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ポストコロナ時代の注目デバイスが集結

ポストコロナ時代の注目デバイスが集結

2020年11月18日更新

2020 EDIX REPORT
ポストコロナ時代の注目デバイスが集結

教育分野における日本最大規模の展示会「第11回 教育 総合展【EDIX東京】」(以下、EDIX)が、9月16~18日に幕張メッセで開催された。新型コロナウイルス対策として、検温や手指の消毒、三密の回避を徹底して行われた本展示会において、ポストコロナ時代の学校に求められるデバイスや教材が見えてきた。

感染症対策としてオンライン説明会を開催するブースが目立った。写真はデル・テクノロジーズのブース。
DynabookのブースではMicrosoft Teamsを利用し、Microsoft 365 Education GIGA Promoの質疑応答とデモセッションを実施。

SENSOR

センサーが守る子供の未来

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、各所で実施されている検温。それが求められるのは学校現場も例外ではない。しかし、逐一児童や生徒から体温の申告を受け、それを記録するのは手間であるし、学校現場で体温計を使い計測することは教員の業務負担につながる。

 そうした検温の負担を軽減し、学校現場での感染拡大を抑止するソリューションとして各社のブースで展示されていたのが、非接触型の検温ソリューションだ。例えば書画カメラや教育ICTソリューション「xSync」シリーズを提供しているエルモ社では、ダーファ・テクノロジー製のマスク未着検知機能付きサーマルカメラを出展。カメラとタブレットが一体になった製品で、0.2秒で体温計測を行える。

 また、プログラミング教材で有名なアーテックでは、ブースの一角に感染症対策商品として、飛沫防止パーテーションなどを展示。それらの一つとして顔認証型のサーマルカメラや、1度に20人までの体温を測定できるサーマルカメラなどを出展していた。そのほかのブースでも顔認識型のサーマルカメラをはじめ、耳内温度計測を行うサーモグラフィーカメラなども出展されていた。

コロナ禍の学校運営を支援する、非接触型のサーマルカメラ。写真の製品はエルモ社のブースで展示されていたダーファ・テクノロジー製のマスク未着検知機能付きの製品。
プログラミング教材で有名なアーテックでは、感染防止・衛生用品と並んでサーマルカメラが展示されていた。
IoTBankのブースでは三密回避センサーとして空気環境を見える化する「まもセンサ」を出展。現在実証実験を進めているという。
交通事故死傷者数が多い小学校1年生を対象にした事故防止センサー内蔵ロボット「Ropot」。現在本田技術研究所が開発中だ。

ST0REHOUSE

タブレット環境を支える充電保管庫

 GIGAスクール構想では、小学校、中学校、特別支援学校などに対する電源キャビネットの整備も事業概要に盛り込まれている。今回のEDIXではそのGIGAスクール標準仕様に準拠したタブレット端末充電保管庫が、各社ブースで展示されていた。

 Dynabookとの共同ブースで出展していたシャープは、今年8月に発表した「輪番タイマー搭載充電保管庫」を展示。文部科学省GIGAスクール構想の標準仕様に対応していることや、国内生産の保管庫であること、保管庫の扉が270度の開閉機構を採用しており、磁力で開放時固定が可能であることなどをPRポイントとして挙げた。クラスの人数構成と合わせた44台保管庫と22台保管庫をラインアップし、10月に発売する。

 また、GIGAスクール予算の範囲外の製品とはなるが、大学向けの貸し出しPC保管庫の出展も目立った。シー・オー・コンヴでは、貸し出しPC運用支援ソリューションとして「CO-OnSen」を展示。USB Type-C PDケーブル一本でPCの状態確認から充電、イメージ配信、環境復元といったメンテナンス作業が可能な製品で、学生証などのICカードでユーザー認証することで、24時間自動での端末貸し出しが可能になる。

GIGAスクール構想の標準仕様に対応した「輪番タイマー付き充電保管庫」をシャープが発売。Dynabookとの共同ブースで出展した。
「dynabook K50」の専用アクセサリーとしてタブレットを衝撃から守るEVAケースをラインアップ。
自動での端末貸し出しが可能であることから、ポストコロナ時代の学校端末管理に最適だとうたうシー・オー・コンヴ。
ケーブル一本で端末をメンテナンスできる。
有人環境の管理に適したブックエンド型の「CO-OnSen Light」も参考出展していた。

PROGRAMMING

授業で取り組むSTEM教育

 2020年度から小学校でスタートしたプログラミング教育。EDIXでも小学校から中学校を対象にしたプログラミング教材が出展されていた。

 英国生まれのプログラミング教育用マイコンボード「micro:bit」を提供しているスイッチエデュケーションのブースでは、micro:bit用ワークショップモジュールをはじめとしたSTEM教材を提案。ワークショップモジュールはアクチュエーターやセンサー四つまでmicro:bitに接続でき、多様なカリキュラムを組み立てられる。

