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富士ソフトが開発を手がける医療IoT

富士ソフトが開発を手がける医療IoT"IoMT"とは?

2020年11月17日更新

富士ソフトが取り組む医療情報システム開発

医療機器や医療システムの開発実績のある富士ソフトでは、約2年前からIoMTにフォーカスした提案を進めている。現在の開発状況や活用事例を聞いた。

市場成長の可能性が大きいIoMT

 独立系SI企業として培ってきた技術力と提案力を武器に、業務系ソリューションや組込/制御システムの開発などに取り組む富士ソフト。その実績の一つに、医療機器・医療システム開発がある。例えば医療機器開発事例として、医療用画像診断機器や、メディカルレコーダー、X線診断装置、超音波診断装置などの診断機器などが挙げられる。

 また、IEC国際規格「IEC 62304」(ソフトウェアライフサイクルプロセス規格)に準拠した医療機器ソフトウェア開発に取り組んでいるほか、Microsoft Azureやアマゾン ウェブ サービス(AWS)などに対応できるクラウド技術と、医療情報取り扱いの際に準拠が必要な3省2ガイドラインに基づいたセキュアなシステム開発技術によって、医療業界に広がるIoT化――つまりIoMT開発をトータルサポートしている。


 富士ソフトの伊藤 健氏は「もともと医療機器を開発していたため、機器同士をつなぐような対応もしていましたが、特にIoMTを強く押し出すようになったのは直近2年のことです。政府日本成長戦略を提示した『未来投資戦略2018』において、Society 5.0※実現に向けた各分野の取り組みがまとめられており、その中の介護・医療分野でICTを活用した健康促進や最適医療などの可能性が示されていたことも、IoMTに注力するきっかけの一つです」と語る。日本の医療現場ではまだIT化は進んでおらず、電子カルテが導入されていない病院も少なくない。しかし、国家施策として医療IoTに関連する「データヘルス改革の推進」に722億円の予算(2019年度)が計上されるなど、IoMTの市場可能性は大きいのだ。

「特にコロナ禍において、IoMTの一つであるオンライン診療の初診が時限的に解禁になるなど、医療現場におけるIT活用の規制が緩和されました。遠隔医療の認知度が上がったことが大きなポイントで、今後医療業界のインターネット化、クラウド化は大きく進んでいくと予想しています。それに伴い、IoMTの活用も広がっていくでしょう」と伊藤氏は指摘する。

※IoTやロボット、人工知能などの新たな技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れて課題を解決していく新しい社会の姿。

(左) 富士ソフト
ソリューション事業本部
インダストリービジネス事業部
産業アプリケーションシステム部 部長
大喜貴文 氏

(右) 富士ソフト
ソリューション事業本部
ソリューションビジネス事業部
産業アプリケーションシステム部 課長
伊藤 健 氏

リモートメンテナンスに需要

 実際にIoMTの開発事例もあるという。例えば、作業者の見守りシステム。作業者に心電計を取り付けて、そのデータをクラウドに展開。医者や管理者が健康状態をチェックするヘルスケア管理システムだ。「まずは身辺に危険が及ばないデバイスから、IoMTの活用が広がっていくでしょう。例えば心電計や体温計などの機器に通信機能を搭載することで、IoMTへの対応が進んでいきそうです」と富士ソフトの大喜貴文氏は指摘する。

 IoMTを活用した、医療機器のリモートメンテナンスソリューションも開発している。医療機器の稼働状況やログを取得することで機器の状態を把握したり、遠隔地からの保守点検を実施したりする仕組みだ。「特にコロナ禍において需要が高まりました。従来は機器にトラブルがあれば医療現場に足を運ぶ必要がありましたが、感染症対策として人との接触を減らす必要があるコロナ禍においては、遠隔で監視や保守ができるリモートメンテナンスは、非常に需要が高いのです」(大喜氏)

 また、医療情報を扱うIoMTだからこそ、セキュリティ対策も万全に行う必要がある。富士ソフトでは、厚生労働省、経済産業省、総務省の3省が発行するガイドライン「3省2ガイドライン」の要件に従い、セキュアなシステム開発をサポートしている。もともとは3省3ガイドラインだったが、8月21日に経済産業省と総務省のガイドラインが統合・改訂されたことで、3省2ガイドラインになった。

