Surfaceに法人向けAI対応モデルがラインアップ
デバイスの販売にとどまらずビジネスを広げる入口に

マイクロソフトは3月21日(米国時間)に「Advancing the new era of work with Copilot」というイベントを開催し、この中でSurfaceシリーズの三つの新製品「Surface Pro 10 for Business」と「Surface Laptop 6 for Business(13.5インチと15インチ)」を発表した。いずれも法人向けで、AI対応が最大の特長だ。これらの製品はすでに日本でも販売が開始されており、いよいよ法人向けAI PCビジネスが本格化する。

NPU内蔵のインテル Core Ultraを搭載
Surface Laptop 6には高性能版を採用

日本マイクロソフト
中島史晶

 Surface Pro 10 for Business(以下、Surface Pro 10)とSurface Laptop 6 for Business(以下、Surface Laptop 6)の最大の特長は「AI対応」だ。これら二つの製品のAI対応の要件として「Copilot」と「Copilotキー」を搭載していることと、CPUとGPUに加えてAI処理専用の「NPU(Neural network Processing Unit)」をシリコン上に搭載していること、インテル Core Ultra プロセッサーを搭載していることを挙げている。

 CPUに関して細かいところではSurface Pro 10には従来と同じUシリーズが搭載されているが、Surface Laptop 6には従来のUシリーズからHシリーズへと、よりパフォーマンスの高いモデルに変わっている。それに伴いCPUの熱設計(TDP:Thermal Design Power)がUシリーズの15WからHシリーズの28Wに上がるため、筐体の放熱設計を見直してその効率を向上させている。

 またいずれのモデルもNPUを必須とするWindows Studio Effectsに対応する。Windows Studio EffectsはAIを利用して、Web会議で利用される背景ぼかしや目線補正、人物を画面の中心に映すオートフレームなどの映像処理を高速かつ高品質に行う機能だ。

Surfaceを利用するメリットは
WindowsやTeamsとの相性の良さ

 Surface Pro 10とSurface Laptop 6は、いずれも法人モデルの販売が開始されている。国内の法人市場におけるSurfaceシリーズの需要動向について日本マイクロソフトでSurfaceを担当するSurfaceビジネス本部 Surfaceプロダクトマネージャー 中島史晶氏は次のように説明する。

「デスクトップPCと同等のパフォーマンスを持つSurface Laptopを中心に、外出が多い業務向けにSurface Proを法人や組織でまとめて購入するケースが増えています」という。また自治体などの公共領域においても「GIGAスクール構想で全国の小中学校にSurface Goを導入させていただき、その実績から自治体さまの職員向けに導入が広がったケースもあります。さらに大学の生協でも取り扱っていただいており、さまざまな用途でお使いいただくケースが広がっています」と強調する。

 ではビジネスにおいてSurfaceを利用するメリットとは何か。中島氏はWindowsおよびTeams、そしてMicrosoft 365など、マイクロソフトのプラットフォームおよびサービスとの相性の良さを挙げる。中島氏は「SurfaceはWindowsの進化に伴って新たに提供されるさまざまな機能や仕組みに、デバイスとしていち早く対応しています。例えばSurfaceは、非常に早い段階からWindows Helloの顔認証に対応したカメラを標準搭載しました。またCopilotキーもいち早くSurface Pro 10とSurface Laptop 6に採用しています。SurfaceはCopilotをはじめ、マイクロソフトの製品やサービスの開発に携わるスタッフの多くに利用されています。特にエクスペリエンスに関わる開発やテストの工程でSurfaceが多く使われています。ですからWindowsやTeams、Microsoft 365など、ビジネスで使用されるマイクロソフトのアプリケーションやサービスとの相性が良いのです」と強調する。

 ただし「他社の製品もすぐに追随してくるためSurfaceの特長は次第に薄れてしまいますが、例えばWindows 11のセキュリティ機能をSurfaceならばデフォルトでフルに使えるなど、Windowsのメリットを余すことなく使い切れるというメリットがあります。またマイクロソフトのさまざまな製品やサービスとの相性も良く、例えばIntuneでSurfaceを管理すると、Surface専用のポータル画面が表示されます。その画面から保証の残存期間が確認できたり、故障の際は修理依頼が行えたりするなど、管理者の業務負担を軽減する仕組みが利用可能です」と説明する。

