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独自の水中音響センシング技術で密漁を防ぐ!

独自の水中音響センシング技術で密漁を防ぐ!

2020年10月28日更新

水中の音から密漁犯を検知する

アワビやナマコは、高級食材として1kg当たり4,000~5,000円と高値で売買されている。それに目を付けた非漁業者による密漁が横行している。密漁の取り締まりは、証拠確保などの事情から現行犯逮捕は難しく、実際に摘発されていない被害が数え切れないほどある。こうした被害を食い止めるため、沖電気工業(以下、OKI)が提供するのが、水中音響センシング技術を活用して密漁犯を検知する「密漁監視ソリューション」だ。

密漁者を現行犯で逮捕できる

 日本には、漁業の発展を目的とする「漁業法」という漁業について定めた法律がある。漁業関係者は、特定の漁業を排他的に営む権利である「漁業権」が与えられ、定められた区域で漁業を行うことができる。そうした権利を与えられていない非漁業者が漁業を行うことは、漁業権侵害や無許可操業、区域・期間外操業など「漁業関係法令」に違反する行為(密漁)として懲役や罰金などの刑が科せられる。

 海上保安庁が公表した「平成30年の海上犯罪取締まりの状況」によると、2018年の国内の密漁事犯の送致件数は2,307件だった。実際に密漁が行われるのは夜間であり、発見が難しいため、被害に遭っているが発覚していないケースも多い。「大抵の場合、密漁の被害に気が付くのは犯行後です。密漁犯と押収物がその場になければ、現行犯で逮捕できません。漁業関係者は、監視カメラを付けたり、パトロールをしたりして密漁対策を講じていますが、カメラ映像の監視に人件費がかかるほか、夜間に無灯火の船舶と水中のダイバーの両方を監視して密漁者を発見するのは難しいという課題があります」と話すのはOKI ソリューションシステム事業本部 社会インフラソリューション事業部 岐部景子氏だ。

 こうした密漁の問題を解決するためにOKIが提供するのが、水中音響センシング技術を活用して密漁者を検知する「密漁監視ソリューション」だ。目視や監視カメラなどでは検出できない水中や夜間でも密漁船や水中の不審なダイバーを見つけ出せる。検知すると漁業関係者にすぐに通知を行い、密漁者を通報できる。

独自の水中音響センシング技術

 密漁監視ソリューションは、水中の音を集める全長9mほどの水中音響センサー(ブイ)を海の中に設置する。センサーから取得した音のデータはLTE経由(別途契約が必要)でクラウドサーバーに送信・データが蓄積されていく。クラウドサーバー上で水中の音の分析を行い、不審な音を検知すると、事前に登録した漁業関係者のPCまたはスマートフォンに自動で密漁者の位置情報を通知する。

 本ソリューションのポイントは、水中の音を収集できることだと岐部氏は説明する。水中音響センサーには、OKIが長年培ってきた水中センシング技術が使われている。「パッシブソーナー方式」という自ら音を発することなく、対象物が発する音を受信する技術を採用している。「水中に伝わるさまざまな音の中から、船舶のエンジン音やスクリュー音、ダイバーの呼吸音をリアルタイムに検出します。昼夜を問わず、不審船の侵入やこれまで発見の難しかった不審なダイバーの接近を水中の音からいち早く検知して密漁の現場を押さえます。センサーから音を発することはないので、気付かれることもなく、海洋生物への影響もありません」(岐部氏)

 水中音響センサーは太陽光発電を採用しているため、電池交換も不要でエコな点もメリットだという。加えて、センサーが動作しているかを確認するための電圧計や漁業関係者が漁業する上で必要な情報となる海水の温度を知るための水温計、夜間などに船舶がぶつからないようにする船よけのフラッシャーライトも搭載している。

 クラウドサーバーで蓄積した検知データは音の精査に活用される。海中は、海洋生物の音、航路標識の鎖の音などさまざまな音で溢れている。「より多くの音を蓄積していくことで、検知精度も高まっていくでしょう。サーバーは当社の『EXaaS』というクラウドサービスを活用し、セキュリティ面も考慮しています」とOKI ソリューションシステム事業本部 社会インフラソリューション事業部 稲葉稔智氏は説明する。

漁業者の声を反映して使い勝手を向上

 密漁監視ソリューションは、総務省の「平成30年度IoTサービス創出支援事業」を受託し、2018年に実用化検証をスタートした。翌2019年には北海道の増毛郡増毛町において、水中音響センシングの耐雑音性を高めて水中の音の検出性能を改善する追加実験が行われた。実証実験の結果、密漁監視ソリューションの実用化に成功し、北海道の増毛郡増毛町、古宇郡泊村、岩内郡岩内町において運用を開始することとなった。「密漁監視ソリューションは、2年間の実証実験を通して漁業関係者の意見を盛り込んだソリューションです。例えば、水温計の機能は密漁者を検知しない時にも漁業で活用できる情報を知りたいという声を反映させました」(稲葉氏)

 今後の展開について、岐部氏は「特にナマコの密漁が多い北海道をメインに導入を図っていきたいと考えています。人手で密漁防止対策を講じるのは難しい部分があります。密漁監視ソリューションを提供することで大切な海の資源と漁業関係者を守っていきます」と語った。

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