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時間と距離の制約を解消するTryellのオンライン内見

時間と距離の制約を解消するTryellのオンライン内見

2020年10月19日更新

忙しい転勤者の部屋探しにオンラインで寄り添う

-Real Estate Tech- S-FIT

引っ越しで賃貸物件を借りる際に利用する不動産仲介業者。「お部屋探しCAFEヘヤギメ!」ではオンラインでの内見やIT重説を実施することで、顧客の物件探しの効率化はもちろん、自社の業務効率化も実現している。

物件探しに生じる制約

 不動産仲介事業、賃貸管理事業、不動産開発/活用などを中心とした事業を展開するS-FIT。同社が不動産仲介事業で運営しているのが「お部屋探しCAFEヘヤギメ!」だ。お部屋探しCAFEという名前は、顧客と一緒に楽しみながら部屋を探せるよう、コーヒーとリラックスできる内装でゆっくりと時間をかけてコミュニケーションができる空間作りをした店舗から名付けられている。旗艦店である「お部屋探しCAFEヘヤギメ!高円寺店」は、同社が目指すスタイルの一つであり、賃貸物件を探している人も、そうでない人も気軽に立ち寄れるような安心感と透明感をコンセプトにしている。現在東京都を中心に9店舗を展開しているほか、神奈川県にも2店舗を出店している。

 転勤や大学に通学するための一人暮らしなど、引っ越しが求められる機会は少なくない。個々人の希望条件に合った物件を探すためには、実際に部屋を訪れて部屋を決める必要があるが、遠方からの引っ越しの場合、物件探しのためだけに高い交通費が必要になったり、一日で物件を決めなくてはいけなくなるなど、制約が多い。

 特に転勤者の物件探しでは、内示から数日~1週間程度という限られたスケジュールで部屋を決める必要があり、実際に現地に足を運ぶことができなかったり、来店が困難であったりという負担が生じるのだという。

スマホを介したお部屋内見

 お部屋探しCAFEヘヤギメ!店舗においても、土日に集中する来客やスケジュール調整が煩雑になっていたり、接客スペースを圧迫するなどの問題も生じていた。

 そこで導入を決めたのが、Tryellが開発した「オンライン内見」だ。オンライン経由での物件内見を可能にするオンライン内見は、実際に物件を訪問することなく、自宅から物件の内見を可能にする。同社では2017年8月からオンライン内見を導入し、現在10店舗で利用を進めている。

 オンライン内見では、内見日程を確定した後、予約設定を行うと、顧客にオンライン内見のURLが記載されたメールが送信される。

 内見当日は、お部屋探しCAFEヘヤギメ!のスタッフが、顧客の内見希望の物件に行き、物件探しをしている顧客側にスマートフォンやPCを介して、部屋の中の様子を案内する。前述したような遠方で物件探しをしている顧客に対して、住居の中だけでなく玄関周りや周辺の様子なども能動的に案内できる点がメリットだ。

 また、特にお部屋探しCAFEヘヤギメ!では、オンライン内見を企業の転勤者に対するIT重説に多く活用しているという。IT重説とは、Web会議システムなどのITツールを活用して、賃貸借契約における重要事項説明(重説)を行うものだ。転職者だけでなく、重説を行う店舗側の負担も軽減できる。

IT重説への活用で業務効率化

 宅地建物取引士自らが対面で説明する必要があった重要事項説明だが、2017年10月1日より本格運用を開始することを国土交通省が発表。お部屋探しCAFEヘヤギメ!でもIT重説に取り組み始めたところ、宅地建物取引士のスジュール確保がしやすくなったり、録画、録音機能を活用してIT重説実施のエビデンスを残せたりという、業務効率化の側面で大きな効果が得られたという。

 導入店舗ではスムーズなコミュニケーションを顧客ととれるよう、店舗での通信環境を整えるほか、店舗間で実際にIT重説などで利用できるように事前テストを実施して、誰でも利用できる体制づくりに努めているという。実際に運用した中ではネットワーク環境やデバイス、バージョンなどによって正常に動作しないというトラブルも発生したというが、他社のWeb会議アプリケーションやリスケジュールなどで対応したようだ。今後は成約件数の内、30%以上をIT重説利用を目標としており、顧客や入居者への通知を進めていく。

不動産会社のスタッフが物件を訪れ、スマホを介してオンライン内見を行う。

※画像はイメージです。
オンライン内見を活用してIT重説を行えば、業務の効率化にもつながる。

内見のオンライン化が時間と距離の制約を解消する

-Real Estate Tech- Tryell

不動産会社と顧客の双方向コミュニケーションを実現する「オンライン内見」。そのサービスは、実際に引っ越しで“困った”と感じた、顧客視点の課題から誕生した。

不動産に特化したライブ中継システム

「開発のきっかけは私自身が引っ越し先の物件を探している際に、実際には存在しないおとり物件があったり、内見をする際に時間の調整をして見に行くことが負担だと感じたことです」と語るのは、オンライン経由で不動産内見を可能にする「オンライン内見」の開発を手がけたTryellの大住憲司氏。Webアプリケーションやスマートフォンアプリケーションの受託開発事業を行うTryellの技術力を生かし、「内見をオンライン化できないか」と考えたのがオンライン内見のスタートだった。

