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Blue Yonderと四つのハードウェア分野に事業を集中

Blue Yonderと四つのハードウェア分野に事業を集中

2022年06月06日更新

ダイワボウ情報システム株式会社 代表取締役社長 松本裕之氏

パナソニック コネクト株式会社 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 樋口泰行氏


Blue Yonderのクラウド事業展開で盤石なビジネスモデルを確立
ハードウェアは研ぎ澄ませていける四つの分野に集中

パナソニックグループの持ち株会社化に伴い、七つの事業会社が4月1日に発足した。そしてレッツノートやタフブックなどのPCや決済端末などを提供する「モバイルソリューションズ事業部」は新たに発足したパナソニック コネクト株式会社の事業の一つとなった。パナソニック コネクトはパナソニック システムソリューションズ ジャパンを母体とする現場ソリューションカンパニー、プロセスオートメーション事業部、メディアエンターテインメント事業部を1法人とし、2021年9月に完全子会社化したサプライチェーンマネジメントソフトウェアの「Blue Yonder」とパナソニック アビオニクスを傘下に持つ。売上高8,182億円(2020年度実績)、従業員数約2万8,500人(国内約1万2,500人、海外約1万6,000人)を率いる樋口泰行氏に同社の未来を語っていただいた。

風土改革から会社を変えて
経営目標を目指せる土台を構築

松本氏(以下、敬称略)新会社の発足、社長ご就任おめでとうございます。樋口社長は3年後の2024年度に売上高1兆1,700億円、EBITDAが連結で1,500億円、同EBITDA率13%などの経営目標に「必達」で取り組むと断言されました。2020年度の実績が121億円と伺っていますので、2024年度のEBITDA 1,500億円という目標は実に12.4倍という高い成長率となります。スタートラインから助走なくフル加速という印象を受けました。

樋口氏(以下、敬称略)ありがとうございます。当社が持つテクノロジー、エッジデバイス、ソフトウェア、コンサルティング、サービスといった強みを生かして、サプライチェーン、公共サービス、生活インフラ、エンターテインメントなどにおいてお客さまの現場でお役立ちをし、お客さまと一緒にソリューションを開発、提供していくことで経営目標を必達し、強い会社にしたいと考えています。

 この5年間、経営目標を目指せる土台を作ってきたこともあり、最初からフル加速で事業を展開していけると考えています。この5年間で3階建ての企業改革を実施してきました。その1階が風土改革です。市場や社会の変化に応じて事業を適合させるビジネス改革や、成長領域を見極めて選択と集中を実践する事業立地改革は風土改革なくして成し得ません。1階の風土改革を着実に実施してこそ、2階、3階のビジネス改革や事業立地改革への取り組みの成果を最大化できます。

松本■かつて日本はGDPで世界2位を誇っていましたが、今や競争力は低下して生産性も決して高くありません。高度成長期はビジネスを一本調子でやっていても企業は高い収益を得ることができました。その成功体験をいまだに実践していたのでは、劣化するばかりです。これだけ世の中も、テクノロジーも激しく変化しているのですから、当然企業も常に変化しなければ生き残れません。

樋口その通りですね。今回、パナソニック コネクトという株式会社として独立した組織となり、会社を変える絶好の機会だと捉えています。当社も日本の製造業ですから、まずは当社、そしてパナソニック全体を変革していく必要があります。その取り組みを現場で行うのは社員ですから、まずは社員の意識改革と社内カルチャーの変革から始めて、現在も続けています。

 従来は指示されたことに従って動く傾向がありましたが、そこを自分で考えて動く、チームのメンバーと情報や意見を言い合って衆知を集める、といった行動が自然にできるように変えていきます。

 例えばお客さまを訪問する際に、大勢のメンバーで行動する社員が以前は目に付きました。大勢で訪問すると、お客さまと何も喋らないで帰ってくる社員が出てしまいます。お客さまと面談して社内では得られない情報が得られる絶好の機会なのに、何も得ないのでは訪問する意味がありません。ですから私は「団子になるな」と呼び掛けています。

 少人数で訪問すれば1人当たりのお客さまと話をする機会も時間も増えますし、チームのメンバーがばらけて行動すれば、チームとしてより多くのお客さまを訪問でき、より多くの情報を得ることができます。

