さまざまな業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中にあって、まだ取り残されている分野が「現場」になる。
それは、製造業における品質検査や設備保全、保守点検、飲食やメディアなど、多くの担当者や管理者が現場に出向いて行う業務の数々だ。
こうした現場のDXが加速しない理由の一つが、現場に寄り添うITの不足だ。
現地で記録したメモや撮影画像を事務所に持ち帰って整理する作業は、まだ多くの現場で見られる日常的な風景になっている。
こうした課題を解決し、現場からDXを推進するのが、MetaMoJiのデジタルノートアプリ「GEMBA Note for Business」(以下、GEMBA Note)だ。

紙のノートをデジタル化する

 GEMBA Noteは、Windows、iOS、Androidに対応し、ペン入力を活用できるデジタルノート環境を提供する。写真やPDFの上にペンでメモを書き加えたり、紙やExcelで作成していた帳票のイメージをそのまま画面に表示したり、PCを使うことなく現場で書類作成まで完結できる。それに加えて、動画や音声を記録して、クラウドを通した遠隔地との情報共有も可能になる。

 手書き文字をテキストに変換できる日本語手書き入力「mazec」を標準で搭載し、ペンだけで現場での文字入力を可能にする。開発元のMetaMoJiによれば、mazecによる手書き入力は、紙に書くような感覚で手軽に利用できるという。キーボードの操作に不慣れな現場の作業員の中には、タブレットの画面に表示される仮想キーボードによる文字入力を面倒だと感じる人もいる。スマートフォンのフリック入力には慣れていても、タブレットで同様の操作は難しい。mazecなら紙に書く感覚で文字入力が行えるだけでなく、頭の数文字を書くだけで目的の言葉を呼び出せる推測変換機能も備わっており、全ての文字を打たなくてもスピーディーに入力できるため、文字入力のハードルを大きく下げている。

 また、現場での点検や記録の作業では、紙に印刷した図面や帳票などに文字を書き込んでいたため、従来の業務フローに近い形でデジタル化を進めなければ、現場DXは定着しにくいという。一般的なシステム化によって入力画面が一変してしまうと「どこに何を書けばいいか」が分かりづらくなり、現場に戸惑いが生まれてしまうためだ。こうした課題に応えるために、GEMBA Noteでは、自然な手書き入力に加え、使い慣れたExcelなどの帳票を見た目そのままタブレット画面に再現し、これまでの作業と同じ感覚で直感的に書き込める環境を実現している。紙のノートに近い環境を画面上に再現することで、現場が抵抗感なくスムーズにデジタルを受け入れられるようにしているのだ。

 GEMBA Noteでは、クラウド経由で現場とオフィスで情報を共有できる「シェアノート」から簡単にビデオ通話が行える「GEMBA Talk」を標準で搭載している。図面などの資料に複数人が同時に書き込める「Share」機能と連携して、映像と音声と手書きを組み合わせたスムーズな情報伝達が可能になる。

 GEMBA Talkでは、図面や資料を見ながら会話ができる画面共有や、共有している映像の特定の箇所をリアルタイムに指示できるレーザーポインター機能、背景を気にせず会議に参加できるバーチャル背景、人物の代わりに話者を明確にするアバター画像も設定可能だ。リアルタイムで現場の状況を音声と映像で共有できるGEMBA Talkにより、共同作業の生産性が向上する。また、報告や相談のために現場から事務所などに移動する必要もなくなるので、現場で働く人たちのワークスタイル変革にもなるのだ。

 GEMBA Noteのベーシック版では、同時に3名までの参加が可能で、連続通話時間は30分、同時に表示できる映像の数は1名に限られる。スタンダード版を契約すると、参加人数は30名に増え、70分の連続通話と5名までの映像表示が可能になる。さらに上位のプレミアム版になると100名までの同時参加と180分の連続通話に、10名までの映像表示を利用できる。

フィールドサービスの働き方を改善

 GEMBA Noteによるワークスタイル変革の効果は、フィールドサービス分野で顕著だ。ある企業の実績によれば、それまで現場でできる作業は全体の作業時間の10%にも満たなかったという。

 その企業では、GEMBA Note導入以前、現場で点検や記録、撮影を行い、その内容を紙の画面帳票に手書きで記録した後、会社に戻って報告書を作成していた。GEMBA Noteを導入した結果、これまでの業務の60%以上を現場で完結できるようになった。

 その大きな要因の一つが、現場で撮影した写真データの取り扱いの効率化だ。従来は、デジタルカメラで撮影した画像データを会社へ持ち帰り、PCに取り込んで帳票や報告書へ反映させる必要があった。それに対してGEMBA Noteでは、タブレットのカメラで撮影した画像をそのままデジタル化された帳票に貼り付けられるため、作業効率が大幅に向上した。

 また、タブレットで入力した手書き情報も全てクラウド経由で共有されるため、会社に戻ってPCを操作する必要がなくなる。さらに、これまで10日ほど要していた画像データの整理や書類作成も、3〜4日程度で完了できるようになったという。

 こうした現場DXの定着においては、世代を超えた役割分担も功を奏している。ITに抵抗がない20代の若手や、現場とデジタルの双方を理解する30代の中堅社員が推進役となってアプリを活用し、ベテラン社員や管理者は手書きUIを生かして指導や承認作業を行うことで、組織全体へ自然にデジタル活用が浸透していく好循環が生まれている。

人の判断を支える技術で現場DXを加速

 開発元のMetaMoJiは、2011年にiPad/iPhone 用の手書き文字変換機能mazec付きのメモアプリ「7notes」を個人向けに提供した。その後、2015年に大林組と共同でデジタル野帳「eYACHO」を開発し、その知見を生かしてGEMBA Noteを進化させてきた。

 同社では、「人の判断を支えるデジタル技術」を通して、現場の人が本来の力を発揮できるテクノロジーを追求してきた。ITは、詳しい人だけが使うのではなく、誰でもどこでも利用できて、そのメリットを当たり前に受けられるものでなければならない、と考える同社では、mazecやGEMBA Noteをこれからも進化させていく考えだ。近い将来には、AIでより多くの人たちが現場で自然な形でデジタル技術を活用できる開発を進めている。

 今でも、現場で手書きの紙の図面や帳票とデジタルカメラで業務を行っている風景があるならば、そこは全てGEMBA Noteを提案できる魅力的な市場といえるだろう。