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企業存続におけるデジタルの効果

企業存続におけるデジタルの効果

2022年05月11日更新

ニッポンの製造業の底力をデジタルで磨く

かつては世界にその存在感を誇っていた日本の製造業の影が薄くなって久しい。しかし2019年度における日本のGDPの業種別内訳では製造業は全体の2割程度を占めており、今も日本の産業、そして日本の経済を支えている。国内の製造業が勢いを取り戻せば、国内産業および国内経済の大きな成長につながる。本特集ではその方策について考察していく。

デジタルだからできる活動が生み出す
企業存続に向けたあの手、この手

OPINION

日本企業においてはデジタル化への取り組みが遅れていると以前より指摘されている。消費者の大半がスマートフォンを常に携帯し、インターネットを通じて即座に情報を得ることも発信することもできる現在では、ビジネスにおいても意識や行動を変えなければ顧客を失ってしまうことは多くの経営者が理解している。では今、何をすべきなのか、何から手を付けるべきなのか、日本デジタルトランスフォーメーション推進協会の代表理事を務める森戸裕一氏に話を伺った。

明確な目標があれば
デジタル化も進むはず

日本デジタルトランスフォーメーション推進協会
代表理事
森戸裕一 氏

 よく日本の製造業はデジタル化が遅れていると指摘される。しかし森戸氏は「グローバル展開している企業は海外にも拠点があり、海外の企業や顧客と取引する際にデジタルを活用するなど、遅れているという認識はありません」と否定する。一方で「ビジネスが国内で完結している企業においては取引先や顧客との距離が近く、やりとりに電話や出張、あるいはファクスで事足りており、これを遅れていると表現するのは難しいと思います」と話を続ける。

 そして「日本の製造業の改善活動は世界中から注目され、多くの企業が実践して生産性を向上させてきました。改善活動のように目標が明確ならば効率良く、効果的に活動できる素地があるのです。デジタル化においては目標が見えず、何をどうすればいいのか悩んでいるように見えます」と指摘する。

 また国内で完結している製造業では次のような傾向も見られる。取引先が固定化されているケースで、BtoBの取引なのでBtoCを考慮せずとも成り立つ。さらに大手メーカーは部品メーカーなど、下請け企業の生産の調整まで行うため、下請け企業はメーカーの指示に従って製品を作っていれば経営が成り立ってきた。

 しかし現在は品質の高い製品を大量生産すれば売れた人口ボーナス期から、人口オーナス期へと変わった。少子高齢化が進み人口が減り、働く人も買う人も減っている。しかも消費者の嗜好が多様化しており、大量生産しても売れない。大量生産をせず、働く人がいないため工場も減らしている。ものづくりから離れていく国内の製造業は、これからどのようにして生き残ってゆくのか。

顧客企業もIT企業も
20%を新規事業創出に

 国内の製造業が生き残る術は何か。森戸氏は次のようにアドバイスする。まずメーカーの指示に従って製品を作るのではなく、自分たちの頭を使って考え、独自の製品を生み出すことだ。ものづくりができる企業は決して多くはなく、新たにものづくりを始めようとしても、一朝一夕では実現できない。ものづくりは製造業の強みだ。

 では独自の製品をどのようにして生み出すのか。ここにデジタルの活用が求められるのだ。森戸氏は「個人がスマートフォンを使って行動している現在、消費者の意識や反応をダイレクトに、かつ容易に知ることができます。市場から入手したデータを分析してニーズを把握し、製品開発に反映してタイムリーに市場に投入すれば売れる可能性がぐっと高まります。引き続きデータを収集、分析し続けて変化に対応すれば、成長を継続、拡大することも可能です。ただしこうしたプロセスを人手で実践するのは難しいので、そこにデジタル化の必要性が出てくるのです」と話す。

 既存事業だけで生き残れないという危機感を持っているならば新しい事業の創出が必要だ。その取り組みをデジタルが支援するというイメージだ。

 では新規事業の創出に対して、どのような姿勢で取り組むべきなのか。森戸氏は「20%ルール」を提唱し、あくまでも目安ですがと前置きして「メーカーの下請けならば既存事業を引き続き経営の主軸としつつ、20%の資源で新しい事業に挑戦すれば、仮に失敗しても致命的な打撃は受けないでしょう。新規事業は最初から成功するとは限りませんので、挑戦を継続することが求められます。目標に向けた挑戦と、それを継続するためのリソースの目安が20%ということです」と説明する。

 またITを提供する企業においても「例えばIT企業がハードウェアビジネスからソリューションビジネスにシフトする場合、ハードウェアを手放しても従来の保守が80%の部分で継続します。残りの20%の部分でエンドユーザーとなる顧客の新規事業への取り組みをデジタルで支援するという挑戦も、IT企業の生き残りに必要でしょう」とアドバイスする。

業界や地域を超えた連携
言い訳できない環境づくり

 市場が求める製品を自社だけでは製造できないという悩みもあるだろう。また製品の製造までできるが、どのような魅力や付加価値を加えれば消費者が選んでくれるのかという企画力、作った製品を消費者に認知させるマーケティング力が自社にはないという場合もある。

 いずれにしても製造業ならば、例えば組み立ては自社で行い部品は他社から調達して製品を完成させることもできる。メーカーの下請けの中小企業でも、メーカーとなることが今や可能なのだ。また企画力やマーケティング力はそれに長けた企業と組めば互いに補完できる。このとき注意しなければならないのがパートナー選びだ。

 森戸氏は「同じ製造業とのパートナーシップならば同じ地域の企業とは組まない、企画力やマーケティング力でのパートナーシップならば必要としている業界とはあえて異なる業界の企業と組むなど、変化を扇情する組み合わせを狙うべきです」とアドバイスする。

 さらに普段の情報交換も大切だ。どの業界でも普段の情報交換を同業者としがちだが、それでは新しい情報や斬新な情報は聞こえてこない。同業者とのつながりも持ちつつ、ものづくりができない企業ともつながるべきだ。インターネットのコミュニティを利用すれば異なる業界の企業や異なる地域の同業者とつながることができるし、Web会議を利用すれば遠方とのコミュニケーションも容易に行える。

 森戸氏は「製品のアピールだけではなく自社のものづくりにおける技術力や、デジタル化への取り組みなど、あらゆるメディアを駆使して積極的に広報活動をして自社を知ってもらうことも必要です」とアドバイスする。

 最後に製造業に限らず国内企業のトランスフォーメーションの促進について「企業を支援する業界団体や組合、商工会議所、自治体、ビジネスを支える金融機関、士業などの専門家がデジタル化を進めることで、デジタル化に対して中小企業に言い訳をさせない環境を作ってしまうのです」と森戸氏は強調する。


“専門家がデジタル化を進めることで、デジタル化に対して中小企業に言い訳をさせない環境を作ってしまうのです”

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