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在宅勤務から

在宅勤務から"デジタルワーク"へ進む鴻池運輸

2020年10月13日更新

Case.2 鴻池運輸

“東京本社と大阪本社の間接部門従業員を100%在宅勤務に切り替え”

請負と物流の二つの柱で事業を展開する鴻池運輸。同社がテレワーク環境を整えていた矢先に起こったのが、新型コロナウイルスの感染拡大だ。間接部門従業員を100%在宅勤務に移行できたその背景にあるのは、デジタルトランスフォーメーション(DX)への強い取り組みの姿勢があった。

物流混乱を見据えたDX推進

鴻池運輸 小河原 茂 氏

 建設会社である鴻池組の物流部門から1945年に設立された鴻池運輸。その創業の歴史は古く、1880年に創業者の鴻池忠治郎氏が労務供給業・運輸業を開始したところからスタートしている。“運輸”と冠しているがその事業は幅広く、食品・鉄鋼・化学品などの製造業界や空港・メディカルなどのサービス業における生産流通などの「請負サービス」と、豊富なネットワークによる安定した輸送業や自社倉庫の強みを生かした複合的なサービスを提供する「物流サービス」の二つを柱に、国内193拠点、海外35拠点を展開している。

 その鴻池運輸がテレワークの取り組みに着手したのは2018年のことだ。きっかけは2020年に開催を予定されていた東京オリンピック・パラリンピックだった。

「大会期間の交通機関の混雑により、物流の混乱が予想されました。お客さまの業務請負をしている中で、テレワークにとどまらない働き方の変革を進める必要がありました」と語るのは、同社のDX実現のため2年半前からIT責任者に就任した執行役員 ICT推進本部本部長 エンタープライズシステム部長 小河原 茂氏。小河原氏は鴻池運輸のグループ企業であるコウノイケITソリューションズの代表取締役も務めている。

 Windows 7のサポート終了が近づいていた関係で、まず着手したのがPCのリプレースだった。社内端末の多くは、デスクトップ型か据え置きタイプのノートPCがメインであり、自宅への持ち帰りや社外への持ち出しが難しい状況にあった。そこで小河原氏は、リプレース先の端末としてWebカメラが搭載された軽量のノートPCを選定。SIMカードスロット内蔵で、外出先でも問題なく通信ができるようにした。また、コンパクトなデスクトップPCと大型ノートPCも選択肢としてラインアップし、モバイルノートPCでは作業がしにくい従業員のニーズにも応えた。フィーチャーフォンを使っていた会社の携帯電話をスマートフォンに切り替え、モバイル端末からでも承認などの作業ができる環境を整えたという。

「新型コロナウイルスの感染拡大は、テレワーク環境を整えていた矢先の出来事でした。ネットワークやセキュリティシステム、会議システム、仮想デスクトップ、業務アプリケーションなどはパブリッククラウドに移行しており、社外からでも業務ができる環境が整っていましたが、端末整備は全社員に行き届いていない状況でした」と小河原氏は振り返る。

 そのため、一部従業員には大型のノートPCを持ち帰ってもらい、在宅勤務ができる環境を整えたという。また、一部従業員には自宅のPCを使用してもらい、そこから仮想デスクトップ環境にアクセスしてもらうことでセキュリティを担保した。

在宅勤務から“デジタルワーク”へ

鴻池運輸 佐藤雅哉 氏

 在宅勤務を実施する際に課題となったのが、いわゆる押印をはじめとした紙の文化だ。支払伝票の処理などは会社に出社しなければできず、経理部は3月中、出社の必要に迫られたという。しかし、そのほかの従業員は3月下旬から順次在宅勤務に移行し、緊急事態宣言が発せられた4月7日以降は、東京本社と大阪本社の間接部門従業員を100%在宅勤務に切り替えた。

 同社 デジタルトランスフォーメーション推進部長代理 佐藤雅哉氏は「ただ、在宅勤務ができる業務は間接部門が主となるため、鴻池運輸全体では60%前後の在宅勤務率となります」と語る。取材した8月28日時点では本社出社率を60%になるように調整し、在宅勤務とオフィス勤務の両方を取り入れている。

 コロナ禍の在宅勤務を経て、鴻池運輸では端末の選択肢から大型のノートPCを削除し、小型デスクトップPCとモバイルノートPCの2機種のみとした。今後は、紙文化の課題を解決するためデジタル印鑑ツールを導入し、社内の稟議書などの紙書類の効率化を進めていきたい考えだ。

 今後の鴻池運輸のテレワークの方向性について小河原氏は「現在、テレワークというと自宅で仕事をすると捉えられがちですが、今後は場所を選ばず仕事ができる環境としてのテレワーク推進を進めていきます」と語る。請負サービス、物流サービスを事業とする鴻池運輸では、顧客との対面でのコミュニケーションが今後も求められる。そのため全ての業務を自宅でこなすことは不可能だ。だが、テレワーク環境を活用し、移動中やオフィス外でも場所を選ばずに仕事ができるようになれば、無駄のない本質的なテレワークを実現できるようになるのだという。「ICT推進本部では、これらの無駄のない働き方を“デジタルワーク”として推奨しており、今後も取り組みを進めていきます」(小河原氏)

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