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MM総研の調査から自治体のICT投資に関する現状が明らかに!

MM総研の調査から自治体のICT投資に関する現状が明らかに!

2022年10月25日更新

DX投資が2025年度まで年平率6.7%で成長
最新の自治体ICT投資動向で見えた現状

本連載ではこれまで、住民サービスの向上や庁内の業務効率化などを目的にICTを活用して、さまざまな取り組みを進める自治体を取材してきた。自治体DXの推進によってその動きはさらに加速するとみられるが、ICTへの投資は実際どれくらい行われているのだろうか。MM総研が2022年3月に行った「自治体ICT投資動向調査」の結果から自治体のICT投資の現状が見えてきた。

ICT投資額は2025年度で5,684億円

 自治体DX、行政のデジタル化などをキーワードに、多くの自治体でICTの活用が積極的に進められている。とはいえ、実際のところ各自治体ではICTへの投資にどれくらい重きが置かれているのだろうか。MM総研が行った「自治体ICT投資動向調査」を通して自治体のICT投資に関する現状が明らかとなった。

 本調査は自治体を人口規模別に分類し、2022年3月に電話ヒアリングを行い、356の自治体から回答を得たものだ。なお、この調査のICT投資額は、ハードウェア、ソフトウェア、ICTサービス、その他経費(通信費、消耗品費用、調査研究費など)を指す。

 まずは、自治体におけるICT投資総額の推移から見ていこう。本調査では、2021年度のICT投資額、2022年度のICT予算額、2023年度以降のICT予算方針についてヒアリングし、この結果と回答を得た自治体の人口から、自治体規模に応じて住民1人当たりのICT投資額を算出し、全国の自治体による投資総額を推計している。分析の結果、2021年度の投資総額は5,141億円、2025年度には5,684億円まで成長する見込みだとMM総研はみている。

 総務省が2017年度まで実施していた「市区町村における情報システム経費の調査」によれば、自治体のICT投資総額は年々減少傾向にあり、2017年度時点で4,786億円だった。本推計結果と単純比較はできないが、総務省が推進してきた自治体DXや新型コロナウイルス感染防止対策などで拡大基調に転じたようだ。岸田政権も2021年度補正予算で、地方のデジタル化推進を目的に「デジタル田園都市国家構想推進交付金」として200億円を盛り込んだ。一部を政府が補助する形のため、自治体の支出を合わせるとICT投資額を300億円程度押し上げるとみられる。

DX関連投資が成長

 投資分野の内訳についても徐々に変化していくとみられる。調査結果をもとに推計すると、既存システムの維持などに向けられていた投資は、2025年度まで年平均マイナス1.2%で減少する。一方、DX投資の3領域は年平均6.7%で成長する見込みだ。DX投資の3領域とは、次の三つを指している。

①コラボレーションデジタル:デジタル技術を駆使しながら、産官学連携を進め、新たな事業モデルを創出すること。

②ワークロードデジタル:デジタルを活用して新たな住民サービスの創出や業務効率化などを実現すること。電子申請、LINE、RPAなどの活用もここに入る。

③モダナイゼーション:既存システムをクラウドにリフトもしくはシフトするなどデジタル技術を活用可能な状態にすること。自治体クラウド、今後導入が進むガバメントクラウドも該当する。

 従来システムへの投資削減分、コロナ禍で政府から複数発出された補助金や交付金がこの3領域に充てられているようだ。2021年度実績ベースでは、ICT投資に占めるDX投資比率は44%であったが、2025年度には52%と過半を占め、従来型投資を上回る見込みだ。

84%がガバメントクラウドを検討

 自治体がデジタル活用やDXを進める上で重要となるのが、政府が整備する共通システム基盤「ガバメントクラウド」だ。自治体は個別に運用してきた業務システムを、2025年度末までにデジタル庁が主導する標準準拠システムに移行する。この基盤にガバメントクラウドが用いられる。

 自治体のガバメントクラウドの検討状況は84%が「利用を検討している」と回答。利用を検討している自治体のうち、移行業務の調達公示時期を尋ねると、2024年度以降が55%と半数以上を占めた。「未定」も36%となっている。移行が先送りや時期未定となる背景には、システムの詳細な仕様が分からないという点が挙げられる。

 ガバメントクラウドの整備や標準準拠システムの仕様策定はデジタル庁を中心に進められている。実現可能性を検証する先行事業も行われているが、実際にテスト運用を行う自治体の採択は、当初の予定より約2カ月遅れの2021年10月となった。こうした状況を考えると、ガバメントクラウドへの移行は2024年度や最終年度の2025年度に集中する可能性があるとMM総研はみている。支援するITベンダーのリソースも不足し、スケジュール遅延や人件費高騰の懸念も出てくるだろう。

 これらの調査結果についてMM総研 研究主任 高橋樹生氏は次のようにコメントした。「政府全体として労働生産性向上や住民サービスの質の維持・向上を目指し、デジタルシフトが進むことは歓迎すべきです。遅れが懸念されるものの、デジタル庁はガバメントクラウドや業務標準化など、ICTインフラおよび従来サービス基盤のモダナイゼーションを進めています。一方、調査からも自治体はICT人材やノウハウの不足を課題として挙げており、これまでのように“ベンダー丸投げ”とならないか懸念が残ります。デジタル化をゴールとするのではなく『街や住民サービスをどうすべきか』という視点で技術を選び、実装する体制が必要となるでしょう」

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