することは極めて重要です。政府としても、クラウドデータセンターや蓄電池分野において2035年度までに約32.7兆円の官民投資を見込んでおります。既存の電力インフラの活用と設計・工事の標準化を掲げる本日の3社連携は、国内立地を加速させる極めて意義深い取り組みであり、全国への波及と日本経済の成長につながることを大いに期待しています」

 式典の最後には、JERA 副社長執行役員 Chief Global Strategist スティーブ・ウィン氏、デル・テクノロジーズ アジア太平洋地域(APJC)担当 プレジデント リチャード・マクロックリン氏、RHAELMのブラッド・ルイス氏によるMOUへの署名が行われた。

 電力、IT、データセンター開発の知見を結集した今回のプロジェクトは、日本のAIインフラ整備と国際競争力強化に向けた新たな取り組みとして、今後の展開が注目される。

左から、RHAELMのルイス氏、JERAのウィン氏、デル・テクノロジーズのマクロックリン氏。