人類はこれまで、実にさまざまな道具を手に入れ、それらをうまく使いこなしながら進化を続けてきた。そして現在、我々はPCやネットワークを使いこなして、第四次産業革命というかつてない大きな飛躍を遂げようとしている。しかし、PCはあくまでも道具である。PCのスペックが向上しても、ユーザーの用途に役立たなければ価値はない。そこでインテルはユーザーがPCをどのように活用しているのか、PCに対してどのような不満を持っているのかなどを調査し、ユーザーの役に立つPCとは何かを定義した「インテル Evo プラットフォーム」を策定している。

仕事、趣味、生活に役立つPCとは何か
やりたいことから選ぶいま必要なPC

 かつてPCの評価は搭載するCPUのグレードで判断されてきた。最新の動作周波数の高速なCPUを搭載していれば、そのPCは無条件に高評価が得られた。ところが日常的に利用するビジネスアプリケーションの起動やレスポンスなどの体感速度に不満を感じるという現象も見受けられるなど、実用的な性能が発揮されていないこともあった。

 インテルで執行役員 パートナー事業本部 本部長を務める高橋大造氏は「仕事だけではなく趣味や家庭などあらゆる用途でPCが利用されるようになり、ユーザーのPCに対する評価がモノとしての価値だけではなく、PCを利用して何ができるのかというコトの体験も求めるようになっています」と指摘する。

 そこでインテルは2019年にノートPCの開発プロジェクト「Project Athena」(プロジェクト・アテネ)を開始する。インテルではこれまでノートPCのプラットフォームについて「Centrino」(セントリーノ)や「Ultrabook」(ウルトラブック)を定義して、業界に提唱してきた。これらはいずれもハードウェアのスペックやフォームファクター(形状)に対する仕様であった。しかし現在のユーザーが必要としているのは自身の用途に最適な機種を選択するための判断材料である。

 そこでProject AthenaではユーザーがノートPCをどのような用途で活用しているのか、現在のノートPCに対する不満は何かなどを調査し、PCメーカーやコンポーネントメーカーとも協力してユーザーがノートPCでしたいことが快適に行える仕様を策定した。それが「インテル Evo プラットフォーム」だ。

ノートPCに対する不満や要望を調査
ユーザーが求める体験を仕様に反映

インテル
執行役員
パートナー事業本部
本部長
高橋大造 氏

 インテル Evo プラットフォームへの準拠に必要な要件は多岐にわたり、要件を満たすのは決して容易ではない。前述の通りインテル Evo プラットフォームでは「ユーザーがノートPCでしたいことが、いつでも快適に行えること」が最も重要かつ優先される要件であり、ハードウェアスペックはユーザーの「体験」を実現するために利用するテクノロジーという位置付けだ。そのため最新のCPUや高性能なグラフィックス機能を搭載していても、ユーザーが求める体験を実現できなければインテル Evo プラットフォームとして認められないのだ。
 
高橋氏は「インテル Evo プラットフォームではユーザーが求める体験をいくつも定義しています。例えばノートPCを自宅やオフィスなどから持ち出す際にACアダプターは持ち歩きたくない、バッテリー駆動時であってもACアダプターを接続している時と同様の性能でノートPCを利用したい、カフェなど外出先で電源が利用できない状況でもバッテリーの残量を気にすることなくWeb会議やビジネスアプリケーションなどを利用して仕事の生産性を高めたい、さらにちょっとした空き時間にビデオ編集や写真の加工といったヘビーな作業を、仕事に使うノートPCで趣味も楽しみたいなど、実にさまざまな利用シーンが想定されています」と説明する。

 こうしたインテル Evo プラットフォームで定義されているさまざまなユーザー体験は、インテルが長年にわたって世界中のあらゆるユーザー層に対して調査を繰り返して得た情報から組み立てられたものだ。

 高橋氏は「インテルでは日本を含む主要各国のあらゆるユーザー層に対して、ノートPCに対する不満や要望について繰り返し調査しています。不満や要望は世界共通で、どのようなテクノロジーをどのように活用すれば不満を解消し、要望を実現できるかを、PCメーカーやコンポーネントメーカー、さらにはソフトウェアメーカーと協力して、有効な機能や仕組みを開発してノートPCに実装しています。その結果、ユーザーが求める体験が満たされます」という。

インテル社内の人類学者チームが
科学的なアプローチで快適を追求

 インテル Evo プラットフォームは科学的なアプローチも加えて要件を策定している点も興味深い。インテルは1998年に世界に先駆けて人類学者であるジェネビーブ・ベル博士を社内に招き、「人とテクノロジーの関係」をテーマに長年にわたって調査・研究を続けてきた。

 例えばあるユーザー体験を実現するために、ユーザーはどのようなことを試みたり、指向したりするのかという人の行動パターンを調査・研究している。インテル Evo プラットフォームの要件の策定においてもジェネビーブ・ベル博士が率いる人類学者チームが参加しており、ユーザーが「快適」だと感じる機能や仕組みの実現に寄与しているのだ。

 高橋氏は「インテルは世界に3カ所あるオープンラボにおいて、PCメーカーが自社製品を自由に評価できる環境を提供しています。オープンラボではインテル Evo プラットフォームが求めるユーザー体験を検証するために、ビジネスアプリケーションやクリエイター向けソフトウェア、AIなどを利用する際の実用性能を評価する独自のベンチマークテストを提供していますが、そのスコアが高くてもCPUの冷却ファンの騒音が大きいと評価が下がるなど、実用性能と利用環境の両面で快適性を実現しなければならず、インテル Evo プラットフォームに認定されるのは非常に厳しいのです」と説明する。

 最後に高橋氏は「インテル Evo プラットフォームの認定は画一的な評価ではありません。PCメーカーや機種ごとに個性を発揮できる点も魅力の一つです。実際にPCメーカーが独自の機能や工夫を加えたインテル Evo プラットフォーム製品が数多く提供されており、ユーザーに選ぶ楽しみも提供しています」とアピールする。