04
次期モデルCPUでは“世代”や“i”名称を
廃止してPCやCPU選びを分かりやすく!

インテルCPUのラインアップ、製品名が変わる
上位のCore Ultraと標準のCore

これまでインテル製CPUの進化は「世代」という言葉で表現され、そのCPUが新しいモデルなのか、あるいは以前のモデルなのかを見分ける際に「世代」が使われてきた。その「世代」は第13世代となる開発コードネーム Raptor Lakeが最後になるという。第14世代の次期インテル Core プロセッサーでは世代だけではなく「i」も使われなくなるという。

次期モデルとなる第14世代インテル Core プロセッサー、開発コードネーム「Meteor Lake」が今年後半に正式に発表される。Meteor Lakeにはタイル型アーキテクチャと呼ばれる全く新しいアーキテクチャが採用される。

半導体の微細加工技術の進歩で
これからもムーアの法則が続く

インテル
上野晶子

 前項の最後に、これからもインテル製CPUの進化が続いていくと述べ、次期モデルとなる第14世代インテル Core プロセッサー、開発コードネーム「Meteor Lake」が今年後半に正式に発表されると伝えた。

 これまでにインテルが発表した情報によると、Meteor Lakeには全く新しい「タイル型アーキテクチャ」と呼ばれるテクノロジーが採用される。これは複数の異なる機能のチップがタイル状に配置されて一つのパッケージで提供される、つまりSoC(System on a chip)として機能するというもの。

 タイルにはコンピュート・タイル、SOCタイル、GPUタイル、IOタイルなどがあるという。コンピュート・タイルには高性能化された新開発のE-coreとP-coreが搭載される。SOCタイルにはより省電力化された新開発のE-coreやAIエンジンとなるNPU(Neural network Processing Unit)が初めて内蔵されるほか、Wi-Fi 6EおよびWi-Fi 7にも対応する。

 またコンピュート・タイルは「Intel 4」と呼ばれる製造プロセスで生産される初めての半導体となる。第11世代のインテル Core プロセッサーは14nmプロセスで、第12世代および第13世代は10nmプロセスで生産されている。これらとは数値の定義が異なるため直接比較することはできないが、これらに対してIntel 4の微細化(高集積化)は大幅に進んでいる。

 半導体の製造プロセスの数値が小さくなる、すなわち半導体の素子であるトランジスタの微細化によってチップの面積当たりに配置できるトランジスタの数が増える(集積化が進む)ことで、同じサイズのチップ比で計算処理性能が向上し、CPUの動作速度の向上と高機能化が進み、同時に消費電力を低減できるというメリットがある。

 有名な「ムーアの法則」では「一つのチップ上の素子数は2年で倍増する」としているが、これまでこの法則の通りにインテル製CPUは進化を続けてきた。インテルが公表している製造プロセスのロードマップによると第14世代の開発コードネーム Meteor Lakeでは前述の通りIntel 4が採用され、その次の第15世代となる開発コードネーム「Arrow Lake」では「Intel 20A」が採用される。Intel 20Aの高集積化はIntel 4に対して2倍以上進むというイメージだ。さらに「Intel 18A」による量産も計画されており、こちらはIntel 20Aに対してさらに2倍近くの高集積化が進むとみられる。

 このようにインテルのCPUの高集積化は今後も進み、CPUの性能向上と高機能化、省電力化が続いていくとみられる。つまりこれからもインテル製CPUはムーアの法則を維持しながら進化を続けるため、今後も最新のCPUを搭載するPCがビジネスにより大きな価値をもたらすという程式が成立し続けるといえる。

製品名から「世代」表記が消える
Core UltraとCoreの二つでシンプルに

 ここまでインテル製CPUの新しさを見分ける基準として「第XX世代」という言葉を使ってきた。本稿執筆時点の最新型は第13世代であり、これから正式発表が予定されている開発コードネーム Meteor Lakeはこの数え方からすれば第14世代に当たる。

 しかしインテルでは次期インテル Core プロセッサーから第XX世代という名称は使わないと発表している。つまり開発コードネーム Meteor Lakeは第14世代とはならないことになる。

 開発コードネーム Meteor Lakeからはインテル製CPUの名称は「インテル Core Ultra プロセッサー」と「インテル Core プロセッサー」の2種類になるという。インテル Core Ultra プロセッサーが上位モデルとなり、その世代で最も性能が高いモデルシリーズとなる。一方のインテル Core プロセッサーがその時代のスタンダードなモデルシリーズとなる。

 そしてインテル Core Ultra プロセッサーには「5」「7」「9」がラインアップし、インテル Core プロセッサーには「3」「5」「7」がラインアップする。従来の「i」という名称も使われなくなり、数字のみで各モデルシリーズのグレード分けがなされるようになる。

 その理由としてインテルのマーケティング本部 本部長 上野晶子氏は「PCやPCに搭載されるCPUを選ぶ際に分かりやすくするため」と、今年8月1日に開催されたインテルのブランド戦略および今後のマーケティング活動についての記者説明会において説明した。

 なお新しい製品が登場すると現状のインテル Core Ultra プロセッサーはインテル Core プロセッサーに位置付けを変えてラインアップを見直すのか、どのCPUが新型なのか旧型なのかをどのように見分けるのかなど、詳細は本稿執筆時点では不明だ。

05
ファームウェアレベルの攻撃から保護する
Secured-Core PCで高い安全性!

