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Azureベースの農業ITプラットフォーム「みどりクラウド」が技術継承を変える

Azureベースの農業ITプラットフォーム「みどりクラウド」が技術継承を変える

2020年10月29日更新

Azure基盤の「みどりクラウド」が変える
農業の技術継承とバリューチェーン

センサーデータを活用して、効率的で安定的な農業を実現する農業IT。その基盤として用いられるケースが多いのがクラウドだ。今回は農業ITプラットフォーム「みどりクラウド」の基盤にMicrosoft Azure(以下、Azure)を選択したセラクに取材し、その理由とクラウドならではの新しい農業の在り方を聞いた。

Lesson1 エビデンスに基づいた農業を実現するセンサー

今月の講師
セラク
みどりクラウド事業部 事業部長
持田宏平 氏

 農業ITに注目が集まっている。温度や湿度センサーなどを活用することで、経験や勘に左右されていた従来の農業から、エビデンスに基づいた農業への変革を実現できる。

 セラクが提供している「みどりクラウド」も、そうした農業ITサービスだ。もともと同社の役員層が環境問題に関心があり、その中でIoTを活用した製品の研究開発・技術開発を進めていた。「スマート野菜工場」はその取り組みの一つであり、みどりクラウドの前身となるサービスだ。

 スマート野菜工場はAndroidを搭載した人工照明と水耕栽培で野菜を作るIoTデバイスとして2013年に開発された。電子レンジのようなサイズの箱の中でレタスを26株育てられる。内部に温度や湿度、照度センサーなどが内蔵されており、遠隔から生育環境の確認などが行えた。

 このノウハウを生かして開発されたのが、みどりクラウドだ。みどりクラウドは、環境計測センサー「みどりボックス」と、それらの環境データを表示するための「みどりモニタ」、環境データを蓄積し、収集分析するためのクラウドサービスで構成された農業ITプラットフォームで、農業が抱える問題解決を実現する。

Lesson2 警報機能で3,000万円の損失を回避

 みどりクラウドを開発したセラクの持田宏平氏は「農業は非常に課題が多い職業です。例えば異常気象が発生すれば作物や生産環境に影響が出ますし、獣害による損失も発生します。圃場の大規模化が進んでいる半面、農業従事者は減少しており高齢化も進んでいます。また、物流コストの上昇と複雑な商流で儲かりにくいという産業構造の課題もあります」と指摘する。

 それらの課題を解決するのがみどりクラウドだ。前述したみどりボックスとみどりモニタを活用することで、圃場の環境を自動で計測して遠隔から確認したり、異常な環境になった場合は警報で通知したりできる。環境を可視化することで、管理工数を削減できることに加え、圃場の様子をリアルタイムに写真で把握可能だ。

「警報機能によって、3,000万円の損失を回避できた事例もあります。茨城県のトマト農場では、真冬のビニールハウス内の温度をみどりボックスで監視していたのですが、深夜に警報が鳴り止まなかったため現場に向かったところ、ブレーカーが落ちていて暖房が付いていなかったというトラブルが発生していたそうです。トマトは8度以下で生長が止まるため、そのまま放置していたら苗の植え替えなどが必要になり、売上が立たなくなるところだったと感謝の声がありました」と持田氏。圃場の環境を自動で制御する機能も搭載しており、アプリを使った遠隔コントロールによって作業負担を軽減できる。

Lesson3 PaaSベースのAzure活用で開発を効率化

 みどりボックスが収集したセンサーデータを蓄積、集計しているクラウドサービスとして、同社が選択しているのがAzureだ。持田氏は「みどりクラウドをリリースしたのは2015年11月からですが、それ以前のPoC段階ではオンプレミスのサーバーを利用してデータの蓄積を行っていました。一時、他社のクラウドサービスなども利用していましたが、PaaSベースでサービス構築をしたいと考え、2015年4月ごろにAzureへの切り替えを行いました。『Azure IoT Hub』や『Azure Storage』『Azure Stream Analytics』などを活用し、開発スピードを向上させています」と語る。

 Azureを選択したことにより、運用負担も大きく軽減したという。みどりクラウドはセラク内のごく少人数で運用されているため、効率的な運用が実現できるメリットは大きい。

 また、センサーデータの蓄積・分析だけでなく、生産計画・作業記録を行える「みどりノート」も提供している。生産計画から日々の作業管理、農業資材管理、労務管理などを一元的に行える。作付計画をもとに各作業者に作業を割り当てることで、実施状況の登録ができ、生育調査や問題の報告なども行える。それらのデータをもとに、生育履歴の分析や、販売先への報告書、GAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)の認証に必要なレポートを出力することも可能だ。

Lesson4 若手農家にクラウド経由で遠隔から技術継承

 クラウドサービスであるメリットを生かし、農家ごとのデータ共有も行えるという。みどりクラウド上で友達申請を行い、お互いに承認をすると、それぞれが持つ圃場の環境データを共有・比較できるようになる。相互にデータを共有することで、人材育成やノウハウの共有などに活用できるのだという。「神奈川県では、トマトの生育について篤農家(研究心に富んだ熟練の農業従事者)と若手農家がデータを共有し、どういった管理をしないといけないかなど、言葉で聞いても理解しにくい部分をグラフなどを共有することで、遠隔で技術継承を行った事例があります。グループを作成してチャットを使って情報共有ができるので、部会内での情報交換や、生産者向けに情報を提供するツールとしても活用できます」と持田氏。

 また、今後は産地と消費者をつなぐ農業流通として「みどりマーケット」を提供していく予定だ。みどりクラウドで収集したデータを活用し、生産数などの予測を立てることで中間流通者の販売経路確保をより円滑にしたり、より価値の高い販売方法をとったりすることができるようになる。「生産現場と流通、そして消費者をみどりクラウドでつなぐことで、マーケットインの新たなフードバリューチェーンを構築していきたいですね」と持田氏は展望を語った。

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