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矢野経済研究所の調査から導き出すポストコロナに向けたビジネスチャンス

矢野経済研究所の調査から導き出すポストコロナに向けたビジネスチャンス

2020年10月23日更新

ポストコロナに向けた働き方とツール
-矢野経済研究所のアンケート調査よりー

緊急事態宣言が出されていた期間に、矢野経済研究所では東京都や大阪府などの7都府県でオフィスに勤務する20~70歳代の男女500名に対して、インターネットでのアンケート調査を実施した(2020年5月~6月)。その結果から、自粛期間中におけるITツールの利用状況が浮き彫りになった。調査結果からは、ポストコロナを見据えた働き方の変化と関連するITソリューションの提案機会が見出せる。

Web会議システムの利用が圧倒的

 アンケート調査では、在宅勤務で活用されると推定される四つのITツール(Web会議システム、ビジネスチャットツール、オンラインストレージ、タスク・プロジェクト管理ツール)の利用状況を尋ねている。その結果、Web会議システムは79.2%が利用したという圧倒的な結果を示した。続くビジネスチャットは、46.2%と健闘し、オンラインストレージは37.4%と低く、タスク・プロジェクト管理ツールに至っては8.4%という利用結果になった。

 これらの数値について、矢野経済研究所では「新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワークの普及で、Web会議システムやビジネスチャットを初めて利用したというユーザーも多く、ごく短期間でオンラインツールの利用が進んだことが分かる結果となった」と分析している。

 注目すべきは約8割というWeb会議システムの利用率。以前からIT業界や総務省、厚生労働省なども、テレワークの導入を啓蒙してきたが、2019年までの導入実績は低かった。ところが、緊急事態宣言によって多くの企業がテレワークにシフトした。矢野経済研究所では、2020年度のWeb会議システム関連の市場は、2019年度の405億円に対して、487億5,000万円へと拡大し、2022年度には570億円に達すると予測している。コロナ禍を経験した日本企業は、働き方改革というよりも事業継続のために、テレワーク関連のITソリューションを積極的に導入する動きが加速すると考えられる。

 その一方で、約2割はWeb会議システムを利用していない。その理由について一部の回答者からのコメントによれば、会社のセキュリティの関係で在宅でのWeb会議は禁止されているケースがあるという。セキュリティへの懸念はテレワークが普及することで、今後も増大すると想定される。

 ファイアウォールや侵入検知システムなどで守られている企業内ネットワークに対して、個人が自宅からアクセスするインターネット回線は、あまりに無防備だ。セキュリティへの知識が少ない社員が在宅勤務を継続していけば、標的型攻撃を受けたりマルウェアに感染したりするリスクは増大する。Web会議システムを利用しなかった「あと2割」を獲得していくためには、経営者への意識改革と合わせて、セキュリティ関連ソリューションの提案も重要なポイントとなってくる。

ビジネスコミュニケーションもデジタル化

 調査結果で意外だったのが、ビジネスチャットの利用比率の低さだ。欧米の利用率に比べると、5割未満という割合はかなり少ない。海外の先進的なテレワーク事例を調べると、SlackやCisco Webex Teamsなどのビジネスチャットを日常的に活用している。それに対してWeb会議システムよりも利用率が低いというのは、「会議はオンライン化できても、ビジネスコミュニケーションそのものはデジタル変革できていない」という現状が垣間見られる。

 結果について矢野経済研究所では「ビジネスチャットを利用しない人の多くはメールで十分だと思っているのではないか」と推測する。連絡やファイルの送付であれば、使い慣れたメールの方が利便性が高いと感じるユーザーは多いかもしれない。Slackのようなビジネスチャットは使いこなすのにコツが必要で、ITリテラシーの高い開発者やエンジニア向けという評価もある。全社員が使い慣れるためには、時間をかけた準備が必要だろう。

 矢野経済研究所が聞き取った利用実態の中でも、「Microsoft 365を導入済みでも、Microsoft TeamsのWeb会議やチャット機能を使っていなかった」というものもあった。急速なテレワーク化によって、世界的に売上を伸ばしたMicrosoft Teamsだが、日本では特にWeb会議システムのために導入されたケースが多い。しかし、Microsoft Teamsは統合化されたビジネスコミュニケーションツールであり、Slackのような使い方もできる。Microsoft 365を契約しているユーザーや企業であれば、すぐに使い始められる環境は整っている。

 こうした状況から、ビジネスチャットを広げていくためには、メールを超える利便性を伝えていく必要がある。例えば、経営トップがビジネスチャットでしか社員とコミュニケーションしないようにするなど、トップダウンの推進が求められる。

プロジェクト管理ツールは成長に期待

 オンラインストレージの利用比率が低い理由も、メールの添付ファイルで済ませている利用実態が推測できる。セキュリティを懸念していることも考えられるが、そもそもオンラインストレージに対する意識が低いという現状もある。

 ビジネスで活用するオンラインストレージは、単に大きなファイルを相手に送るためのツールではない。共同作業において、プロジェクトに参加するチームが、情報を一元化するためのツールになる。メールにExcelのファイルを添付して送り合っていると、どのファイルが最新なのか分からなくなる。オンラインストレージは、こうした混乱を防ぎつつ、複数のスタッフが単一のファイルを共同で編集できるようになり、ドキュメントやワークシートの生産効率が劇的に改善される。

 共同作業を円滑に行うためにも、各自の進捗状況を的確に把握できるタスク管理ツールの利用は重要だ。しかし、調査結果ではそうした先進的なコラボレーション環境が整備されていない実態が見えてきた。

 多くの企業が取り組むべき身近なデジタル変革は、アフターコロナを見据えたビジネス環境に必須であり、そこにITソリューションを提案する機会が多く存在する。

田中 亘(wataru tanaka)
東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系ITまで、広範囲に執筆。代表著書:『できるWindows 95』、『できるWord』全シリーズ、『できるWord&Excel 2010』など。

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