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~PCの役割を具体的に示すことでPCの需要を喚起する~ インテル 代表取締役社長 鈴木国正氏

~PCの役割を具体的に示すことでPCの需要を喚起する~ インテル 代表取締役社長 鈴木国正氏

2020年12月04日更新

DcX、教育のIT化やSTEAMラボ、データの民主化など
PCの役割を具体的に示すことでPCの需要を喚起する

2年前の11月1日、ソニーグループにおいて幅広い事業を統括してきた鈴木国正氏が米インテルの日本事業責任者としてインテルの代表取締役社長に就任した。鈴木氏は長年にわたって在籍したソニーにおいてPC「VAIO」をはじめスマートフォン「XPERIA」などのモバイル分野、ゲームなどのエンターテインメント分野など、ソニーグループのビジネスを統括するとともに、現地法人社長として海外展開もけん引してきた。ソニーでのさまざまなトランスフォーメーション(事業転換)に携わった経験をインテルで生かし、日本の産業や教育の発展を支援することで日本の社会に貢献したいと意気込む。

コロナ禍でPCの価値が再認識され
DXへの取り組みが活性化しているが・・・

インテル 代表取締役社長
鈴木 国正 氏

電子情報技術産業協会(JEITA)の発表によるとノートPCの今年9月の国内出荷台数は前年同月比61.2%増の133万4,000台に達したという。またPC全体の9月の出荷台数も前年同月比25.7%増の144万9,000台と勢いが良い。国内のPC市場が好調だ。


鈴木氏(以下、敬称略)■昨年はWindows 7の延長サポート終了に伴うPCの買い替えや消費税増税前の駆け込み需要などがあり、PCの需要はピークに達したと言われました。その反動で当初は今年のPCの需要が大幅に落ち込むと予想されていました。

 しかし新型コロナウイルス感染対策としてテレワークが普及し、自宅で使用するためのPC、特にノートPCの需要が拡大したことで需要の大幅な落ち込みが食い止められました。

編集部■JEITAの発表では今年4~9月の出荷台数は前年同期比1.8%減の495万2,000台と好調を維持しています。さらに2020年のノートPCの出荷台数は過去最高に達するという予測も見られます。

鈴木■PCの価値が見直された結果だと考えています。在宅勤務や外出を控える巣ごもり生活によって、多くの人がPCの重要性を改めて実感したのだと思います。

 以前はスマートフォンがPCに取って代わるという意見もありましたが、自宅で仕事をしたりデジタルコンテンツやゲームを楽しんだりする際はPCの処理性能と画面の大きさ、そしてキーボードが必要であることが認識されました。これはPCの本来の利用方法であり、極めて当たり前のことです。

 もちろんPCだけで全てをまかなえるというわけではありません。状況に応じてスマートフォンとPCを使い分けることで、仕事もプライベートもより便利で快適になります。ただしPCが中心にあり、スマートフォンはPCの利用を補う役割を担っているという関係です。

編集部■在宅勤務や巣ごもり生活の時間が伸びたことでPCを利用する人の数と利用頻度、利用時間が大幅に伸びています。いよいよビジネスと社会の両方で本格的なデジタル化が加速しそうです。

鈴木■その通りです。インターネットをはじめとしたあらゆるネットワークにつながるPCやIoTなどのデバイスの数が増加し、活用領域が拡大することで何が起こるのか。それはデータの爆発的な増加です。ある調査では今年4~5月の国内データ通信量が前年同期比50%以上増加したと指摘しています。

 言うまでもなくデータは宝の山です。データをうまく利活用することでビジネスの成長、新しい事業の創出、豊かで便利な社会の実現、個人の利便性や生活の質の向上など、挙げればきりがないほどの成果が期待できます。これからはデータの利活用が企業の存在価値や個人のライフスタイルを決めていくといっても過言ではないでしょう。

 しかしながら日本はデータの利活用で世界に遅れをとっています。今回の新型コロナウイルス感染拡大を機に仕事でのPCやクラウドなどのデジタル活用や、行政分野では脱ハンコなどのデジタル化が加速しており、さまざまな業界や分野でデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが活発化しています。

 これはとても喜ばしい変化ですが、現在は入り口に入ったばかりでキャッチアップのフェーズです。キャッチアップで終わってしまわないよう、DXに取り組み続けて進展させなければビジネスも社会も個人の生活も豊かになりません。

