ホーム > PC-Webzineアーカイブ > 坂村 健氏が解説するスーパーシティ構想のキモ

坂村 健氏が解説するスーパーシティ構想のキモ

坂村 健氏が解説するスーパーシティ構想のキモ

2020年11月09日更新

プラットフォーム指向とAPI連携

スーパーシティ構想のキモ

「スーパーシティ」構想の実現に向けた有識者懇談会 有識者メンバー 坂村 健氏に聞く

最先端のテクノロジーで形成されるスーパーシティのシステム面におけるキモは何か。TRONプロジェクトのリーダーであり、スーパーシティ構想のアーキテクトとしての役割を担うINIAD(東洋大学情報連携学部)学部長の坂村 健氏に解説していただいた。

坂村 健
INIAD(東洋大学情報連携学部)学部長 東京大学名誉教授
1951年東京生まれ。1984年よりオープンなコンピュータアーキテクチャTRONを構築。現在TRONは米国IEEEの標準OSとなり、IoTのための組込OSとして世界中で使われている。2015年、情報通信のイノベーションを通じて人類の生活向上への多大な功績のあった世界の6人の中の一人としてITU150Awardを受賞。著書に『イノベーションはいかに起こすか』(NHK出版)など多数。

IT分野で日本が低迷する理由

坂村氏 まずスーパーシティ構想において、最初に具体的なサービスが前面に出るのはよくありません。エンドユーザー側も、具体的なイメージを求めますが、こうした姿勢は、世界中でデジタル化が加速する中で、日本が出遅れている要因とも言えます。電子立国として肩で風を切っていたのは30年前であり、そこからPCやスマートフォンといった製品からクラウドなどのサービス提供まで、国内企業は軒並み低迷しています。なぜか。それは、プラットフォームという構想が出てこなかったからです。

 以前、国内でカラーファクス機が開発されたことがありました。写真などをカラーでやりとりすることが想定されていましたが、ほぼ普及せずに終わりました。それはインターネットという巨大なプラットフォームに負けたからです。インターネットが利用できれば、わざわざカラーファクス機を導入しなくても、PCを使って手軽に写真データを送受信できます。あえてカラーファクス機を購入するユーザーはいないでしょう。

 カラーファクス機は一つの例であり、こうしたケースが日本では数多くあったのです。インターネットのような巨大なプラットフォームを前提に考えるという発想が抜けていたのですね。

 こうした例も踏まえ、スーパーシティでキモになるのは、各サービスではなくプラットフォーム指向であることです。都市のプラットフォームをしっかり定義して構築することが最も重要な要素になります。プラットフォームがしっかりしていれば、各サービスは後からついてくるものです。

都市OSを軸にデータを連携

 スーパーシティ構想では、都市OSというデータの管理・連携基盤を中心に、設備や手段と、サービスや機能がつながっていきます。これはPCのアーキテクチャと同じです。PCは、OSを中心にディスプレイやキーボードなどのハードウェアを使って各アプリケーションを操作します。共通で必要な機能はOSに一元化して用意し、各ユーザーが個別に必要な機能やサービスはアプリケーションとしてインストールして利用するイメージですね。

 スーパーシティでは、都市OSという基盤を介して教育や医療・介護、交通、行政などの分野間でデータを連携させて利用できるようにします。データの連携にはオープンAPIを活用して、さまざまな事業者がサービスを提供できるようにするのです。

 例えば、現在はさまざまなWebサービスでGoogleの地図が利用できるようになっています。それはGoogleがGoogle マップのAPIを公開しているからです。同じように、都市OSのデータ連携基盤もAPIを公開すれば、さまざまなデータを利用した先端的なサービスを多くの事業者が開発できるようになるでしょう。

 これまでは各分野で別々のシステム構築やデータ収集が行われてきており、非常に非効率でした。そうした非効率さを排除できるのもスーパーシティなのです。

 重要なのはサービスの開発に欠かせないデータを使えるようにするための基盤であり、プラットフォームです。スーパーシティのプラットフォームとなる都市OSは、各都市との連携基盤にもなり、各自治体で共通した課題を解決できるサービスの横展開を可能にします。


「スーパーシティのデータ連携基盤を構成する都市OS は、PC のアーキテクチャを想像すると分かりやすいですね。」

デジタルを基本とした社会に

 スーパーシティが目指す社会、これからの日本に必要な社会は、デジタルを基本とするべきでしょう。デジタルとアナログの共存を前提とするやり方では、非効率で多くの無駄が生まれてしまいます。高速道路の料金所がいい例です。全てのクルマがETCを搭載していれば、料金所に人を配置する必要がなくなり、もっと柔軟に料金所や出口を設置できるようになるはずです。ETCに限らず、一般的な業務でデジタル化の足かせとなっている、ハンコの廃止やペーパーレスももちろん進めるべきでしょう。

 一方で、デジタルを前提とした社会では、デジタルデバイド(情報格差)の問題が懸念されます。この問題に関しては、デジタル民生委員のような人材を各自治体に配置して、デジタルに不得意な人については積極的にサポートしていくような仕組みを設けていくべきです。スーパーシティはテクノロジーも重要ですが、それらをうまく活用するための制度面でのケアも大切です。

 スーパーシティの展開において、地域の事業者は、公開されたAPIを活用して地域の課題を解決できるサービスの提供や、そうしたサービスの国内展開などが目指せるでしょう。

キーワードから記事を探す