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TISの「ヘルスケアパスポート」が地域医療連携の課題を解決

TISの「ヘルスケアパスポート」が地域医療連携の課題を解決

2020年12月25日更新

医療従事者と生活者を双方向につなぐ
SaaS型クラウド「ヘルスケアパスポート」

医療現場でのIT活用が進みつつある。しかし、従来のオンプレミス型のシステムでは、病院内の生活者(患者)の情報が閉じられていたり、システムの導入コストや運用コストがかさむなど、課題も多くあった。そうした医療現場の課題を解決するのが、セキュリティに配慮したクラウドサービスだ。

Lesson1 システムの継続性を担保するクラウド

 病院や診療所、薬局や介護施設など、患者の電子データを複数の施設が連携する地域医療情報連携システム。診療情報を共有することで、無駄な投薬や検査をなくしたり、転院先病院の紹介をスムーズにしたりといった活用が可能になる。直近10年で地域医療における情報連携の取り組みは進み、全国で300件近くの地域医療情報連携システムが構築されているが、地域の生活者が利用のメリットを実感できる機会が少ないという課題も生じている。また、従来のオンプレミス型のシステム開発では初期導入のコスト負担が大きいことや、定期的なサーバーリプレース費用などの運用負担が大きいことなど、継続性の課題も生じている。

 そうした地域医療情報連携システムのインフラの一つの解として、クラウドの技術活用が挙げられる。総合ITサービス企業であるTISは、クラウド型地域医療情報連携サービス「ヘルスケアパスポート」を千葉大学医学部附属病院(以下、千葉大学病院)との協業により開発。利用者の負担を低減しながら継続性を担保できる地域医療情報連携システムの新たな形として、2020年9月28日より提供をスタートしている。

 同社の柴田 靖氏は「当社では金融機関などのシステム構築で培ったノウハウを生かし、医療の要配慮個人情報を保護するための高度なセキュリティ対策を施しています。もともと地域医療連携への関心がある中で、千葉大学病院さまとご縁があり、従来行われていた取り組みを我々のプラットフォームで活用することで全国に波及していこうと協業を決めました」と語る。

Lesson2 医療従事者と生活者が双方向につながる

 ヘルスケアパスポートの特長は大きく三つある。一つ目は医療従事者と生活者(患者)やほかの医療機関と、双方向で簡単につながれる点だ。

 生活者は、スマートフォンなどを利用した電子的な同意(電子オプトイン)をすることで、医療機関や家族への情報共有を承認できる。クラウド型のヘルスケアパスポートを活用することで、生活者自身が、自分の診察や処方内容、検査値といったカルテの情報をスマートフォンから閲覧して管理できるようになる。

 例えばスマートフォンからヘルスケアパスポートに既往歴などを入力しておけば、医療従事者と共有でき、問診をスムーズに行える。生活情報や通院情報も記録でき、診察時にフィード形式で担当医にフィードバック可能だ。

 医療従事者はWeb画面から、生活者の情報を「生活者基本情報」「ペイシェントジャーニー」「診察・処方内容、検査結果」の順番で閲覧できる。生活者基本情報では、IDや氏名、生年月日、飲酒や喫煙、ジェネリックの希望有無や食物/薬剤アレルギーなどを閲覧でき、ペイシェントジャーニーからは直近の診察・検査・処方内容を確認できる。表示される情報には、生活者が登録した問診メモや、バイタルなどの情報も含まれるため、診察時や服薬指導時に効率的に生活者の理解が行えるようになる。

Lesson3 中小の医療機関でも導入できる

 二つ目に、従来であれば紙ベースで同意書への署名を行っていた医療情報のオプトイン(同意取得)をスマートフォンやキオスク端末から電子的に行える点がある。紙ベースでの同意取得の場合は生活者の人数分の紙が発生し、管理や事務負担が膨大になっていた。また、情報の開示についても生活者が公開や共有を細やかにコントロールできるため、プライバシーにも配慮されている。煩雑な同意書の管理を効率化できるだけでなく、個人情報保護法に基づいた情報共有が実現できるのだ。

 三つ目に、クラウドサービス基盤上に構築したことで、サービス利用コストの負担が軽減できることが挙げられる。SaaS型のため、地域医療連携に必要な基本機能を、導入先ごとに構築・運用する必要がない。大きな投資負担が課題であった中小医療機関でも気軽に導入が可能なのだ。利用量に応じた課金のため、地域の中核病院や自治体などでのスモールスタートにも対応する。

 TISの山田 大氏は「ヘルスケアパスポートを活用すれば、生活者の家族も医療情報の閲覧が可能になります。例えば離れて暮らしているご両親や、お子さまの医療情報をヘルスケアパスポートから確認できるのです。また、血圧や体温などのバイタルデータもヘルスケアパスポートで確認できます。現時点では手入力が必要になりますが、今後はできる限り負担のない形で入力できるよう自動取り込みの仕組みも含めて方法を模索中です」と語る。

Lesson4 小さく始めて全国への展開を目指す

 ヘルスケアパスポート開発にあたり、特に配慮したのがセキュリティだという。「医療情報取り扱いにあたって、金融機関のお客さまへのシステム開発を行ったセキュリティのノウハウを生かすと同時に、厚生労働省、経済産業省、総務省の3省が発表している医療情報安全管理の二つのガイドライン『3省2ガイドライン』に準拠したシステム開発に取り組みました。またシステム運用についても、ガイドラインの準拠と合わせて、インフラや機能、運用の三つそれぞれでセキュリティを実装し、維持していくことで、医療情報を取り扱う上での堅牢なセキュリティが担保できると考えています」と柴田氏。

 現在千葉大学病院において、ヘルスケアパスポートの試験運用が行われている。今後、電子お薬手帳や衛生検査システムなどの既存システムとの連携を順次進めていき、来年から本格的な運用をスタートする予定だ。千葉大学病院で利用していた既存のシステムと接続していた施設との再接続も予定している。

「クラウドサービスであるヘルスケアパスポートは、既存の導入コストや運用コストの課題を解決するスモールスタート型であるだけでなく、他県との情報連携も可能になります。小さなところからつなげていき、いずれは全国の医療機関がつながるよう、ヘルスケアパスポートの普及を進めていきたいですね」と山田氏は語った。

今月の講師
(左) TIS
ヘルスケアサービス部 シニアエキスパート
柴田 靖 氏

(右) TIS
ヘルスケアサービス企画営業部 フェロー
山田 大 氏

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