新しい働き方に必要なAI機能とセキュリティを
エンドポイント側で提供するWindows 11の設計

ビジネスシーンにおけるPCの存在感が、これまで以上に大きくなっている。変化した働き方の中で、PCに求める役割が集約化していることが大きな要因だ。一方で、そうした複数の役割をカバーするため、CPUやメモリーといったパフォーマンスが従来以上に重要になっている。業務生産性に直結するPC選びのポイントを見ていこう。

コロナ禍前後で変化した
PC選びのポイント

日本マイクロソフト
春日井良隆

 コロナ禍の前後を比較すると、社会の在り方は大きく変わった。働き方はもちろんのこと、それに活用するテクノロジーへの向き合い方も変化しただろう。日本マイクロソフト モダンワーク本部 シニア GTM マネージャー 春日井良隆氏は「当社が調査した統計データの中に、コロナ禍前後のPC利用時間の比較があります。2021年頃に調査したデータなのですが、コロナ禍前と比較して、PCに向かう時間が29%増加したり、Web会議の利用時間が89%増加したそうです。また、スマートフォンよりPCを使うユーザーが67%増加するなど、PCの存在感がこれまで以上に増加したというデータがあります」と語る。

 このようなPCへの向き合い方の変化に対応するため開発されたのが、Windows 11だという。春日井氏はWindows 11を「ハイブリッドワークのためにデザインされたOS」と紹介し「日常的に使うPCだからこそ、操作にストレスが生じず快適に使えるUI/UXを組み立てました」と語る。

 コロナ禍後はハードウェアに求める要件も変化した。日本マイクロソフト Windows戦略部部長 マーケティング戦略本部 デバイスパートナーセールス事業本部 仲西和彦氏は「他社の調査になりますが、PCを購入する際に重視するポイントのトップ3に、カメラの性能とスピーカーマイクの性能が入ってきています。これまでトップは価格で、それに並ぶか2位になっていたのがCPUの性能やメモリーの容量といったパフォーマンスにつながる部分でした。今回のように、カメラとスピーカーマイクといった二つの要素が重要な検討要素となることは過去ありませんでした」と指摘する。

 それでは、CPUやメモリーといったPCのパフォーマンスに関わるポイントは、PC選びの優先順位から外れてしまったのだろうか。仲西氏は「PC選びのポイントの中では、カメラやスピーカーマイクの次に位置しているCPUやメモリーですが、むしろ以前よりもPCのパフォーマンスは重視されるようになったと思います。Web会議ツールを活用することが多くなった影響で、PC自体の画像処理能力が高くなければスムーズなコミュニケーションが取りにくいという理解が広まったためです」と指摘する。

画像加工などのAI機能をエッジ側で
PCにも搭載が進む“NPU”とは?

日本マイクロソフト
仲西和彦

 PCの処理性能の高さは、日常的な業務でも求められる。働き方の多様化によってチャットツールや複数のクラウドサービスなどを並行して使うマルチタスク化が進んだ人も多いだろう。「これまでスマートフォンや固定電話が担っていた外部との通話機能も、PCへの集約化が進んでいます。現在のオフィスの風景を見てみると、スマートフォンで電話している人はあまりおらず、皆さんヘッドセットを装着してPCで通話しているんですよね。今までスマートフォンに分業していた機能をPCがカバーする必要が出てきており、PCのパフォーマンスはこれまで以上に求められているでしょう」と仲西氏は指摘する。

 また、Web会議におけるノイズキャンセリングや背景加工といった用途でAIの活用が進んでいるが、多くはアプリケーション側で処理を行う。しかし、今後はこうしたAIによる音声処理や画像処理をハードウェア側で行う製品がスタンダードになっていきそうだ。

 実際、マイクロソフトが2022年9月に提供を開始したWindows 11 2022 Update(Windows 11 22H2)ではOSの標準機能として「Windows Studio Effects」を実装している。

 Windows Studio Effectsは、Teamsなどで実装されている背景ぼかしなどの「背景効果」や、周辺のノイズを抑えてクリアな音声で通話できる「音声フォーカス」の機能に加え、画面を見ている目を、通話相手に視線を合わせるように補正する「目の接触」や、移動する人に自動的に追従する「自動フレーミング」などの機能を、Windowsの設定で行える。Teamsだけでなく、他社Web会議ツールでもWindows Studio Effectsの設定を反映して通話が行えるのだ。