データを中心にDXへ取り組む「DcX」を提唱
教育のDcXに注力して成功モデルを示す

鈴木■DXの取り組みにおいて重要となるのは、やはりデータの利活用です。データの利活用無くしてDX本来の目的を達成することはできません。DXについて多くの人がIoTやAI(人工知能)などのデジタルテクノロジーを活用して生産性の向上、コスト削減、プロセス改善、新しいビジネスモデルの創出、付加価値の高い製品やサービスの開発、提供といった価値を創出することで競争上の優位性を確立することだと説明しています。これはシステム導入による効率化、コスト削減、生産性向上といったこれまでの取り組みの延長線です。

 DXではいかに付加価値を生み出していくのか、これまでにはない新しい価値を生み出していくのかが重要な目的です。それにはデータを中心としてDXに取り組む必要があります。インテルではDXへの取り組みにおいてデータの価値を最大限に引き出し、守りのみならず攻めのビジネスモデルを構築するという意味で「DcX」(データセントリックトランスフォーメーション)を提唱しています。日本の将来の成長・発展のためには、このDcXを加速させなければなりません。

編集部■DcXの推進、進展においてPCの役割がますます重要になります。データの生成、入力、簡易な分析、サーバー等で分析されたデータの活用など、それぞれに必要なアプリケーションとデータそのものを利用するにはPCに高い性能が求められます。

鈴木■DcXにおけるPCの役割について最も分かりやすく、そして重要な分野の一つに教育があります。かつて日本の教育は世界に誇れる人材をたくさん生み出してきました。もちろん現在も世界に誇れる能力を持つ日本人は数多くいますが、日本の教育が世界に誇れるかと言えば、残念ながらそうではありません。

 日本の教育の何が問題なのかというと、データが活用されてないことです。先進的な教育の現場では「エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング」(EBPM)が実践されています。「エビデンス・ベースド」(Evidence Based)とはデータなどの科学的根拠に基づいて判断などを行うことを意味します。児童・生徒の学習の経緯をデータで記録することで、これまでの学習の仕方や成果といった履歴を追跡して分析し、一人ひとりに最適化された学習方法や教材選びを可能とする取り組みです。

 EBPMを実践するには児童・生徒に1人1台のPCを行き渡らせなければ、一人ひとりの学習の履歴を記録できません。現在、政府が主導する「GIGAスクール構想」に基づいて全国の自治体が公立の小中学校に1人1台のPCを導入している最中です。

 GIGAスクール構想によって児童・生徒1人1台のPCが実現されることで、日本の教育の質と成果の向上に向けた第一歩が踏み出されました。1人1台の環境によってEBPMが実践できるようになりますが、ポリシー・メイキングの次には教材などのコンテンツづくりや教育そのものにもデータを利活用して教育のDcXを進展させる必要があります。

STEAM教育には高性能なPCが不可欠
「STEAMラボ」でショーケースを提示

編集部■インテルはPCメーカーと協力して1人1台のPCの提供を支援しています。日本の教育の進展に向けて、ほかにどのような取り組みが必要だと思いますか。

鈴木■STEAM教育の実践も重要です。STEAM教育とは科学、技術、工学、芸術、数学の五つの領域を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念ですが、その実践にもPCが欠かせません。STEAM教育ではAIやIoTなど最新のテクノロジーを学ぶ場でもありますが、GIGAスクール構想で提供されるPCは決して高性能ではないため、高度なアプリケーションやデジタルコンテンツの真価を体験するのは難しいのが実情です。

 そこでインテルは国内の学校へのSTEAMラボ(仮称)の導入に向けてパートナーと検討を進めています。STEAMラボはAIやIoT、VR/AR、モデリング、シミュレーション、データ解析などの最新テクノロジーを用いたアプリケーションやデジタルコンテンツを高性能なPCで快適に体験、学ぶことができる理科室のようなスペースです。

 STEAMラボに高性能なPCと最新の機器やアプリケーションを用意して、例えば3Dプリンターで作品を作ったり、デジタルコンテンツを制作したりするなど、本格的なSTEAM教育の現場を児童・生徒に提供することでモノづくりの世界観、ソフトウェアの世界観を広げてもらいたいと考えています。すでに意識の高いいくつかの自治体が反応を示してくれています。

編集部■GIGAスクール構想では公立の小中学校が対象ですが、今後は高校や大学など高等教育でも1人1台のPCを実現する必要があります。

鈴木■まずはGIGAスクール構想を着実に進めていくこと、そして引き続き教育のIT化に投資を続けることが重要です。教育のIT化に向けた政府の予算の名目が一括交付金として地域振興に広がったため、自治体によっては教育のIT化だけではなく商店街の活性化など地域にも投資を分散する可能性があります。

