国内ITビジネスをけん引するリーディングベンダーに問う
法人向けPC市場における2023年の潮流

IT Business Trend 2023 PC編

PC-Webzine2月号で掲載した「IT Market Analytics 2023」の特集において、PC市場は市場縮小の傾向が続く半面、ハイブリッドワーク増加の影響でハイエンドの端末に需要が高まることについて触れた。それを裏付けるように、今月の「IT Business Trend 2023 PC編」でも、各社PCベンダーからはハイブリッドワーク需要をつかんだイチオシ製品が並んだ。OSベンダーから見たPCの販売戦略と、PCベンダーが提供するハイブリッドワーク向き製品のポイントを見ていこう。

Chapter.1
OSベンダーに聞く
2023年度の国内市場戦略とは

国内法人の2,600万台がターゲット
すぐに着手すべきWindows 11への移行促進

大企業では移行への準備が始まっている
中堅・中小企業には意識喚起が必要

日本マイクロソフト
モダンワークビジネス本部
GTMマネージャー
春日井良隆

 MM総研が2022年3月に発表した調査「国内法人PC稼働台数推移と予測」によると、国内の企業では2,600万台のWindows 10搭載PCが稼働しているという。Windows 10は2025年10月にサポートが終了するため、セキュリティ維持のためにも企業で利用されるPCはWindowsの最新版であるWindows 11に移行することが求められる。

 2,600万台ものPCがWindows 11へ移行するとすれば、OSのアップグレードに伴う各種サービスの提供や、アップグレードを機会にクラウドサービスの導入提案、さらにはネットワークの強化といったビジネスチャンスが期待できる。もちろんWindows 11へのアップグレードに伴うPCのリプレースにも期待が持てる。ただしこうしたビジネスチャンスはユーザーがWindows 10をWindows 11へ移行することが前提となる。

 では企業ではWindows 10のサポートが終了に向けてどのような意識で準備を進めているのだろうか。日本マイクロソフトのモダンワークビジネス本部でGTMマネージャーを務める春日井良隆氏は「大企業のお客さまに関してはWindows 10のサポートが終了することを認識しており、Windows 11への移行に向けた事前検証の計画を進めている段階で、取り組みの早いお客さまはすでに事前検証を始めています」と言う。

 一方の中堅・中小企業については「大企業のお客さまに比べると意識が低い傾向にあり、取り組みが遅れている印象です」と話す。そして「Windows 10のサポート終了まで約2年ですが、中堅・中小企業のお客さまをはじめとして時間に余裕があると認識されているようです」と指摘する。ビジネスで利用するPCの環境を変えるため、Windows 11への移行は決して短期間で完了できるものではない。

日本特有のシステムへの対策で
移行に時間を要するケースもある

 幸いWindows 11の特長の一つに「一貫性」がある。これはWindows 10で慣れ親しんだ操作環境やツールがWindows 11にも継承されていることや、Windows 10との互換性の高さを表現したキーワードだ。マイクロソフトはWindows 10で動作するアプリケーションの多くがWindows 11でそのまま動作するとアピールする。

 春日井氏は「事前検証を実施しているお客さまから、Windows 10とWindows 11を混在させても問題がないという確証が得られています」と強調する。ただし「Windowsのナンバリングが10から11に変わることで、情報システム部門の方々が不測の事態に備えたいという心理で非常に慎重に準備を進めています。世界的に見ても日本のお客さまは慎重に備える傾向が強いです」と説明する。

 また旧来のシステムなどレガシーなシステムについてはWindows 11への対応が必要となるケースがある。例えばWindows 11では画面表示やメニュー表示にズレが生じるなどの不具合が生じる場合があるからだ。春日井氏は「Windows 11への移行を機会にレガシーシステムのモダン化をお勧めしています」とアドバイスする。

 日本マイクロソフトではOSのバージョンアップや移行に伴うアプリケーションなどの互換性の検証や問題の解決を技術支援するサービス「App Assure」を提供している。春日井氏は「中堅・中小企業のお客さまについてはパートナーさまの役割が重要です。パートナーさまへの支援を手厚くする必要があると認識しています」と話す。

国内法人向けPC市場は復調傾向
大きなビジネスチャンスをつかむ好機

 Windows 11への移行は大企業を中心に今年の秋から本格化が始まると春日井氏はみている。Windows 11ではメジャーアップデートあるいは大型アップデートが1年間に1回となっており、毎年9月から10月に実施される。今年も秋にアップデート版の「23H2」がリリースされるとみられており、その最新版をベースにWindows 10のアップグレードやPCのリプレースの事前検証が本格化するという見立てだ。

 そのほかにもWindows 11への移行を促進させる要素がある。それは国内法人向けPC市場の動向だ。PCの出荷台数の市場調査などでは前年比で減少傾向が指摘されており、国内PCビジネスの市況にはネガティブな印象がある。しかし春日井氏は「多くのパートナーさまから国内のPCビジネスは復調傾向にあるというお話を伺います。半導体不足がようやく解消されつつあり、最近ではお客さまへスムーズにPCを届けられるようになったということです。特に法人のお客さまに関しては前向きに今後の見通しを立てていると、販売パートナーさまとOEMパートナーさまの両方から伺っています」と強調する。

 Windows 10のサポート終了に伴う非常に大きなビジネスチャンスを獲得するには、Windows 11への移行を促進することが第一歩となる。それにはサポート終了への対策という義務感だけではなく、Windows 11へ移行することでエンドユーザーがどのようなメリットが得られるのかを具体的に示して意識を高める必要がある。

 その資料の一つとして「Windows 11のTotal Economic Impact(TEI:総経済効果)」がWebサイトで近日一般公開される予定だ。これはマイクロソフトがリサーチやコンサルティングなどのサービスを提供する米フォレスター・リサーチに依頼して作成したもので、表題通りWindows 11の導入で得られる利益を示している。

 フォレスター・リサーチがさまざまな企業にヒアリングし、その結果から代表的な企業像を設定して、その仮想企業にWindows 11を導入した際に得られる経済的な効果について解説している。

 さらにWindows 11単体での効果だけではなく、意外と知られていないのがWindows 11に標準で搭載されるアプリケーションの利便性だ。例えば業務プロセスを自動化するRPAソフト「Power Automate」や、今や商談でのプレゼンテーションやSNSでのマーケティング活動に欠かせない動画の編集ツール「Clipchamp」などが搭載されているほか、話題のオープンAIのテクノロジーを活用して文章からデザインを生成する「Microsoft Designer」も今後Windows 11に搭載される予定だ。

 また最新のハードウェアとの組み合わせによるメリットも大きい。例えばインテルの最新プロセッサー(第12世代インテルCoreプロセッサー以降)を搭載したPCとWindows 11を組み合わせることで高い性能が発揮される。

 最後に春日井氏は「Windows 11への移行には最低でも2年は必要です。それでも余裕とは言えません」と強調する。自社の経営や事業にITが欠かせないのならば、この言葉を重く受け止めて行動を始めるべきだろう。

Windows 11を導入する経済的なメリット

導入効果1:生産性を5〜15%アップ
導入効果2:社内からのOSへの問い合わせを削減
導入効果3:リスクプロファイルを年間20〜30%改善

近日一般公開される予定のWindows 11を導入する経済的なメリットを示した資料「Windows 11のTotal Economic Impact(TEI:総経済効果)」