 このWindows Studio Effectsの効果は機械学習アルゴリズムによって有効になるため、AIエンジン「NPU」(Neural Processing Unit)が搭載されているデバイスでのみ利用できる。「現在、Teamsなどで提供している画像処理AIは、サーバー側で処理をして端末側に届けています。Windows Studio Effectsではそれらの処理をローカルで行います。インテルさまでも次の第14世代以降、NPU搭載CPUが出てくると聞いていますので、NPUの搭載、非搭載はこれからPCを導入する上での一つの大きな選択肢になりそうですね」と春日井氏は話す。

NPU搭載のWindows 11端末でのみ使える「Windows Studio Effects」は、Teams以外のWeb会議ツールにも適用される背景効果や、画面を見ている目を補正(正面を見ているように調整)するなど、より良いビデオ通話やオーディオ通話体験を実現する。
出所:日本マイクロソフト

チップレベルで対策されたPCで
中小企業のセキュリティを守る

 NPUのようなチップレベルでの対応が求められているのはAIばかりではない。いま注目されているのが、セキュリティだ。マイクロソフトは「Secured-Core PC」というセキュリティ要件を打ち出し、これらを満たしたPCを、BIOSなどハードウェアレベルの攻撃も防ぐ「史上最も安全なWindowsデバイス」として提供している。

「Secured-Core PCを発表した当時はあまり認知度は高くありませんでしたが、昨今、ランサムウェア攻撃などのセキュリティインシデントが、さまざまな場所で発生していることから、Secured-Core PCの認知度も向上しています。サイバー攻撃の被害を受けるのは大企業だと認識している人は多くいますが、大企業と取引のある中小企業や子会社などに攻撃を仕掛け、そこから大企業のシステム内部に侵入するサプライチェーン攻撃も増えています。大企業のように専任のIT部門があれば、セキュリティホールが存在しても塞ぐことができますが、中小企業の場合そこまで手が回らないケースもあるでしょう。そうした中小企業にこそ、箱を開けた状態で高い安全性が実現されているSecured-Core PCを選択していただきたいですね」と春日井氏。

 ハイブリッドワークに最適化されたWindows 11やAI機能、そしてセキュリティ対策まで、これまでのPCからリプレースを図るメリットは大きい。多様化する働き方や進化するAI技術を業務に取り入れて、さらなる業務効率化を目指すため、最新のPCへのリプレースを検討する必要があるだろう。

06
CPUやPCの処理性能が高ければ、
処理も速く、何度でもトライアンドエラーを
繰り返して完成度の高いシステムが作れる!

最新CPUで開発効率が格段にアップ!?
エンジニアの視点で考えるCPUの進化とは

システムやアプリケーションの開発に携わるエンジニアにとって、PCは大切な仕事道具だ。まさにエンジニアはCPUの進化と共に長い歴史を歩んできたといっても過言ではない。そんなエンジニアの目に、CPUの進化はどのように映っているのだろうか。1998年の創立以来、「つなぐ」をテーマに企業内の多種多様なコンピューターやデバイスの間を接続するソフトウェアやサービスの開発・販売を行うアステリアに話を伺った。

XMLの第一人者として
幅広い製品開発を手がける

アステリア
田村 健

 アステリアは「発想と挑戦(Challenge for Ideas)」「世界的視野(Global Perspective)」「幸せの連鎖 (Chain of Happiness)」の三つの経営理念の下、1998年の創立以来、企業の価値創造を飛躍的に高める製品とサービスの開発・提供を行う企業だ。アステリアが創立した1998年といえば、企業におけるインターネット活用が端緒を開いたばかりのころである。そんな時代の中、インターネットとその技術を活用して社内外を問わずあらゆるシステムがつながり、さまざまな業務が遂行される時代が来ると考え、同社が目を付けたのがコンピューターの共通言語として1998年に出来たばかりの新技術である「XML」だ。アステリアはXMLの第一人者として、XMLをベースにしたさまざまなソリューションの開発・販売を行ってきた。

 これまでアステリアが提供してきた主力製品は、ノーコードデータ連携ツール「ASTERIA Warp」、モバイルアプリ作成ツール「Platio」、ノード統合プラットフォーム「Gravio」、デジタルコンテンツプラットフォーム「Handbook X」などがある。

 ASTERIA Warpは、専門的な技術がなくても利用できるノーコードで設計開発を行うことで、さまざまなシステムやサービスと連携し、業務の自動化・効率化やデータの活用を実現するデータ連携ツールだ。アイコンのドラッグ&ドロップとプロパティの設定で作成するフローによって既存のデータベース、ファイルシステム、各種業務システム、各種クラウドサービスと簡単に接続・連携できる。