 また、ソニー製のIoTブロック「MESH」も展示。消しゴムサイズの電子ブロックを組み合わせて、簡単にデジタルなものづくりを体験できるMESHに、スイッチエデュケーションが開発した「MESH GPIOブロック用電子スイッチ」「MESH GPIOブロック用信号機」「MESHブロック用充電器」などを組み合わせて提案。小学校理科の「電気の利用」単元でプログラミングと組み合わせて学べるカリキュラムを紹介していた。

 リンクインターナショナルでは英国のKano製教育向けWindowsタブレット「Kano PC」を出展。自分でPCを組み立ててその仕組みを理解し、豊富な学習アプリでプログラミングについて学べるデバイスだ。

14/スイッチエデュケーションでは「micro:bit」のほかに、ソニー製IoTブロック「MESH」を出展。
MESHのGPIOブロックと一緒に使える電子スイッチや、電気の利用パーツセット、MESHブロック用充電器などを開発、提供している。
8月22日に発売されたKano PC。Webカメラやマウス、ヘッドセットなどのアクセサリー類も発売予定だ。
Kano PCは自らが組み立てて遊びながら学べるPC。手順に従って組み立て、回路とソフトウェアの理解を深められる。

HIGH SCHOOL

高等学校の学びにもICTツールを

 2021年度からは大学入試センター試験の後継となる「大学入試共通テスト」がスタートする。共通テストでは、従来のセンター試験よりも思考力・判断力・表現力への評価のウエイトが高まるため、対策が急務だ。

 駿台教育研究所では大学入試共通テストに完全対応した「共通テスト対策Navi.」を出展。共通テストに完全対応した全20講座の映像授業とCBT(omputer Based Testing)システムを組み合わせ、理解出来ない単元の洗い出しやポイント解説の視聴による学びを提供する。高等学校をターゲットとしており、学校で契約して生徒が映像講座を受講する。

 また、新型コロナウイルスの影響で模試が従来通り実施できなくなった影響を受け、「駿台 atama+ 共通テスト模試」を提供。CBT方式による模試で、全国どこからでもオンラインで模試を受験できる。文部科学省では、2024年度の共通テストからPCやタブレット端末から回答するCBT方式を「情報1」で導入する案なども検討されており、その受験スタイルに慣れるためにも有効と言えそうだ。

 また、KDDIとメイツは中学生・高校生向けの家庭学習支援サービス「edich」を出展。スマホネイティブ世代の家庭学習をICTサービスでサポートする。

駿台教育研究所では、2021年度からスタートする共通テストに対応した映像授業コンテンツ「共通テスト対策Navi.」を出展。
駿台教育研究所では、2021年度からスタートする共通テストに対応した映像授業コンテンツ「共通テスト対策Navi.」を出展。
KDDIとメイツのブースでは教育機関向け英検アプリと、家庭学習支援サービス「edich」を出展。
edichでは生徒がスケジューリングした時間に学習をスタートしていない場合はチャットや電話機能で学習を支援する。

SEMINAR REPORT

EDIXでは識者の視点から多様なセミナーが開催された。
今回は基調講演とパネルディスカッションの一部をリポートする。

形式的な平等主義から個別最適化の学びへ

KEYN0TE SPEECH

一歩先の判断が必要に

東京大学公共政策大学院教授
慶應義塾大学・メディア研究科教授
元・文部科学副大臣/前・文部科学大臣補佐官
鈴木 寛 氏

 前・文部科学大臣補佐官にして、現在東京大学および慶應義塾大学の教授を務める鈴木 寛氏は、過去25年間にわたり教育現場の情報化に注力してきた人物だ。EDIXの基調講演では、「AI時代を生きる子供たちの教育とは ~小・中・高校・大学における教育改革~」と題し、コロナ禍において世の中の不確実性がますます高まる中で「AI時代において求められる人物像や教育の在り方」について講演した。

 鈴木氏は今回のコロナ禍における全国一斉休校を振り返り「学校や自治体ごとに非常に格差がついた」と指摘する。公立校では渋谷区の取り組みを例に挙げ、セルラー回線・フルクラウドの1人1台タブレット環境が整備されていたことが、コロナ禍における学びの継続性を実現できたと評価する。また私立校の一部においても、ICT環境整備が行われていたことで、新型コロナウイルスによる未曾有の事態においても学びの保証が実現できた。

 一方で、機器の整備すらされていない自治体、学校現場もあった。GIGAスクール構想の補助金を利用し、今年からICT環境整備を進めていこうとしていた学校現場も少なくない。しかし「今回のコロナ禍の反省を踏まえて、早めに手を打つことがいかに重要であるか肝に銘じる必要があります。文部科学省が動くとか、世の中が変わるとか、そうしたことを予想して動いていると、ワンテンポ、ツーテンポ確実に遅れてしまう。人からまねをされるベストプラクティスを作ることで、ようやくリアルタイムで物事の渦中に入れるのです」と鈴木氏は指摘する。

