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コールセンターの在宅勤務化を実現したチューリッヒ保険会社

コールセンターの在宅勤務化を実現したチューリッヒ保険会社

2020年10月14日更新

Case.3 チューリッヒ保険会社

“全部門の業務を在宅勤務に移行し、95%の在宅勤務率”

顧客からの電話問い合わせに応対するコールセンター業務には、在宅勤務の普及がなかなか進んでいない。そうした中で、コールセンター部門も含めて95%の在宅勤務率を実現したのが、チューリッヒ保険会社だ。その環境を実現したシステムと仕組みを見ていこう。

震災を契機とした在宅勤務環境整備

チューリッヒ保険会社 古屋宏晃 氏

 いわゆる3密を避けるため、コロナ禍において在宅勤務の導入が進んだ。しかし中には、在宅勤務への切り替えが難しい業務も存在する。例えばコールセンターのような、顧客からの問い合わせに対応する業務の場合、個人情報の取り扱いをどうするかといった問題や、オペレーションの課題などが生じるため、環境整備が進まないケースも少なくない。

 そうした中、チューリッヒ保険会社(以下、チューリッヒ)は、緊急事態宣言が発せられた翌日の4月8日から東京本社オフィスと大阪オフィスの全部門の業務を在宅勤務に移行。その在宅勤務対象の業務にはカスタマーケアセンター(コールセンター)も含まれていた。

 チューリッヒは、スイスのチューリッヒ市に本拠を置くチューリッヒ・インシュアランス・グループのアジア重要拠点として展開されている損害保険会社だ。それゆえに、有事の際の問い合わせ対応が顧客からの信頼につながる。同社の広報部 古屋宏晃氏は「チューリッヒでは2010年代の初頭からBCPの一環として在宅勤務化に向けて取り組みを進めていました。きっかけは2011年に発生した東日本大震災です。2012年には仮想デスクトップ技術を導入し、オフィスに出社しなくてもビジネスができる環境を順次整えていきました」と語る。

 在宅勤務は、本社管理部門の一部や、保険金支払い業務などが先行して実施し、それらの取り組みの成果を全部門に展開した。カスタマーケアセンターの在宅勤務についても2013年から構想を開始し、2019年に発生した台風15号および19号の被害状況を鑑みて、プロジェクトチームを発足。実際に2~3週間の在宅勤務をコールセンター業務で実施したという。

 そうした在宅勤務への取り組みのさなかに起こったのが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言だった。チューリッヒでは2月下旬の段階から、緊急事態宣言が出される可能性を考え在宅勤務に移行するための研修を社内で実施。会議室などを使用して擬似的な在宅勤務環境を構築し、機器のセットアップも含め、個々のレベルに合わせた研修を実施することで、ケアスタッフが心理的に安心感をもって在宅勤務に臨めるようにした。また、ノートPCやスマートフォン、ヘッドセット、Wi-Fiを必須備品として希望者に貸与。モニターや机、イスなど周辺備品の購入についても一律金銭補助を実施して、快適な執務環境の整備をサポートした。

緊急事態宣言前(左)と後(右)を比較すると、出社率の違いは一目瞭然だ。

在宅勤務率100%を目指す

「システムは前述した仮想デスクトップ環境を軸に、音声基盤システムも整備しています。在宅勤務中の電話は、チューリッヒのPBXが基点となり、ケアスタッフ各自のスマートフォンと、お客さまの回線をつないで電話応対にあたりました」と古屋氏。PBXが発信元となり、在宅勤務中のケアスタッフのスマートフォンに着信するため、顧客の電話番号がケアスタッフのスマートフォンに表示されたり、履歴が残ったりせずセキュアだ。逆にケアスタッフから顧客に電話する場合も、チューリッヒのフリーダイヤル番号が通知されるため、ケアスタッフのスマートフォン番号が通知されることはない。

 自宅の業務環境においても、ケアスタッフ本人以外はPC画面を見ることができない執務環境を整えることを在宅勤務の条件として、誓約書を交わしている。

 これらの環境整備によって、4月8日から東京本社オフィスと大阪オフィスをはじめ、全部門の業務を在宅勤務に移行し、95%の在宅勤務率を実現した。

 カスタマーケアセンターでは、1人のスーパーバイザーと10人ほどのケアスタッフがグループを組み、問い合わせ内容に応じたサポートやエスカレーションに対応していたが、在宅勤務環境ではそのコンタクトが難しい。

 古屋氏は「そのため、チャットとメールで密なコミュニケーションを取り、対応が難しそうな顧客からの電話に対しては、ケアスタッフがスーパーバイザーにチャットをいれて『電話を聞いていてほしい』と依頼するなどして、スムーズなアドバイスやエスカレーションを実現できるようにしました」と話す。

 また、ケアスタッフ自身の直属のスーパーバイザー以外でもチャットで回答できるよう、チャット画面でグリーンライトを表示するなどして、対応可能な状況であることを示したという。スーパーバイザーは、在宅勤務下においてもケアスタッフの対応状況や休憩状況などを全て管理しており、サポートはもちろん、対応したあとの入力作業が長いなどの不審な行動があれば追跡できる仕組みを整えている。

 緊急事態宣言が解除された現在は、在宅勤務率を70%にキープしつつ、新入社員の集合研修など必要な業務はオフィスに出社して対応している。「今後は100%在宅で業務ができるように環境を整えていきます。すでに交通費の補助は撤廃する予定で、代わりに10月から在宅手当をスタートします。働き方が少しずつ変化する中で、会社の基礎を安定させていきたいですね」と古屋氏は語った。

カスタマーケアセンターのスタッフには、ノートPCとスマートフォン、Wi-Fiに加え、ヘッドセットも貸与。

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