Surface Pro 10は2色展開。
Surface Laptop 6は13.5インチと15インチの2種類の画面サイズがあり、それぞれ2色をラインアップする。

知られざる魅力や特長をパートナーと共有
Surfaceを通じてビジネスを拡大していく

Surface Pro 10とSurface Laptop 6ともに写真のCopilotキーが搭載されている。

 Surface Pro 10に搭載されるカメラは従来モデルよりも広角で撮影でき、Windows Studio Effectsのオートフレームでの被写体の追従の範囲が広くなっている。またSurface Pro 10とSurface Laptop 6ともにカメラの画質もマイク、スピーカーの音質も向上している。

 そもそもSurfaceに搭載されるカメラは、画像処理ユニット(ISP:Image Signal Processor)と通常のUSB接続ではなくMIPI CSI-2で接続されており、映像や画像を高速に伝送、処理できる。そして、その画質は非常に高く評価されているのだ。

 このようにSurfaceには、あまり知られていない特長が多くある。中島氏は「Surface Laptopは指1本で画面を開けて使い始められることや、Surface Proのスタンドを閉じる際の音にこだわっていること、キーボードの打鍵音にこだわっていることなど、Surfaceにはあまり知られていない特長や魅力がたくさんあります。先ほどのIntuneとの連携のような、マイクロソフトのサービスと連携して利用するメリットや、カタログでは表現しにくい特長や魅力をパートナーの皆さまと共有して、お客さまに伝えていただく活動も展開したいと考えています」と話をする。

 2025年10月にWindows 10のサポートが終了(EOS)する。Windows 10のEOSに向けて企業ではPCのリプレースが活性化し、Surfaceの販売にも追い風が吹く。中島氏は「Windows 10のサポートが終了するからWindows 11搭載PCにリプレースするのではなく、Windows 11を使うメリットをご評価いただいた上で、Windows 11と相性の良いSurfaceを選んでいただきたいと考えています。そして企業や組織のお客さまにWindows 11やMicrosoft 365などを便利に使っていただくためのデバイスとしてSurfaceをご提案し、パートナーの皆さまと一緒にビジネスを拡大していきたいですね」と意気込みを語った。

生成AIを仕事で使いこなすコツ
使う側にもスキルが求められる

2023年11月8日と9日の2日間にわたり、兵庫県姫路市においてダイワボウ情報システム(DIS)が主催するICTの総合イベント「DISわぁるど in 姫路」が開催された。会場では最新のICT製品を紹介する展示コーナーや、さまざまなテーマを取り上げたセミナーが提供されたが、その中で生成AIを活用して姫路市の課題の解決策を探るという興味深いパネルディスカッションが行われ好評を得た。特にChatGPTの使い方のコツに注目が集まった。そこで登壇したデジタルハリウッド大学教授の橋本大也氏と、本誌に連載を持つフィラメント 代表取締役CEO 角 勝氏に生成AIを仕事で使いこなすコツについて話を伺った。

ファイルや圧縮ファイルを
そのまま読み込ませられる

フィラメント
代表取締役CEO
角 勝

 橋本氏はデジタルハリウッド大学教授を務めるほかに、多摩大学大学院客員教授と早稲田情報技術研究所取締役も務め、テクノロジーおよびビジネスのマネジメントやマーケティングなどの領域で多数の著書がある。またビッグデータとAIのテクノロジーベンチャー企業であるデータセクションを創業し、東証マザーズに上場させた実績を持つ。

 まず橋本氏に、DISわぁるど in 姫路のパネルディスカッションで取り上げた姫路市の課題に対して、ChatGPTを活用してどのように解決策を導き出すのか、その手順と考え方について改めて話を伺った。なお本稿ではChatGPTの有料版であるChatGPT Plusをベースに使い方を述べている。ただし無料版のChatGPTでも共通する部分があることをあらかじめ断っておく。

角氏(以下、敬称略)●昨年のDISわぁるど in 姫路でのパネルディスカッションでは、姫路市のマスコットキャラクターを生成AIで作る実演をしていただきました。改めてChatGPT Plusの基本的な使い方を教えてください。

