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"サテライト授業"で分散登校の課題を解決した宝仙学園小学校

2020年10月22日更新

二つの教室で同一の授業を受けられる“サテライト授業”とは

コロナ禍において、いわゆる3密を避けるために学校現場で実施されたのがオンライン教育と分散登校だ。しかし、分散登校では午前と午後に登校する児童を分けるケースが多く、授業時間の確保や教員の授業負担といった課題が散見された。それらの課題を解消するため、宝仙学園小学校で実施されたのが“サテライト授業”だ。

学びを止めないICT教育の力

 宝仙学園小学校は「人を造る」教育を建学の精神とする私立小学校だ。知識の量ではなく、自らの人生に知識を生かす知恵を養い、豊かな人格を陶冶することを目指し、社会に出たときにこそ求められる知性と品格を備えた「人間力を育てる」教育に注力している。

 その教育の取り組みの中で、同校が特に力を入れているのがICT教育だ。2016年からiPadや電子黒板「BIG PAD」の整備をスタートし、授業中にICT機器を活用できる環境を整えた。2019年からは3年生の児童を対象に1人1台のiPadを導入し、家庭でも学校でも端末が使える環境の整備を進めていた。3年生以外の児童は、授業で必要になった際に学校側が所有するiPadを適宜貸し出すスタイルで、ICTを活用した授業に取り組んでいた。

 そうした中起こったのが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う一斉休校だ。多くの学校で発生した“学びが止まる”という課題に、宝仙学園小学校も直面していた。

 そこで立ち上がったのが「Hosen 学びを止めないプロジェクト」。休校期間中はZoomなどのWeb会議ツールとiPadを活用し、双方向型のオンライン授業を行う「オンライン学校」を実施。すでに1人1台のiPadを所有している3年生を対象に、試験的なオンライン授業を3月に行い、その後4月2日からZoomを活用して教員研修を実施した。約2週間の研修・試行期間を経て、実際にオンライン学校がスタートしたのは4月15日のことになる。

A教室の教員の授業をB教室で視聴

 宝仙学園小学校 教諭 図画工作 教務主任・入学企画室主任 百瀬 剛氏は、「当時は3~4年生以外、iPadを個人で所有していなかったため、ほかの学年の児童には家庭にある端末を利用して、オンライン授業に取り組んでもらいました。家庭に端末がない児童には、学校所有のiPadの貸し出しも行いました」と語る。

 オンライン授業は、教員や児童はもちろん保護者にとっても初めての取り組みだ。そこで同校では、オンライン授業のガイドラインや時間割などを掲載する特設Webサイトを保護者対象に開設した。問い合わせフォームも設置し、オンライン授業で困ったことがあったときに家庭と学校をつないで対応できるように工夫を凝らした。また、実際の授業では、授業を行う教員のほかにもう一人サポート教員を配備し、通信トラブルやアプリケーショントラブルなどに対応できるようにした。

「当校の学びを止めないプロジェクトでは、休校期間が解除された次の段階として分散登校を実施しました。具体的には、リアルでもオンラインでも授業を行う“ハイブリッド型”と、教室の密を避ける“サテライト授業”のスタイルを採用しました」(百瀬氏)

 ハイブリッド型とは、リアルの学校に登校する学年と、オンライン学校でオンライン授業を受ける学年を日によって分け、学校が密にならないよう工夫した授業スタイルだ。また、段階的にリアルの学校に登校することに重きを置いたステップに移行し、“サテライト授業”にも取り組んだ。

 百瀬氏は「分散登校の多くは、密を避けるために1クラスを午前と午後に分けて授業を実施します。しかし、そのような授業スタイルでは教員は同じ授業を二回実施することになりますし、子供たちは会えないクラスメイトも出てきます。また一日を午前と午後に分ける分、授業時間の確保も課題になります」と指摘する。サテライト授業のスタイルは、その分散登校に生じる課題を解決する授業方式だ。

 サテライト授業では、1クラスを2教室に分散し、A教室では教員が実際に授業を行い、その内容をB教室の電子黒板に配信する授業を実施する。教室内の密集を避けながら、二つの教室で同一の授業を実施することで、教員と子供たちへの負担の両方を解消している。また、サテライト配信では隣の教室(A教室)の様子や授業の資料なども配信するなど、授業の雰囲気が共有できるように工夫したという。

休校期間中の“オンライン学校”
オンライン学校では朝のホームルームから1~4時間目の授業、オンラインGym(体育)、休み時間、ゲストスピーカーによるトークライブ「HosenTV」が時間割にそって行われる。授業だけでなく子供同士が話す時間も大切にしているという。

分散登校中の“サテライト授業”
1クラスを2教室に分散して実施するサテライト授業では、教員がいるA教室(タイトル部画像)の様子を、電子黒板でB教室(左2点画像)にリアルタイムで配信する。B教室にはサポート教員が待機しており、授業の補助も行う。

CYODスタイルの1人1台iPad利用も進む

 授業でのICT活用が進むと同時に、児童への端末整備も加速度的に進めている。7月からは1~2年生の児童を対象に、CYOD(Choose Your Own Device)スタイルでiPadを1人1台導入し、もともと2021年度に実施予定だった端末整備を前倒しで実施した。

「CYODは学校が提示した選択肢の中から、家庭がデバイスを用意して授業で活用してもらうスタイルです。本校では“最新のiOSが使えるストレージ32GB以上のiPad”という条件の中から、各家庭にiPadを購入してもらうことにしました。すでにオンライン学校でICT活用の重要性は保護者の方に理解いただいていたため、大きな混乱や反発もなくスムーズに導入できました」と百瀬氏は話す。

 宝仙学園小学校では、7月から一斉登校に移行して通常に近いスタイルで授業を進めている。通常に近い、としているのは1コマの授業を34分に短縮しているためだ。「本校では公共交通機関を使って登校する児童が多く、ラッシュ時の登校は避けたいと考えました。そのため授業時間を短くして登校時間を8時50分からに設定しています」と百瀬氏。サテライト型の授業は一斉登校となったため、現在は実施していない。しかし、始業式や終業式など、全校生徒が集まることが難しい行事などを、サテライト配信で代用するケースはあるという。

 百瀬氏は「今回のオンライン学校やサテライト授業実践により、学びの選択肢が増えたと実感しています。学校でなければできないことは多くありますが、自宅でもできること、あるいは自宅でやると効果的な学びなど、個別最適化の学びが実現できる環境が広がったと感じています」と語る。

 宝仙学園小学校では、今後の新型コロナウイルスの感染状況に合わせて、一斉登校から分散登校への切り替えや、オンライン学校への切り替えなど、ICTを活用した柔軟な学びの環境を提供できるよう、取り組みを進めている。

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