AI時代の個別最適化の学び

 世界が大転換していく狭間の中で新しい時代を作り出していくためには、一部の社会的上位層がリーダーシップをとるのではなく、全ての人(子供たち)がリーダーシップを発揮する必要がある。その主体的で多様な人材を育てていくために新しい学習指導要領がある。「我々の世代の常識はどんどん変化しています。つまり従来と同じ学びを繰り返すだけでは、大量の失業者を養成することになる。例えばゲームクリエイターのような置き換わる可能性が低い仕事や、YouTuberのようなこれまで存在しなかった仕事に、これからの子供たちは就くことになる。そうした社会で生き抜くためには、形式的な平等主義を卒業し、個別最適化の学びを進める必要があります」と鈴木氏。

 また日本の小学校、中学校のICT化が大きく遅れていることを指摘し「小学生、中学生は自宅ではタブレットを使って学習している中で、学校現場だけが取り残されています。しかし、自宅でタブレットを所有できない家庭もあります。その児童生徒の学びをサポートするためにも学教教育のICT化は重要と言えます。情報活用能力は多くの子供がすでに身に付けています。学校では教員がそれを教えるのではなく、子供同士で学び合えばいいのです」と続けた。

 そうしたAI時代の学びに教員に求められているのはキュレーションだ。児童生徒一人ひとりに対して、一番よい学びのモチベーションの確保など個に応じた学びの最適化が必要となる。

OECDのPISA結果を示し、日本の15歳は数学的思考、協働的問題解決能力が非常に高いと評価した。
OECDのPISA結果を示し、日本の15歳は数学的思考、協働的問題解決能力が非常に高いと評価した。

ICT活用実践から見るポストコロナ時代の学び

PANEL DISCUSSION

ICT環境は“ないと困る”ものに

信州大学 名誉教授
教育情報化推進機構 理事長
東原義訓 氏

 GIGAスクール構想によって、教育現場で進められている1人1台の情報端末環境の整備。その実践事例から見えてきた課題について「“コロナで気付かされた”1人1台の情報端末環境が拓くICT活用の日常化と新時代の学び」と題してパネルディスカッションが実施された。

 講演では、1人1台の情報端末環境を整備してICT教育に取り組んだ町田市立町田第五小学校 校長の五十嵐俊子氏が、その取り組みを振り返った。町田第五小学校では、ChromebookとG Suite for Educationを活用し、プログラミング教育や個別最適化学習を進めていた。町田第五小学校では、学年を問わずChromebookを活用しており、1年生への端末操作は3年生や4年生が教えるといった学び合いの環境も構築されているという。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う一斉休校では、6年生にChromebookを持ち帰ってもらい、教員と双方向でコミュニケーションを取れる環境を構築。町田第五小学校では端末を共有するスタイルで1人1台の端末環境を実現していたため、全校児童に端末を持ち帰えってもらうことはできなかったが、6年生の児童の取り組みを経て、「これまでは、あったらいいなICTだった環境が、これからは、ないと困るICTになりました」と、その学びの変容を五十嵐氏は語った。

変化した保護者の意識

(左)
町田市立町田第五小学校
校長
五十嵐俊子 氏

(右)
日本学術振興会 顧問
内閣府 人工知能戦略実行会議 座長
安西祐一郎 氏

 パネルディスカッションの司会を務めた信州大学の東原義訓氏は「小学生にはオンライン教育は難しいなど、さまざまな意見はありますが実際に町田第五小学校の活用をみて大きな可能性を感じました。また、こうしたICTの活用や日常的に取り組んだほうがよいという発見があったのも、コロナ禍における気付きだったと思います」とコメント。続いて日本学術振興会の安西祐一郎氏は「ICT技術を使えばきちんとした学びができると見せていただきました。しかし中には、Wi-Fi環境整備にはお金がかかるし、自宅では整備されていないという格差がある中で、取り組みが難しいという学校は少なくありません。そうした学校現場に対して、どのようにお考えになりますか?」と五十嵐氏に質問を投げかけた。

 五十嵐氏は「本校も端末を貸し出したのは6年生の児童だけで、ほかの学年には教育動画コンテンツを紹介して学びを支援するような取り組みでした。だからこそGIGAスクール構想による端末整備によって、一部だけのオンライン授業ではない統一した環境の整備が必要です。今回のコロナ禍で保護者の方も、ゆくゆくは家庭でICT環境を用意しないといけないという認識が広まったと思います。今回、ネットワーク環境の確保は苦労したポイントで、今後家庭で端末を利用してもらう場合はWi-Fi環境の貸し出しも必要になってくるでしょう」と語った。

コロナ禍以前から1人1台の情報端末環境を整備していた町田第五小学校は、その必要性を深く実感していた。
クラウド型共同端末(Chromebook)の特長として、考えがすぐに共有される点などを挙げ、協働的な学びに適した端末だと指摘した。

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