橋本氏(以下、敬称略)●パネルディスカッションでは基本的な使い方の一例として、地理情報の可視化というテーマを取り上げました。まず政府統計ポータルサイト「e-Stat」で公開されているオープンデータから、姫路市の地理情報をダウンロードします。そのデータを基にChatGPT Plusに地図を表示させます。

 この時e-Statからダウンロードした圧縮ファイルと、日本語フォントのファイルをChatGPT Plusにアップロードし、プロンプトとして「姫路市の統計地理情報とグラフを作成する際の日本語フォントです。内容を確認し、地図を表示してください」と入力します。

●画面を見ると圧縮ファイルを解凍せずにそのままアップロードしています。ChatGPT Plusが解凍してファイルの内容を確認してくれるということですか。

橋本●その通りです。ChatGPT Plusはファイルをアップロードして内容を読み込むことができますが、1回のプロンプトでアップロードできるファイル数の上限が10個ほどになっています。ですから複数のファイルを一つのファイルに圧縮することで、上限以上のファイルを読み込ませることが可能になります。

●日本語フォントのファイルもアップロードしましたが、その目的は何ですか。

橋本●実は日本語フォントを読み込ませないと、生成された回答に含まれるテキストが文字化けするケースが多いのです。そのため日本語フォントも読み込ませておくことで、文字化けを防いでいます。

ChatGPT Plusに圧縮ファイルと日本語フォントのファイルを読み込ませてプロンプトを入力している画面。

 ChatGPT Plusに姫路市の統計地理情報を読み込ませると地図が表示された。そして表示された地図に対して「各地域の人口を階級化して濃淡を可視化してください」というプロンプトを追加した。ちなみにすでに読み込ませている統計地理情報には「地域コードと行政区画」「県名、市名、地区名」「統計上の分類コード」「面積」「人口」「世帯数」「地理的な座標」「地区の境界を表すジオメトリデータ」などが含まれていることを、ChatGPT Plusが認識している。

 さらに「(姫路市の)人口の多い地域のトップ10ランキングを表にしてください」というプロンプトを入力した。続いて「人口の多い地区トップ10を地図上で強調して可視化してください。地名も表示して」というプロンプトを追加した。

 さらに姫路市のオープンデータカタログサイトから姫路市立図書館・分館のデータをダウンロードしてChatGPT Plusに読み込ませ、地図上に可視化した。そして可視化された図書館の分布について分析をさせると、ChatGPT Plusは分析するに当たり検討すべき項目を提示した。

姫路市のマスコットキャラクターを作成することを目的に、アイデアに使うキーワードを提案させている画面。
キーワードからマスコットキャラクターに盛り込む要素などを示した企画書を生成した画面。

長い文章の要約には注意が必要
ファイルの前の方しか読んでいない

デジタルハリウッド大学教授
多摩大学大学院客員教授
早稲田情報技術研究所取締役
橋本大也

 ChatGPTの基本的な使い方として長い文章の要約が挙げられる。実際に使い方としては、プロンプトに直接テキストを入力する方法と、ファイルを読み込ませる方法の2種類がある。テキストを直接読み込ませる場合、ユーザーとChatGPTとの1回の対話セッションで扱える文字数(厳密にはトークンの数)に上限が設けられている。そのため長文の場合はファイルを読み込ませて要約させるケースが多い。ところが、この操作において留意すべき点が多くある。

●ChatGPTではユーザーとChatGPTとの1回の対話セッションで扱える情報量の限界を超えたプロンプトは、ChatGPT側では「忘れられる」あるいは「入力されていない」といった扱いがされるかと思いますが、入力する情報量の数え方はあるのでしょうか。

橋本●テキストを直接入力する場合も、ファイルでテキストを読み込ませる場合も上限がありますが、その上限を把握するのは一般のユーザーには難しい操作が必要になります。文字数を単純に数えているわけではなく、単語や書式(トークン)などによって変化します。

