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スーパーシティ・スマートシティにおける日立製作所、NEC、富士通の取り組み

スーパーシティ・スマートシティにおける日立製作所、NEC、富士通の取り組み

2020年11月10日更新

クロスセクション、クロスベンダーの世界観

ベンダーの取り組み 日立製作所

スーパーシティ構想に対して、IT業界をけん引する各ベンダーはどのように取り組んでいくのか。これまでのスマートシティの実績とともに、その展望を聞いていく。まずは日立製作所だ。

日立製作所
今井昭宏氏
日立製作所
小田浩嗣氏
日立製作所
成田英将氏

 スーパーシティやスマートシティのような街づくりが求められるのは、日本が抱える課題を解決するためだ。日立製作所 公共システム事業部 自治体ソリューション推進部 主任技師 今井昭宏氏は次のように話す。「日本では少子高齢化といった人口構造の変化により波及的に生まれる課題の解決が大きいですね。公共サービスなども、今のままでは綻びが出てくるでしょう」

 地域の過疎化、ヒトやモノの都市への集中などから、環境、エネルギー、交通、医療、行政手続きなどにおいてさまざまな課題が生じている。それらの課題を最先端のテクノロジーを活用して解決するのがスーパーシティやスマートシティの取り組みとなる。さらに今年は新型コロナウイルスの感染拡大で、デジタル化の必要性が社会全体で痛感させられた。そうした中、半ば強制的なテレワークの実施で都市にいなくても仕事ができることに気付いた労働者の間では、地域への回帰の空気も醸成された。「コロナはこれまで以上に都市以外の地方や地域の在り方に考えを向けさせるきっかけになり、新しい文化や価値観の醸成が始まったため、課題自体が変化してきています」と今井氏は振り返る。

 日立製作所では、スマートシティをSociety 5.0の出口の一つと位置付けて、国家プロジェクトに積極的に参画してきた。それらを通じてスマートシティの基盤となる都市OSや分野間データ連携基盤の整備を推進している。スーパーシティ構想については、「省庁横断で共通的にルールを決めて取り組めるようになるのが利点です。システムやサービスが標準化できれば、一つの街にとどまらず、ほかの街との連携や展開がしやすくなりますね」と、日立製作所 公共システム営業統括本部 地域ビジネス推進センタ 部長代理 小田浩嗣氏は話す。

柏の葉では、同エリアで得られるデータの分析を用いた、自動運転、人流解析、環境負荷低減、健康活動促進などのサービス提供や、発電効率化、病院診断の効率化といった社会課題の解決に取り組んでいる。

各地域の事業者と一緒に作り上げる

 スマートシティの具体的な取り組みとしては、国土交通省のスマートシティモデル事業への参画などがある。柏市(柏の葉)では、三井不動産とともに新たな街づくりに挑んでいる。

「データを活用した街づくりで、住民サービスの充実とともに、街の価値、不動産の価値の向上も目指しています。それによって住民だけでなく企業の誘致にもつなげられると考えています」(日立製作所 社会イノベーション事業推進本部 ソサエティサービス推進部 部長 成田英将氏)

 自治体が保有するデータの横断的な共有で街のサービス向上につなげる取り組みとしては、福岡県福岡市や茨城県笠間市への「地域包括ケアシステムICTソリューション」の導入がある。市が保有する介護認定情報などを、介護事業者・医師・看護師・ケアマネジャー・ヘルパー・救急隊など在宅介護を支える職種間でセキュアに共有し、在宅ケアの効率化と救急医療の迅速化などを実現している。

 これらのノウハウも生かしながら今後はスーパーシティへの取り組みも進めていくことになる。「スーパーシティはクロスセクション、クロスベンダーの世界観で、各地域の事業者と一緒に作り上げていくことになります。地域連携と協調を重視して取り組んでいきます」(今井氏)

「省庁横断で共通的にルールを決めて、取り組めるようになるのが利点です」

FIWAREを中心としたデータ連携

ベンダーの取り組み NEC

NECがこれまでのスマートシティの取り組みで注力してきたのは「FIWARE」というデータ連携基盤の活用だ。すでに国内でも実証が進められている。

NEC
永野善之氏

 香川県高松市や兵庫県加古川市など、国内の数多くの地域でスマートシティに取り組んできたNECは、現在のスーパーシティやスマートシティの意義についてこう説明する。「10年ほど前だと、エネルギーや防災、ヘルスケアなど単一の目的に対しての取り組みが多かったのですが、現在はデータを連携させることでさまざまな課題を解決できる価値創造が目指されています。新しい産業を生み出す街づくりとも言えます」(NEC クロスインダストリーユニット PSネットワーク事業推進本部 上席技術主幹 永野善之氏)