「改訂により、システムの多様化に合わせたリスクベースアプローチが求められています。当社ではこれまでの開発の知見から、リスクへの対応を講じたセキュリティ対策をし、医療情報を保護します」と伊藤氏。

「医療現場のIT化は、今後ますます需要が高まっていきます。そうした中で、クラウドの提供からアプリケーション開発までをトータルサポートできるSIerは、当社以外にはなかなかいません。IoMTのソリューション提案によって、世の中のニーズに応えていきます」と大喜氏は語った。

Opinion

オンライン診療のさらに先の未来“IoMT”
患者の生活にひも付くデータがよりよい医療に導く

一般社団法人 IoMT学会 代表理事 猪俣武範 氏

あらゆるモノがインターネットにつながる「Internet of Things」(IoT)はすでに身近な概念だ。しかし、その中でも医療やヘルスケア分野に特化したIoT「Internet of Medical Things」(IoMT)という概念は、あまり知られていない。そのIoMTについて、一般社団法人IoMT学会の猪俣武範氏に話を聞いた。

モバイルヘルスが正確な診断を支援

猪俣氏_医療機器とヘルスケアのITシステムを、オンラインのコンピューターネットワークを通じてつなぐという概念がIoMTです。例えば、Wi-FiやBluetoothなどの通信機能を有する医療機器があれば、医療情報をヘルスケアシステムと連携できます。全ての医療機器がIoMT化されることで、それらのデバイスからビッグデータを集められ、新しい治療方法や医学的な知見を得ることも可能になります。これがIoMTの可能性です。

 スマートフォン、眼鏡型デバイス、スマートコンタクトレンズなど、生体情報を得られるデバイスがインターネット化することで、Society 5.0時代の新しい医療を実現できます。

 私は順天堂大学医学部で眼科学を研究しているのですが、ドライアイを5分でチェックできる研究アプリ「ドライアイリズム」(iOS、Android対応)をリリースして、ビッグデータ解析に役立てています。本アプリではユーザーの瞬きの回数やドライアイ質問紙票などを用いてドライアイ指数を計測するほか、生活習慣を記録し、ドライアイとの相関を確認できます。従来であれば医療機関でしかできなかった患者のデータの収集が、患者の生活圏で行えるのです。

 このような、スマートフォンから生体情報を取得するモバイルヘルスが実現できれば、患者の個別化医療や予防医療が行いやすくなります。病院に毎日通院することは難しくても、スマートフォンは毎日使えます。現在注目が集まっているオンライン診療も、モバイルヘルスによって患者の日々の健康状態を詳細に把握できれば、より正確な診断を実現できます。

患者中心の医療に不可欠なデータ

 今後医療現場におけるIoMTの需要は確実に高まります。データは患者の生活にひも付いており、今後施設医療から患者中心の医療にパラダイムシフトが起こる中で、日々の変化のデータが蓄積できることが、医療行為を行う上で重要になります。人工知能による個別化医療も進むと考えられますが、人工知能はアルゴリズムとビッグデータで成り立っているものであり、まずはビッグデータを収集することが、医療の発展に求められています。

 もちろん、モバイルヘルスはウェアラブルデバイスのようなヘルスケア領域だけでなく、医療領域でもIoMTの活用は進んでいきます。患者側への診断や治療提案はもちろん、医療機器の稼働状況のデータが蓄積されることで、検査機器が故障する前にメンテナンスを行うといった、医療従事者側からみたメリットも出てきます。

 今後はモバイルヘルスを筆頭に、医療機器承認されたApple Watchのようなウェアラブルデバイスから、全ての人が生体情報を得て医療に活用するIoMTの普及が進むと考えています。一方で、医療現場においては個人のデータと医療データをつなぐというハードルがあったり、IoMTを医療現場で使うための機器の質と基準がまだ制定されていなかったりするなど、利用の上での課題もあります。今後は、セキュアで安全な環境で利用するための基準作りを産官学民が連携して進めていく必要があるでしょう。

 全ての人が安心して便利な医療を当たり前に受けられる、その基盤としてIoMTの普及を進めていきたいですね。

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