姫路市の人口の多い地域のトップ10ランキングの表と、地図上に可視化した画面。

 注意したいのはChatGPTおよびChatGPT Plusで長文の文章を要約するとうまくいかないケースが多い点です。ChatGPT PlusをAPIで利用すれば長文の文章をうまく要約してくれます。しかしChatGPTおよびChatGPT Plusでただ「要約して」ではうまくやってくれません。

 ファイルを読み込ませて要約させる場合、全てを読み込んでいないため最初の方しか要約していないことが多いのです。文章だけではなくプレゼンテーションのスライドのファイルを読み込ませても、最初の数ページしか要約していないことが多いです。

企画書からマスコットキャラクターを画像化するのに必要なプロンプトをChatGPT Plusで生成し、それを画像生成AI「DALL-E 3」に入力した画面。

 これは指示の仕方が悪いことと、出力量も影響していると思われます。ChatGPTおよびChatGPT Plusでの1回の出力は、日本語で600文字から800文字です。ですから長い文章を要約させる場合は章ごとなど、複数回に分けて読み込ませるとうまくいくでしょう。

 ちなみに長文の論文を読み込ませてうまく要約できたという話を聞きますが、それは当然です。なぜなら論文では一般的に冒頭部分に要約文が掲載されており、そこを読み込んでいるからです。

 またPDFの文書を読み込ませるのも注意が必要です。(現在の)ChatGPTおよびChatGPT PlusではPDFのレイアウト情報を読み込めないことや、PDFには例えばテキストを流し込んでいるデータや、テキストを画像として扱っているデータ、文字コードも何種類もあるという具合にいろいろな種類の情報があることから、下処理をしてから読み込ませる必要があります。そのためPDFファイルをうまく要約させるには複雑な作業が伴うのです。
●PowerPointのファイルを要約するのも難しいのでしょうか。

橋本●最新のPowerPointはXMLでファイルを保存しているため、基本的には文字は読み込めます。ただしレイアウト情報は認識できないので、順番が狂っている可能性があります。どういうことかというと、PowerPointのファイルを表示して、全画面を選択してテキストをコピーした場合に得られる情報を読んでいるということです。図の対応関係や図のキャプションの情報は認識できないので、そのまま要約させると内容が狂ってしまいます。ただしAPIを使ったり、プロンプトを工夫したりすれば要約できます。

画像生成AIで作った架空の姫路市のマスコットキャラクター「ヒメリン」。出来上がった画像に対して、さらにプロンプトを加えることで仕上がりを変えられる。

生成AIを使いこなすコツは
1回で正解を求めないこと

 ここまでChatGPT PlusおよびChatGPTを中心とした生成AIの基本的な使い方と、現在の「クセ」や「苦手」について話を進めてきた。ここからはDISわぁるど in 姫路でのパネルディスカッションで取り上げた姫路市のマスコットキャラクターを作ることを目的とした生成AIの使い方を説明しながら、生成AIを使いこなすコツを解説する。

●DISわぁるど in 姫路でのパネルディスカッションで、姫路市のマスコットキャラクターを生成AIで作るという実演をしました。あの利用方法に生成AIで目的の回答を得るコツが示されていました。

橋本●ChatGPTをはじめとした生成AIで、ユーザーの要望に対して精度の高い回答を得るには、1回で正解を求めないことがコツといえるでしょう。例えばChatGPTの1回の回答の精度が70%だとします。本来は三つのステップを要する命令を、1回のプロンプトで実行すると30%程度の回答しか得られないことになります。

 ChatGPT PlusやChatGPTは前の会話を覚えており、それを学習して次の回答を生成します。三つのステップが必要な作業の場合、一つ目のステップでの回答の内容を確認して、要望と違っている部分や足りない部分を修正して精度を上げてから次のステップに進めます。また1回のタスクはできるだけ確実に実行できる内容にして、回答の精度を高める工夫をすることも大切です。

●その具体的な実例として姫路市のマスコットキャラクターをChatGPT Plusで作成しました。まず「姫路市のマスコットキャラクターを作ろうとしています」という目的を伝え、その上で「そのアイデアに使えそうな姫路市のキーワードを10個調べてください」というプロンプトを入力しました。すると姫路城や白鷺城などのキーワードがリストアップされました。