 それからレポートの作成に費やす労力と時間も大幅に削減しています。以前はレポートを作って提出することは自身の仕事に付加価値が加わるという認識があり、またレポートの質と量によって社員が評価されるという雰囲気もありました。しかもレポートを提出する上長や回覧の経路が決まっており、報告や相談をしたい人に勝手にレポートを提出したり、話をしたりしてはいけないという暗黙の規則もありました。

 この風土では現場の社員と意思決定の責任を負う社員の距離が遠くなり、現場の情報が伝わるのに時間がかかってしまい、意思決定が鈍くなってしまいます。

 デジタルを駆使しなければならない現在のビジネスにおいて、情報伝達のスピードは経営の俊敏性に直結します。ですから現場の社員にはレポートを作成する前に、まずは口頭で報告して欲しいと言っています。これをずっと言い続けていたら、だいぶ風土が変わってきました。先日、産休が明けて久しぶりに出社した社員が「同じ会社なのか」と驚いていました。風土の変化を私だけではなく社員も実感してくれて、うれしかったですね。

松本■パナソニック コネクトさまの発足に伴い、新入社員の初任給を増額したり、独自の人事制度を採用したり、新しい試みも実践されています。人材の確保や育成が経営の大きな課題となっている中で、従来の慣習に縛られない人材への投資や働きやすい環境づくりといった樋口社長の考えと行動は、日本の産業全体に良い影響を与えると思います。パナソニックグループでもすでに樋口社長の取り組みを取り入れた事業会社が出始めていると聞いています。

ややこしいすり合わせが必要な領域で
参入障壁を築いて自社の強みを発揮

松本■「Panasonic Connect」のロゴマークも印象的でした。特に「Co」のデザインと「Connect」の明るく上品な色見のブルーが目に留まりました。

樋口■ありがとうございます。Co(コ)には「共に」という意味があり、コ・オペレーション(協力)、コラボレーション(協業)、コミュニケーションなどにも使われています。またCoの2文字をつなげたデザインを採用することで、共につながり、つながることによって新たな価値を生み出すという意味を込めました。Connectの色にはBlue Yonderのコーポレートカラーを採用しています。

 当社の行動指針として、お客さまやテクノロジー、社員同士がつながることを意味する「Connect」、共感および共創の「Empathy」、結果にこだわる「Results」、たゆまぬ変革を行う「Relentless」、衆知を集める「Teamwork」という五つのコアバリューを制定しました。

 これらはパナソニックグループの経営基本方針を、グローバルの社員にも分かりやすく今の言葉に置き換えて表現したもので、Blue Yonderの経営理念も取り入れることで、同社の企業文化との整合性も図りました。

 Blue Yonderの事業は先ほどお話しした経営目標を達成する上で非常に重要な役割を担っています。経営目標の達成に向けてコア事業と成長事業に分けて、それぞれで注力分野を絞って経営資源を集中していきます。その成長事業でBlue Yonderの単独成長とパナソニックとの相乗効果が大きな役割を果たします。

松本■Blue Yonderは製造業向けのサプライチェーンマネジメントソフトウェアですが、グローバルで有力な選択肢がある中で、なぜBlue Yonderを選んだのですか。

樋口■当社の重要な事業領域として、お客さまの現場のプロセスに入り込んで一緒に改善活動を進めていくことが挙げられます。実際に事業を展開するには単品金物だけでは優位性は獲得できませんし、デジタルだけで実現できる世界はプラットフォーマーが参入してきて優位性を奪われてしまいます。

 現場でややこしいすり合わせが必要な領域ならば参入障壁もあり、当社の強みも生かせると考えて製造業のサプライチェーンの領域にフォーカスしています。当社にはものづくりを100年間やってきて蓄積した経験とノウハウがあり、数多くの生産技術者がいます。この価値を製造業のお客さまの現場の改善に役立てることができます。

 そこにBlue Yonderのソフトウェアが加わることで、ソフトウェアの切り口でお客さまの現場を改革することが可能になります。同じ方向性の人や組織、設備といったハードウェアとソフトウェアを組み合わせれば、とても大きなポテンシャルを引き出すことができます。

