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Web会議ツールを活用してお悔やみ相談を行う香川県高松市

Web会議ツールを活用してお悔やみ相談を行う香川県高松市

2020年08月25日更新

お悔やみ相談にWeb会議システムを活用
~香川県高松市が取り組む行政手続きの効率化~

香川県高松市では、防災や観光における課題解決のためICTを活用したスマートシティ化の取り組みを行ってきた。しかし、市の安全対策や観光産業の振興だけではなく、庁舎内での行政手続きにも課題が生じている。特に、お悔やみに関する手続きに数時間を要しており、市民に負担がかかっている状況にある。同市は、そうした課題をWeb会議ツールで解消するための実証事業を開始。高松市が行ってきたスマートシティ化や行政手続き効率化に向けた取り組みについて話を聞いた。

高潮被害対策や観光客支援の強化が課題

 高松市は、香川県の中部に位置する中核市だ。愛媛県松山市と並んで、四国地方で最も大きい都市の一つとなっている。そんな高松市では、数年前からスマートシティ化への取り組みを行ってきた。市の安全対策や観光政策などのサービスに課題があったからだ。

 四国地方は、九州地方とともに2004年に台風16号および23号による2回の高潮浸水被害を受けている。高松市内では、約2万3,000戸が床上・床下浸水の被害を受けた。その後、ハザードマップの策定や堤防のかさ上げなどの浸水対策が行われたが、さらに大きい台風被害を想定してICTを活用した浸水対策に取り組むことが市の重要課題となっていた。加えて、観光にまつわる課題も生じていた。瀬戸内海において2010年から3年に1回「瀬戸内国際芸術祭」を開催しており、観光客を誘致するさまざまなイベントを実施する中で、外国人観光客が増加傾向にあった。高松市に訪れる外国人観光客のニーズを掴むことで地元の観光産業をより振興していく必要性を感じており、そのサービス提供のための仕組み作りが求められていた。

 そうした状況の中、2017年4月3日から令和2年5月8日の間、総務省がICTを活用した地域課題の解決や地域活性化・地方創生の実現を目的とする事業「データ利活用型スマートシティ推進事業」の公募を開始した。データ利活用型スマートシティ推進事業の発表を受け、高松市の地域課題の解決にデータを活用する発想のもと、防災・観光分野で応募した。同市の応募は採択され、同時に「スマートシティたかまつ推進協議会」も設立した。

 2018年度には、住民の高齢化により高齢者施設の受け入れが難しくなっている課題を受け、高松市の地域全体で高齢者を見守る「地域包括ケア」を指標とした福祉分野、交通事故死亡率ランキングでワースト10位となっている課題を改善するための交通安全分野の二分野において、スマートシティたかまつ推進協議会で設立されたワーキンググループの主導で取り組むことが決定した。こうして、防災・観光・福祉・交通安全の計四つの分野において実証事業を開始した。

IoTで潮位測定や観光GPSデータを可視化

 データ利活用推進事業の取り組みでは、IoTの基盤ソフトウェア「FIWARE」のデータ基盤を活用したシステムが利用された。FIWAREは、分野横断的なデータ流通に主眼を置いたデータ管理基盤だ。ビッグデータ解析やオープンデータ連携など、7種のカテゴリー、約40種のモジュール群で構成され、用途に合わせて自由に組み合わせて利用できる。FIWAREは、4分野のうち3分野で活用され、防災分野と観光分野は本番環境、交通分野のみテスト環境で行った。各分野における実証事業の概要については以下の通り。