 一つの例として監視カメラの利用がある。以前までなら、監視カメラは防犯目的が大部分を占めていた。しかし、今は人やクルマの流れを分析して都市計画に応用するなど、より多目的に利用できるようになっている。このような新たな価値を生み出す取り組みがスーパーシティやスマートシティとなる。

サービスは地域の事業者が生む

 NECは、スーパーシティやスマートシティのデータ連携基盤として活用できるデータ利活用型プラットフォーム「FIWARE」の開発に注力している。FIWAREは欧州における次世代インターネットの利用支援において取り組まれているソフトウェアで、欧州のスマートシティのイノベーションを支えるデータ連携基盤だ。NECも欧州で開発に参画しており、その成果を国内のスマートシティに適用してきた。

「欧州の小さな国々が各自でシステムづくりを行うと効率が悪く、欧州としての競争力が低下します。国や組織をまたがった基盤の必要性からFIWAREというデータ連携基盤の開発が進められているのです」(永野氏)

 FIWAREは、データ管理やデバイス管理、ビッグデータ解析などの各モジュールを自由に組み合わせて利用できる。スーパーシティの都市OSの一部を構成し、さまざまなデータ連携に寄与する。これらの基盤の上で、データを活用したサービスが生まれていくことになる。「FIWAREの利用ケースではすでに多くのサービスが開発されていますが、それらは地域に根ざした事業者が生み出しています」(永野氏)

 実際に国内でも、香川県高松市や富山県富山市、兵庫県加古川市におけるスマートシティの取り組みで、FIWAREがデータ連携基盤として利用されている。各種サービス提供の共通プラットフォームとして成果を出している。

「地域課題の明確化とそうした課題を解決するためのデータ共有基盤としてのFIWAREの社会実装を実現させていきます」(永野氏)

「スーパシティの都市OSの一部を構成し、さまざまなデータ連携に寄与する」

トラスト基盤が重要

ベンダーの取り組み 富士通

最新の街づくりにおける一つのキーワードとして富士通が挙げるのはゼロトラスト。システムやデータが連携するスーパーシティやスマートシティに欠かせない要素だ。

富士通
河西寿幸氏
富士通
天野隆興氏

 富士通が表明しているのは「街をまるごとDX」というメッセージだ。従来、企業システムが対象だったDXを街や社会全体にまで広げる考えであり、スーパーシティやスマートシティの構想ともシンクロする。もちろん富士通はこれまでにもスマートシティの構築に取り組んできた。「都市の課題や地域格差の解決を図るのがスマートシティです。国家戦略特区を活用した規制緩和や分野間連携でSociety 5.0の実現を目指すスーパーシティ法が成立した後は、さらに問い合わせが増えてきています」(富士通 JAPANビジネスグループ ビジネスクリエーション統括部 政策連動ビジネス推進部 マネージャー 河西寿幸氏)

 データの連携によるさまざまなサービス創出が基本となるスーパーシティやスマートシティに対して、監視社会化や情報漏えい・サイバー攻撃などに対する不安が醸成される懸念もある。「スーパーシティやスマートシティは市民が中心となる街です。当社は、スーパーシティやスマートシティを構成する各システムを、中央集権的ではなくゆるやかに連携させて、自治体と住民が安心してつながる街づくりに貢献していきます」(富士通 JAPANビジネスグループ ビジネスクリエーション統括部 シニアディレクター 天野隆興氏)

つながる相手やデータを保証する

 国内のスマートシティの取り組みでは、観光や自動運転の領域で着手されるケースが多かったが、新型コロナウイルスの影響で公的支援の遅れという課題もあらわになった。そうした中、富士通は自治体と住民を安全につなげられるトラスト基盤技術の提供で、人間中心の自律・分散型共創社会の構築を目指すという。

「つながる相手に対して、どう信頼を確保するか。それがスーパーシティやスマートシティには欠かせない要素になります。何も信頼しないゼロトラストという考え方をベースに、つながる相手やデータを保証できるトラスト基盤やサービスを当社は提供していきます」(河西氏)

 例えば富士通は、人間中心のパーソナルデータの利活用を実現するパーソナル情報管理「PDS(Personal Data Store)」を提案している。本人同意・再同意の取得とデータ制御の仕組みで、従来までバラバラに散らばっていた個人データを1カ所に集約し、各サービスをそこにアクセスさせるようなイメージだ。富士通が強みとする静脈認証を生かした認証サービスの提供なども構想している。

 こうした仕組みも踏まえて富士通では、本当につながるスーパーシティ、スマートシティを目指していく。「コロナ禍で分かったのは、フロントだけデジタル化してもかえって手間が増えるということです。バックヤードまで含めてデジタル化しなければ意味がありません。当社は、フロントとバックヤード、自治体と市民や事業者をしっかりとつなぐ環境を構築していきます」(天野氏)

「つながる街ではゼロトラスト、という考え方がベースに」

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