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VR会議システムの可能性をNTTデータに聞く

VR会議システムの可能性をNTTデータに聞く

2020年08月24日更新

Web会議の課題を補い
新たな可能性をひらくVR会議

テレワークが日常業務となった組織では、1日で10件以上のWeb会議をこなすヘビーユーザーも増えている。その一方で、Web会議によるコミュニケーションには、リアルな会議とは異なる課題もある。そうした課題を解決するテクノロジーとしてVR(Virtual Reality)会議が注目されている。オンラインでの仮想空間を活用したVR会議には、どのような可能性があるのだろうか。VR会議の研究を長年にわたって続け、来年度の製品化を目指しているNTTデータに聞いた。

参加者の位置関係を感じられる

 Microsoft TeamsやZoomなどのWeb会議は、参加者の顔がPCの画面にずらりと並ぶ二次元的な「場」を提供してくれる。スライドの資料を共有したり、誰かの発言や発表を聞く上において、平面的なWeb会議は見やすく聞きやすくて便利だ。しかし、Web会議を使い慣れていくと、人によっては「あっ」と思う瞬間がある。それは、会話の衝突。自分と相手の発言が、ほぼ同時に発せられてしまうケースだ。

 おそらく、顔を見ながらのリアルな会議では、こうした会話の衝突はあまり起きないし、起きても気にならない。なぜなら、場の雰囲気や互いの目線などで、無意識のうちに発言のタイミングを推し量っているからだ。また、たとえ起きたとしても聞き取れるからそれほど問題ではない。ところが、平面的なWeb会議ではお互いの様子が分かりにくいので、タイミングが読めない。資料の読み上げや発表などであれば、会話の衝突は起きないが、ディスカッションとなると発言が交錯する確率は高くなる。また、発言が衝突した場合、音声が途切れてしまうリスクもある。

 こうした課題を解決する可能性が、平面ではなく仮想的な3D空間を創造できるVR会議にはある。PCのモニターではなく、ヘッドセットで仮想空間を体感するVR会議では、まるで会議室にいるような臨場感で、互いの位置関係や目線まで把握できる。参加者のゴーグルの動きがVR会議上に反映されるので、誰が会議に集中しているのか、資料を見ているのか、発言者に注目しているのかが確認できる。その結果、二次元的なWeb会議よりも直感的に会話のタイミングを理解しやすくなる。

セリフの吹き出しやホワイトボードの活用

 VRという仮想的な三次元空間では、奥行きのある広いスペースが確保される。その利点を生かして、NTTデータが開発しているVR会議システムでは参加者の会話を漫画の吹き出しのように、各アバターの上に表示させられる。さらに、セリフにはAIを活用した翻訳機能を組み合わせられるので、グローバルなVR会議も容易になる。

 実際に、NTTデータでは開発中のVR会議システムを活用して、イタリアの担当者と定期的なミーティングを実践している。互いの言語に精通していなくても、吹き出しの翻訳を読み取ることで、ミーティングは円滑に進むという。加えて、ビジネス用途を目的に開発されているので、VR会議室に登場するアバターも、参加者の顔写真から本人に近いイメージを生成できる。その結果、初対面でのVR会議でも互いの顔が認識できるので、リアルに対面したときにも違和感のないコミュニケーションが実現される。

 VR空間の広さを活用したスライドやデータの表示により、情報の伝え方も多様になる。特にホワイトボードやポストイットなどを活用したブレーンストーミング的な会議をオンラインで実践しようとすると、VR会議の可能性は広がる。実際に、VR会議の利用を検討している企業の中には、アジャイル開発のミーティングに使えないか研究している例もある。

NTTデータが開発してきたVR会議の使用イメージ。

イベントや展示会のバーチャル化にも期待

 VR会議の仕組みは、コロナ禍によって開催が見送られている展示会などへの活用にも期待が集まっている。VR空間を活用して、イベント会場の雰囲気を表現することで、オンラインでの興味喚起や目新しさによる参加促進などが期待できるからだ。複数の参加者がVR展示会場にアバターとして表示されれば、イベント会場の賑わいも仮想的に再現できる。特定の参加者と会話できる機能を活用することで、バーチャル商談も実現する。

 ちなみに、NTTデータが開発しているVR会議では、VRゴーグルなどを利用できないユーザーでも、会議の進行などを把握できるように、Webブラウザーで各自の発言内容を閲覧できる「会議中継」という機能も備えている。

 今回取り上げたVR会議は、NTTデータでの研究を完了し、現在は関連企業による製品化が進められている。正確なスケジュールは公開されていないが、来年度の発売を目指している。コロナ禍による新しい働き方では、在宅やサテライトオフィスでの業務が増えていく。

 そうした将来を見据えたときに、平面的なWeb会議システムの課題を補うVR会議は、新しい働き方や会議スタイルとして広がっていくだろう。

田中 亘(wataru tanaka)
東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系ITまで、広範囲に執筆。代表著書:『できるWindows 95』、『できるWord』全シリーズ、『できるWord&Excel 2010』など。

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