■高松市におけるデータ利活用推進事業での実証内容

・防災分野……災害対策本部が潮位や川の高さなどをリアルタイムで把握するための水位・潮位センサーを付けて可視化
・観光分野……市が実施している「高松市レンタサイクル」の事業で、利用者の同意を得てレンタサイクルの一部に「GPSロガー」を装着。外国人観光客の来訪場所の経路を可視化し、観光政策に活用
・福祉分野……一人暮らしの高齢者に服の上からウェアラブル端末を着けてもらい、ウェアラブル端末内の加速度センサーなどによって事故が起こった場合にすぐ通知を行う取り組み
・交通安全分野……事故が起こりやすい地点や、学校など近隣施設でのイベントのデータをFIWAREに取り込んでスマートフォンのカーナビアプリを作成。運転時にスマートフォンからイベント情報を音声で通知し、運転手の注意を喚起

 高松市 ICT推進室の平井氏は、実証事業の現状について以下のように語る。「防災分野の水位・潮位センサーと観光分野のGPSロガーについては実装にまで至っており、防災や観光政策に役立てています。福祉分野においては、加速度センサーなどのデータを収集した上での製品化に向けた協議を行っている途中です。交通安全分野では運転時にスマートフォンを活用することによる消費電力の問題など課題があり、現段階では実証段階にとどまっている状況です」

お悔やみの申請手続きに負担

 高松市においては、市の安全対策や観光産業の振興に関するサービスに限らず、市役所における行政手続きでも課題を抱えていた。

 市役所の窓口の手続きは、戸籍、住民票の取得、年金の申請、婚姻届の受理などさまざまある。こうした行政手続きの中には、手続きごとに複数の書類に要項を記載して提出する必要があり、市民にとっての負担になるのだ。

「特に課題となっていたのは亡くなられた方の手続きです。これらの手続きでは、戸籍や保険年金課など、該当する課にそれぞれ来訪する必要があります。しかし、各課がそれぞれ別の階にあるため全ての手続きを終えるまでに数時間を要しており、葬儀を終えたばかりの市民の方への負担になっていました。そうした状況の中、スマートシティたかまつ推進協議会会員であるNTTコミュニケーションズとSTNetからWeb会議システムを利用した手続きのワンストップ窓口化に向けた実証事業の提案があり、2019年12月2日からお悔やみの実証事業を開始しました」(平井氏)

Web会議ツールでお悔やみの相談を円滑に

 実証では、高齢者や子どもなどさまざまな年齢層の利用者が使いやすいUIにカスタマイズできるNTTコミュニケーションズのWeb会議システム「Sky Meet」と大容量・高速バックボーンに直接接続し、安定した電力供給に対応するSTNetのデータセンターサービス「Powerico」を組み合わせたシステムが採択された。

 お悔やみの実証事業は、今回新たに開設した「おくやみ手続き窓口」で実施している。例えば、利用者がお悔やみに関する申請書の内容で不明な点についておくやみ手続き窓口の担当員に相談する。その場にいる担当員でも対応できない質問の場合、Sky Meetから各担当課につないでWeb会議システムで相談を行う。

 実証当初は、庁舎内の端末がWebカメラに対応しておらず、通信回線も細いことから映像を流して障害が起こる可能性もあったため、NTTコミュニケーションズが用意したポケットWi-Fiを利用して実証を行った。

 現在は、新型コロナウイルス感染拡大により、市民が窓口に来訪することが難しくSky Meetを活用して市民から申請書に関する相談を受けるといった活用にとどまっている。今後は、STNetのPowericoを活用してLGWAN-ASPを経由し、Web会議システムから各担当課の職員に申請書に関する相談できるようシステムの改修を進めていく予定だ。平井氏は、実証事業の現状について次のように語る。

「実証事業ではNTTコミュニケーションズにLGWAN-ASP経由での実証環境を用意していただく予定でしたが、現在来庁が難しい状況のため本格展開に向けた技術検証は、まだできておりません。LGWAN-ASPの代わりにWi-Fiを利用して接続して途中まで実証を行いましたが、接続が途切れやすいなど課題は多い状況です。状況が緩和され次第、LGWAN-ASP環境を整備して市民の方と各担当課をスムーズにつなげるかどうか検証します。将来的には、現在の相談の段階から手続きまでを完結させられるシステムの導入を目指して実証を続けていきます」

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