AIを活用した工事写真管理で
現場の負担軽減を目指す福岡市
工事写真の管理は、工事事業者にとって負担になっている。
撮影後は人力で写真を整理するため、膨大な仕分け業務が発生してしまうのだ。
また撮影枚数が多いために、必要な箇所の撮り忘れが発生することもある。
そのため仕分け業務の時間を減らし、撮り忘れをなくすためには、効率的な工事写真の管理方法を見つけなければならない。
そこで今回は、ルクレと共に工事写真管理の負担軽減を目指す、福岡県福岡市を取材した。
福岡県福岡市

福岡県の西部に位置する人口167万2,066人(2026年9月1日時点)の都市。白い砂浜の人口ビーチが続く「シーサイドももち海浜公園」、1929年に開園した全国有数の水景公園「大濠公園」、白亜の貝殻型の外観が特長な「マリンワールド海の中道」、海浜タワーとしては日本一の高さを誇る「福岡タワー」といった観光スポットを有する。
写真提供:福岡市
写真の仕分けや撮り忘れが課題に
工事事業者の負担となっている業務の一つに、工事写真の管理がある。現場で大量の写真を撮影するため、写真の整理に時間を要するほか、必要な写真の撮影を忘れてしまうこともあるのだ。
福岡県福岡市でも、下水道工事における出来形・品質・安全管理などの確実性を担保するため、「福岡市写真撮影要領(下水道)」に基づいた各施工段階の写真提出を求めている。そのため各工事現場において、写真管理に関する課題が発生していたのだ。そこで同市は、現場の作業負担軽減や撮影漏れの防止を図るためのプロジェクト実施を決定した。
本プロジェクトは、同市と民間事業者をつなぐ「mirai@」(ミライアット)の下で実施している。福岡市 経済観光文化局 創業推進部 企業連携担当 課長 髙村氏は、mirai@の詳細をこう説明する。「mirai@とは、当市が運営している公民連携のワンストップ窓口です。行政だけでは解決できない課題に対し、民間企業の持つ技術やアイデアを活用して、共に解決する取り組みを行っています」
福岡市はmirai@を通して、公共工事の現場をフィールドとした、建設テックの実証プロジェクトを募集した。募集したプロジェクトテーマは三つあり、その中に公共工事の写真管理の効率化もあった。
福岡市 道路下水道局 総務部 政策調整課 課長 渡邊氏は、写真管理の効率化を実証プロジェクトに選んだ背景を次のように語る。「福岡市の道路下水道局では、地場の建設業をターゲットにした生産性向上の支援を行っています。今までにスタートアップ企業のマッチングイベントを実施したのですが、そうしたイベントでの意見交換の中で、工事写真の管理や整理に関するニーズをたくさん聞きました。それを踏まえて、工事写真管理の効率化に関するプロジェクトを開始した形です」
要望に合わせてシステムを改善
工事写真の整理は工事が終わってから行われるため、時間外労働の大きな原因になっていた。さらには写真の撮り忘れも課題として挙がっており、こうした現状を踏まえた上で解決策の公募が行われた。そこで採択された企業の一つが、ルクレだ。
ルクレは自社で提供している建設DXプラットフォーム「蔵衛門」シリーズを活用して、今回の実証プロジェクトを行っている。プロジェクトは実証企業の工期に合わせて、2026年6月16日から開始した。なお、終了予定は2027年の3月となっている。
今回の実証は福岡市が発注する下水道工事が対象となっており、工事事業者はデータストレージ「蔵衛門クラウド」と現場用デバイス「蔵衛門Pad」を利用する。写真を撮るだけでAIが自動仕分けを行ったり、クラウドでリアルタイムに写真の共有ができたりする蔵衛門シリーズによって、業務の効率化が図れるかを検証しているのだ。
蔵衛門Padについては、本実証では6.7インチの頑丈スマートフォン「蔵衛門Pocket Tough」と、8インチの頑丈タブレット「蔵衛門Pad Mini Tough」を利用している。ルクレ 事業本部 サービス営業部 カスタマーサクセスGr. 韮澤奏人氏は、実証に蔵衛門Pocket Toughを選択した理由について次のように話す。「下水道工事における実証のため、マンホールの中といった暗い場所での作業を想定して、本体背面に大光量LEDライト『くらくらビーム』を搭載する蔵衛門Pocket Toughを選択しました。下水道管内でフラッシュを使うと、蒸気が反射して写真がちらつくことがあります。しかしくらくらビームであれば、定常光でずっと照らせるため、ちらつきのない写真が撮れるのです。加えて頑丈スマートフォンのため、片手で写真撮影ができます」
韮澤氏は続けて、蔵衛門Pad Mini Toughを実証で使う理由をこう語る。「蔵衛門Pad Mini Toughは画面が大きいため、図面の詳細を確認する際に使ってもらうことが多いです。もう一個の端末が小型の蔵衛門Pocket Toughのため、それに対して大型の蔵衛門Pad Mini Toughを貸し出しています」
またルクレ 事業本部 サービス営業部 カスタマーサクセスGr. 嶺井枝里香氏は、今回の実証についてこう補足する。「2社の建設業さまが実証に参加しており、1社は蔵衛門シリーズの利用経験がある企業さまで、もう1社は全く使ったことのない企業さまです。それぞれでどういった違いがあるのかも併せて検証しつつ、利用経験のある企業さまについては、蔵衛門で改善してほしい点を事前にヒアリングしました。その意見を踏まえてシステムを一部新しくし、現在実証を行っています。撮り忘れの課題については、福岡市さまが写真撮影要領の煩雑だった部分を整えてくれました。そのため当社は、整えられた基準を蔵衛門に組み込むことができています」

現場が新しい技術へ触れる機会に
渡邊氏は、プロジェクトに対する現時点での反響をこう話す。「写真データの取り込みや仕分け作業が自動で行えるようになれば、建設現場における業務の効率化が進むのではないかと思っています。現時点(2026年8月時点)ではまだまとまった成果は出ていませんが、今回の取り組みについて、市内の建設業に関心を持ってもらえています」
最後に韮澤氏は、本実証を踏まえたルクレの展望を次のように語る。「デジタル化が十分に進んでいない地域は、まだ多いと認識しています。自治体さまで写真撮影要領を整えてもらえれば、蔵衛門にその要領を組み込むことができるため、地場の事業者さまが使いやすい環境を提供可能です。今後もより多くの事業者さまが使いやすいシステムの提供を目指します」
渡邊氏も、本実証を踏まえた福岡市の展望をこう話した。「今回の実証は、現場が新しい技術に触れる非常に良い機会になっています。そのためこの実証を通して、建設業における生産性向上の関心が高まり、技術導入のさらなる機運が醸成されることを期待しています」

