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さとえ学園小学校のレベルアップ型ルールが児童の主体性を育てる

さとえ学園小学校のレベルアップ型ルールが児童の主体性を育てる

2020年12月24日更新

情報モラルとスキルを育てる“レベルアップ型ルール”とは

学校現場でタブレットを導入するにあたり、課題となるのが端末の管理方法だ。通常は一律のルールでフィルタリングをかけたり、学年別で利用制限をしたりする管理方法が多いが、さとえ学園小学校では“レベルアップ型ルール”という一風変わった端末管理で1人1台のタブレット環境を運用している。その管理方法に、児童の情報活用能力を伸ばす一つの解があった。

児童と教員がともにルールを定める

 子供たち1人ひとりに個別最適化され、創造性を育むGIGAスクール環境の実現に向けて、多くの学校現場でタブレット端末の導入が進められている。しかし、同時に懸念されているのが、子供たちに端末を与えることによって生じるトラブルだ。例えば、授業中にもかかわらず関係のない動画を視聴したり、ゲームをしたりといった行動や、コミュニケーションツールを活用して特定の児童生徒を中傷するようなトラブルなどだ。それらを管理するため、一律端末の利用を制限する対応も考えられるが、それでは子供たちの自由な発想を阻害してしまう可能性もある。また、制限をかけすぎると情報活用能力が育たなくなるという本末転倒の事態にも陥ってしまう。

 そうした学校現場におけるタブレット運用の課題を、“レベルアップ型ルール”を採用することで解決しているのがさとえ学園小学校だ。学校法人佐藤栄学園を母体とするさとえ学園小学校では、2018年7月からセルラー型iPad mini(以下、iPad)約500台を全学年に一斉導入し、1人1台のタブレット環境でのICT教育をスタートさせている。

 同校のタブレット活用スタイルについて、文部科学省のICT活用教育アドバイザーも務めているさとえ学園小学校 教諭の山中昭岳氏は「“iPadは賢くなるための道具”をスローガンに掲げて、児童の情報活用能力や情報モラルに応じた運用を行っています。もともと導入当初は大きな決まり事をせずに運用しており、不適切な使用が多々見られました。そこで子供たちによる児童会と教員によるICTチームが中心になり運用ルールを定めると同時に、きちんと使っている児童には相応のメリットがあるように情報モラルをレベルアップしていく仕組みとして立ち上げたのが、レベルアップ型ルールです」と語る。

さとえ学園小学校内にあるビオトープを教材に、自然の学びとプログラミングの学びを組み合わせた教育を実践している。
授業では日常的にiPadを活用し、学びを深めている。

レベルに応じて自由度もアップ

 具体的には、児童個々人の情報モラルや情報活用能力に応じて、グリーンカード、ブルーカード、ゴールドカードと段階的にiPadで“できること”を増やしていく。例えば、グリーンの児童は教員から許可された場合を除き、iPadを休み時間に使用してはいけないといった決まりがあるが、ブルーの児童はラーニング・コモンズであれば使用できるようになる、といったようにレベルが上がるにつれて、活用の自由度も上がっていく。

「iPadの機能も、レベルが上がるにつれて多様な機能が使えるようになります。例えばAirDropが使えるようになったり(ブルー)、音声アシスタントのSiriが使えるようになったり(ゴールド)するため、子供たちは常に上のレベルを目指します。それぞれのiPadの壁紙は、カードレベルの色になっており、さながら免許証のようにその児童ができることが把握しやすくなっています」と山中氏。カードレベルは定期的なスキルチェックテストの結果によってレベルアップできるかどうかが決まり、合格した児童は同校で利用しているMDMツール「mobiconnect」から、設定が変更されて使える機能が増える仕組みだ。

 山中氏は「このテストの難易度は決して易しいものではありません。まずIDとパスワードを忘れているとログインができないのでテストが受けられませんし、画像検索やマイナス検索のやり方といった情報活用能力もチェックします。学校のさまざまな授業とリンクしたチェックテストを全問正解しなければ次のレベルには上がれません」と語る。

さとえ学園小学校では、自然にあふれた校庭の観察、校内にある水族館やプラネタリウムなどに触れ、好奇心や探究心を伸ばす「体験型」の教育に取り組む。

公立学校のモデルとなる運用を

 さまざまな授業とリンクするiPadは、具体的にどのような活用がなされているのだろうか。「コロナ禍においては、グループワークの実施が難しくなっているため、Googleドキュメントを活用して児童がそれぞれ書き込みを行って会議するという活用をしています。ほぼ全ての授業でiPadを利用する中で、特に授業スタイルが大きく変わったのは社会科です。教員よりも知識のあるiPadが児童の手元にあるため、従来の一斉授業型から、課題を設定して児童がそれぞれ調べてまとめ、表現する主体的な授業へと変化しています」と山中氏。

 授業ではG Suite for Educationを中心に、基本無償のアプリを活用している。コストを抑えた運用の背景には、同校のICT教育モデルを、公立学校の運用モデルとしたい思いがある。

 山中氏は「日本の教育力をアップするためには、ICTの活用が不可欠です。しかし、ICTツールを当たり前にするためには、高いシステムではなく、誰でも導入できて誰でも使えるようなシステムである必要があります。本校でもWi-Fiの整備は必要最低限に抑えており、セルラー型のiPadと併用することでコストを抑えながら円滑な通信を実現しています」と語る。

 現在、さとえ学園小学校のiPadは法人契約によるレンタルで運用している。来年度からは保護者負担で各家庭にiPadシリーズの中から購入してもらうCYOD(Choose Your Own Device)スタイルでの運用を検討しており、「児童だけでなく家庭のICT力もアップさせていきたいですね」と山中氏は語った。

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