マイクロソフトでの経験も生かして
Blue Yonderを国内でもクラウド提供

樋口■Blue Yonderはグローバルトップの製造業に数多く採用されています。グローバルでは製造の現場にパッケージソフトを導入してデジタル化が進められていますが、サプライチェーンの規模で見るとデジタル化はまだ途上です。ここにクラウドを持ち込めばデジタル化が一気に進み、製造業の競争力を大幅に向上させることができます。

 グローバルではサプライチェーンのデジタル化を推進する動きが活発化しており、今後はものすごい勢いでクラウド化が進むとみています。他社に先駆けてビジネスに参入していち早く面の拡大を進めることで盤石なビジネスモデルが確立でき、経営を安定化することができます。これはOffice 365が普及していないころのマイクロソフトのクラウドへの初期の取り組みに似ています。

 Blue Yonderはサプライチェーン全体にSaaSを提供していますので、既存のオンプレミスのお客さまにSaaSへの移行を提案するとともに、アップセル、クロスセルを働きかける
ことで単独での事業を伸ばしていく計画です。またマイクロソフトとの提携によるAzureを活用したクラウド化の推進や、M&A投資によるBlue Yonderの機能の拡充、パナソニックの製造業としてのノウハウやソリューションとの相乗効果なども成長に寄与すると考えています。

 Blue Yonderのビジネスは69%のリカーリング率となっており、解約率はわずか4%です。営業リソースを新規顧客の開拓に振り分けることができますので、効率良く成長を目指すことができます。

 ただし日本の製造業ではパッケージを導入していないお客さまもいるため、まずは業務をパッケージに合わせて標準化、整流化することで得られるメリットを訴求してパッケージの導入を提案する必要があります。国内の先進的なお客さまの成功事例を情報発信して、このようにすればこういった効果が得られるということを示して提案時の説得力を高めます。

独自の地位を築ける分野でコモディティを回避
レッツノートやタフブックの独自の進化に期待

松本■ものづくりの会社としてコア事業はやはりハードウェアとなりますね。コア事業ではプロセスオートメーション、メディアエンターテインメント、アビオニクス、モバイルソリューションズの四つの事業に絞られています。事業の選択はどのような基準で決めたのですか。

樋口■ハードウェアにはコモディティ化のリスクがあるので、アジアの新興国と直接競合しない分野、参入障壁を築ける分野、日本の企業としてハードウェアを研ぎ澄ませていける分野で見極めた結果がこの四つの事業です。これ以外のハードウェアはやりません。

 また過去5年でいろいろと失敗もしてきました。その経験を通じてやってはいけないこと、やっていいことが明確になりました。この四つの事業でやっていいことに集中していきます。やっていいこととはハードウェアを土台としたソフトウェアやサービスのビジネス展開です。

松本■コア事業のモバイルソリューションズにはノートPCのレッツノートやタフブックが含まれますが、国産のPC製品が生き残るのが困難な中で御社の製品はグローバルで戦える独自の価値を備え、地位を確立しています。

 レッツノートとタフブックはプリント基板の製造から組み立てまでの全ての工程を日本で行っている、今や貴重な国産製品です。実際の商談では製品に価格以外の価値を求めるお客さまや、機能や国産などこだわりを持つお客さまなどにレッツノートやタフブックを提案すると非常に高く評価していただけます。

 すでに独自の地位を確立しているレッツノートやタフブックですが、パナソニック コネクトさまの事業として今後どのように磨き上げられていくのか、新しい製品の登場を楽しみにしています。

樋口■レッツノートやタフブックのように進化させれば今後も独自の地位を守り続けられるのか、日本のメーカーとして「さすが」と言われる製品を作るには何をすればいいのか、そのためのヒントをダイワボウ情報システム(DIS)さまに期待しています。

 またコア事業の一つであるメディアエンターテインメントでは高輝度プロジェクターや、ライブ映像制作プラットフォーム「KAIROS」を提供しており、それぞれサービス事業の拡大と新たな収益の柱に育てることを目指しています。こちらでもDISさまとの協業を深めていきたいと考えています。

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