 オンライン内見はマルチデバイスに対応したライブ中継システム。Web会議システムのように、不動産会社のスタッフと内見希望者を双方向につなぎ、スタッフが物件の様子を内見希望者にリアルタイムで中継する。「Web会議システムと比較して、不動産会社の方が使いやすいサービス開発にこだわりました。Web会議システムは対面で通話するだけではないさまざまなオプション機能が付きます。それが一部の不動産会社のスタッフには分かりにくいと感じられるケースも存在します。オンライン内見は通信ができて、物件の画像や映像が見られるという非常にシンプルなシステムです。“顔を映してコミュニケーションを取りたくない”という内見希望者には、カメラを非表示にしたり、チャット機能を使ったりすることで対応が可能です」と大住氏。

成約のスピード感が変わる

 不動産会社での利用例は以下の通り。物件を探している顧客の希望をヒアリングし、事前に内見を希望する物件を決めてもらう。双方でスケジュールを調整して、管理画面から内見予約の設定を行ったら、入力した顧客のメールアドレス宛にオンライン内見の招待メールが送信される。当日は顧客がスマートフォンやPCからURLにアクセスして、現地にいる不動産会社のスタッフと双方向のコミュニケーションを取りながら、物件の様子をリアルタイムに確認する。

「不動産仲介業者でのIT活用例として、物件の様子を360度撮影して仮想的に内見する事例もあると思います。しかし、360度の画像では、入居希望者が本来知りたいはずの住居の周辺環境が分かりません。例えばエントランスの様子や、駅から物件の距離などは、実際に内見に行かなくては分からないのです。しかし、オンライン内見は実際に現地にスタッフが出向いて生中継するため、入居希望者が気になるポイントを指示すればその様子を中継できますし、住居外の様子も分かります」(大住氏)

 オンライン内見によって、「成約までのスピード感が大きく変わる」と大住氏は指摘する。引っ越しのきっかけとして多いのは、大学入学に合わせた子供の一人暮らしだ。遠方から東京都内の住居を子供が探し、希望の物件を親が契約する。そうした物件探しのシーンに、オンライン内見を導入することで、子供が現地に居ながら、遠方の親に物件の情報をリアルタイムで中継できる。自宅にいながら物件の様子が分かり、直接不動産会社にスタッフとコミュニケーションできるメリットも大きい。「従来であれば遠方の自宅まで帰り、保護者に相談して契約を決めるというラグが生じがちでしたが、オンライン内見を活用すれば、そのラグを極力短くできます」と大住氏。

土日に集中しがちな重説をITで分散

 内見以外の活用も増えている。S-FITのようなIT重説での利用だ。従来であれば、入居者が不動産会社の店舗まで出向き、その場でコミュニケーションを取りながら宅地建物取引士による重要事項説明を聞き、契約書に捺印する必要があった。しかし、特に転勤による引っ越しを希望しているビジネスパーソンなどは、平日は仕事をしているため土日や祝日に重説を希望する。オンライン内見を利用したIT重説を利用すれば、そうしたビジネスパーソンの業務が終わった平日夕方以降など、都合がつきやすい時間帯に調節できる。

 大住氏は「実際、IT重説を選択することで、重説にかかる時間が1時間から15分に短縮されるなど業務効率化が実現できます。現在は申し込みや保険の手続きは書類を郵送してもらったり、ファクスで対応してもらっていますが、今後は電子契約や電子署名などの流れを踏まえながら、対応を検討していく予定です」と語る。

 2014年6月にリリースしたオンライン内見だが、当時は“来店が全て”という風潮が根強く不動産会社からの反応はあまりよいとは言えなかった。しかしITツールの普及が進むにつれ、オンライン内見の活用も少しずつ拡大が進んだ。大住氏は「特に今回のコロナ禍で多くの問い合わせがありました。感染拡大を防ぐため、多くの業種で対面を避ける傾向にありますが、それは不動産業も例外ではありません。これまでは“あると便利”なツールでしたが、コロナ禍によって“何かしないといけない”という意識に転換したようで、資料請求が増加しています」と指摘。

 時間と距離の制限を解消するオンライン内見は、これからのニューノーマルな不動産ビジネスを実現するための、一つの解となりそうだ。

マルチデバイスに対応し、スマートフォン、タブレット、PCから物件をリアルタイム中継して内見できる。
顧客とはビデオ通話のほか、チャットによるコミュニケーションも可能で、物件の気になるポイントを細かく確認できる。
顧客が希望する内見日時を予約すれば、URLがメールで送信される。当日はそのURLにアクセスするだけでOKだ。
画像だけでは判断がしにくい、物件の外観や住居周辺の情報、駅から物件までの道のりも把握できるのがポイントだ。

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