矢野経済研究所は国内の従業員エンゲージメント市場を調査し、従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウドの市場規模予測を公表した。
2025年の同市場規模は、事業者売上高ベースで前年比119.7%の133億2,000万円と推計した。2026年の同市場は、前年比118.6%の158億円になると見込まれる。
この市場拡大をけん引するのが、従業員エンゲージメントサーベイに対する企業ニーズの変化だ。多くの企業では、従業員エンゲージメントサーベイの導入から数年が経過し、導入後の効果測定が行われるタイミングを迎えている。エンゲージメントスコアを計測するだけでなく、計測結果を基に改善することへのニーズが高まっているのだ。従来はエンゲージメントスコアを計測するサーベイクラウドサービスのみを契約していた企業が、計測結果に基づく従業員エンゲージメント向上のための支援機能を備えたパッケージプランに切り替える動きが増加している。
さらに、2026年2月には「企業内容等の開示に関する内閣府令」などが改正された。人的資本の情報開示方針の変更が重なったことで、計測から改善へつなげたいというニーズは一層高まっている。エンゲージメントスコアは、企業にとって経営戦略・人材戦略の成果を測り、改善し続けるための経営指標へと位置付けが変わりつつあるのだ。従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウドの市場規模には含まれないが、こうしたニーズの高まりを背景に、伴走支援やコンサルティングサービスを合わせて導入する企業も増加傾向にある。
2030年にかけて市場の伸び率は緩やかに
市場拡大の一因として、地方企業や中堅企業による従業員エンゲージメントサーベイの新規導入も挙げられる。直近1〜2年で採用難や人手不足への危機感は一気に強まった。とりわけ人口減少が顕著な地方企業では採用難の課題は深刻であり、人材確保のハードルは高まるばかりだ。また、従業員数が相対的に少ない中堅企業では、社員1人の退職が事業に与える影響も大きくなりやすく、人材流出に対する危機感が強まっている。こうした環境下でも業績を維持・拡大していくために、新たな採用施策に依存するだけではなく、従業員数300〜1,000人規模の企業を中心に、在籍している従業員の意欲向上や生産性向上へと目を向ける動きが広がっているのだ。
前述した企業ニーズの変化と、地方企業を中心とした従業員エンゲージメントサーベイの新規導入の拡大は、今後数年間にわたって継続することが見込まれる。一方で、このニーズの変化によって、サーベイクラウドサービス本体ではなく、コンサルティング領域やエンゲージメントスコア以外の人材情報も統合的に活用できるタレントマネジメントシステム領域への注目が高まる可能性もある。こうした状況を踏まえて、矢野経済研究所は2030年にかけて市場規模の伸び率が落ち着いていくと予測している。


