顧客のDXを支援するために自らDXを実践
Power Appsを業務改善に生かすスキルを習得

富士フイルムBI福井

今回から始まる新企画「Case Study」では、ICTビジネスの最前線で展開されている最新のプロジェクトを日本全国からリポートする。今回は福井県からDXを実践するためのスキルを全社員が身に付けて、顧客のDX推進を具体的に支援していくという富士フイルムBI福井のプロジェクトを紹介する。

DX[DX教育 実践教育編]

DX推進に向けてMicrosoft 365を導入
Power AppsとPower Automateも活用

 富士フイルムBI福井は旧富士ゼロックスの全国で最初の県別特約店として福井県全域と滋賀県の湖北地区で40年以上にわたって事業を続けており、地域に密着した対応が顧客に評価されている。現在は富士ゼロックスが富士フイルムビジネスイノベーションおよび富士フイルムビジネスイノベーションジャパンに組織変更したことに伴い、同社の県別特約店として複合機を中心にビジネスを展開している。

 最近はICTが普及する中で、複合機とクラウドとの連携やAIおよびIoTなどのテクノロジーの活用など、デジタルソリューションへの需要が拡大しており、富士フイルムBI福井もドキュメントを基軸とした顧客の業務改善やDX推進を支援するソリューションサービスにも力を入れている。また同社自身も2023年度の経営方針で社内のDX推進の強化を重点テーマの一つに掲げており、2022年より本格的な取り組みを始めている。

 富士フイルムBI福井の代表取締役社長を務める古川利正氏は「富士フイルムグループには『言行一致』という文化が長年にわたって息づいています。お客さまに提案、提供する前に、我々が実践してノウハウを習得し、効果を確かめることを大切にしています」と、同社がDXを推進する背景を説明する。

 同社はDXを推進するに当たりMicrosoft 365を導入してペーパーレス化による効率化を図るとともに、マイクロソフトのローコード開発ツール「Power Apps」とRPAツール「Power Automate」を活用して業務やワークフローの改善にも取り組んでいる。

 Power Appsを活用するに当たり同社でDX推進を担当するソリューション&サービス営業部 部長 山村哲也氏は「DXの基礎的な概念もすでに理解していますし、Power Appsで業務アプリケーションをどのように作成するのかといった基礎学習はeラーニングなどで独学できます。しかしPower Appsを使って何ができるのかは、プロに教えてもらわなければ習得できません」という課題があったと指摘する。

 そこで同社は長年にわたってICT製品やサービスを購入してきたダイワボウ情報システム(DIS)に相談した。山村氏は「Power Appsを業務で活用できる実践的なスキルを身に付けたいと相談したところ、DISのDX教育サービスを提案してもらいました。DX教育サービスには当社が望んでいたPower Appsの実践的なスキル習得を目的としたプログラムが提供されており、体系的に学べることも評価して受講を決めました」と説明する。

富士フイルムBI福井 代表取締役社長 古川利正氏は社内と顧客のDX推進を自ら陣頭指揮を執る。
富士フイルムBI福井でDX推進を担当するソリューション&サービス営業部 部長 山村哲也氏
富士フイルムBI福井にDX教育サービスを提供したダイワボウ情報システム 福井支店の支店長を務める細田 卓氏
ダイワボウ情報システムでDX教育サービスを企画する経営戦略本部 情報戦略部 DX推進課 課長 田中秀尚氏

DX教育サービスの実践教育を受講
ステップ3のハッカソンを高く評価

 DX教育サービスには一般教育と実践教育の二つのコースが用意されており、それぞれ「知る」「理解する」「発想し試す」「実践とサポート」の四つのステップで体系的に学べる。富士フイルムBI福井が受講した実践教育はアプリケーションの作成手順書に沿ってPower Appsでの開発の基礎を学ぶステップ1、テンプレートを用いて業務改善のためのアプリケーション開発のノウハウをハンズオンで学ぶステップ2、デジタル思考でのアイデアの発想と整理から企画・提案、設計、開発までハッカソンで総合的に学習するステップ3、アプリケーションの内製化に伴う運用を学習し、技術支援を受けられるステップ4で構成されている。単にツールの使い方を学ぶのではなく、DXの推進で求められるデジタル思考による業務改善の考え方を習得し、そのアプローチから改善対象の業務アプリケーションを実際に開発して実践的なスキルを身に付ける内容となっている。

 ステップ1からステップ3を受講した同社の評価について山村氏は「一般的な研修では特定の手順が示されて、それに沿って一方的に進めていくのに対して、DX教育サービスは全て対面形式のハンズオンで進められ、手順書も受講後も活用できる実践的な内容となっており、とても勉強になりました」と喜ぶ。さらに「最も成果が大きかったのがステップ3でのハッカソンです」と強調する。

 ステップ3のハッカソンでは部門が異なる4名の社員を混在して二つのチームを編成し、Aチームは消耗品・パーツ管理アプリケーションを、Bチームは案件支援依頼受付アプリケーションを作成した。各チームのメンバーにはそれぞれリーダー、開発、作成、発表の役割が割り当てられ、要件定義から開発、資料作成、発表を実践した。

DX教育サービスの受講風景。写真はステップ3のハッカソンで富士フイルムBI福井の2チームがPower Appsを使った業務を改善するアプリケーションを開発している。

受講の成果を社内に展開
デジタル思考が社内に広がる

 Aチームで消耗品・パーツ管理アプリケーションを作成した山村氏は「従来はメーカーから入庫する部品をバーコードリーダーで読み取ってデータベースに登録して管理していましたが、バーコードリーダーの台数が少ないため効率が悪いという課題がありました。そこで会社から貸与されているiPhoneのバーコードリーダー機能を活用して効率化したいと考えました。するとPower Appsにバーコードを読み取るツールがあることを講師からアドバイスいただき、わずか数時間で課題を改善できるアプリケーションが出来上がりました。現在、実際の業務での活用に向けてブラッシュアップしています」と成果を説明する。

 古川氏は「以前より業務改善コンテストを実施していますが、最近はMicrosoft 365とPowerAppsやPower Automateを活用したアイデアが増えており、これもDX教育サービスで実践的なスキルを習得できた成果の一つだと考えています。例えば営業情報を集計する際に従来はSFAのデータをExcelに読み込ませて行っていましたが、Power Automateで作業を自動化したところ1時間ほどかかっていた作業がわずか数秒で完了できるようになりました。これは個人の業務の改善ですが、こうしたアイデアを全社に広げて社内でのDXを推進し、お客さまのDXの支援に生かしたいと考えています」と今後の展望を語った。

DX教育サービスのステップ3のハッカソンにおいて作成された消耗品・パーツ管理アプリの画面。現在、実際の業務での活用に向けてブラッシュアップしている。

Company Profile │ 会社概要

富士フイルムBI福井株式会社 (https://www.fujifilm-fbfukui.com/)
本社:福井県福井市板垣5丁目904番地
設立:1982年9月
従業員数:95名(2023年4月1日時点)
主な事業内容:富士フイルムBI製品(デジタルカラー複合機・ソフトウェア・関連諸製品)の販売および保守サービス、PC・ソフトウェアの販売ならびにネットワーク環境の構築・保守サービス・サポート