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安藤ハザマの進捗管理にAzureベースの建機検出AIを開発した富士ソフト

安藤ハザマの進捗管理にAzureベースの建機検出AIを開発した富士ソフト

2021年03月31日更新

画像認識AI「Custom Vision」を活用し
建機検出による工事現場の進捗管理を実現

ICT技術を土木建築に応用して現場作業の効率化や省力化を実現する「i-Construction」。この取り組みにもクラウドが活用されている。富士ソフトは総合建設会社安藤・間とともにAzureベースのクラウド型「建機検出AIによる進捗レポート」を開発した。その需要と活用について見ていこう。

Lesson1 労働技能者の不足を生産性向上でカバー

 震災からの復興や都市の再開発など、建設業界では高い建設需要が続いている。その半面、人手不足や労働時間に対する規制強化など、取り巻く課題も根深い。

 間組と安藤建築が合併したことで誕生した安藤・間(以下、安藤ハザマ)の木付拓磨氏は「特に大きな課題となっているのが、労働技能者の不足です。少子高齢化が進むことでこれらの労働技能者も減少しており、今後10年の間で全体の約4分の1を占める60歳以上の労働技能者の大半がリタイアすると言われています」と語る。

 そうした労働技能者の不足をカバーしていくためには、生産性の向上を図る必要がある。しかし、ここにも建設業ならではの課題があると木付氏は言う。「建設業が手掛けるインフラ設備や建築、ビルやマンションなどは設計が全く同じではなく唯一無二のものばかりです。そのため作業がパターン化できず、生産性が上がらないという傾向にあります」と木付氏。

 こうした生産性の課題を解決するため、安藤ハザマではICT技術を土木建築に応用して現場作業の効率化や省力化を実現する「i-Construction」の取り組みを進めている。その取り組みの一つとして、工事現場に4Kの定点カメラを設置し、その映像をAI解析することで工事の進捗管理を効率化するシステムを開発した。

Lesson2 定点カメラ映像による進捗管理にAIを活用

 安藤ハザマを代表者とする映像進捗管理システム開発コンソーシアム(構成員:日本マルチメディア・イクイップメント、富士ソフト、計測ネットサービス、宮城大学)によって開発されたのが、「4K定点カメラ映像による進捗管理システム」。本システムの開発および試行は、国土交通省の2019年度「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」(PRISM)の業務として行われた。4K定点カメラ映像を活用し、映像の3D化と建機検出AIにより工事進捗を見える化して生産性向上を実現するシステムだ。

 建設現場では効率的な進捗管理に向けて、工事の施工状況を定点カメラで常時モニターし、現場事務所などの遠隔地から映像を通して現場状況の確認を行う事例が増えている。その一方、映像の情報だけでは工事の進捗状況を把握する上で、「工事の完成形状に対する進捗状況が直感的に分かりにくい」「施工量(盛土量等)や距離・面積などの定量的な情報が取得しづらい」「稼働しているダンプや建機の台数などの常に変化する情報を素早く把握できない」といった課題も生じていた。そこで、4K定点カメラ映像による進捗管理システムでは、上記の課題を解決するため、「映像に3Dデータを重ねて表示」「映像から距離や面積を算出」「建機検出AIによる進捗レポート」「オルソ画像の生成」の四つの機能を備えた。

 これらの機能の内、建機検出AIに用いられたのがMicrosoft AzureのAIサービス「Cognitive Services」内の画像認識AI「Custom Vision」だ。

Lesson3 短期間で精度の高いAI開発を実現

 建設現場ではダンプやバックホー、ブルドーザーなどの建機が出入りしており、その台数を数えることで工事の進捗状況が把握できる。「今回のシステムを試行したのは、東日本大震災で被災した岩手県の大槌川の水門の防潮堤復旧工事の現場です。防潮堤の中身は土でできており、土を現場の場外から10トンダンプで現場に運んできます。そのダンプが現場に何台来たかで進捗が分かるのです」と安藤ハザマの早川健太郎氏は語る。

 この建機検出AIを開発したのが富士ソフトだ。「今回の防潮堤復旧工事の期間は2021年3月までと期限が決まっていました。そのため早期に性能の高いAIを開発するべく、Custom Visionを採用しました」と語るのは富士ソフトの増田裕正氏。画像認識AIを開発する場合、膨大な教師データ(学習データ)に対してカテゴリー分けによるラベリングを人手で行う必要がある。その作業を集中的に行うためにも、ベースとなる技術の部分はCustom Visionを採用したという。

 実際に建機検出AIを開発した中では「現場自体が建機検出をするのにあたり非常に難易度が高い場所でした。道路にカメラを設置して行う交通量の調査などは、車の角度や進行方向が一定ですが、工事現場は建機の向きが固定できず、縦横無尽です。また、ショベルカーのようなアームの部分が動く機器もあり、さまざまな角度から網羅的にバランス良くデータを集める必要がありました。Custom Visionを活用することで、こうしたデータ収集に時間を割くことができ、短期間ながら精度の高い建機検出AIを開発できました」と増田氏は語る。

Lesson4 建機の稼働状況をグラフで可視化

 実際に開発された建機検出AIについて、安藤ハザマの早川氏は「進捗管理のためのカメラは従来も設置していましたが、録画データから進捗等を把握しようとすると動画を見返す必要がありました。建機検出AIを利用すれば自動的に、どの建設機器が何台稼働していたかなどをグラフで表示してくれます。例えば盛土作業をしているはずなのにバックホーが現場にいなければ異常が発生していることになるので直接現場に行って状況を確認できるのです」と語る。

 建機検出AIではこれらの進捗をWebブラウザー上で確認可能だ。クラウドベースのシステムのため、インターネットに接続する端末であればアクセスできる。富士ソフトの朝倉健介氏は「実際の計画に対する実績も可視化でき、工事の進捗遅れなども把握できます」と利用メリットを語る。

 建機検出AIの今後の展開について、早川氏は「今回の防潮堤復旧工事では進捗管理などで効果が得られましたが、今後はほかの建設現場で利用した際にも同じ精度が出るのかといった検証を進めていきます。建設現場は受注生産なので、工事現場はもちろんダンプの台数なども異なります。そうした変化した環境でもある程度の精度を確保できるよう、検証を進めていきます。また現在の建機検出AIでは3台のバックホーがカメラに写っていても、どのバックホーがどの作業をしているかといった区別はできていません。こうした個別の識別が可能になれば、より作業の進捗管理に貢献できるのではないかと考えています」と語った。

今月の講師

安藤・間
営業本部 営業第一部
首都圏営業グループ
主任
木付拓磨 氏

安藤・間
建設本部
技術研究所 先端・環境研究部
研究員
早川健太郎 氏

富士ソフト
MS事業部
MSサービス推進室長
フェロー
増田裕正 氏

富士ソフト
MS事業部
クラウドソリューショングループ
リーダー
朝倉健介 氏

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