 自社の業務に合ったモバイルアプリを誰もが簡単に作成できるノーコードツールがPlatioだ。100種以上のテンプレートから選択するだけで自社専用の業務アプリを容易に作成し、すぐに利用することが可能だ。

 Gravioは、ノーコードで汎用的なカメラや各種センサーによるデータとさまざまなシステムの連携を簡単に実現できるノード統合プラットフォームだ。直感的な画面設計によってノーコードで操作でき、さまざまな場所に設置されたノードで現場データを収集、統合するとともに、データに基づいたアクションを自動的に実行することが可能だ。AIによる画像推論機能なども利用できる。

 多様なデジタルコンテンツの登録から閲覧、共有までアプリ上で完結できるデジタルコンテンツプラットフォームがHandbook Xだ。プレゼンテーションデータ、商品カタログのPDF、YouTube動画、WebページなどHandbook X上からワンストップでアクセスが可能なため、独自にカスタマイズした提案ストーリーを手軽に作成できる。

開発の効率が大幅に向上
コンテナの利用にも有効

 卓越した先見性と技術をベースにこれまで多くの製品を展開してきたアステリア。システム開発の最前線に立つ同社だからこそ、システム開発に当たって、従来と現在のエンジニアを取り巻くPC環境の変化を感じたことはなかったのだろうか。

「20年前のプラットフォームで動かしていたASTERIA Warpと、現在の最新のPCで動かすケースでは大きな違いがあります。例えば、100万件のデータを処理する際に膨大な時間がかかっていましたが、それが大幅に軽減されています。ハードウェアが進化して、性能や処理速度が上がったことによって、さまざまな問題が解決できるようになりました」とアステリア 執行役員 研究開発本部長の田村 健氏は話す。

 システム開発において欠かせないのが、コーディングの作業だ。CPUやPCの進化によってコーディング作業の効率も上がっているという。

「十数年前に比べると、開発の効率は格段に上がりました。従来は、コーディングの内容によって処理のスピードも変わるため、メモリーを考慮して処理に負荷がかからないようなコードを書くなどテクニックを要するコーディングが必要とされていました。しかし、今では、CPUやPCの進化によって処理のスピードが上がっているため、誰でもテクニック不要でコーディングできます。分かりやすく簡潔なコードを書くことで、バグの発生を抑えられますし、それにより開発のスピードを高められます」(田村氏)

 最近では、開発を効率化するため、コンテナ環境を利用して開発を行うことも増えているという。

「コンテナの利用にはCPUとメモリーのリソースを大きく消費します。開発の作業をスピーディーに進めるには、処理性能の高い最新のCPUと大容量のメモリーを搭載したPCの利用が有効だと考えています」と田村氏は説明する。

 また、AIを含め新たなテクノロジーの活用も広まっており、扱うデータの量や種類も増えている。そうしたテクノロジーを利用するためには、素早い処理や対応が可能な最新のCPUと大容量のメモリーが必要であるといえる。

GravioはGoogleの画像推論モデル「TensorFlow Lite」に対応している。画像のようにエッジゲートウェイの「Gravio Hub2」とCoralの「USB Accelerator」を接続させることが可能だ。

高性能CPUの選択が最適解
完成度の高いシステム作りにつながる

 現在、各PCベンダーから販売されている最新のPCには、インテルの第13世代のCPUが搭載されている。ASTERIA WarpやGravioをはじめとするローコード/ノーコード開発ツールを導入する企業も増えているが、そうした開発ツールを活用するユーザーに必要なCPUやPCのスペックはあるのだろうか。「開発ツールを使用するに当たって、メモリー容量の大きさや処理性能の高さなどは、影響してくるでしょう。ローコード/ノーコード開発は“作っては試す”という作業を繰り返し行っていきます。処理性能が低いと動作が重くなり、読み込みが遅くなるなど作業に多くの時間がかかってしまいます。一方、処理性能が高ければ、処理も早く、何度もトライアンドエラーを繰り返せるため、完成度の高いシステムを作り上げることが可能です。そのため、PCや搭載されているCPUは性能の高いものを選択するべきでしょう」と田村氏は説明する。

 アステリアでは、今後も新たなテクノロジーを取り入れながら、製品提供を行っていく予定だ。「2023年5月にASTERIA Warpと生成AI『ChatGPT』を連携する専用アダプター『生成AIアダプター for ChatGPT』(エクスペリメンタルビルド(実験版))の提供を開始するなど、製品の機能強化に取り組んでいます。これからも最新テクノロジーを取り込んだ革新的なシステムでお客さまに貢献していきます。そうした最新技術をお客さまにスムーズに活用していただくためにも、最新のCPUやPCが大きな鍵を握ってくるのではないでしょうか」と田村氏は語った。