 次に「マスコットキャラクターをデザインして企画書を書いてください」というプロンプトを入力し、マスコットキャラクターを具体的な画像にするための要素を抽出しました。先ほどの説明の通りChatGPT(と同Plus)は前の会話を覚えているため、続いてマスコットキャラクターを描く要素から「このキャラクターを生成AIを使ってイラスト化しようと思います」と目的を伝え、その際に必要な「プロンプトを書いてください」と入力しました。

 これらの一連のステップによってマスコットキャラクターを構成する要素が具体化され、画像生成AIによる生成画像の精度を高くできるというわけですね。実際の画像は別掲の通りです。さらにプロンプトを追加してマスコットキャラクターのテイストを変えることもできていますね。

 こうした一連のプロセスは人の思考のプロセスと似ていますし、会社での上司と部下とのやりとりにも似ていると思います。例えば新人に仕事を任せるときに、途中経過を報告させて作業が正しく行われているのかを確認し、問題がある場合はアドバイスをして修正させて結果につなげていくことが行われています。上司のユーザーと、部下のChatGPTとのやりとりは、まさにこのような感じですね。

テキストからスライドを生成する「Gamma」という無料で利用できるサービスを利用して作成したプレゼンテーション資料。6枚のスライドで構成されている。

プレゼンの資料とスピーチ原稿の作成から
プレゼンそのものもAIが行ってくれる

Windows 11のCopilotの画面。「より創造的に」「よりバランスよく」「より厳密に」という3段階で生成する回答を調節できる。

●生成AIをビジネスで活用することにおいて、面白い事例はありますか。

橋本●今日の取材で使う資料を生成AIで作成しました。利用したのはテキストからスライドを生成する「Gamma」という、無料で利用できるサービスです。使い方は非常に簡単で、今日の取材で何を話すかについて数行のメモを作成し、それをプロセスに入力すると3分ほどでスライドが作成されました。

●スライドには画像も使われていますが、画像も自動的に挿入されるのですか。

橋本●画像も含めて自動的に作成してくれます。さらにこのスライドから「下記のノートを事例を膨らませてブログ記事にしてください」とプロンプトを追加すると、プレゼンテーションで話す台本も作成してくれます。

 例えばテキストから動画を生成する「HeyGen」を使えば、先ほどの台本を入力してプレゼンテーションのスピーチ映像も作成できます。ここまでやると本人がプレゼンテーションする必要はなくなりますね。英語に翻訳させてしゃべらせることもできますので、ビジネスで便利に使えるのではないでしょうか。

 最新のPCにはNPU(Neural network Processing Unit)と呼ばれるAI処理専用の半導体が搭載されていますので、エッジ側の処理が高速化することで生成AIを音声や映像で対話しながら、非常に優秀なアシスタントとして利用できるようになるでしょう。

●イノベーションにおいても、いろいろな知識をたくさん持っている生成AIが、異質な知と知を新結合することで人には発想できないアイデアを生み出すことができる可能性が高いのでしょうか。

橋本●それには少し検討が必要かもしれません。生成AIの利用においてハルシネーションが問題になっています。ハルシネーションとは事実ではない情報を生成する現象のことで、生成AIの妄想のようなものです。

橋本氏の近著「頭がいい人のChatGPT&Copilotの使い方」(かんき出版)。本書では「頭がいいのはあなたです。生成AIではありません。」とアドバイスしている。

 ところがこの現象を利用して、実際にはないけれども、あってもおかしくはない分子構造を回答させ、これを利用して新しいたんぱく質の構造を発見するということが実際に行われています。

 同じ仕組みを文章に用いると、でたらめな内容になることでしょう。つまり突飛な組み合わせは用途によっては成立しますが、別の用途では意味を持たないというわけです。こうした特性や仕組みを理解した上で生成AIを利用すべきです。

 ちなみにChatGPT PlusをAPIで利用すると、「temperature」の設定が行えます。これは回答の斬新さの度合を設定するものです。マイクロソフトの「Copilot」(旧Bing Chat)では「より創造的」といった設定ができますが、同じものと思われます。例えばtemperatureの数値を「0」にすると精度が上がる場合があります。一方であまり高くすると、文章では言葉自体が意味をなさなくなってしまう恐れがあります。