 しかし文部科学省としては引き続き教育へのIT投資に重点を置いており、さらに高校や大学などの高等教育へのIT投資も進めていると聞いています。高等教育向けのIT投資では高度な学習に利用するため、STEAMラボで使うような高性能なPCが必要になるでしょう。

 せっかくGIGAスクール構想によって1人1台のPCが実現されていく中で、日本の教育の進展をキャッチアップで終わらせたくないと強く思っています。これは教育に限らずビジネスにおけるDcXも同様です。

 いろいろなことを全部、いっぺんに取り組むのは難しいことですが、今取り組むべきテーマに絞って集中的に着実に進めて成果を出し、日本の教育、そして社会、日本の未来に貢献していきたいと考えています。

データの民主化を推進して格差を解消
誰もがデータを利活用できる世界へ

編集部■DcXの進展によってPCの活用領域が広がり利用頻度が高まると、より高度なアプリケーションやデジタルコンテンツを快適に利用できる高性能なPCが求められるようになります。そうした要望に対してインテルはどのように貢献していくのでしょうか。

鈴木■9月に「第11世代インテルCoreプロセッサーファミリー」と「インテルEvoプラットフォーム」を発表させていただきました。これまでインテルのCPUは着実に進化を続け、PCの利用環境をより快適に、かつ高度化することに貢献してきました。

 これまでのインテルCPUの進化は処理性能、処理速度の向上という連続的な進化であったのに対して、第11世代では非連続的な進化を遂げています。その進化とは最新の高度なアプリケーションやデジタルコンテンツを快適に利用できることを誰もが「体感」でき、ユーザーが今までのPCでできなかったことが可能になることです。

 この進化を示すために自社製品だけではなく、他社製品との性能を比較した情報も発信することにしました。これはPCを購入するお客さまにもPCを販売するパートナーさまにも、具体的な進化が分かるようにすることが目的です。そして今回の非連続的な進化に自信があるからこそ、このタイミングで他社製品との性能の比較を公開したのです。

 特にインテルEvoプラットフォームに準拠した薄型軽量ノートPCは、これまでデスクトップPCで利用していた高度なアプリケーションやゲームがバッテリー駆動で快適に利用できます。

 PCの快適な利用環境はハードウェアとソフトウェアの両方が連携して進化しなければ実現できません。インテルはハードウェアメーカーだけではなくソフトウェアメーカーとも協力して開発を進めています。そこでインテルは国内の主要ゲーム会社に協力いただき、ゲームソフトの検証プログラムを実施して第11世代インテルCoreプロセッサーファミリーとインテルEvoプラットフォームの性能を実証しています。

編集部■テレワークが普及したことでPCの需要が高まっていますが、1人1台のPCを用意できない企業や社外ではスマートフォンだけを使う人がいるなど、国内PC市場には成長の余地があると思います。

鈴木■DcXの進展によってビジネスも社会も個人も豊かになる話をしましたが、大きな課題もあります。それはデータデバイドです。今後はデータを使える企業と使えない企業との間で大きな格差が生じます。

 以前はインターネットを使える人と使えない人との「デジタルデバイド」が問題視されていました。これは個人間で生じる問題ですが、データデバイドは企業間で生じる問題です。DcXへの取り組みが遅れた企業は、存続が危ぶまれるというほど深刻な問題です。

 インテルはデータデバイドを解消するために「データの民主化」に取り組み続けていきます。インテルだけではなくPCメーカーやソフトウェアメーカー、プラットフォーマー、通信キャリア、AIなどのテクノロジー企業など、いろいろな企業と協力して、誰もがデータを利活用できる環境を実現します。

 インテルはPCだけではなく「データの移動」に必要な5Gなどの高速ネットワーク、「データを保存」するメモリー、「データの処理」に必要となるAIや、さまざまなデバイスが有機的に連携するインテリジェントエッジ、これら三つの領域に注力してデータの民主化に向けて取り組み続けます。

 インテルにはコンピューターの民主化の実現に貢献した実績があります。コンピューターの民主化においてもデジタルデバイドが生じましたが、その格差はPCのコストパフォーマンスの向上によって小さくなりました。データの民主化においても信頼してもらえると自負しています。

 このようにDcX、教育のIT化やSTEAMラボ、データの民主化など、PCの役割を具体的に示すことでPCの需要を喚起し、パートナーの皆さまのビジネスの成長に貢献できると考えています。

「これまでのインテルCPUは連続的に進化してきましたが、第11世代では非連続的な進化を遂げています。第11世代インテル Coreプロセッサーは性能の進化を誰もが体感でき、ユーザーが今までのPCでできなかったことが可能になります。」

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